夜のブログ

講評です

怪路、昨日発売でした

2010-05-29 04:46:26 | 仕事
ある家の廊下に、ずっと誰か立っているという話を伺いました。
越してきた最初から、四六時中誰かの気配があって、最早当たり前のものになってるらしいのです。
怖くないんですかと聞いてみると、不気味だけど怖くはないと言われました。
あれは「地縛霊」で家族とは無関係だから……と。

またある人は空飛ぶ首を見ています。
人間の首から上、下顎の部分までが目線の高さをスイーッと飛んでた。
それも一つじゃなくて四人だか五人ぶんだか縦列して飛んでたんですって。
びっくりしたけど怖くはなかったとか。
あれは「浮遊霊」で通りすがりのものだから……と。

そんなナントカ霊だのの分類が未だに言われていることも驚きでしたが。
僕は反論なんかする立場にないです。
彼らがそう主張するなら、きっとそうなんでしょう。




昨日、怪路発売でした。
すみません、一日遅れで。……深澤夜です。

amazonさんや、お近くのコンビニでも取り扱われていると思います。
何卒よろしくお願い申し上げます。
恐怖箱 怪路(Amazon)

ジュンク堂さんとか紀伊国屋さんとかセブン&Yとかのほうが早そうです。
amazonさん、どうも「6日以内に発送」となっております。
どうしたことでしょうか。翌日配送でお願いしますよ。
僕プライム会員なのに。
ああっ、ええとそういうことじゃないな、これは。
在庫がないってことでしょうか。
もしそうなら嬉しいやら悲しいやら。いや、実際のところ何かの手違いなのじゃないかと思います。
献本もいっぱい頂きましたし。

普段は二人とか三人とか、十三人とかいやいやもっともっとという人数で一冊書いてますので、
頭割りすると献本が二冊とか三冊とか。
多くても十冊なくて自腹を切ることもあったのですが、今回はお話が10ありまして、献本はその何倍も来てるわけです。
一人で書くとこんなに頂けるものなのですね。
銭形刑事でなくとも「うわー、献本がこんなに~!どうしよう?」ってなっております。

というわけで、是非皆様のお手元にも、一冊置いていただきたいなぁ、と思います。
お陰様で一冊まるごと不吉な代物になりましたので。

多分今後僕は多方面からお叱りを頂戴し、またあるいは「どうしたらこんなに偉そうな前書きが書けるのか」と相談されることになると思います。
本当は素で書きたいのですよ。
でもそれじゃ何某かの期待を持って本書を手に取って頂いた方々に申し訳が立たないだろうということで、ちゃんとしましょうとああなっているわけです。
(ちなみに、今回前書き初体験でした)
普段からああではありません。そう思われたら困ります。

宣伝だけというのも何ですし、かといってまだ内容については触れられないので、後書きについて裏話を少々。

後書きといえば、「しおづけ手帖」では僕が後書き担当でした。
後書きはよいです。前書きと較べれば幾分気が楽です。
お礼の気持ちを述べればよいわけですから。
洋書みたいに謝辞を前に持ってきてはどうだろう、と思わなくもないですが、怪談本としてはそれもどうかという気も致しまして。
「しおづけ手帖」の後書きは、少々トリッキーな構成になっておりまして、関係ありそうでなさそうなメッセージを何の脈絡もなくブチ上げて、さらに僕が松村進吉さんを取材するという形式になっています。
なんとなく、それが一番相応しいように思えたのですよ。

今回は最後の「キ印人形」の最後をやや引っ張る形で後書きにしました。
後書きに「現在」と副題が振ってある通り、できればお話の終了できっちりと切って、取材当時のコメントは全部後書きに食い込ませたかったわけです。
それというのも、キ印の話をご紹介するにあたって、少し変わったアプローチをしたせいです。
ですが後書きから読む人も居るだろうということで僅かになりました。
……で、後書きは正直困っていたのですが、加藤さんから担当女史のお話を伺ったので取り留めのない話は切って、そちらを使わせて頂きました。

また前回後書きの冒頭でブチ上げたような、関係ありそうでなさそうなメッセージは今回は前書きに入れました。
前書き全部ムードメッセージです。なんとなく締まりが悪いですよね。
実は前・後書きにはまだ仕込んだテーマがあります。
体験談の選定にも、その裏のテーマが大きく影響しています。
それこそが旅路の目的地と言えるわけで、それに気付けば旅路はまた様変わりするかも知れません。
みなさん気付いていただけるかどうかわかりませんが、何かを主張するのは僕の仕事じゃないということで、まずは旅路を楽しんでいただければと思います。

では重ねまして恐縮ですが、恐怖箱 怪路をよろしくお願いいたします。

恐怖箱 怪路、校了

2010-05-15 14:45:40 | 仕事
ご無沙汰しております、深澤夜です。
去る2010/5/13くらいに、怪路が校了したそうです。
ふー。終わった。

締め切りを4月下旬と言われておりまして、ぎりぎりまで粘って原稿上げたのが4月末。
その後トラブルもあって、校了までの緊張感ときたらもうね……。
お話を頂いたのは一年くらい前なので時間はあったはずで、ここまで追い詰められたのは自分のせいなんですが。

単著だったら今まで出せなかったネタを中心に出していきたいな、とは考えていたのですけど
それを昨年秋の「しおづけ手帖」で松村さんとやってしまいまして
まぁ打ち止めとまではいかないまでも結構「やりきったなぁ」感があったわけです。
ネタも大分出してしまったので去年決めたようにやるしかなかったんですけど続けて同じテーマもなんだなぁ、と。

そこで今回「恐怖箱 怪路」では更に絞って、時間軸を辿り、奥行きのほうへ進むことにいたしました。
これは僕のこれまでの仕事ぶりからすると、少し違うように映るだろうとも思います。
一方で殆どが色々あってずっと寝かせてたネタ。僕からすると「ようやく……」と感慨深いものがあります。
ああ、やっとこれが出て行くんだな、と。
しかし浮かれとるということはないです。苦しいです。

……と、そのようなことを4,5行に詰め込んであとがきに書くはずのところ、最後にトラブルが起きたのでそっちのほうを書いてしまいました。
代わりにこっちに書いておきます。

内容についてはまだ発売日前なので、当然ここでは触れませんが、例によって胃が痛いです。
これまでも楽観的な気分で出した事なんてただの一度もないですけど、今回はずっと痛いです。
力加減の難しい話ばっかりになってしまって、それでも少しずつハードルを上げていかなきゃ最後の一作までたどり着けない。
特に最後の話は、大分寝かせてしまいました。
これまで方々にそれとなく相談してみたりしたところ、やっぱ無理だ、寝かせようと。
それでもこれを書かなきゃ死ねないくらいの気持ちでおりました。
読まれれば納得されると思いますが、単著でなければまず不可能です。
これ一度切りのチャンスだと思って書きました。後悔はしてません。
お叱りを受けようとも、やれることをするしかないのは毎回噛みしめてきたことですから。
反省はしてますけど。

時間があったのでゆっくり書いていたのですが、4月になって見返すとどうもいかんのです。
文章がいちいち怠い。ゆるい。
最後の数週間で大部分書き直しました。これが本当にえらい大変で……っていや、そんなことじゃないや。
結果、4話、70ページ以上没になりました。いい話ばかりだったのですが、全体のバランスを考えた上でのことです。
(ゆるいから書き直してページが膨れるってどういうことだって話ですけども、極端に短くなったわけでもなく、没にするつもりだったのを急遽復活させたものもあります)
直前までご連絡していた方には申し訳ありませんでした。


えーと、それで、発売はいつなんだろう。
Amazonによると5月28日だそうです。
ひとつよろしくお願い致します。
一緒に冒険しましょう。
恐怖箱 怪路

碑文の謎攻略2 本番(国内編)※ネタバレ注意

2010-02-02 04:35:49 | うみねこ
文字数制限に引っかかってしまったので、前エントリからの続きです。
前のエントリから読んで頂きたいところですが……「うみねこのなく頃に」を既にご存じの方は、勿論その必要はないでしょうね。

ただこれだけはもう一度言わせてください。
参考になったら僕の本買っ(ry

警告


もう一度警告を書いておきます。
これ以下の内容はもしかしたら結構重要かも知れません。
内容が正しいか、はたまたハズレかを検証する方法がないので断言できませんが、これだけは言えます。
ここから先の内容はあなたの楽しみを多少なりとも奪ってしまうかも知れません。

そしてこうも書いておきます。
謎はまだまだあります。ここでは何も決定的には明かされません。
どうしても碑文の鍵が、鮎の川が、二人が口にし岸が、あなたの集中力を奪って仕方がない、という人だけここを読むことをお勧めします。
もうわかんねーよー、川も里も幾つあるんだよ~、と思って、それでも解けそうで解けない謎に苛々して仕事が手に付かないという人向けです。
僕がこれを書くのは、沢山の謎が少しでも前へ進みますようにと願ってのことです。
考える楽しみを奪うことは、少しも本意ではありません。






金蔵の故郷/鮎の川


ではそろそろ碑文そのものに挑みましょう。
碑文はまず「故郷を貫く鮎の川がある」ことを提示しています。
「懐かしき、故郷」とはそのまま、金蔵の故郷と考えてよいように思います。
そのやり方で、エバとローザは黄金に至っているからです。
ただしそれがどこかはプレイヤーにオープンされていません。

続く「鮎の川」が鮎でも川でもないが、鮎はヒントで、川は川からの連想であることがエヴァとローザによってそれぞれ指摘されています。
(関連して?、碑文の最後の「黄金郷」が「黄金の郷」になっていることも指摘がありますが、これの意図は不明です)

さて、川に喩えられるものなんていくらでもあります。
水すら必要なく、気流、神経組織、家系図、道路、鉄道、谷、断層、境界。
(家系図についてはローザが指摘している。ローザの娘、マリア(真里亞)には里の字が含まれていることも)
更に、鮎が海に出る魚であることから「海に続く川のようなもの」と彼女らは語っています。
そして川のようなもののなかで、海に続くものを探せばよいわけです。
…これまたいくらでもあります。
従って、金蔵の故郷を限定できないことには、鮎も川も解らないということになります。

最初の推理


この推理は最初の頃いいセン行ってると思っていましたが、EP3ではエヴァ、EP5で古戸エリカによって間接的に否定されてしまいました。
よってハズレです。
実は最初の頃、「金蔵の故郷がどこかによらず、成立する川があるのでは?」と非常に都合のよいことを考えていました。
世界中のどこにでも大体ある川といえば、天の川でしょう。
ギリシャ神話の魚座は、魚になって海に逃げるのですよね?
ならば天の川か、そうでないなら黄道十二宮です。
黄道十二宮のサインには人体の一部に対応する意味があって、それには例えば「膝」「足」のような、碑文で読むといまいちピンと来なかった人体のスケール感が解決するわけです。
「膝?膝ってのは足に含まれないの?」とかそういう妙な感覚のことです。
じゃあもうこれで決まりだ、と解いたつもりになっていたわけですが、いまいち座りが悪い。
たとえば六人の生け贄を選ぶ鍵ですよ。
里は射手座のある人馬宮(人と馬がいる。銀河の中心方向なので、すごく明るい)のことだとして、そこで「二人が口にし岸」を探る。
射手座の近く、同じく銀河の中心方向には大きな蛇遣い座があります。
そのくるぶしあたりに、SN1604という超新星がありまして、この超新星についてケプラーとあと誰だったか、偉い天文学者が言及しています。
しかしその周辺をいくら調べても……6文字の鍵はない。
同じく射手座の近くの祭壇座には「Choo」(チュー)があります。
これだとしてもやはり、鍵が見つからない。

まぁ、わりといい話に聞こえるでしょ?
でもね、エヴァと古戸エリカは書庫でなんと「地図帳」を手にしたのです。
ズコーッとなったのは多分僕だけじゃないはず。
川は天の川なんかじゃない。
ちゃんと地図に載ってる、地理的な(或いは緯度や経度、赤道などの)ものなのです。

重要な扉の候補であるように思えます。
天の川や魚座といったルートからではなく、ほかのルートから黄道十二宮に至ることが出来れば、その時は鍵を手にしている筈です。
しかし。
穿ちすぎかも知れませんが、魔女ベルンカステルはバトラに対しこんな風に言っています。
「意味なんかない……これもヒントになっちゃうかしらね?」
……頭とか足とか膝とか、これはミスリードだったのかも知れません。

それと、金蔵の故郷をどこにあるかに依らない、という発想は結果からいうとそれなりに重要だと思います。


金蔵の故郷


もう一度これをよく考えましょう。
これを未知数としたまま、依存しない方法で碑文を解くことはどうやら不可能。
逆に、これさえ明らかになってしまえばあとは自ずと……解るといいですね。
ルドルフが「あちらさんも目覚ましく復興したって話だしな」なんて言ってることを考えると、間違いなく他国と思えます。
1986年時点で、日本国内のどこであれ(たとえ行ったことがないとしても)伝聞形で「あちらさんも復興したらしーよ」なんていう人間は極めて少ないでしょうから。
一方、全てを踏まえた上でローザは「京都じゃないの?」とか言うわけです。
こうなるとルドルフがいい加減な言い回しをしている可能性もなくはない。ローザが間抜けなことを言ってる可能性もまたある。

結論から参りましょう、僕の考える金蔵の故郷は、国外とすればヨーロッパ中部のどこかです。
理由は……長くなるので後ほど。また次回とさせてください。
国内とすれば愛知県か三重県あたりです。はたまた和歌山か、徳島、愛媛とか熊本、大分なんてことも……。
なんていい加減な、と言われそうですが、今はそれでいいんです。これらの県にはある共通点があってね。

みなさんが喜びそうな「それらしい鍵」を優先して、ここでは国内説を先に採用いたします。
いよいよ本題です。


くどいようですが最後の警告です。
ネタバレかもですよ?いいですね?











金蔵の故郷は国内説


故郷は国内で、おそらく鍵も国内としましょう。
なにせこの「鮎の川」は終わりが見えない。もしかしたら地球の裏側まで行ってるかも知れないので。

金蔵の故郷はおそらくは上記した県のどこか。
鳥羽か伊勢か豊橋か豊川か新城か……。
なにやらもの凄く楽しい少年時代を送ったみたいに書かれてますが、何がそんなに楽しかったのかはわかりません。
それぞれいいところですが、楽園ってわけでもありませんからねぇ。
まぁ、しかしそれはどこでもいいんです。
西日本の南のほうであれば、金蔵の故郷はどこでもよい。天の川でもないのに、そういう川があったんです。

中央構造線


所謂、断層でしょうか。
地中には西日本を縦断し、九州西部へと抜けていく長い長い地層のズレがあります。
これを中央構造線と呼んでいます。
国内説を採用した場合は、これが「鮎の川」だと結論しました。
これは大体糸魚川断層から分岐するようなイメージで、日本列島の中心を中部、紀伊半島、四国、九州、と続いています。
川から連想されるもののうち、谷を連想したものの日本で谷っていうのはイメージしにくいものがあります。
ところがこの谷は、断層とはいえ誰にでも確認可能な姿をしています。
文字数制限がうざいので地図のリンクです
奈良から紀伊半島を流れる紀ノ川と、海を挟んで四国の吉野川を見てください。繋がっているように見えるでしょう?
そしてこの繋がった川の流域の南北、スッパリと山地が切れています。これが谷です。

ではなぜこれが「鮎」か?
鮎は海に出て戻る魚だということは本編でも語られました。同時に、鮎に大した意味はない、川で考えろ、とも。
ですから川で考えます。
たとえば奈良から流れ出たばかりりの紀ノ川は吉野川という名前です。これが紀伊半島に入って紀ノ川になり、海に入る。そしてまた吉野川として川に入るわけですから、まさに鮎と言えます。
実際には川ではなく、中央構造線こそが「鮎の川」です。
従って、これらの川の流域よりもずっと南北に長い。

ではこの川を下ることにしましょう。

……え?じゃあ鮎の川は紀ノ川で金蔵の故郷は五條市とか和歌山市、或いは阿波なんじゃないのって?
仰ることはごもっともですが、山の中なので空襲とかあったのかなぁ、と。
あえて紀ノ川と言い切らないのは、本編で「川じゃない」とヒントが出ているので、それを踏襲する形にしました。
和歌山は空襲あったようですが、もしここが故郷で紀ノ川が鮎の川だったなら、右代宮家の人々はあっという間に鍵に至っていたはずなので、金蔵の故郷としては中央構造線を北或いは南に辿って、三重や愛知または四国のほうなのでは?としました。

川を下れば~二人が口にし


では一気に行きましょう。
注意深く地図を見ていく必要があります。
何せ日本中に「~里」みたいな地名があって、「おお!?」と思うと実は地方の名産品店だったりするわけですから、ノイズは非常に多い。
紀ノ川もノイズです。川にあまり拘らず、中央構造線を辿ってください。
中央構造線は、紀ノ川河口付近で川からはやや北にずれるように見えます。
「紀伊半島」は狭義ではこの中央構造線から南の半島のことを言うらしいので、その境界が見える地図ならば分かり易いかも知れません。

さて、辿っていくとやがて海に出てしまいます。
そこらへんをよく見てみてください。
ここです。
「二里ヶ浜」という地名が見えます。近くには「南海加太線」の駅もあります。
たぶんこれが里でしょう。
そしてその岸には……「河西公園」。(かさいこうえん)
お分かりですね?
二里ヶ河西(にりがこうにし)岸。
「二人が口にし」をあえて「にりがこうにし」にと読むわけです。

岸を探れ


さて、ここから先が難しい。
なにせ「岸」の意味がいくつにも取れる。

たとえば、ここは海岸ですからそのまんま「岸」であるわけです。
岸はどうかというと何にもない普通の町です。
かつて二里もあった浜辺は今は見る影もなく、殆どが火力発電所と住友金属の製鉄所。わずかな砂浜が磯ノ浦海水浴場として残るのみです。
ここで鍵を探してもなかなかそれらしいものが見つからない。

そして路線。「加太線」は「かだせん」と読むのが正しいらしいですが、あえて「かたせん」と読むとどうでしょう。
「片千」そしてこのすぐ上には山地です。つまり漢字の「岸」を地形と路線が表している、とも言えます。
ならば鍵の捜索範囲は高山、否、隣町まで広げる必要がありそう。
……しかしそれらしいものは何も見つかりませんでした。僕にはね。
他の人が探したらもっといいものが見えるかも知れないので、そっち方面を諦めて欲しくはないのですが、僕は諦めてしまいました。

エヴァはどうしたかというと、彼女はまず鍵を見つけた。
「これが鍵に違いないと断言できるけど、6文字には全然満たない!」
って具合です。
変ですよね。
6文字でないのに鍵と断言できた。
つまりですよ?それはもう見るからに怪しい、どっからどうみても鍵っていうものであるはずなんです。
おそらく、鍵の形をした池とか敷地とか等高線ですよ。公園のオブジェかも知れない。
地図にはないけど河西公園にはそういうのがあるのかも知れない。
しかし1986年時点とは違って、新しそうな造成地は沢山あるし、ゴルフクラブもある。地形はかなり変わってるはずです。

そこでもう一度、地名に戻りましょう。
地名を探してみると、河西という地名はもう残っていないっぽいです。公共施設の一部に残るだけなんでしょうか。
大半は松江西という地名になっています。
同様に、「貴志」という地名らしきものがありました。これも消えた地名なのかも知れませんが、公共施設にその名は残っている。
これを「岸」とするなら、つまり

「二里ヶ、河西、貴志」

これのどこか、貴志のどこか、或いは延長線上、さらにはこれらが囲む範囲こそが鍵の探索範囲でありそうです。
~こそが、と言っても全然絞れてないですけどね。すみません。

~鍵が眠る


鍵探しも佳境です。
大体の場所はわかりました。相変わらずはっきりしませんが、地道に探索してしきれない範囲ではありません。
迷い犬探すよりはずっと楽です。
引き続き地図を眺めましょう。

ここまで、碑文の指示は的確でした。
「下れ」と言われるままに下ったら里があった。「探れ」と言われたら、確かにちょっと探る必要があった。
(岸で鍵を探れ、という意味かと思ってたけど、実は岸のほうを探れってことだったんですね)
じゃあ「そこに鍵が眠る」と言われたら、やっぱり貴志に眠ってるんでしょうか。
貴志交差点の辺りを見ると、釜山古墳という古墳が見つかります。
古墳。
……眠るには相応しい。けど古墳なんてそんなに珍しくもない。それに「プサンコフン」なら6文字で、6文字に満たないというエヴァの指摘とは矛盾してしまいます。
でもですよ。
地図によっては「古墳」とだけ書いてあるかも知れない。同じ位置を「公園」と示している地図もある。
これはいったい何だろう、ということで調べてみました。

釜山古墳自体は、円墳でありました。
しかしこのすぐ西側に「車駕之古址古墳」(しゃかのこしこふん)というのがありました。これは前方後円墳。
……前方後円墳!
これが鍵でなくて何でしょうか。
いや、鍵つうか鍵穴のほうなんですけどもね。
衛星写真でもうっすらと確認できます。

しかしこれ、頑張ってもなかなか6文字にはなりません。
6文字になっても期待される6文字としても今ひとつピンと来ません。
エヴァはこれを手に「これをさす場所はそこしかない!」と言ってるわけですが、どこでこの鍵を使うべきかはまだ解りません。
よって現段階では、正確にどのキーワードが鍵かを決めずにある程度幅を持たせておいたほうがいいかも知れません。
では次にこの鍵を弄っていきましょう。

古墳から鍵へ


この場所は少々厄介です。
小さな古墳が二つあり、片方は今公園になっています。
呼び方は確定しておらず、まとめて釜山古墳ということが多いようですが、木ノ本古墳群、木ノ本遺跡、などとかなりバリエーションがあります。
まぁ当然ですね。
地図間での揺らぎもあります。
前方後円墳は車駕之古址古墳のほうですが、地図に多く載ってるのは釜山古墳のほう。前者は金の勾玉が出土し、有名になっています。今は公園になってるけども、これらは2007年以降の話なので関係ないです。

「眠る」というからには墓の中身が大事なのかと思いますが、被葬者は不明であります。

後者から行きましょう。
「釜山古墳」の読みはよくわかりませんが、おそらく「プサンコフン」。
「ン」が二つあるのでちょっとなぁ、という感じですか。
キーワードが、11ー13の名数の各頭文字を示すなどの場合、「ン」はいかにも不適合です。
現段階では、名数とも頭文字とも決まっていません。
黄道十二宮説を検証したときの流れで、つい「何らかの名数十二、ないし十一」と思ってしまいますが、これだって解らないのです。
しかし……碑文の第四の晩から頭、胸、腹、膝、足というキーワードが登場する以上、何らかの未知の名数を媒介にしているように思えます。
ここの考察は後ほど。ここではまず鍵候補を洗うことに努めましょう。

実はもう一つ近くにあるようで「茶臼山古墳」という、古墳としてはかなり有り触れた名前らしいのですが残念ながらこちらは消滅しており、地図にもないしあまり資料もないです。
さて、「車駕之古址古墳」のほうが怪しいです。前方後円墳なのはこちらですので。
資料に乏しいのは相変わらずですが、エヴァもあまり悩んだ形跡はないので言葉の置き換えでしょうかね。

しゃかのこしこふん、と読みます。
車駕、とは「しゃが」と呼んで、天神の乗り物、くるま、とされています。古址はそのまま、古い建物の跡地の事です。
こちらは釜山古墳と違って長い名前なので6文字にするには数文字削る必要がありそうです。
漢字のままでいくなら「車駕古址古墳」、平仮名で6文字なら「しゃかのこし」或いは「しゃかこふん」でしょうか。
文字数を合わせるために「の」を省略することは、碑文によって許可されています。

ほら、上の行と文字数を合わせるために「黄金の郷」と「の」を補っていますよね?
(別の解釈があるのかも知れませんけど)

しかしながら、あまりこのキーワードが気に入りません。
どうしたって同じ文字がダブるか「ん」が混じる。
これでは13文字から効率よく引けないし、頭文字と称号するには「ん」が障害になります。
仮に「しゃかのこし」を「しゃ」と「か」、または「し、や、か」の文字を残せ、という風に解釈することも出来そうですが、そんなことをしたらシャノンとカノン以外誰も居なくなってしまいそう。

英語でしょうか?
古墳なら barrow, ちょっと抽象的ですが coffin なんてのもあるかも知れません。
せっかく苦労して見つけたのだから「車駕之」という魅力的な固有な名詞を捨てて、お墓レベルまで丸めたくはありません。
「むかしのはか」とか「ふるいおはか」じゃいくら6文字でもちょっとアレでしょう?

しかし barrow は結構性能がよい。
例えば、右代宮家の人々の頭文字から butler, ange, rudolf, rosa と4人まで引ける。o と w は謎ですが。
右代宮には、本来なら序列があるべき人が何人か鬼籍に入っているか所在不明になっています。
例えばマリアの元の名前も不明です。オリビアとかウェンディとかだったら?もし、ローザが勝手に真里亞と名付けたのを、金蔵が知らなかったら?
福音の家から連れてきた夏妃とクラウスの子供の名前は何だった?もし彼が生きていたら?
それとそもそも籍を抜いていたバトラに序列があるのか?
バトラが序列8位というのは本編では触れられていないような気がします。たまたま夕食会で、エンジェの席に座っていたのだとすれば、b はバトラではなく……。
碑文が作られたのは1984年。その前4年間はバトラは右代宮の人間ではないわけですから、省かれている可能性は充分にあります。
"11-13文字"が謎なのにここまで言うのは早合点かも知れませんが……そうだとしたらバトラの罪とは籍を抜いたことではなく、籍を戻したことにあるのでは?

まぁ、話を戻すと現状、鍵候補は以下のような感じです。

しゃかのこし, しゃかこふん, 車駕古址古墳, 車駕古址遺跡, きもとこふん, きもといせき, きもといこう, ふくそうひん, てんのくるま, barrow, coffin, burial, ぷさんこふん, ちゃうすやま...

まだ色々バリエーションがありそうですね。
車駕の「駕」は「凌駕」の駕ですが、自然に出てきそうな字でもないので平仮名か英語ベースで考えていいでしょうか。
もう一息、もう一息何かが足りない。

因みに、貴志という地名は紀ノ川の反対川にもあります。ただし結構遠い。そこにも古墳がいくつかあるのですが、「二里ヶ、河西、貴志」のスケール感からするとちょっと遠すぎるように思います。が……これだ!って鍵が見つからない以上、違うという根拠もまたありません。

扉を探せ


扉がなきゃ合う鍵を探せないのも納得です。
ですから扉を探さないといけないのかも知れませんが……。
さっきから文字数制限に引っかかりまくってるので、また次回にしましょう。
といっても扉は解ってないので書くことないんですが。

※文字数制限
"本文は10000文字までです"って、紙でもないのにほんっとうざいの。
しかも9990文字しかなかったのに。
なんかバグってるぜ。gooブログやめたい。

碑文の謎攻略1(国内編)※ネタバレ注意

2010-02-02 04:33:37 | うみねこ
今更で恐縮ですが、「うみねこのなく頃に」にはまってます。
碑文の謎に挑戦して、少しだけ進展があったので記録として公開します。
参考になったら僕の関わった本(今だとしおづけ手帖か怪集蠱毒ですかね)買ってくださいね。

「うみねこのなく頃に」はファンタジーVSミステリの殺人劇です。
嵐の孤島、六軒島に集まった右代宮の一族に届けられる魔女からの殺人予告。
右代宮家の顧問錬金術師と名乗る黄金の魔女ベアトリーチェは「貸与した黄金の利子として一族の命を回収する」と通告します。
債務を放棄する条件は「黄金の魔女の碑文」を解き、隠し黄金を暴くこと。

その碑文をなぞるように、次々起こる見立て殺人。
魔女とその仲間は、幻想を駆使して不可能殺人を、最初から何度も繰り返します。
対するバトラは魔女の世界に捕らわれ、人間犯人説で魔女の存在否定を試みます。
バトラの武器は、魔女が真実を赤文字で語る「証明不要の赤」の定理、そして反証されない限り真実と認められる「仮定の青」。
魔女の存在をバトラが認めれば魔女の勝ち。
魔女の存在を完全に否定できればバトラの勝ち。
さて、右代宮の一族は碑文殺人を止めることができるのでしょうか?

以下、EP5序盤までのネタバレ注意です。(まだ読み終わってない)




黄金の魔女の碑文


まずはおさらいとして主題たる「黄金の魔女の碑文」の引用から参りましょう。

懐かしき、故郷を貫く鮎の川。
黄金郷を目指す者よ、これを下りて鍵を探せ。
川を下れば、やがて里あり。
その里にて二人が口にし岸を探れ。
そこに黄金郷への鍵が眠る。

鍵を手にせし者は、以下に従いて黄金郷へ旅立つべし。

第一の晩に、鍵の選びし六人を生贄に捧げよ。
第二の晩に、残されし者は寄り添う二人を引き裂け。
第三の晩に、残されし者は誉れ高き我が名を讃えよ。
第四の晩に、頭を抉りて殺せ。
第五の晩に、胸を抉りて殺せ。
第六の晩に、腹を抉りて殺せ。
第七の晩に、膝を抉りて殺せ。
第八の晩に、足を抉りて殺せ。
第九の晩に、魔女は蘇り、誰も生き残れはしない。
第十の晩に、旅は終わり、黄金の郷に至るだろう。

魔女は賢者を讃え、四つの宝を授けるだろう。
一つは、黄金郷の全ての黄金。
一つは、全ての死者の魂を蘇らせ。
一つは、失った愛すらも蘇らせる。
一つは、魔女を永遠に眠りにつかせよう。
安らかに眠れ、我が最愛の魔女ベアトリーチェ。


一目見た通り、難解であります。
これは1984年くらいに右代宮金蔵が右代宮家本館に飾ったベアトリーチェの肖像の下に書かれたもので、おそらくは金蔵の手に為るものです。

黄金の魔女で右代宮家顧問錬金術師ベアトリーチェを名乗る何者かが、右代宮金蔵に与えた20tもの黄金の契約破棄に際して、利子として一族郎党全員の命を貰い受ける旨を通達してきました。

最初の疑問は魔女の主張そのものです。
魔女からすれば自分の作った黄金だし、原本回収はどうでもいいのかも知れませんが、魔女の復活の件については釈然としない。
誰が何のためにやってるのか?
この碑文を解けば殺人は止まると魔女は宣言していますが、実際には止まりませんでした。

それは、碑文でなく全ての謎を解けばはっきりしそうではあります。
なぜそんなことを言えるかというと、碑文の目的や位置づけ(つまり碑文殺人と碑文の関係性、黄金郷へ行ける条件)を常に曖昧にしてきた、金蔵の自身の発言は一度ゼロになるからです。
この調子で、おかしなことを言ってる部分を全て幻想にできれば、結果として明確な形が浮かび上がってくる可能性はまだ残っています。


謎の妥当性


まずブロークンなパズルでは話になりません。
しかしこの碑文は、EP3でエバとローザが、EP5では来客である古戸エリカと主人公右代宮バトラによって解かれています。
プレイヤーにはそのからくりは明かされませんが、古戸エリカは右代宮の人間でなくとも、初見で攻略可能な謎であることを強調しています。

全員の推理


一族全員が碑文の謎に取り組むのはEP3です。
初めて正解者が出るのもこのエピソードでしたが、ここでは謎を解く上での大まかな考えの道筋が示されることになります。
いくつか重要と思える推理(というか合意事項的なもの)を整理しておきましょう。

・懐かしき故郷は金蔵の故郷でよい
・その故郷は、金蔵の子供であるクラウス、エヴァ、ルドルフ、ローザは知っている
・孫であるジョージ、ジェシカ、バトラ、マリア、及び使用人シャノンは知らない
・プレイヤーにも明かされない。
・金蔵はそこが大好きだったが関東大震災で没落した右代宮の当主に抜擢されてやってきた
・すごく遠い
・ルドルフによれば戦争でひどくやられたが、「あちらさんもめざましく復興したらしい」
・街並みもだいぶ変わってるだろう
・もし鮎の泳ぐ川があったとしても、今はもう発見不可能だろう
・エヴァは旅行と称し、視察に行っている。エヴァが本文中で言及する地名は、「エジプト」「ヨーロッパ」などだ
・同じく解読に成功したローザはそこに行っていないと思われるが、ローザは彼氏と函館などを旅行している
・マリア(真里亞)の名前は里の字を含むが、金蔵が名付けた名は全然違う名前で、反対して変えさせた。元の名は不明。

霧江の推理


バトラの継母である霧江は一族で唯一聡明なキャラですので、彼女の推理はよく聞いておいたほうがいいです。
ローザとエヴァも、霧江の話を聞いてようやく謎を解いたのですからね。
鍵を見つけ出すとき、エヴァは文字を数えていました。それも6文字です。
その6文字をどうしたのかは描かれていませんが、鍵が6文字なのは間違いなさそうです。

霧江によると、第一の夜から第十の夜まではある数列や文字列から指定された文字を引いていく過程ではないか、ということです。
……そうして最後に残ったものが!と言いたいところですが、残念ながら全滅してしまいます。
順番が肝心なんですね。
彼らによれば数列・文字列は13文字。これが扉で、鍵は6文字であろう、ということです。
もっとも、「寄り添う二人を引き裂け」の意味がよく解らないので(たとえば、寄り添う二つのうち、片方を消せば引き裂いたことになる)、13文字と断定するのは早計のように思いますが。
(一方で、碑文殺人では毎回第二の夜の殺人で二人が殺されます。プレイヤーにとって13文字というのはわりとすんなりと受け入れられるのですが、はっきりしないものははっきりしないもの。霧江さんも11文字か13文字だと仰せだ)

ローザの推理


末っ子でトロいのに、たまに見せる鬼母ぶりがたまらないローザさんの推理は「京都までの道のり」「第一の晩から、十日間の行程」「なんで最後、ここだけ"黄金の郷"なの?」
だそうです。
いまいち要領を得ないのは人柄だと思います。
しかしこれがエヴァにとっては大ヒントになったようで、「海に出る」と合わせて謎を解いたんだとか。
たしかに……これはある一つのキーワードを示していますね。
十日の、海に出る、京都までの道と言えば「東海道」のように思えてきます。
だけどルドルフの話を聞くほと、東海道が鮎の川とは思えないんですよね。
上記合意事項に従う限り、金蔵の故郷が日本でないと考えられます。
実際、地図で東海道を追ってみても里も二人が口にし岸もいまいちピンと来ないし、11/13文字は謎のままです。
里をただの人が住んでるところと思えばどこも里だし、厳密な里(山間の田舎)もまたかなり多い。故郷って意味の里だと誰の里かわからない。
しかし川とは道のことではないか、という提示は重要なヒントのように思えます。




さて、一万文字の制限に引っかかってしまったので、本番は次のエントリへ。


怪集 蠱毒

2009-12-02 02:00:26 | 遺伝記
ご無沙汰しております。
9月末くらいから締め切りやらなにやらが続きまして、生意気にも忙しかったのですが一段落致しました。

既に発売しちゃってますが「恐怖箱 十三」にも一本だけ書かせて頂いております。
来週末には「恐怖箱 しおづけ手帖」も出ます。これらは実話です。

それとは別に2009年11月27日に、実話でない短編小説集「怪集 蠱毒」が出ました。
少々名前が似てますが、7月に出たやつとは違いますので一つよしなしにお願いします。

こちら元は去年の「遺伝記」同様、イベント「怪集」に集められた小説から本になったものです。
イベント本編にも二本くらい(黒いあいつ/男をアゲるデートマナーテクニック)書かせていただいたのですが、これがからっきしでですね、
奇跡の敗者復活戦にて、幸運にも一本採用していただく機会に恵まれました。

従って「蝗の村」(いなごのむら)は、珍しくWeb上ではお読み頂けない一本になっております。
自分では結構面白い話になったと思いますので、親愛なる他の皆様の作品共々一つお読みいただければと。
「クロスローダーの轍」とか、面白いですよ。

「蝗の村」はちょっと前から考えていつつも、なかなか形にならなかった話を
この機会に、と仕事休んで二日で書き上げたものです。
指が痛くなりました。百ページ前後ですので、無茶をしたもんです。
もし文字が小さくて読みにくいと思われるようでしたら、それは多分僕のせいです。すみません。
基本的にはクローズドサークルでのホラーにミステリ風の味付けをした物語でして
ミステリといっても犯人やトリック当てではありません。
難易度は相当高いと思います。
解答編以降にもページ数を割いてますので、お分かりにならなかった方も楽しんでいただけるのでは……と思っております。

思い起こせば、夏に「怪集 -蟲-」で松村進吉さんのお作に関連づける話を一本、というオーダーで「父と子と精霊と」を書きました。
「蝗の村」も「長市の祭」と僅かに関連する物語であり、「長市の祭」も実は松村作品の派生であったことから、
ずいぶん周り巡って来たものだなぁ、と感慨深いところです。



以下、あんまりネタがないですが、イースターエッグを。

黒いあいつ:

種作品ってのは初めて書きました。抜きどころが難しいものですね。
とりあえず正体不明のモンスターを作れば後続し易いかと思ったのですが、ダメでしたねぇ。
あ、タイトルに他意はありません。ゴキブリとダイレクトに書くのは避けたかっただけです。

男をアゲるデートマナーテクニック:

書いてて本当に吐きそうになりました。
書く方としても苦行であります。
苦行と知って、結果も予想できて、それでも書いてしまうというのは、ただの悪のりではなく
実話のほうの経験から来る影響ではなかろうか、と最近思っています。
書きたくても書けない話がある反面、苦しくとも書くしかないという面があるというか。
おっと話が逸れた。

週刊誌とかWebメディアの記事でよくある一方的なバッドノウハウ集ってあるじゃないですか。
ああいうの気持ち悪いなーとよく思っていたので、ものすごくバッドにしたらどうなるかな?とやってみました。
案の定……です。お気に入りですが。

これは色々ギミックを仕込んでいて、正答例と誤答例を示すセリフの前の○×が最後のところでは伏線を兼ねるようにしてあります。
心残りは UTF-8 のまま送ってしまったため、「~」が全部化けたところですね。
(10年前の処理系ならともかく、まさか今時波ダッシュが変換で化けるなんて……)

怪集 蟲

2009-08-03 18:37:38 | 遺伝記
ご挨拶が遅れて面目ありません。深澤夜です。
竹書房恐怖文庫「怪集 -蟲-」が7月末日より発売中でございます。よろしくお願いします。
著者は「超」怖い話の編著者を襲名したばかりの松村進吉氏と、auブログのこぐま座、否、ポラリスことつくね乱蔵氏。
監修は「*」怖い話シリーズの加藤一氏です。
表紙は何と、「幽刻記」「虚空に向かって猫が啼く」ほか怪談界に多大な貢献を為されてきた西浦和也氏であります。

お近くのコンビニでも買えると思います。
ご飯や麺類とも良く合うと思いますので、おかずとしてもう一品のつもりでどうぞ!
というわけにはいかないと思いますが。残念ながら。

(実はあまりにもBlogに思い入れが入らないので新調しようかなとか思ってた矢先ですが
そんな時間はどうにも都合がつかず、まぁこのままでもいいやとご挨拶と宣伝です)

あまりホラーだとか何だとか枠に捕らわれず、楽しんでいただけることを最重要視して書いたつもりです。
ホラーでもSFでも冒険小説でもミステリでもありませんし、そのどれでもあると思ってます。

ところで、重要なピースを一つだけ余らせてしまいました。
それはナイーブ過ぎて和哉君や村上さんにとっては永遠の謎でしょう。
どうしても彼女の気持ちを理解し、代弁出来るキャラクターが残っていなかったのでこのピースを入れるのは諦めましたが、
僅かに隙間を残したままになってしまったのは痛恨の極みであります。
書いた僕にとってもそれは永遠の謎だ、と思う他ありません。

残念といえばもう一つ。
西浦和さんの書かれた表紙には、別バージョンがありました。
そちらのほうの破壊力が凄まじいものだったのですが、あまりにも凄すぎた為にお蔵入りとなってしまいました。
合掌。
新しい表紙もクールで物悲しくて好きです。



あ、そうだ。こぼれ話を一つ。
この本に関するやりとりを加藤さんとメールでしていたところ、gmailのAdSenseが以下のような広告を出して来ました。

> ライトノベルはまだ書くな
> 応募作の90%は書く前に落選している!入選作の秘密とは?

やっかましいわ!!

遺伝記:イースターエッグ

2008-12-31 15:07:40 | 遺伝記
どうもー。hydrogen(深澤夜)です。こんにちは。ご無沙汰しています。
遺伝記では1位になれました。
あまり実感ないので、ありがたやと東の空に向けて拝んでおくことにします。

嬉しいのですけども、なにせ順位に拘りがない性分ですのでイヤッホゥ!と飛び上がるわけでもなく「一等賞」の立て札を持って隣の晩ご飯に突撃するわけでもなくただ恐縮のきわみであります。
で、恐縮ばかりしていたら2008年も今日で終わりらしいという話を聞いて何かご挨拶のひとつ差し上げて区切りとさせていただくのがスジってものじゃないかという気分になりまして。はい。

そこで大した物ではないとは存じますが、拙作のちょっとした小ネタを紹介しましてご挨拶に替えさせていただければと。
(以下はネタバレを含んでいます)



長市の祭:
ニッタという名字は当然最初から決まっていたのですけど、長市の名前にはちょっと悩みました。
お金持ちっぽい縁起のいい名前で、なんとなく長男ぽい響きを入れておきたかったいなーとは思っていたのですが。
そこで「超-1」からもらってきました。
チョウワンと読むのが正しいらしいのですが、発声する機会のないうちに僕のなかではチョウイチになっておりまして、加藤さんから電話で採用の連絡をいただいた際に「チョウイチ」と発音して「チョウワンですね」と軽くいなされた経緯がありまして。


ウミガメのスープ:
「一体どこに植物が関係あるんだ!!」とお怒りの向きもありましょう。
クルーザーを見て「(コーティングしてあって木には見えないけど)木だ!!」って思う人あまりいないでしょうからあんまり明確にはしてませんが、微妙に入れてはあります。
でも本作では一番重要な木を形而上に収めてあります。
ウミガメのスープのような推理ゲームで用いられる論理構造は「N分木」、典型的には二進木として知られるものです。
これは非常に人気のあるデータ構造でして、順列のある木構造をしています。


アンリ:
アンリの元ネタは「瓜二つ」でしたが、元ネタに出てくる畑仕事をする木偶というのを
案山子と考えて、案山子の子は案山子だろうということで「うりこひめの正体はカカシだったんだよ!」というMMR的解釈の元で生まれてきた話です。
「ナ、ナンダッテー」と言われてしまいますんで、伏せてますけど。
名前は山野安李。
「野」を取って「李」をバラし、間に山を入れると案山子になります。
中山安李にしておくべきだったな。


崖:
これはブリッジ。
「黙死」のような良作と仲良くしたかったんです。


堀田春と魔法の杖:
ブラックコメディってたまに笑えないところありますよね。
そりゃもう色々な意味で。
「笑えないっていうかむしろ怖ぇよ」ってところもあるし、「そりゃダメじゃね?(倫理的な意味で)」ってところも。
この辺のポイントは微妙な境界線に載ってまして、たまたま一昨日映画「ダークナイト」の話で盛り上がったときも「ジョーカーが鉛筆を消すトリック」について「笑った派」と「怖かった派」に別れました。
イギリス人のDさん曰く「ああいうのは、アメリカの映画によくあるジョークだけど、イギリスでは暴力的過ぎて笑えないと思う。タイミングはコメディなんだけどやってることは怖い」。
僕はDさんの意見に全く賛成。映画館では笑ってる人が多かったな。

堀田春と魔法の杖に出てくる専門学校は基本的に詐欺という設定で書きました。
設定からいえば舞台となる世界観は現実と同じ。魔法は存在しません。
それでもスーパーパワーをちらつかせて学生を釣り、就職先はないというオカルト商法を展開する学校なわけです。
健康志向、エコ志向のオカルト商法なんて現実に山ほどあります。
なので通販のやつを入れました。
もしあれでホンモノの魔法アイテムが買えたら?っていうことですね。

最初の予定では、学校に手入れが入って資金繰りが悪化し経営破綻エンドでした。
ある朝、堀田春が学校に行くと
「本日臨時休校」
の張り紙があり、それから毎日臨時休校でしたというオチでしたが、自重しました。


あとは特に仕込んだネタはないんですけども。


リアルひとり鬼ごっこ:
実話のほうで伺ったお話で「ひとり鬼ごっこ」が関係するものがありまして、
そっちの呼び方のほうが一般的なのかと思っておりました。
世の中的には「ひとりかくれんぼ」の呼称のほうが一般的なんですかね。

余談ですけど、「1GBのSDカード」はやはり通販ネタではかなり馴染みますな。
なんかこういう、たいしたことないものでも大げさに言ってみることで言ったもん勝ち、みたいな雰囲気がありますね。
いやまぁ、実際のところ1GBもあれば必要充分ではないかと思いますよ。いばることでもないにしても。
それならなぜタウリンみたいに「1000MB」と言わないのかというのが疑問だったんですけど
単位に濁音が混じってないとやっぱプロモーション的にはNGなんでしょうな。
メガよりギガのほうが強そうだ。
だからきっと1TBが当たり前になった頃には、1000GBと言われるのでしょう。


座布団:
いやもう、これで全部。
悩みポイントはいくつかあって、ぶち破るのは「窓」か「玄関」か。
乗るのは単に「ジェット気流」にすべきか「貿易風」か。
窓ぶち破るのは普通だな、と思ったので玄関にしました。行儀がいいし。
ジェット気流にしたほうがいいかなーとは思ったんですけど、貿易風にしたところで
どっちが特別良いというわけでもない。
太平洋高気圧なら夏の日本にとって生活に根ざしたものなので、ならば貿易風にしようかと。


催涙効果:
これは旧ソのあの有名なジョークを元にしたものです。
かつて共産主義と監視社会は歴史的に凄く深い結びつきがあったのですけど
日本でも共産風味の声が大きくなったり、当たり前のような顔で監視社会化してることもあり、笑えるか笑えないか微妙なセンだということで採用。
もっとも共産風味は抜いてますけど。


意外と可愛い:
後のアンリである、というところ。


幽霊はどう見えるか:
ドキュメンタリー形式でやってみました。
ホラーっていうとウェットな印象があるなかで、サバサバと乾燥したテイストでやってみたかったわけですね。
その結果、企画書で始まってエンドロールで終わる構成に拘ってみたもの。
タイトルも事務的でストレートなものに。

【-6】神変鬼毒酒、命の滴

2008-09-30 04:55:17 | 遺伝記
風刺自体はいいんじゃないかと思うけども、
ここまで中身のない風刺に意味があるんだろうか。
「鬼ってこういう物ですよ、そしてそれはオカミですよ」ならまだ解りますが
前半だけだと蘊蓄で後半だけだと妄言。

【+4】ハッピー・サマー・ウェディング

2008-09-30 04:38:05 | 遺伝記
ああ、これもいいなぁ。
もう少し冷静に、巧みさがあってもいいとは思うけど、これはこれで変なテンションを貫いて逃げ切った感がある。
逃げ切るという点では江戸川乱歩の地獄風景みたいだなと思った。
まぁ、F1にはF1、ラリーにはラリーの魅力があるわけですよ。


その時だ!が続いちゃったのは難。
うん、もう少し美しい走りを心がけてもいいかな、とは思う。
コースアウトしない程度には。

【+5】名殺探訪

2008-09-30 04:27:12 | 遺伝記
面白い。
つげ義春ファンにはたまらない。
もっとディティールを詰め込んで、徹底的に旅気分にしてくれるほうがいいけど
最後の年表がなんとなく隙間を埋めるような形で痒いところに手が届くというか。
一方で周囲の人間の描写がやや悪夢的な偏りがあります。
小物や土地などで地続き感があるのに、人となると不意にとぎれてしまっている。
だからこそ最後の「私」の独白に意味があるのかも知れませんけど
みんなポンポン死のう死のうって中で「私のような人間には」というのはちょっと
やっぱり何かが途切れているかなぁ、と。
そこは少し残念。

また各章のテーマはこれまでもあった話なので旅行者としてはもう少し新しいものが見たかった。

でも一番好きなのは人魂だったり。
人魂がこんなに似合う話は他にないと思います。