異文化交流クイズ、サードシーズン「異文化間に芽生えた愛情とすれ違い」第3回の問題は、龍吉がジニーと会えない日に夢中になっていた、現代の我々ならば理科の授業で一度は使ったことがある「器具」とは一体何だったでしょうか? という問題でした。
『今夜は何をしているのですか? 顕微鏡を覗き込んでいるのかしら? それとも実験の準備で蝿の頭をちょん切るのに忙しいのかしら? ねえリオ、良心が重荷を背負っているのに、どうして安らかに眠ることができまして? 死んだ蝿の霊が夜中、自分に取り憑いたりしないかと怖くなったりしませんか? 冗談ではなく、可哀想な蝿に心から同情しますわ』
と云うことで、今回の正解は・・・『顕微鏡』でした。
しかし「顕微鏡を見るのが、最近の趣味です」と恋人に書き送ってみせる龍吉の神経というのは、意外と図太いのか、それとも既に鬱が入ってきていたのか、微妙な所があります。
さて、話を本筋に戻しまして。
当初の予定より一ヶ月早く、龍吉が「横浜丸」で6月には帰国するということで、ジニーは慌てて勤務先から一週間の休みを貰い、二人は半年ぶりの再会を果たします。
この日を忘れない為に二人は互いの写真を撮ったようですが……手紙はかなりの数が保存されているにもかかわらず、ジニーの写真だけは龍吉の遺品の中からただの一枚も発見されていません。
二人が最後にあった翌日、横浜丸はドックを出航し倫敦に向かいました。ジニーは埠頭に立ち、龍吉を見送ります。
『ああ、愛しい貴方。貴方がそんなに遠くにいるのかと思うと、とても寂しくなります。でも夕方になって静かに貴方のことを考える時間が出来た時、私は神様に貴方を祝福して下さるように、貴方を導いて下さるようにお願いするのです。すると、まるで私が貴方からさほど遠くないところにいるような気持ちになります。
もし嵐が来るようなものなら私は惨めな思いをするでしょう。だった私の「水平ラディー」は海にいるのですもの。貴方の航海が順調な天候に恵まれるよう心から希望します。貴方のために心を込めて祈っています。
私の愛しい人。私はいつまでもあなたのものです。』
そして龍吉が倫敦に向かった後も二人は結婚に向けての相談、東京や横浜の川田家への連絡先など打ち合わせを続けます。……その別れが永久のものなると気付かぬままに。
ジニーからの最後の手紙の末尾には次のように書き記されています。
『私を思い出して下さるものを何か差し上げようと考えたのですが、貴方は何でもお持ちのようなので何が良いのか分かりません。それに気の利いたものを作る時間もありませんでした。ですから小さな日課の聖句集を送ります。私のためにこれをいつも傍に置いて下さい。貴方への私の願いが全て叶えられたら、貴方はいつも幸せで祝福されることでしょう。
では、さようなら、貴方。そしてもう一度お休みなさい。私の心は、いつも貴方の許にあります。愛をこめて、ジニー』
・・・龍吉が帰国した後、ジニーから受け取った書簡はただの一通も残されていません。恐らく二人の結婚に強硬に反対した父、小一郎によって、龍吉の手に入る前に処分されたものだと考えられています。
次回、その後の二人の人生についてを。
『今夜は何をしているのですか? 顕微鏡を覗き込んでいるのかしら? それとも実験の準備で蝿の頭をちょん切るのに忙しいのかしら? ねえリオ、良心が重荷を背負っているのに、どうして安らかに眠ることができまして? 死んだ蝿の霊が夜中、自分に取り憑いたりしないかと怖くなったりしませんか? 冗談ではなく、可哀想な蝿に心から同情しますわ』
と云うことで、今回の正解は・・・『顕微鏡』でした。
しかし「顕微鏡を見るのが、最近の趣味です」と恋人に書き送ってみせる龍吉の神経というのは、意外と図太いのか、それとも既に鬱が入ってきていたのか、微妙な所があります。
さて、話を本筋に戻しまして。
当初の予定より一ヶ月早く、龍吉が「横浜丸」で6月には帰国するということで、ジニーは慌てて勤務先から一週間の休みを貰い、二人は半年ぶりの再会を果たします。
この日を忘れない為に二人は互いの写真を撮ったようですが……手紙はかなりの数が保存されているにもかかわらず、ジニーの写真だけは龍吉の遺品の中からただの一枚も発見されていません。
二人が最後にあった翌日、横浜丸はドックを出航し倫敦に向かいました。ジニーは埠頭に立ち、龍吉を見送ります。
『ああ、愛しい貴方。貴方がそんなに遠くにいるのかと思うと、とても寂しくなります。でも夕方になって静かに貴方のことを考える時間が出来た時、私は神様に貴方を祝福して下さるように、貴方を導いて下さるようにお願いするのです。すると、まるで私が貴方からさほど遠くないところにいるような気持ちになります。
もし嵐が来るようなものなら私は惨めな思いをするでしょう。だった私の「水平ラディー」は海にいるのですもの。貴方の航海が順調な天候に恵まれるよう心から希望します。貴方のために心を込めて祈っています。
私の愛しい人。私はいつまでもあなたのものです。』
そして龍吉が倫敦に向かった後も二人は結婚に向けての相談、東京や横浜の川田家への連絡先など打ち合わせを続けます。……その別れが永久のものなると気付かぬままに。
ジニーからの最後の手紙の末尾には次のように書き記されています。
『私を思い出して下さるものを何か差し上げようと考えたのですが、貴方は何でもお持ちのようなので何が良いのか分かりません。それに気の利いたものを作る時間もありませんでした。ですから小さな日課の聖句集を送ります。私のためにこれをいつも傍に置いて下さい。貴方への私の願いが全て叶えられたら、貴方はいつも幸せで祝福されることでしょう。
では、さようなら、貴方。そしてもう一度お休みなさい。私の心は、いつも貴方の許にあります。愛をこめて、ジニー』
・・・龍吉が帰国した後、ジニーから受け取った書簡はただの一通も残されていません。恐らく二人の結婚に強硬に反対した父、小一郎によって、龍吉の手に入る前に処分されたものだと考えられています。
次回、その後の二人の人生についてを。