素材抜粋
隠された官の聖域
北沢 栄著『公益法人』ー隠された官の聖域
岩波新書
それ(民法第34条公益法人の設立)は「公益」の定義がないことである。設立許可権限を持つ主務官庁が「公益性のある非営利事業である」と判断して認定さえすれば許可できるわけである。肝心の「どういう事業が公益性があるのか」を判定する「公益」の定義はないから、結局、客観的な基準によってでなく、主務官庁の官僚の裁量次第で、「公益事業かどうか」が決まってしまうわけである。
国際的にみてベラボウに高い日本の物価高の要因の一つは、こういう「見えない政府」が作り上げている仕組みによるものだ。
局長通達は、局長の一存で主務大臣をも素通りして出せる。法的根拠はなく、不透明きわまりない行政の支配ツールだ。日本の行政で透明なのは、法律(議会が決める)、政令(閣議で決める)、省令(大臣が決める)、告示(大臣が決める)まで。……・。ところが、官僚は「通達」を勝手に出して、自分たちの利益に利用できる。
そこで、官庁はあることを決め、広く世に知らせようと考えるなら告示することになる。なるほど告示は形式的には大臣の名で出されるが、事務局が発案し大臣に代行して大臣のハンコを事務方が押せば、それで一件落着だからである。実態は、官僚が自分の裁量で必要に応じて難なく出せるのである。
「非公開の金融情報」を限定した企業に提供する、とのうたい文句で会員に誘い、会員の金融機関から1社当たりなんと年間300万円もの寄付金を会費として納めさせてきた。このような超高額の寄付金を要求できたのも、同基金(大蔵省の社団法人「研究情報基金」)が監督権を持つ大蔵省によってつくられ、歴代大蔵トップが天下る法人だったためだ。
会員の三分の二を占める銀行・証券・保険など金融機関側は、大蔵省の機嫌を損ねないよう、泣く泣く会員になって高すぎる寄付金も納め、なかには同社団に協力するため社員を研究目的などとして、給与は自己負担で派遣した銀行もあった。
結果、公益性の定義がないため、設立権限を握る主務官庁は、自分たちの裁量で公益性の有無を考え、公益法人の設立を許可することができる。
公益法人ならぬ官僚の利益のための「官益法人」が数多く生み出された背景には、こうした制度的欠陥があった。
17世紀以来の伝統を持つ英国のチャリティ委員会が重要なモデルとなる。
当時(17世紀英国)、協会の権威の没落を穴埋めするように、民間のボランティア協会が誕生している。旧教徒(カトリック)の責任に、新教徒(プロテスタント)と市民の責任がとって代わりつつあったといわれる。
このような定義から出発した英国のチャリティ活動をモデルに、現状の問題多い主務官庁制を柱とする公益法人制度に代わる日本版チャリティ委員会を考案すべきである。
英国チャリティ委員会のホームページ
http://www.charity-commission.gov.uk/ccfacts.htm
北沢 栄のホームページ
http://www.the-naguri.com/
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【投稿者コメント】官僚を監視するてだて!
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「素材抜粋」をお読みいただき、まことにありがとうございました。
本日で終わりです。
コメント等いただけましたら、うれしいです!
隠された官の聖域
北沢 栄著『公益法人』ー隠された官の聖域
岩波新書
それ(民法第34条公益法人の設立)は「公益」の定義がないことである。設立許可権限を持つ主務官庁が「公益性のある非営利事業である」と判断して認定さえすれば許可できるわけである。肝心の「どういう事業が公益性があるのか」を判定する「公益」の定義はないから、結局、客観的な基準によってでなく、主務官庁の官僚の裁量次第で、「公益事業かどうか」が決まってしまうわけである。
国際的にみてベラボウに高い日本の物価高の要因の一つは、こういう「見えない政府」が作り上げている仕組みによるものだ。
局長通達は、局長の一存で主務大臣をも素通りして出せる。法的根拠はなく、不透明きわまりない行政の支配ツールだ。日本の行政で透明なのは、法律(議会が決める)、政令(閣議で決める)、省令(大臣が決める)、告示(大臣が決める)まで。……・。ところが、官僚は「通達」を勝手に出して、自分たちの利益に利用できる。
そこで、官庁はあることを決め、広く世に知らせようと考えるなら告示することになる。なるほど告示は形式的には大臣の名で出されるが、事務局が発案し大臣に代行して大臣のハンコを事務方が押せば、それで一件落着だからである。実態は、官僚が自分の裁量で必要に応じて難なく出せるのである。
「非公開の金融情報」を限定した企業に提供する、とのうたい文句で会員に誘い、会員の金融機関から1社当たりなんと年間300万円もの寄付金を会費として納めさせてきた。このような超高額の寄付金を要求できたのも、同基金(大蔵省の社団法人「研究情報基金」)が監督権を持つ大蔵省によってつくられ、歴代大蔵トップが天下る法人だったためだ。
会員の三分の二を占める銀行・証券・保険など金融機関側は、大蔵省の機嫌を損ねないよう、泣く泣く会員になって高すぎる寄付金も納め、なかには同社団に協力するため社員を研究目的などとして、給与は自己負担で派遣した銀行もあった。
結果、公益性の定義がないため、設立権限を握る主務官庁は、自分たちの裁量で公益性の有無を考え、公益法人の設立を許可することができる。
公益法人ならぬ官僚の利益のための「官益法人」が数多く生み出された背景には、こうした制度的欠陥があった。
17世紀以来の伝統を持つ英国のチャリティ委員会が重要なモデルとなる。
当時(17世紀英国)、協会の権威の没落を穴埋めするように、民間のボランティア協会が誕生している。旧教徒(カトリック)の責任に、新教徒(プロテスタント)と市民の責任がとって代わりつつあったといわれる。
このような定義から出発した英国のチャリティ活動をモデルに、現状の問題多い主務官庁制を柱とする公益法人制度に代わる日本版チャリティ委員会を考案すべきである。
英国チャリティ委員会のホームページ
http://www.charity-commission.gov.uk/ccfacts.htm
北沢 栄のホームページ
http://www.the-naguri.com/
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