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厚生年金基金事務長奮闘記-22

2010年08月30日 | 厚生年金基金
 4.ケ-ススタディ:日産生命問題

平成9年9月18日

日 産 生 命 問 題

年金経営問題研究会
報告 高野 義博



目 次
序・経過と予定 (仮受け処理と年金給付費)
破・基金の対応とその背景 (ガイドラインと「ガバナンス不況」末村 篤 )
急・気がつけばビックリギョウテン(『見えざる革命』ドラッカ-が「決まる」行天豊雄。)


序・経過と予定

平成9年4月 2日 厚生省:資産運用ガイドラインの通知
平成9年4月12日 厚生省:シェア変更、随時・届出制の通知
平成9年4月25日 大蔵省:日産生命に対し業務停止命令(直ちに管理命令に変更)
平成9年4月25日 連合会:「日産生命と契約のある基金の皆様へ」FAX送付
平成9年5月 2日 基金:生保副幹事会社に仮受け処理指示(以降、現在まで継続)
平成9年6月13日 連合会:保険管理人に見解
平成9年7月15日 連合会:「日産生命と契約のある基金の皆様へ6」大至急 FAX送付
平成9年7月30日 日産生命:社員総代会開催
平成9年8月 1日 日産生命:保険契約移転・平成8年度決算の公告 8月中意義申し立て受付
平成9年8月15日 基金:8月期年金給付(仮受け分で手当て、不足分は総幹事会社手当てを依頼)
平成9年8月20日 連合会:「日産生命と契約のある基金の皆様へ7」FAX
平成9年8月27日 連合会:「日産生命と契約のある基金の皆様へ8」FAX
平成9年9月 8日 生命保険協会:あおば生命への移転、意義申立て(0.38%) 不成立により承認されたと発表
平成9年9月10日 日産生命:掛金シェアあおば生命でOK
平成9年9月10日 日産生命:意義申立て結果公表、清算手続き開始、10月1日にあおば生命への契約移転の予定



破・基金の対応とその背景

①基金
・何もしない基金 (様子見の基金)傍迷惑な、どうでもいい基金。
・母体主導基金(ガイドライン抵触基金)静かに潜行、騒ぐな!
・事務局推進基金 (ジャブかまし基金)たいしたこと出来ず、多少危険。
・大連合呼び掛け基金(いまだ現われず)官僚的保守体質故に非現実。
・訴訟取組み基金 (べき論基金)寡聞にして知らず、ないのでは。




母体企業の人が資産運用委員会を牛耳っていろいろなことをいってきて、理事さ
んが押されて意思決定したとします。そうすると、それは記録に残されて、あとで
責任を問われます。ですから、頑としてはねつけなければいけないのです。つらい
ところですが、そういう風土をつくるのがこれからの問題で、だから大事なのです。
もしいままでどおりにやっていいのだったら、こんな簡単なことはありません。い
ままでどおりではできない、それではいけないのです。・・・。

本当につらいことですが、自分のクビを賭してもやる。そういうつもりでないと
基金の改革は出来ないと思います。そこが皆さんの大変なところですが、もう一方
でやりがいのあるところだと思うよりほかない。・・・。

どのくらいの給料を皆さんがいただいているのかわかりませんが、こんなに責任
の重いことをやらされて、いざとなったら損害賠償で何十億円などと請求されたら
ばかばかしくなります。そこもきちんとしなければいけない。・・・。

皆さんのおっしゃることはよくわかりますが、私としては冷たく“そんなことで
流されてはいけない”といわざるを得ないのです。そしてそのとおりの世の中にこ
れからなっていくと思います。そのように考えないとだめだということです。

若杉敬明:「年金資産運用と受託者責任」質疑
厚生年金基金連合会「企業年金」臨時増刊号'97.8
常務理事セミナ-講演集



運用機関・シェア等を決めるとき、会社の意向に反して決められるかとなると難
しい。そこで、企業の偉い人を基金の役員にしてしまうのが一番いいが、それも現
実問題として難しいという事になると、基金の理事長以上の実力ある人がいて、指
示したとして、かつその場合に、その意にそぐわないような場合、基金の理事長・
常務などは受託者責任違反ということになるのか。

「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインの解説」
ガイドライン研究会:第5回 議事要旨




②母体企業
・年功序列・終身雇用の破綻(退職金制度のパンク)
・リザ-ブされていない退職金(隠れ退職金債務の巨額化)
・企業のオフバランス経営の破綻(株式持ち合いと土地の含み資産のパンク)
・政策投資の政治性と資本効率無視経営のガバナンス不況
・日本人サラリ-マンの認識度合い




欠陥制度の退職給与引当金制度を支えたものは、高度経済成長によるネズミ講シ
ステムが有効だったことと、企業に株式と土地の含み資産を蓄積する会計と税制の
歪みであった。労働債務の“簿外債務”(含み損)を株式と土地の“簿外資産”
(含み益)でバランスさせる、巧まざるサ-カス経営、これが日本的経営の本質だ
った。

バブル崩壊に至る過程では、正にバブル的運用環境に恵まれたために、企業年金
制度の矛盾が露呈することもなく、企業経営者も従業員も、さらには金融・證券市
場でも、年金基金の生長が既存の日本的経営や日本型資本主義と衝突し、システム
の変更やパラダイムの転換を迫るという「年金革命」の問題意識は生まれなかった。



企業が収益の裏付けのない膨大な資産を抱え込み、水膨れした資本と負債から適
切なリタ-ンを得られない状況に陥ったのが、日本のバブルとその崩壊による不況
の実態である。企業の投融資行動、つまり経営そのものに規律を欠く日本システム
が招いた「ガバナンス(統治)不況」。そこに日本型資本主義と日本的経営の本質
が現われており、これからの年金と企業経営を考える原点がある。

末村 篤:年金が企業経営を変える~年金から見た日本資本主義論~
㈱日本投資信託制度研究所「FUND MANAGEMENT」 '97.夏季号



母体企業とは何か。経営者が正面の主体と思っている。受給権者保護とは何か。
企業あるいは経営者と相対立する概念ではなく、どちらかといえば、同じ船に乗っ
ている面があり、共同責任といったほうが現実的かと思う。よって、経営マタ-と
して、基金の運営は大事な事項であるという留意が必要と思う。

「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインの解説」
ガイドライン研究会:第5回 議事要旨




③日産生命問題対処の背景










・職員の配置は次のように改められました。
「基金の職員の数は、業務量等に見合った適正な数を配置する必要がある
こと。」

   ④日産生命問題対応策
・基金と母体の利害調整
イ.政策投資(母体)と純投資(基金)の確執が低利回りをもたらしました
ロ.事態の認識を高めていく(組織内にコンセンサス醸成)
ハ.母体と基金の共同責任の観点からドラスティックな現実的対応を模索
・あおば生命で継続
イ.2000億円と1000億円の移行スキ-ムがすんなりいくかどうか。
ロ.脅しの解約控除率設定の裏事情は解約奨励により身軽になりたがってい
るということであろう。
ハ.非開示のデリバティブ等の地雷が爆破する危険を抱えているのではありま
       せんか。
・あおば生命で次期財政再計算後に解約
イ.今回再計算ではオンバランスとせず、次期財政再計算期に解約控除率適
用による損失を計上。
・あおば生命でシェア変更して、1~2年で資産引き上げ
イ.4月12日の厚生省通知により、シェア変更の規制が撤廃されました。
ロ.給付シェア引上げ、掛金シェア引下げて徐々に資産引上げ


H9年3月末委託資産 5億円
年間年金給付費 5億円
年間掛金徴収額 6億円

       (現 行)給付シェア 4.2%、掛金シェア2.0%
(変更案)給付シェア90.0%、掛金シェア1.0%


・生保資産を給付専用ファンド扱い
生保協会の今回対応とガイドラインの観点から、給付シェア引上げ、掛金
シェア引下げて徐々に資産引上げ
・訴訟
イ.日産生命、生保協会(契約違反の立証)
ロ.厚生省、大蔵省(管理責任の立証)
ハ.一基金では金銭的、期間的、体制的に困難
ニ.連合会が代理訴訟出来ませんか

①掛金シェアの変更は解約・減額のいずれにも該当しません
②掛金シェア変更申し入れへの応諾義務
③借受け処理分の逸失運用収益・逸失機会の損害賠償
④区分経理の特別勘定資産保全
H9.6.13連合会見解


<資料参照>
・日本経済新聞:平成9年7月8日記事「金融市場に精通」
・連合会:平成9年7月11日通知、別紙1「新任常務理事セミナ-のご案内」
・野村マネジメントスク-ル「上級ポ-トフォリオ講座」

⑤日産生命問題の意味
・出向人事下、サラリ-マンでの限界
・母体企業の年金問題に対する認識
・ガイドラインのインパクト
・グロ-バル・スタンダ-ドへのシフト替えの必然性
・日本人全体の資産運用文化の産みの苦しみ
久野正徳:企業年金制度改正の影響と今後の課題(YRI證券月報97.8)
・日本の経営市場→政策投資⇔基金→純投資
・現状基金から見れば、日本は投資不適格(カントリ-リスクがハイレベル)
・経営は資本の生産性を高め、効率性追及が求められます
・資本の論理が強制的に機能します
・最近の二極化相場(バリュ-重視と自社株買い)の意味→変化の兆し



実際、企業年金の問題は、わが国が抱えている構造改革の課題を複合的に抱えて
いる。それは、企業年金が財政、社会保障、金融、高齢化、企業活動という領域の
重なる部分に位置しているからである。わが国の社会経済構造の変革なくして、企
業年金の再生はないと言うこともできるし、また逆に言えば、企業年金の抱えてい
る問題を解いていくことで、わが国の社会経済構造変革の道筋を整理できるという
ことでもある。

加藤 寛:「日本の構造改革と企業年金改革」
ライフデザイン研究所・『平成9年版 企業年金白書』
-始動する企業年金の改革






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