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厚生年金基金事務長奮闘記-12

2010年08月20日 | 厚生年金基金

3.横滑り加算の摩訶不思議

基金の給付形態を代行型から加算型へ移行するとき、又は当初から加算型で基金を設立するとき、その原資は一般的に企業内部に留保されている退職金の積立金が当てられます。

その退職金は、企業では社内留保されている帳簿上の積立数字であって、実際には固定資産等になっていてキャッシュではありません。

これを、別法人の基金へ資産を動かすため固定資産等の現金化という問題が生じます。企業にとって一度に多額な現金が流出するのは財政バランスが崩れるので回避したい。そこで、資金の平準化のために繰り延べ方式の保険方式が採用されます。

これにより資金のフローの観点での確保が達成され、年々の負担は保険料に衣替えし、基金に積み立てられていくことになります。

右肩上がり経済の世界ではこのスキームが機能しましたが、退職者が大量に発生したり、新規加入員が無しであったりする時代にはフローでの積立には問題が出てきます。

「保険」という統計学だけでは治まらない現実があるようです。

ストックでの積立が無いですから支払い不能も基金の解散も生じてきます。これは、退職金でも適格年金でも同じことが起きていて、米国流会計基準で判断すれば「隠れ年金債務」と言われる問題です。

数年先には、国際会計基準の導入も予定されているので、どちらにしても企業はこの問題に真正面から取り組まざるを得ないことではあります。

基金の方は、厚生省が平成9年度から、企業界計に先んじて時価会計を導入し、<予定利率5.5%の全基金一律適用>を改め<上限-下限方式>へ従来行政方式を改め、合わせて「非継続基準の財政検証」という新しい概念を導入してストックの観点を採用し、受給権保護を計ることになっています。






昭和61年の厚生年金法の改正は基金制度にとっても大きな改正でした。それまで、一律に報酬比例部分の給付乗率は10/1000と定められていましたが、生年月日により10/1000から7.5/1000に引き下げられました。

その上従来60歳支給開始でしたのが、昭和16年4月2日以降生まれの人は支給開始年齢が61歳から順次65歳まで引き上げられたのですから、若い人たちの反発は一気にオピニオンリーダー不信に達してしまいました。

 多くの基金関係者も危機感を持って、この給付削減策に対して取組み、部会や全国総合基金協議会、単独連合基金協議会、それに外資系金融機関等でも盛んに研究され、「給付改善問題委員会」というのが隆盛を極め、現今の「資産運用問題委員会」以上に活発に活動が行われました。

ABC基金でも「給付改善問題委員会」等に積極的に参加し、調査研究に励みました。しかし、昭和61年の厚生年金法の改正に対する給付改善に要する金額は大きな額であって、
利差益の一部を使って物価の目減りをカバーするのとは性格が違っていました。

ABC基金では、総幹事会社・副幹事会社に数次に渡ってシミレ-ションを依頼し、その度に高額な事業主負担が発生する非現実的な案を呈示され諦めかけていたとき、総幹事会社が第五次シミレ-ションの素晴らしい案を持参したときには、事務所全体が興奮してしまいました。

そのシミレ-ションは、<代行型からの横滑り加算への移行>というかなり力技的な
荒々しい改善案でした。素材の組み合わせの妙は、数理の専門家のたゆまぬ研究と行政サイドに対する粘り強い交渉の成果でした。その時の総幹事会社の数理人には基金の担当として大いに喝采を送るものです。数理人は別途商売に手抜かりはないのでしょうが。

このシミレ-ションで、ABC基金は設立以来の代行型から平成元年に<代行型からの横滑り加算への移行>を行いました。これが成立しましたのは、法改正に伴う制度変更を背景に、行政指導の整合性の網の目を潜り抜ける資産の有効配分の組み合わせの妙があったからであります。つまり、長年一事を研究していると、思わぬときに諸条件の和合が成立して自然に<決まる>という事態が生じます。そういう希な場面を頂いたということです。

さて、その諸条件とは、①61年法改正で給付率逓減が実施され掛金率が引き下げられること、②代行給付を圧縮して掛金率を引き下げること(代行型はハイコスト!)、③代行給付圧縮による余剰責任準備金が発生すること、であります。この3つの原資捻出により生じた余剰資産を加算型の原資へ有効配分することで、加算型の認可基準がクリアー出来ることになりました。






パラダイムシフトは断層、摩擦、混乱、不安を引き起こす。新しいパラダイムは
常に冷ややかに嘲笑や敵意をもって受け止められる。既得権を持った者は変化に抵
抗する。パラダイムシフトは、今までとは違ったものの見方を必要とするが、これ
は規制概念に捕らわれたリーダーたちには最も難しいことかもしれない。

マリリン・ファーガソン『アクエリアン革命』







 この結果、代行型の資産有効配分(年金資産のシフト替え)のみで新たな資金負担無しに加算型へ移行出来、フレームワークの変更が成立しました。その上、掛金負担は代行型3億39百万円(昭和63年12月基準)でしたのが加算型3億27百万円となり、年間12百万円(3.3%)のコストダウンが実現しました。






又、年金給付も代行型816,200円(年/1人)でしたのが加算型952,280円となり、年額136,080円(月額11,340円)増額(16.7%)の給付改善が実現しました。

しかし、いいことづくめばかりではなく、加算型認可に際して行政サイドから理論値プラスアルファ(40%)が認可基準の43%に達していないので、認可基準クリアーの給付改善を今後実施するよう条件を付けられてしまいました。その裏付けに母体企業社長の確約書を求められ厚生大臣宛提出した経緯があり、退職金の移行を検討することになりました。




受講日数19日、研修費用120万円。

野村マネジメントスクール:第6回上級ポートフォリオ講座







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