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「厚生年金基金事務長奮闘記」改訂版上下をパブーにアップ

2012年11月12日 | 厚生年金基金




あらまし 

戦後日本経済の復興と興隆を懐古趣味で振り返るのはマイナス思考の極みであり、日本経済の「失われた10年」とか、「20年」と言われるときに必須のことはそれをリアリズムに徹して見据えることであろうと考えるのは一般常識でありましょう。
戦後日本経済の数あるスキームのなかでも一時的にもっとも機能した年金制度、特に厚生年金基金制度については、いっとき1800余基金、資産規模60兆円、加入者1200万人にも達しましたが、ほとんどの基金の代行返上・解散を招き、残るのは辞めるに辞められない総合基金ばかりになってしまいました。つまり、いまや厚生年金基金制度は歴史的使命を果たし終えて、官僚の敗残の記念碑となりおおせてしまっております。
もはや、三種の神器も右肩上がり経済もありえず、あるのは少子高齢化とグローバリズムという現実の中で、いかに生き抜くかということになってきました。日本の年金制度の見直しはをどう展開したらよいのでしょう。それには、この厚生年金基金制度の実態はどのようなものであったのかをリアリスティックに見据えることが不可欠でしょう。それを、基金事務所のドメスティックな現場に視点を定めて、以下の5章で明らかにしてまいります。

第1章 ブレイクスルーな事態
 この章は筆者の講演録です。はじめに年金に関わった筆者の自己紹介をして、基金業務の幾つかの改善をしている最中に、改善に改善を重ねても動的現実に対処できないでいるとき、ブレイクスルーな思考方法に巡り合いました。
基金の資産運用が日本の金融システム、ノウハウの従来手法では機能不全をきたしているが、その原因は官僚による統制計画経済によりスポイルされた国民の総サラリーマン化であろうと考えられます。グローバル経済の下でサラリーマンでは太刀打ちできないと論じます。

第2章 厚生年金基金とは?
 厚生年金基金制度の仕組みは、その年金給付の仕方に特徴があります。それは国の厚生年金の一部を基金から支払うという世界にも稀な奇怪な姿をしています。

第3章 経営資源の有機的連結
 厚生年金法を始めとする政令・省令・告示・通知等の大枠に伴う行政サイドの規制と行政指導、それに基金を取り巻く日本経済の保守的環境の中で、小さな基金事務所の自主性確保の切磋琢磨な試行錯誤の一端を「経営資源の有機的連結」と題して述べます。
つまり、基金事務所のドメスティックな現場の奮闘をお話して、基金事務所の自主性獲得の様子をお読みいただきます。

第4章 フレームワークの刷新
厚生年金基金制度のフレームワーク(給付建て年金・設立形態・給付形態・業務委託形態等々)はシンクタンクとしての金融機関(信託銀行と生命保険会社)が主導して法律化された経緯があります。
その法律により、企業は厚生年金基金の設立認可申請を大臣宛にし、認可された後、人を派遣して事務所運営を行います。当初、機材搬入はありません。商店街にある不動産屋の店舗みたいなものです。机二つに椅子が二つで事足ります。
店開きしてみれば、所与のものとしてフレームワークが与えられており、年金給付は他に選択肢のない「給付建て年金」(確定給付年金)、設立形態は単独、連合、総合の選択肢があり、・給付形態は代行型と加算型、業務委託形態はⅡ型とⅠB型とⅠA型の選択肢があります。当初、一般的には単独、代行、Ⅱ型で設立されました。
このフレームワークは選択肢があるものについても継続的に維持されるばかりで、これを刷新しよう、改善しようという気運は基金事務所には起きませんでした。といいますのも、基金を取り巻く環境も基金事務所も保守的な姿勢が支配しており、自主性などという観念は革命的なもののように忌み嫌われたのが実態です。
そういう保守的土壌において、小さな基金事務所で単独設立を連合設立へ、代行型を加算型へ、そしてⅡ型をⅠA型へ移行し、フレームワークの刷新を図った事例をお読みください。

第5章 資産運用の立ち上げ
厚生年金基金は一般的に、貸借対照表の借方の資産を守り、貸方の債務を果たすことで、加入員等の老後生活を保障することを設立趣旨としています。つまり、資産の保全と債務の遂行のために基金は掛金を徴収し、年金を支払うことになります。これを全うするために、受給権を保護し、受託者責任を果たさなければなりません。このことは、基金は常に資産と債務のバランスを視野に入れた〈最良執行〉を求められているということになります。基金は〈最良執行〉を達成し、事業主と加入員等にローコスト・ハイリターンの老後生活保障を提供することになります。
これを達成するために基金事務所ではミクロの積み上げが重要になってきます。とは言え、ミクロを単発で個々バラバラに行っていては基金の顔が見えて来ないことになりますし、そういう基金の多いことも実態ではあります。そこで、重要になってくるのが「経営指針」に基づく資源の集中化・集約化、経営資源の有機的連結による資本のシナジー効果を高めることであります。具体的には、〈資産運用〉を中心にして衛星的に〈給付改善〉と〈福祉事業〉と〈広報事業〉を配置し、これらの有機的連結によってローコスト・ハイリターンの老後生活保障を実現することになります。
それでは、厚生年金基金事業の有機的連結の中心になる〈資産運用〉はどのように立ち上がり、どのように展開し、どのような成果をもたらしたのでしょう。
その事例をご案内いたします。昭和44年設立当初、ABC厚生年金基金の基金事務はソロバンで行われていました。筆者着任後、電卓をいれパソコンを設置して、業務委託形態もⅠA型にして自前で事務処理ができる体制を築きました。福祉施設事業も利差益を使って、弔慰金、OB会のパーティ運営、年金ライフプランセミナー開催、年金受給者の大型観光バス3台を連ねて一泊旅行も10年ほど行いました。
資産運用については、電気科・哲学科出身の筆者には畑違いも最たるもので、何の予備知識もありませんでした。又、会社にも事務所にもそのような経験を持っている人は誰も居ませんでした。
そのような背景の中、金融本の読書から始めました。また、筆者が移動アンテナになって、先行する基金に教えを請い、金融機関等のセミナーにも通い、数多くの研究会にも参加しました。そうして得た金融知識を事務所に反映し、業務に展開しました。
そうした成果が、戦略アセット・ミックスであり、資産運用機関の勝手格付けとなりました。
しかし、平成時代へ移行した頃、日本経済の凋落と共に厚生年金基金の積立金不足が明らかになり、厚生年金基金は未曾有な事態を迎えました。〈給付削減〉、〈資産運用効率化〉、〈基金解散〉が当面の緊急課題となりました。

こうして資産規模60兆円、1200万人が関わった厚生年金基金という一大ページェントが幕を下ろそうとしています。


                   
 平成24年8月改訂




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