さて
様々な試練を乗り越え、バスが横ずれによるスリップ痕を生じさせることのできる唯一の場所は-4.7m位置だ。
となると、そこにあったはずのスリップ痕は片岡さんが警官の隙を見て足で消したのだろう。すごい技術を持っていたに違いない。
しかし片岡さんといえども、急ブレーキによる1.2mほどのブレーキ痕までは消す暇がなかった。右のスリップ痕のうち20cmを消すのが精一杯だったようだ。
ところでスリップ痕とは、タイヤの軌跡の一部だ。
スリップ痕が発生する前もタイヤは軌跡を描いていた。
バスの横幅を2.34mと仮定する。
左右のタイヤの外側同士の幅を2.03mとする。
左ボディ面から左タイヤの外側までの距離は(2.34-2.03)÷2≒0.15m
衝突時-4.7m(フロントより1.8m後ろ)で、左ボディより0.15m右よりにあった左タイヤ外側の軌跡を考えてみる。
衝突時の横ずれスリップ痕は片岡さんによって足で消された(かも)とはいえ、警察の現場検証、検察、裁判官の判断はいずれも「横ずれ」はあったものとされている。
それはどのぐらいか?
ヒントは(極めて怪しいにも係わらず証拠採用された)スリップ痕から逆算されるタイヤの軌跡だ。
この図面上の左スリップ痕の左側線に定規を合わせて-4.7mまで線をひく。
そうするとアバウトだが、大体左ボディより1.15m右側に位置する。
正味のずれは1.15-0.15=1mになる。
(これは直線での話で右に流れる曲線であれば更にずれは大きくなる。)
つまり、おおよそ衝突時より最終停止まで3m進む間に最低でも1mも横ずれを引き起こすバイクの衝突だったということになる。
怪しいスリップ痕が万が一本物であったとしても、この図面はインチキであり、もしこれを手直しするのであれば、衝突時のバスの位置を右に1m書き直す必要がある。
ところで、もし学生さんがこれを見ていたら物理の先生に聞いていほしい。
300kgのバイクが10tのバスの右前角にぶつかって、バンパーやボディを著しく変形させ、サスペンションも使い切らせた後、バスを3m進むうち1m左にずらせるにはどれだけのスピードが必要か?
うーん。学の無い自分に残念っ!