▲ついこの間田植えしたと思っていたら、もう稲に穂が
雨
季節の何処かに
忘れものをした様な気がして
ふと、雨降りを眺めたくなった。
瓦屋根をたたく
雨の音を聞きながら、
乾き切った白い地面が
しゅんと音でも立ちそうに
雨を吸い込んでいき、
太陽と土のまざった匂いが立ちこめ
みるみる黒くなっていくのを
ふと、見つめたくなった。
雨は大粒がいい。
やがて地面には
小さな流れが幾筋も出来、
よどみ、
干涸びたバッタの死骸や
草の葉を浮かべ、
小石を動かす。
雨は同じ調子でいつまでも
変わらないほうがいい。
すると僕は
何時間も縁側に腰掛けている。
ふと、雨降りを眺めたくなった。
瓦屋根をたたく
雨の音を聞きながら
僕は、
何を考えているだろう。
(1979)