「みんなの年金」公的年金と企業年金の総合年金カウンセリング!                 

このブログ内検索や記事一覧、カテゴリ-等でお楽しみください! すると、あなたの人生が変わります。

厚生年金基金事務長奮闘記-11

2010年08月19日 | 厚生年金基金
【お知らせ】
墓参りに千葉と高松へ行ってきました。全線車でした。地図なし、ナビなしで、不正確極みつきのナビゲータ(妻)と一緒しました。無事帰宅できて、ホッとしています。






2.代行型はハイコストが仕組まれている!

厚生年金基金は、国の厚生年金(老齢年金)の一部を代行して支給するため、厚生年金保険料の一部を厚生年金本体に納付することが免除されています。この免除される厚生年金保険料率は<免除保険料率>と呼ばれて、従来は全基金一律に定められていました。

しかし、各基金の年齢構成等の違いから各基金が代行給付に必要なコストは異なり、基金間に負担の格差が生じていることから、その是正を図るために平成8年4月から<免除保険料率>が、各基金が代行に必要な保険料率(代行保険料率)に基づいて一定の範囲で複数化されることになりました。(最終的には個別免除保険料率に移行の予定)






基金を設立・加入した社会保険適用事業所の厚生年金保険料は、上記の免除保険料率の保険料を厚生年金に納付せず基金へ納付します。このため、厚生年金保険料は平成8年度現在月額給与の17.5%ですから、基金設立のある場合は免除保険料の、例えば3.6%であれば、3.6%がマイナスされて13.9%を国庫へ厚生年金保険料として納付することになります。

厚生年金保険料は、事業主との折半負担となっているので、本人負担保険料は6.95%となります。当然、事業主は、折半負担の6.95%を会社負担して厚生年金保険料を納付します。

一方、免除された厚生年金保険料(先の例では3.6%、事業主負担1.8%・本人負担1.8%)は、基金の代行分以外の給付(プラス・アルファ分と呼ばれています)のための基金掛金を一般的に全額事業主負担で上乗せして基金に納付します。結局、本人負担は基金が設立されていても設立されていなくても同じ負担で、プラスアルファの負担は基金設立を行った事業主が行います。







上記の事例のアミカケの部分で、基金が設立されていても無くても、加入員の負担率は8.675%で同率ですが、事業主の負担率は基金設立があると14.675%-8.675%で、6.0%上乗せ負担が行われています。代行型の基金であれば、加算年金部分がないので、基本掛金の部分のみとなり2.3%と1.8%の差0.5%の上乗せ負担が行なわれます。

さて、基金制度発足から30年に及んで免除保険料率の決定は、厚生年金の被保険者全員を対象としました基金が現時点で発足したと仮定したときに必要となる代行部分の平準保険料率ということになっていました。

つまり、保険学の母集団としての厚生年金の平均値を、個別の財政運営を行っている基金に適用していたということです。このため、基金の仲間内では代行部分を賄うのに必要な掛金(基金は保険料と言わず、掛金という言い方をする)率が、免除保険料率より高い基金もあれば低い基金もあり、早くからその不合理が指摘されていました。

端的に言えば、大企業の製造業基金では社員の平均年齢が低いため代行に要す掛金率が低く一律免除料率では余剰が出るが、繊維業等の不況業種や慢性的に高齢化業種である運輸業等では逆の現象で一律免除料率故の代行不足料率が大きく毎年不足金が発生したり、それを避けるため事業主は高負担を強いられるということが、平成8年度に免除料率の複数化が導入され不合理の一部が改まるまで、制度発足から30年間続いていたことになります。

さき頃解散した紡績業基金の解散はおそらくこの免除料率の全基金一律適用によるガン細胞が仕組まれていた為ではないでしょうか。

この<全基金一律の免除保険料率適用>のため、不利益を被っている基金と利益の付替を受けている基金が全国一律の平均値を使うことによってバランスがとれているというのが官僚的思考回路です。

「平均値」の抽象世界でこと足れりとする頭脳が把握する現実認識に対して、官僚的思考経済方式の「平均値」で切り捨てられる部分にこそ、本来の現実があるとするのが民間の見方でしょう。

この<全基金一律の免除保険料率適用>について「一点豪華方式」の死守という行政手法を30年も維持してきて、この度ようよう「一点豪華方式」の弊害、官僚の「決め事」以外の世界にこそ現実があるということが現実(紡績業基金等の解散)になり、さすがに頭脳明晰を誇る官僚集団も自分たちの頭脳が視野狭窄に陥っていたことを認識しはじめたようです。「一点豪華方式」(リ-ガル・リスト方式)から「上限-下限方式」のグロ-バル・スタンダ-ドへシフト替えをせざるをえなくなってきています。

ABC基金は給付乗率11.4/1000の代行型で設立され、平成元年に代行型資産の有効配分(横滑り)により①加算型に移行しましたが、加算型移行の一般的な方式の企業の退職金の移行は必要ありませんでした。ついで、平成4年には、会社の退職金の10%を基金に移行し②第2加算年金制度を導入しました。更に、再々申請していました③「60歳無条件給付」が平成7年には導入出来、一応年金給付のフレ-ムワ-ク改善は達成されました。

ABC基金は昭和54年頃から給付改善の課題に取組み始め、平成7年まで17年間かかっていますが、この間に「事が成る」という不思議な経験を度々させてもらっています。というのも、「事」というのは一朝一夕に成立するものではないですという当たり前のことの経験なのですが、諸般の事情、つまり人的配置、法律改正事情、継続的な改善熱意、財政事情の好転、無関係な部分からの突然の後押し等々が合い絡まって、「事が成る」という時はあれよあれよという間に成立するものです。懸命に意図的に成立を目指す時よりも、むしろ、なかば諦めた時にこそ「成る」という事態は起きるようです。

そういう観点で、通貨マフィア行天豊雄氏が言う統制・計画経済の手法<決める>ではなく、<決まる>という考え方があるという考察は共感できるところがあります。



政治とは実現できるものから先に手をつける<可能性の技術>だ、ウィルソンは
理想に走り過ぎて苦労している、世界はそう簡単に理想郷になるものではない、と
みた。

ロン・チャ-ナウ『モルガン家』-金融帝国の盛衰



昭和50年代から平成5年位までの免除保険料率は千分比で<30/1000から32/1000>の全基金一律時代でした。ABC基金は運輸業の業態故に社員の高齢化は製造業より10歳ほど進んでいました。

このため、毎年度、数理人から報告される「代行に要す掛金率」が免除保険料率を大幅に上回っていました。(平均年齢のみをここでは抽出しているが、他にも脱退率、昇給率等の数値が保険料計算には用いられる)

つまり、代行型を維持するために運輸業の事業主は高負担を強いられていたのです。<全基金一律の免除保険料率適用>下の代行型は、運輸業等の社員の平均年齢の高い業態では全基金一律故にハイコストが組み込まれていたのです。

逆に、大企業の製造業等にはロ-コストが制度化されており、大企業優遇、強いて言えば中小企業からの収奪がセットされていたのです。

この間のABC基金の不足免除保険料率は▲1.6‰から▲5.3‰程度で、年間保険料にすると、▲11百万円から▲45百万円(ABC基金の年間掛金の3%から10%に相当)の不足が内在していました。

ABC基金では、代行型(給付乗率11.4/1000、内、事業主の上乗せ給付乗率は1.4/1000)の給付を維持するため、設立から加算型へ移行するまでの19年間に掛金総額44億66百万円の内、免除料率不足に伴う給付維持総額11億21百万円を事業主は基金に払い込んでいました。この給付維持額11億21百万円の年平均額は62百万円となり、この間の年間掛金平均2億48百万円の<25%>に相当します。

つまり、代行型基金の法人維持のため、厚生省は<25%>の負担増を強いていたことになります。

ということは、代行型給付を維持するためのコストとして事業主は基金掛金の<4分の1>(免除不足料率3.78/1000と本来負担料率7.22/1000の全体掛金率43/1000に占める率)を負担せざるを得ない状態になっていたのです。

この<4分の1>の絶対値としての大小は計り難いのですが、せめて10%以下であれば経済値として許容値足りえるのに免除料率不足に伴う給付維持額としては過大に過ぎないでありましょうか。

この点と、先の全基金一律方式のまやかし等を考えると



代行型はハイコストが仕組まれている!



と、結論付けては間違いはないでしょう。(中にはロ-コストの基金もありますが。)

これに対してハイコストを避けたいのであれば、社員の平均年齢の引き下げに努力されたい」というのが、従来の官僚行政のテクニックである。

かと言って、業態故の社員の高齢化を改善する等ということは一企業にとって至難の業です。そうかと言っても、ハイコストを負担する方はそれでは済まされません。

一方で、連合会を通じての厚生省への「要望」という手法での個別免除料率導入への道は前途の展望が開けない状況にありました。このような状況で、ここにニッチはないですかと研究するのが、民間の活力ということでしょう。

さて、代行給付維持の観点を離れて、<全基金一律免除料率適用>に対する行政手法のまやかしを問う観点から免除不足による事業主の<超過負担額>を推定してみましょう。

ABC基金では、これを問うことにより代行型から加算型へ移行することを成し遂げたのです。

行政手法のまやかしとは言いますが、現今の日本の年金は「平均的に62.5歳支給開始」が一般的であるとの行政の決め事がたまたまABC基金の現実は99%が「60歳支給開始」である故に生じる言い方ではあります。62.5歳という一点豪華主義行政と60歳の現実の相違により、そこに統計数値の平均化によりまやかしが現象することになります。

<全基金一律免除料率適用>が続いたABC基金の26年間の掛金総額84億5百万円の内、8億81百万円(10.5%)が免除料率の不足による超過負担額です。




受講日数19日、研修費用22万円。

厚生年金基金連合会:平成9年度新任常務理事研修




神奈川県藤沢市は七月に普通会計について全国で始めて民間企業式の決算報告を
公表します。
従来の資金収支の計算書は税収や借金が歳入に、項目別の支出が歳出に並ぶだけ。
これだけでは資金が社会資本などの蓄積にどれだけ役立ったかは判断しにくい。そ
こで藤沢市は複式簿記を導入、企業の貸借対照表と損益計算書に当たる報告書をつ
くる。

平成9年6月10日日本経済新聞朝刊:
「2000年からの警鐘」長州の複式簿記-「経営」学び官も変革





最新の画像もっと見る

コメントを投稿