ナガイクリニック院長ブログ!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

サイエンスの話 30 SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種による自然免疫抑制: G-quadruplexes、エクソソーム、およびMicroRNAの役割 1

2023-05-29 11:51:41 | 日記
Innate immune suppression by SARS-CoV-2 mRNA vaccinations: The role of G-quadruplexes, exosomes, and MicroRNAs
SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種による自然免疫抑制: G-quadruplexes、エクソソーム、およびMicroRNAの役割
Food Chem Toxicol. 2022 Jun; 164: 113008.
Published online 2022 Apr 15.  doi: 10.1016/j.fct.2022.113008

超長文のレビューなのでいくつかに分けて概説してみたいと思います。

まずは基本となる疫学的な見地から、政府のVAERSデータを利用して得られたデータを解析してみる。そこから関連ありとされるテーマ(症状)ごとに各論としてサイエンスによる裏付けのあるデータ(論文)を示して考察するという構成でなされています。
最初に用いたデータベースであるVAERSに関しての知っておくべき解釈から。

第15章
15. ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に関する留意点

FDAのワクチン有害事象報告システム(VAERS)は、不完全ではあるが、ワクチンの潜在的な有害反応 を特定するための貴重なリソースである。CDCとFDAの協力により設立されたVAERSは、
「米国で認可されたワクチンの安全性に問題がある可能性を検出するための全国規模の早期警告システム」です。
CDCによれば、
「ワクチンの安全性に問題がある可能性を示す可能性のある有害事象報告の異常または予期せぬパターンを検出するために特に有用」
である。

VAERSを用いる際の注意点のいくつかについて

CDCでさえ、VAERSに報告された有害事象は「実際の有害事象のごく一部」に過ぎないことを認めていますおり、報告書では、VAERSに報告されるワクチン関連の有害事象は全体の1%未満であると指摘されている。

VAERSのデータをはるかに高度に分析したところ、31倍もの過小報告の推定値を発表している。
この「過小報告」を正確に判断することは不可能であるが、VAERSデータが過小報告がに基づくものであるという点を非常に強く特徴づけている。

なので、紹介するデータは、そのような観点から理解してほしい。

・VAERSでmRNAワクチン接種の副作用を示す「シグナル」を探す際、VAERSへの報告がワクチン接種との因果関係を立証するものではない。
しかし、本論文で述べた因果関係の経路と、ワクチン接種と報告された副作用との強い時間的関連性によって、因果関係の可能性は強く示唆されている。つまり、mRNA注射に関連する副作用の60%近くが注射後48時間以内に起こっている。

またさらに、
VAERS データの解析に関して、
以下の2 つの重要な注意点を指摘する必要がある。
・第一は、VAERSは医療従事者だけでなく、一般からの報告も受け付けていることである。
一般市民は、症状を適切に評価し、VAERSに登録する価値があるかどうかを判断するのに必要なスキルを持ち合わせていない可能性がある。
・第二の注意点は、一般公開されることで、ワクチン接種反対派の活動家が、VAERS に虚偽の報告をして、副作用のリスクを誇張する可能性があることである。

ただし、
先に引用した死亡例の中間解析では、解析した報告の 67%で医療サービス従事者が VAERS 報告者であったことから、VAERS 報告の大部分は一般人ではなく医療関係者によって提出されていることが示唆されている。
ここで利用されているデータはすべて、オンラインリソースである 
に問い合わせることで得られたものである。

VAERS解析により明らかになった関連副作用についてーその方法論の解説

前提として、インフルエンザワクチンは、比較するのに適したものである。
mRNAワクチンのプロトコールでは2回の接種が必要であり、多くの人がブースターショットも受けるように説得されたことを考えると、COVID-19ワクチンの投与数が他のワクチンと比較して多いことは明らかである。
実際に、副反応が起こる可能性がインフルエンザワクチンと同様であれば、2021年の副反応の何パーセントがCOVID-19ワクチンに関連すると予想されるかを推定することができる。
CDCは、2021年に米国人口の52%がインフルエンザの予防接種を受けたと伝えています。USAFactsのウェブサイトでは、COVID-19ワクチンを1回、2回、3回接種した米国人口の割合を時間の関数として示している。

2021年12月30日の数字は、1回接種が73%、完全接種が62%、ブースト接種が21%であることを報告している。これは、COVID-19ワクチンの総投与数として、人口の156%に相当する。これは、インフルエンザ予防接種のちょうど3倍のCOVIDワクチン接種数に登る。
2021年からの米国限定VAERSデータについて、COVID-19ワクチンに関連する副作用の総数、インフルエンザワクチンに関連する総数、すべてのワクチンに関連する総数を簡単に求めることができる。

これらは次のようにして割り出す: 
COVID-19: 737,587人、FLU:9,124人、ALL: 792,935. まず、報告された事象の93%がCOVID-19ワクチンと関連していることが観察される。COVID-19の件数を削除し、インフルエンザの件数の3倍(COVID-19ワクチンは3倍の頻度で接種されているため)に置き換えると、COVID-19は全イベントの32.6%を占めるはずであり、93%という実際の結果と比較することができます。
また、COVID-19が他のワクチンと比較して93%以上の頻度で現れる事象は、これらのワクチンの潜在的な毒性作用として特に重要であると結論づけることができる。
最後に、COVID-19ワクチンの副反応がインフルエンザワクチンと同程度であった場合に予想される報告数の27倍もあることがわかる。

VAERS解析結果

・2022年2月3日までの31年間のVAERSの歴史の中で、何らかのワクチンに関連して「症状」として報告された死亡例は合計10,321件で、そのうち8,241件(80%)がCOVID-19ワクチンに関連していた。

・重要なことは、2021年6月時点でCOVID-19のVAERS報告による死亡のうち、ワクチン接種が原因として除外できたのはわずか14%だった(McLachlan et al.、2021)。このことは、これらの前例のないワクチンが、より伝統的なワクチンに見られるものをはるかに超える、異常な毒性メカニズムを示すことを強く示唆しています。

COVID-19ワクチンに関連する有害事象の重要性を特徴づける合理的な方法は、2021年に受けた事象に焦点を当て、COVID-19ワクチンに関連する事象の「SYMPTOM」フィールドのカウントを、同じ年のすべてのワクチンの同じ症状の総カウントと比較することであると判断した。

・合計すると、2021年にVAERSで報告されたCOVID-19ワクチンに関連する事象は737,689件で、同年にあらゆるワクチンで報告された総症例の93%に相当するという衝撃的な結果が出た。COVID-19ワクチンの中にはmRNA技術ではなくDNAベクター技術に基づくものもあると認識していますが、このクラス(つまりジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン)はCOVID-19報告の9%未満であり、その反応プロファイルは他のすべてのワクチンよりもmRNAワクチンのそれにはるかに似ていることは確かです。

・COVID-19注射の有害事象報告の総数は、Rose(2021)が示すように、過去のすべての年の年間ワクチン有害事象報告の累積数を合わせた数よりはるかに多い。


癌に関する VAERS シグナル

・VAERSから得られたがんとの相関に関する結果について

さて、そのVAERSデータ解析から強い相関ありと判断された症状の中から今回はがんに関するパート。

背景

がんは、一般に、細胞内の最初の悪性化から臨床的に認識される病態の発現まで、数ヶ月、あるいはより一般的には数年かけて進行すると理解されている疾患である。有害事象のVAERS報告は、主にワクチン接種後の最初の1ヶ月、あるいは最初の数日間に起きているため(Rose, 2021)、ワクチン後のがんの進行の加速は、認識しにくいシグナルである可能性が高いと思われる。
さらに、多くの人は、ワクチンが原因で起こりうる有害事象としてがんを想定していないため、ワクチン接種後すぐにがんが発生しても、報告に入れない。

VAERS 解析結果

VAERSにおけるがんリスク増加の証拠の分析では、2つのやや異なるアプローチに焦点を当てた。

一つは、Table 6 の結果に代表されるように、明らかにがんに関連するキーワード、すなわち「がん」、「リンパ腫」、「白血病」、「転移」、「がん腫」、「新生物」を含むすべての用語を収集した。その結果、これらのキーワードをCOVID-19ワクチンに関連付ける項目が1,474件見つかった。これは、すなわちその年のあらゆるワクチンに関するこれらのキーワードの項目の96%がCOVID-19ワクチンに関連しているということがわかった。

Table 6
Number of symptoms reported in VAERS, restricted to the US population, for the year 2021, for various cancer-related terms, showing total counts for COVID-19 vaccines and for all vaccines.

さらに、特定の臓器、すなわち乳房、前立腺、膀胱、大腸、脳、肺、膵臓、卵巣のがんを検索したところ、 Table 7に示すような結果になった。いずれも数は少ないが、圧倒的に多いのは乳がん(246件)で、2番目に多い肺がんの4倍近い件数がヒットしている。膵臓がん、卵巣がん、膀胱がんはすべてCOVID-19ワクチンとの関連で、他のワクチンは0件でした。全部で534件のCOVID-19ワクチンと関連する特定臓器のがんを集計したところ、2021年のあらゆるワクチンの全症例の97.3%に相当した。

Table 7
Number of symptoms reported in VAERS, restricted to the US population, for the year 2021, for cancer of specific organs, showing total counts for COVID-19 vaccines and for all vaccines.

がんの背景となりうる科学的なメカニズムについてのこれまでに報告されている基礎データを含む各種論文と考察

第8章 DNA修復の障害と適応免疫
8. Impaired DNA repair and adaptive immunity

免疫系とDNA修復系は、高等生物が多様な脅威から身を守るために頼る2つの主要なシステムであり、両者には共通する要素がある。

主要なDNA修復タンパク質の機能喪失は、修復の欠陥につながり、機能的なB細胞やT細胞の産生を阻害し、免疫不全をもたらす。非相同末端結合(NHEJ)修復は、リンパ球特異的なV(D)J組換えに重要な役割を果たし、抗原曝露に応答してB細胞抗体の非常に多様なレパートリーを産生するために不可欠である。DNA修復の障害もまた、がんへの直接的な経路である。

2021年に発表された論文では、ウイルスの弱毒化バージョンに基づくCOVID-19ワクチンの初回注射の前と28日後に患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)の単細胞でのmRNAシーケンシング解析を実施し、患者のコホートにおける免疫機能に関連するいくつかのパラメータをモニタリングした。ここで用いられたワクチンはmRNAワクチンとは異なり、スパイクタンパク質の成分が、ワクチンを三角筋に注射し、粘膜や血管のバリアを迂回することで機能するものである。著者らは、多くの異なる免疫細胞タイプにおいて、ワクチン接種後に一貫して遺伝子発現が変化することを発見した。観察されたNF-κBシグナルの増加とI型IFN応答の減少は、生物学的アッセイによってさらに確認された。他の研究と一致して、STAT2とIRF7はワクチン接種28日後に有意にダウンレギュレート(抑制性制御)され、I型IFN応答が損なわれていることを示唆することがわかった。
彼らは次のように書いています。
”これらのデータを総合すると、ワクチン接種後、少なくとも28日目までに、中和抗体の生成以外に、リンパ球や単球を含む人々の免疫系が、おそらくより脆弱な状態にあることが示唆された。” (Liuら、2021年)。著者らは、DNAを修復する能力が損なわれていることを示唆する遺伝子発現の不穏な変化も確認した。

一般に成長中の細胞における総転写活性の最大60%は、リボソームRNA(rRNA)を生成するためのリボソームDNA(rDNA)の転写を伴う。リボソームDNAをRNAに転写する酵素は、RNAポリメラーゼI(Pol I)である。Pol Iはまた、rDNAの完全性を監視し、細胞の生存に影響を与える。転写中、RNAポリメラーゼ(RNAP)はDNAを積極的にスキャンして、損傷部位(二本鎖切断)を見つけ、その修復を誘発する。成長中の真核細胞では、ほとんどの転写がPol IによるリボソームRNAの合成を伴うため、Pol IはDNA損傷後の生存を促進する。
Liuら(2021)が同定したダウンレギュレーション遺伝子の多くは、細胞周期、テロメア維持、POL Iのプロモーター活性と転写の両方に関連しており、DNA修復プロセスが損なわれていることを示唆した。

抑制された遺伝子の1つは、
CENPA(セントロメアプロテインA)であり、
新しく合成されたCENPAを含むヌクレオソームのセントロメアへの沈着 を誘導し結果として細胞周期のテロフェイズ後期/G1前期での停止を誘導した。

このことから、不活化SARS-CoV-2ワクチンに対する反応の特徴として、G1期での細胞周期の停止が指摘された。多能性胚幹細胞がG1期(複製開始前)で停止すると、自己再生と多能性の維持が損なわれることになることは以前から知られている。

それから修復に関連して、すでに教科書的な知見として、DNA修復と適応免疫に大きく関わる2つのチェックポイントタンパク質は、BRCA1と53BP1であり、2つの主要な修復プロセスである相同組換え(HR)と非相同末端結合※の両方を促進する。

(※ 非相同末端結合 non-homologous end joining  NHEJ、DNA二重鎖切断のDNA修復メカニズムの一つ。 DNA末端を直接繋ぎ合わせるため、相同組換えと異なり姉妹染色分体を必要とせず、すべての細胞周期内において機能する一方、DNA末端の接合部において変異が起こりやすい。)

Jiang and Meiらは2021年にヒト細胞を用いたin vitroの実験で、SARS-CoV-2全長スパイク糖タンパク質が核内に入り、二本鎖切断部位へのこれら2つの修復タンパク質(BRCA1と53BP1)の動員を妨げることを示した。

さらにもう一つのDNA修復阻害のメカニズムとしてマイクロRNA(miRNA)に関する論文がある。
MishraとBanerjeaは2021年にmRNAワクチンによるSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質合成後にヒト細胞から放出されたエクソソームで見つかった2つのマイクロRNAのうちの1つであるmiR-148が細胞周期のG1期においてHRをダウンレギュレートすることを示した。

SARS-CoV-2 スパイクタンパク質によるDNA修復機構の障害をin vitro研究で実証した実験は、ワクチンがDNA変異の速度を速め、がんリスクを増加させる可能性があるという説得力のある証拠となりうる。

私評

まず、疫学統計的なところは公的に公開されているVAERS解析で押さえた。それからいろんな事象に関する考察。
今回ピックアップしたのはがん。免疫低下による様々な障害、症状と関連するメカニズムに関しては以前にもADEや帯状疱疹、免疫寛容などで触れたようにかなり十分にデータが出てきているのでその低下・破綻による長期予後としての発がんの原因、あるいは背景としては留意すべきだと考えていたが、述べられているDNA修復のチェックポイントに働きかけるというのは真新しい。つまり、免疫低下後と共に、日々起きている私たちの体のDNA損傷→修復というメカニズムが損なわれている可能性が示唆された。ここに引用されているいくつかの論文でスパイクタンパク質との関連においてそのメカニズムをまとめると、
1細胞周期関連遺伝子、テロメア維持、POL I、CENPAのダウンレギュレーション
2がん抑制遺伝子BRCA1とp53 BP1の機能阻害
3マイクロRNAのうちの1つであるmiR-148 のエクソゾームへの放出
となる。
これらの因子のそうした動向は損傷したDNAの修復阻害する方向に働くことがすでによく知られている。
もちろん、これでDNA修復というミクロと細胞の異常増速というマクロ的な事象がすぐにリンクするか否かは現時点で明らかではないものの、今後症例や動物実験によって確認される可能性があるかもしれない。

カクテル 26

コロンブス Columbus

ゴールド・ラム 30 ml
アプリコットブランデー 15 ml
レモンジュース 15 ml
シェイクして注ぐ。

ゴールドラムはウイスキーのように樽で寝かせるので色味と風味があってその分ホワイトラムにはない若干の主張があります。
甘酸っぱくて単調にならないようにここはゴールドラムを合わせているのかな、と思います。結果、甘酸っぱい中に爽やかさがあります。
何の関連があるのかというとコロンブスは原料のサトウキビを西インド諸島に持ち込んであちらで栽培されるようになったとされており、そのおかげでラム酒ができこうして飲めるという話。
「だれかが最初にやらなきゃね」
と乗り越えたコロンブス。
そこが偉大、そして、サイエンスの世界にも相通じるところではないでしょうか。

Note;  冒険家に乾杯 !

All The Things You Are🎵
Harry Watters
</iframe>

サイエンスの話29 ヒトヘルペスウイルス6Bが感染潜伏期に視床下部-下垂体-副腎軸を活性化し、うつ病のリスクを大きく増加させる

2023-04-30 15:30:36 | 日記
サイエンスの話 ヒトヘルペスウイルス6Bが感染潜伏期に視床下部-下垂体-副腎軸を活性化し、うつ病のリスクを大きく増加させる

Human Herpesvirus 6B Greatly Increases Risk of Depression by Activating Hypothalamic-Pituitary -Adrenal Axis during Latent Phase of Infection

Published:May 21,2020DOI:


昔当直などしていると小児の突発性発疹をちょくちょく診ていました。
当時原因不明だが出方から原因不明のウイルス感染ではないかと考えられている、と説明していましたが、それがHHV6Bと後年判明するヒトヘルペスウイルス(6番目に発見されたヒトヘルペスウイルス Human herpesvirus 6)です。
なので、同じヘルペスウイルスの水疱瘡とかと同じように潜伏感染したりすることが知られています。

でもって、
この割と大人しくて新し目のウイルスがうつ病のリスクに関連しているのではないか、ということが趣旨ですが、これもやはり前回の帯状疱疹同様免疫低下というステップが関係してそうだという話です。

背景

最近の死後研究により、気分障害(大うつ病性障害、双極性障害[BPD])患者の小脳において、HHV-6BおよびHHV-6Bの近縁であるHHV-6Aが潜伏状態から再活性化し、生産性感染を起こしていたことが明らかになった。

HHV-6Bの潜伏部位は扁桃腺とアデノイドと推定されており、ウイルスは唾液中に活発に排出されることが示されている。
ウイルスは嗅覚経路に入り、HHV-6Bの他の潜伏部位である嗅球(OB)のアストロサイトに潜伏することが知られている。
元来嗅球は唾液中のウイルスが脳に侵入するのを防ぐ免疫器官でもある。
嗅球はHHV-6Bの潜伏部位であるだけでなく、唾液中のウイルスが脳に侵入するのを防ぐ免疫器官でもあることから、
嗅球、嗅球上皮におけるアストロサイトの状態がHHV-6Bの再活性化や脳内への侵入と強く関連している可能性がある。

一方で、うつ病患者では、OBの機能不全やその容積の減少が報告されている。

そこで、まず潜伏中にHHV-6Bがアストロサイトで生産する潜伏タンパク質を特定することを試みた。

結果

1 新規HHV-6B潜伏感染蛋白質SITH-1の同定

アストロサイト特異的なHHV-6B潜伏タンパク質を同定するために、HHV-6Bの近縁種であるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の潜伏タンパク質を参照した。
CLT ORF152(152個のアミノ酸からなるオープンリーディングフレームのタンパク質)は以前に(1996年)に同定されているサイトメガロウイルス潜伏転写産物と考えられている。こを用いて近縁のウイルスであるHHV-6Bのホモログを探した。
(性質の似たウイルスCMVからその知られている潜伏タンパク質に着眼した)

その結果、159個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする新しいHHV-6B潜伏期の転写産物を同定し、Small protein encoded by the Intermediate stage Transcript of HHV-6-1 (SITH-1) と名付けた(図1A、S1A~S1D)。

・このタンパク質はORF152とアミノ酸相同性(同一性20%、類似性74%)を有していた。

・SITH-1 mRNAは主にアストロサイト細胞株(U373とA172)で発現していた(図1B)。

・また、HHV-6B感染U373細胞では、SITH-1タンパク質が産生されていた(図1C)。

これらの性質から、
SITH-1は、今回探していた嗅覚アストロサイトのHHV-6B潜伏時に生成される潜伏タンパク質であると考えられた。

2 マウスの嗅覚アストロサイトにおけるSITH-1発現の影響

アストロサイトで特異的に発現するプロモーター(GFAP)の下流にSITH-1のオープンリーディングフレームを有するアデノウイルスベクター(SITH-Ad)を鼻腔内接種し、モデルマウス(SITH-1マウス)を作成した。

SITH-1マウスでは、嗅覚アストロサイトの一種である嗅覚鞘細胞(OEC)でSITH-1が産生され(図S2A)、嗅球でアポトーシスが起こった(図1D~1F)。嗅球でのアポトーシスは、主にアストロサイトで起こった(図S2B-S2D)。

(嗅球でのアポトーシス、細胞死による障害ははうつ病で観察されることが知られているー以下)

3 うつ病との関連

嗅球の障害はうつ病との関連が報告されているためSITH-1マウスを尾懸垂試験(TST)に供し、うつ症状を呈するかどうかを確認し結果、うつ病様行動を示す不動時間の増加が認められ、抗うつ薬(SSRI)により抑制された(図1G)。

このことから、SITH-1マウスは鬱症状を呈していることが示唆された。

マウスをケージに傾けて軽いストレスを与えると、うつ病の症状であるスクロースプレファレンスの低下がみられ(図2A)、さらにストレス応答の主要構成要素である視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸が強化されたことが示された(図2Bおよび2C)。また、HPA軸の活性化によって誘導されるうつ病に必須と考えられるRegulated in development and DNA damage response 1 (REDD1) の発現が増加した(図2D)。副腎における副腎皮質ホルモン産生の律速因子であるSteroidogenic acute regulatory protein (StAR) も発現が上昇した(図2E)。

(うつ状態の評価方法)

抗うつ 薬開発における動物モデルのうつ状態 の評価方法として標準的なもので最も 信頼度が高い強制水泳テストおよび Sucrose preferenceテストを用いた。

・強 制水泳テストは情動ストレスにより誘 発されるうつ状態であり,1日目に15 分間強制水泳をさせ,24時間後に6分 間泳がせ,後半4分間の無動時間を測 定る。

・Sucrose preference テストはbasalのう つ状態を示し,ヒトのうつ病で認めら れる無欲状態を反映する8).このテス トでは3%ショ糖溶液に対する嗜好性 を評価し,嗜好性の低下がうつ状態を 反映する.

4 SITH-1の機能

ツーハイブリッドスクリーニングにより、SITH-1と結合するタンパク質としてヒトのカルシウム調節シクロフィリンリガンド(CAML)が同定された(図3A)。

CAMLは、細胞内へのカルシウムの流入を促進することが分かっており、SITH-1を発現させたU373細胞では、細胞外カルシウムの存在下で、細胞内カルシウム濃度の上昇が見られた(図3C、図3D)。

これらのことから、
SITH-1とCAMLの複合体は、細胞外カルシウムの細胞内への流入を誘導する性質を有すると考えられた。

・カルシウムの細胞内への流入とアポトーシスとの関連

嗅覚系上皮細胞(OEC)におけるカルシウム濃度の上昇は、ATPとグルタミン酸の放出を介した嗅球の異所性神経血管結合を引き起こし、脳血管狭窄を引き起こすことが知られている。そこで、嗅球のアポトーシスを誘導するか否かを調べたところ、SITH-1とCAMLの複合体によるOECへの細胞外カルシウム流入の促進により嗅球のアポトーシスを誘導することがわかった。

考察

SITH-1を嗅覚性アストロサイトに発現させたマウスモデルでの知見から、CAMLとの結合により細胞へのカルシウム流入を促進し、OBのアポトーシスを促進することが示唆された。うつ病患者ではマウスモデルと同様のSITH-1発現によるOBアポトーシスが起きていることが考えられると考えられる。
また死後の研究では、うつ病患者の小脳でHHV-6Bが増殖していることが報告されており合致する。

本研究は、非腫瘍性疾患におけるヘルペスウイルス潜伏タンパク質の影響を実証した最初の研究である。HHV-6Bと同様に、他の非腫瘍性ヘルペスウイルスも潜伏タンパク質を発現している、または発現している可能性が高いため、我々の方法は他のヘルペスウイルスの疾患リスクに関する研究にも応用できると考えられる。




私評

ヘルペスウイルスHHVB6のもたらす潜伏タンパク質を発見しその機能に調べたところうつ病の原因となりうるということがわかったという内容です。
前回の帯状疱疹に続き、潜伏している(大勢の人が感染後体内にずっと無症状のままウイルスを持っているという意、水痘ウイルスなど)が免疫低下により再活性化されてそれが今回はうつ病というsimulateしにくい病態をマウスで上手く再現されており、うつ病の一つのメカニズムとして注目される(これを読むまで嗅球の障害はうつ病との関連しているなど全然知らなかった)。注射から免疫低下、そしてHHVB6の活性化、うつ病といわば3次災害的な発症というルート。
まさに現象には理由があって、しかもこうして繋がっていくと公式のようにとっても科学的だ。



カクテル 25

バーテンダー Bartender

ジン 20ml
ドライベルモット 20ml
デュボネ 20ml
グランマルニエ(なかったのでコアントローのオレンジリキュールで代用)1 dash

ミックス、ステアし、グラスに注ぐ。

今度バーに行ったらこれを一言
「バーテンダー」
とオーダーしてみたいように思っています。
相手の思考における高次構造は一瞬乱されるか、、、緊張感。
その後、どう返してくるか。
結果仲良くなれるに違いない。

Note; 甘くて美味しいがアルコールが濃いのでゆっくりと飲むのが吉。

I'll Remember April (四月の思い出)
Hank Jones Great Jazz Trio

 

サイエンスの話 28 Herpes Zoster and Subsequent Cancer Risk 帯状ヘルペス感染とがんのリスク

2023-03-28 13:01:49 | 日記
その昔皮膚科の教科書に書いてあったことがとても印象的だったは、
「帯状疱疹を観たら特に高齢者では背景に癌が隠れていることがあるので皮膚病変が回復したら検査を進めるように」
とありました。
確かに帯状疱疹は派手な皮膚病状を示すので比較的わかりやすい病態で、特効薬のおかげでほとんどが跡形もなく治癒します。ただし、問題の深淵は背景にある免疫低下ですと説明します。

さて、
実際に検診やらCTやらMRIやら勧めて調べてみてもこれまで何も見つかった試しがない。そこのところがちょっとモヤモヤする。

それで、今回の論文は帯状疱疹後の患者さんのがんをやや長期間フォローしたというもの。コロナの前に出たものです。

Letter
Herpes Zoster and Subsequent Cancer Risk
Dermatology 2020;236:603–604


背景
疫学的研究により、がん患者が帯状疱疹を発症するリスクがあることが示されているが、帯状疱疹とその後のがんリスクとの間に一貫した関連性は示されていない。

方法
この問題を別の集団で検証するため、台湾に住む2300万人の住民を対象に、台湾国民健康保険制度の2003年から2012年のデータベースを用いて予備的な全国コホート研究を試みた。帯状疱疹群には新たに帯状疱疹と診断された20~84歳の被験者17,624人、非帯状疱疹群には帯状疱疹を持たない性適合・年齢適合の無作為抽出被験者35,248人が含まれた。
以前に何らかの癌の既往がある被験者は研究から除外された。

結果

1 その後のがんの全体の発生率に関して、
帯状疱疹群では非帯状疱疹群より1.16倍有意に高かった。
(100人年当たり1.07対0.92、95%信頼区間[CI] 1.07-1.27;p = 0.001)(表1)

2 性・年齢で層別化したところ、帯状疱疹群の方が非帯状疱疹群よりも後発するがんの発生率が高かった。

3 両群とも年齢が上がるにつれて後続がんの発生率は上昇し、最も高かったのは65-84歳の帯状疱疹群(100人年当たり1.98人)だった。

4 帯状疱疹の診断から1年以内に発症する癌は、帯状疱疹でない群と比較して高かったが(100人年あたり14.09対12.47)、統計的有意差はなかった(95%CI 0.92-1.39; p =0.24)。

5 帯状疱疹の診断から1年後の後続がんの発生率は、帯状疱疹でない群と比較して統計的に高かった(100人年あたり0.89 vs. 0.77, 95% CI 1.06-1.27; p = 0.002)

考察

がんの診断に1年以上かかるということは、帯状疱疹を発症してからの期間が長いと考えられる。帯状疱疹ががんの発症リスクの上昇と関連することは、帯状疱疹が潜伏がんのマーカーになり得るかどうか。今後確認が必要である。


Herpes zoster and long-term vascular risk: a retrospective cohort study
Nature scientific reports
volume 13, Article number: 2364 (2023)796 Accesses
Published: 09 February 2023

こちらはとても新しい今年2月号の論文。

帯状疱疹と心臓血管および脳血管障害の主たる疾患系 Major Adverse Cardiac and Cerebrovascular Events (MACCE)リスクをこれまでにないほどの長期間(最大17年間)にわたりレトロスペクティブ・コホート研究によってその関連を解析した。

結果

・心臓血管および脳血管障害の主たる疾患系 Major Adverse Cardiac and Cerebrovascular Events (MACCE)のリスクは、追跡調査開始1年目にHZ感染者で19%高く、このリスクは発症後少なくとも平均追跡間隔の4.4年間維持された。
帯状疱疹群では54.4%(1970例)だったのに対し、非帯状疱疹群では74.2%(1774例)と19%高かった(P < 0.001)。

・このリスクは、帯状疱疹感染中の抗ウイルス剤投与による影響は受けなかった(P < 0.001)。

対象・方法

41,930人の患者を帯状疱疹あり、なしの各群20,965人に分類し、MACCEリスクを多変量Cox回帰分析によりにより調べた。

考察

(結果の大部分は統計の数字なので一部)
感染後早期の脳卒中および急性心筋梗塞のリスクは、帯状疱疹感染時に形成される抗カルジオリピンなどの血栓性自己免疫抗体、循環免疫複合体、全身炎症による凝固亢進状態に起因すると考えられている。


私評

最初の論文では、発がんとの関連に関しては、1年以内にすぐ調べてもダメ、1年後から、つまり、帯状疱疹後しばらく少し長くフォローする必要性があるということ。
一方で後者の内容、帯状疱疹で併発することが知られている、中でも脳卒中と急性心筋梗塞は、主に脳動脈と冠動脈の血管障害に起因する短期合併症であり、(MACCE)と総称される血管障害のリスクと相関している。
ただし、これも少なくとも4.4年間くらいの間気をつけておかなくては、というもの。

発がんとの関連については現時点では鶏が先か卵が先か(ウイルス感染とその宿主への直接的影響、免疫低下、発がん、血栓形成、凝固能亢進などの諸因子の相互関連)を含めよくわからないということですが、後者の論文の考察にある自己抗体との関連で言うならば、例えば皮膚筋炎のようなある種の自己免疫疾患、膠原病はがんと相関することが古くから知られている。もちろん、血栓形成や栓溶系の異常はがん細胞の進展や転移にも影響する因子であることも既知。
そこで、ちょっと意訳を込めていうならば、これまで漠然と免疫低下により発がんする(この場合には帯状疱疹の場合には再活性化がマーカーとして捉えられる)というよりも、4.4年間という期間はむしろ感染から、あるいは感染したことによってそうした因子が相互に作用し、変異へのストーリーが始まるという解釈もできるかもしれません。

カクテル 24

ザザ ZAZA

パリのル・グラン le grand で1900年代に考案されたカクテルで名前も印象的なザザ。元はアメリカで舞姫ザザとして映画化されているピエール・ベルトンとシャルル・シモンによるフランス語の物語の主人公の名前から由来します。
一方でザザといえばゴッドファーザーIIIの悪役を思い出します。3作目ともなると流石にダレるのにザザという設定が緊張感がmaxに。すごい演出でした。そして、終盤、実はもっと怖いのはロバの鳴き真似というくだりへの伏線も見事でした。

ドライジン45ml
デュボネ20ml
アンゴスチュラビターズ1dush
ステアして冷やしたグラスに注ぐ。



ちなみにエリザベス女王は昼食前にデュボネ1/3、ジン2/3にレモンスライスを添え氷を入れたカクテルを飲むことを楽しみにされていたとか。

Note;甘さの中に複雑なふくよかさが残る味も名前も印象的な一杯。

elisa🎶
serge gainsbourg


サイエンスの話 27 Pfizer BioNTech COVID-19 mRNA ワクチン BNT162b2 の in vitro ヒト肝細胞株における細胞内逆転写

2023-02-26 14:19:56 | 日記
Pfizer BioNTech COVID-19 mRNA ワクチン BNT162b2 の in vitro ヒト肝細胞株における細胞内逆転写
Intracellular Reverse Transcription of Pfizer BioNTech COVID-19 mRNA Vaccine BNT162b2 In Vitro in Human Liver Cell Line
Curr. Issues Mol. Biol. 2022, 44(3), 1115-1126; 
Published: 25 February 2022

背景

SARS-CoV-2ウイルス感染によりそのRNA分子が一部宿主ゲノムに組み込まれるという報告があり、対して、一方ではそれを否定する論文がいくつか出されている。

Reverse-transcribed SARS-CoV-2 RNA can integrate into the genome of cultured human cells and can be expressed in patient-derived tissues
PNAS May 6, 2021 118 (21) e2105968118

No evidence of SARS-CoV-2 reverse transcription and integration as the origin of chimeric transcripts in patient tissues
PNAS August 3, 2021 118 (33) e2109066118

Response to Parry et al.: Strong evidence for genomic integration of SARS-CoV-2 sequences and expression in patient tissues
PNAS August 3, 2021 118 (33) e2109497118

概要

命題はSARS-CoV-2ウイルスは宿主ゲノムに組み込まれるかから始まって
いるが、SARS-CoV-2ウイルスは逆転写酵素を持つレトロウイルスではないので現実的にさほど憂慮する問題ではなさそうなのだが、上記のような報告、議論もある。その視点でいえば、ワクチンとして投与されたmRNA Vaccine BNT162b2は同様に組み込まれたりすることがあるのか、という疑問がわいてくる。
vivo実際の体内での動向ではなく科学的に、あるいは理論的に可能なのか、という発想からまずvitroで実験系として肝臓ガンの培養細胞にmRNA Vaccine BNT162b2をコインキュベート(coincubate, 培養中に入れて一緒に培養)してみるとどうなるのか、すると結果として細胞の染色体に組み込まれたという論文。

実験

日本大阪から入手したよく知られる肝細胞癌株ヒト肝細胞株Huh7にBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer BioNTech, New York, NY, USA)を製造者のガイドラインに記載されているように、滅菌した0.9%塩化ナトリウム注射液、USPで最終濃度100 μg/mLに希釈し、それらの懸濁液を、0.5、1.0、または2.0μg/mLの最終濃度となるように細胞培養液中に添加した。
Huh7細胞を、BNT162b2と共に、またはBNT162b2なしで、6、24、および48時間インキュベートし、回収保存、あるいは染色等続けて実験に供しデータを採取した。

結果

1. BNT162b2はヒト肝細胞株Huh7細胞に高い効率で侵入する

回収した細胞を洗浄処理し、BNT162b2錠に設計されたアンプリコンを増幅するプライマー(図1の444bp)でRT-qPCRの結果、BNT162b2で処理したHuh7細胞は、6、24、および48時間で、ハウスキーピング遺伝子と比較して高レベルのBNT162b2 mRNAを示した(図2)。

BNT162b2 mRNAレベルは6時間と比較して24時間で著しく減少し、48時間で再び増加した。

ー細胞に高効率で取り込まれた。

2. ヒト内在性逆転写酵素Long Interspersed Nuclear Element-1 (LINE-1)に対するBNT162b2の影響

・LINE-1遺伝子の発現mRNAの発現量の測定

LINE-1遺伝子の発現に対するBNT162b2の影響を検討した。
BNT162b2 (0, 0.5, 1.0, 2.0 µg/mL) で6, 24, 48時間処理したHuh7細胞から精製したRNAについて、LINE-1を標的とするプライマーを用いてRT-qPCRを実施したところ、LINE-1の発現が増加した。2.0 µg/mL BNT162b2によって6時間後にコントロールと比較して有意に増加したLINE-1発現が観察されたが、より低いBNT162b2濃度はすべての時点でLINE-1発現を減少させた(図3)。

・BNT162b2がLINE-1タンパク質量発現量の測定

全長のLINE-1は、5′非翻訳領域(UTR)、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)、ORF1とORF2、3′UTRからなり、そのうちORF1はシャペロン活性を持つRNA結合タンパク質である。LINE-1のレトロトランスポジション活性は、ORF1の核への移行が関与していることが示されている[35]。BNT162b2(0.5, 1.0, 2.0 µg/mL)で6時間処理したまたは処理していないHuh7細胞を固定し、細胞核を可視化するためにLINE-1 ORF1pに結合する抗体、およびDNA特異的プローブHoechstで染色した(図4a)。免疫蛍光染色強度の定量化は、BNT162b2が、試験したすべての濃度において、細胞全体領域および核の両方においてLINE-1 ORF1pタンパク質レベルを増加させることを示した(図4b~d)。

3. Huh7細胞における逆翻訳されたBNT162b2 DNAの検出

LINE-1タンパク質の核内への侵入がレトロトランスポジションに関連することが以前の研究で示されている[35].上記の免疫蛍光染色実験では、核内のLINE-1レベルの増加は、BNT162b2の最低濃度(0.5 µg/mL)で既に観察された。LINE-1が上昇したときにBNT162b2がDNAに逆転写されるかどうかを調べるために、0.5 µg/mLのBNT162b2で6、24、48時間処理したHuh7細胞からゲノムDNAを精製した。精製DNAをRNase処理してRNAを除去し、図1に示すようにBNT162b2標的プライマーによるPCRに供した。増幅されたDNA断片は、電気泳動によって可視化され、ゲル精製された(図5)。BNT162b2のDNAアンプリコンは、3つのタイムポイント(6、24、48時間)すべてで検出された。サンガーシークエンスにより、このDNAアンプリコンがプライマーに挟まれたBNT162b2の配列と同一であることが確認された(表2)。DNAアンプリコンがBNT162b2 RNAではなくDNAに由来することを確認するために、0.5 µg/mL BNT162b2で6時間処理したHuh7細胞から精製したRNAについても、RNase処理ありまたはなしでPCRを行った(図5のCtrl 5および6)が、PCRにかけたRNA試料からはアンプリコン(増幅部分)が検出されなかった。

考察

肝臓がん細胞という特殊な環境であるが、BNT162b2は細胞内に大変効率よく取り込まれ、逆転写されたDNAをゲノム内に検出した。

ファイザー社の内部資料でもあるように、mRNAワクチンは,肝臓,脾臓,心臓,腎臓,肺,脳などのいくつかの器官にむしろ非特異的に分布し,肝臓での濃度は,筋肉内注射部位での濃度の約100倍であることが示されている。
ファイザーがEMAに提出したBNT162b2の評価報告書では、ラットの薬物動態分布試験で、総投与量の比較的大きな割合(最大18%)が肝臓に分布することが実証された。そこで、肝細胞を用いた実験では、0.5、1、2μg/mLのワクチンを使用することにした。しかし,より広い範囲の低濃度および高濃度のBNT162b2の効果も,今後の研究で検証する必要がある。

今回、我々はヒト肝細胞を用い、in vitroで検討した。肝細胞にもワクチン由来のスパイク蛋白が存在し、スパイク蛋白反応性細胞傷害性T細胞のターゲットとなる可能性があるため、検討に値すると思われる。
BNT162b2の肝機能への潜在的影響についてより良く理解するために、今後の研究ではin vivoモデルが望まれる。

BNT162b2 の毒性報告では,遺伝毒性試験および発がん性試験は行われていない。
我々の研究では,肝細胞株Huh7においてBNT162b2がDNAに逆転写されることが示されており,BNT162b2由来のDNAが宿主ゲノムに組み入れられてゲノムDNAの完全性に影響を与え,遺伝毒性副作用を介する可能性があるのではないかという懸念が生じる。現段階では、BNT162b2から逆転写されたDNAが細胞ゲノムに統合されるかどうかは分かっていない。BNT162b2がゲノムの完全性に及ぼす影響を実証するためには、BNT162b2に曝露した細胞の全ゲノム配列決定や、BNT162b2のワクチン接種を受けたヒト被験者の組織など、さらなる研究が必要である。

ヒト自律型レトロトランスポゾンLINE-1は、細胞内在性逆転写酵素であり、ヒトに唯一残る活性型トランスポゾンで、自身と他の非自律型要素をレトロトランスポーズ(逆転写活性+転移)することができる。ヒトゲノムの約17%はLINE-1配列で構成されている。
実際に、非自律的なAlu要素,short, interspersed nucleotide element (SINEs), variable-number-of-tandem-repeats (VNTR) (ゲノム内に存在する大部分が翻訳されない長短の繰り返し配列=太古のウイルス感染、組み込みの残存、遺物と考えられている)や細胞内のmRNA処理された偽遺伝子(働きを失った遺伝子)は,トランスで働く(遠く離れた場所に働く) LINE-1 レトロトランスポゾンによって逆翻訳されている。
最近の研究では、内在性のLINE-1が、SARS-CoV-2配列の逆転写と感染ヒト細胞のゲノムへの組み込みを仲介していることが示されている。さらに、内因性LINE-1の発現は、SARS-CoV-2感染を含むウイルス感染時にしばしば増加する。これまでの研究から,LINE-1のレトロトランスポジション活性は,RNA代謝,DNA損傷応答,オートファジーによって制御されていることが分かっている。LINE-1の効率的なレトロトランスポジションは,しばしば細胞周期や有糸分裂中の核膜破壊,外因性レトロウイルスと関連しており,LINE-1の核内への侵入が促進される。
我々の研究では,試験したすべての濃度(0.5,1,2μg/mL)で,BNT162b2によって核内の免疫組織化学で決定されるLINE-1 ORF1p分布が増加し,LINE-1遺伝子発現の上昇が最高BNT162b2濃度(2μg/mL)で検出された.遺伝子の転写はクロマチン修飾、転写因子制御、RNA分解速度によって制御されるが、タンパク質の翻訳制御には開始コドン上でのリボソーム動員、ペプチド伸長の調節、タンパク質合成の終了、またはリボソーム生合成が含まれることは注目に値する。

 本研究で用いた細胞モデルは、非分裂性の体細胞とは異なり、DNA複製が活発な癌細胞株である。また、Huh7細胞は、RNA代謝に関与するタンパク質の発現が増加するなど、大きく異なる遺伝子やタンパク質の発現を示すことが示されている。
 しかし,骨髄や上皮基底層などのヒト組織や胚発生期においても細胞増殖は活発であり,そのような状況下でのBNT162b2のゲノム内組み込みへの影響を検討する必要がある。またさらに、LINE-1の効果的なレトロトランスポジションは、ヒト神経細胞のような非分裂細胞や終末分化細胞においても報告されている。

 ファイザー社のEMA評価報告書は、BNT162b2が脾臓(1.1%未満)、副腎(0.1%未満)に分布し、さらに卵巣および精巣(0.1%未満)において低濃度で測定可能な放射能を示すことも示している。さらに、BNT162b2の胎盤移行に関するデータは、ファイザー社のEMA評価報告書からは得られない。


その結果,BNT162b2のmRNAは,注射部位濃度の0.5%に相当する濃度(0.5 μg/mL)でHuh7細胞に容易に入り,LINE-1遺伝子およびタンパク質の発現変化を誘発し,6時間以内にBNT162b2の逆転写が検出されることが分かった。したがって、in vitroおよびin vivoの両方で、他の細胞タイプおよび組織に対するBNT162b2の効果をさらに調査することが重要である。



私評

その昔研究していたB型肝炎ウイルスではレトロウイルスの逆転写酵素と類似性のあるDNAポリメラーゼを持ち込みで感染するパッケージでありゲノムのあちこちに強力に組み込みを起こし、肝臓がんを誘発する。すでにこの分野ではとてもたくさんのデータがある。フランスパスツール研究所で初めて開発されたウイルスに対するワクチンでB型肝炎ウイルス自体が流行らない病気になってそうした懸念は遠のいた。

今回の研究、Huh7というがん細胞由来の株での実験結果なのでそれがそのまま生体に反映されるとかの話ではない。というのもガン細胞ではいろんな制御機構が壊れており、通常のいわゆる常識的な働きをしていないので驚くような事象が起こりうるという背景を考えれば相応であると思われる。しかも、BNT162b2はもちろん逆転写活性は持たないし、細胞内でも核外に存在する転写された後の内在性mRNA(細胞自身を運営する)に模してキャップやポリA構造という修飾を受けている。これによって核へ移行したりすることはなく、逆転写酵素活性を有する今回のLINE1(誰にも存在する逆転写活性)などが存在する核での逆転写を受ける機会はない、というのが開発セオリー。

一方で、RNAを扱った人なら誰もがわかるRNAはDNAと異なりとても不安定で分解を受けやすい。むしろすべてが完全長のRNA分子でロットを構成することは不可能と考えるのが普通であり、頭や尻尾が分断されたRNAは予想通り細胞外での振る舞いをするのか、あるいはsiRNAやmiRNAのような超短鎖のRNAは時に無視できない機能を持っていることも知られている。
また、考察にも述べられてあるようにBNT162b2は当初想定されていたよりも多少やんちゃで、肝臓然り、いろんな身体中の組織に移行分布することがすでに社内資料にも認められている。なので、今回著者の意図を汲んで考察を多く載せた。
がん細胞とは異なるまでも生殖細胞のようにDNA複製が活発な細胞群にも到達するとどうなるのか。ゲノムに組み込まれると言ってもエクソンか、イントロンか、どの辺に分布するのか、その辺も影響する因子の一つであり即それがどう影響するかの判断は甚だ難しい。
冒頭のウイルス感染で組み込みが云々に関してはやがてはっきりとデータが出てくるはずなので今はどうでも良い。ただ、特に新薬として体内に入れるものに関しては広範囲なリスクや可能性を常にオーバーなまでに慎重に考慮する必要がある。いろんな仮説を立てて可能性を探るのが科学なのだから。
「信じることから入るのが宗教なら、疑うことから入るのが科学だ」
とガリレオ先生も言っています。


カクテル 22

・スカイ・ダイビング Sky Diving

ホワイトラム 30ml
ブラーキュラソー 20ml
ライムジュース 10ml
シェイクして注ぐ。

グラスにさわやかな空の青さを再現しながらライム系のとてもスッキリと美味しくて飲みやすいカクテル。バーでこんなのをオーダーするとよく出るマティーニとかよりもとても通ぽい◎。

カクテル 23

・アラスカ Alaska

ドライ・ジン 30ml
シャルトリューズ・ジョーヌ 10ml

作り方
ステアしてグラスに注ぐ。

色合いが黄色でウケは良い。
何故ネーミングがアラスカかは存じませんが、誰だろうな、、これ考えたの。
飲んでみると、、、ネット言葉でよく見かけるwww、、、草。

Stevie Wonder &Jeff Beck ♫
ジェフの中でも特にすごい

サイエンスの話 26 SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種を繰り返した後の 非炎症性のスパイク特異的IgG4抗体へのクラススイッチ

2023-01-28 13:59:50 | 日記
SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種を繰り返した後の
非炎症性のスパイク特異的IgG4抗体へのクラススイッチ
Class switch towards non-inflammatory, spike-specific IgG4 antibodies after repeated SARS-CoV-2 mRNA vaccination

22 Dec 2022

3 回目の mRNA ワクチン接種により通常4%程度である(スパイク特異的)IgGの4種類のサブタイプの一つであるIgG4が最大37%まで上昇するという事象を明らかにしたという内容。

背景

・通常免疫系で防御機能を担うIgG抗体のサブタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4について人の場合血中の多い順に命名されているが、その具体的な役割については明らかでない点も多い。

・大まかにそれぞれ血中のIgG166%、IgG223%、IgG37%、IgG44%を構成する。また、食細胞のFc受容体への結合性はそれぞれ高い、低い、高い、中間とされる。胎盤通過性の違いやIgG4だけ補体活性化はしないなど異なる特性を有し、IgGサブクラスの特性や役割、連携については不明。

・近年経時的な観察などを通じて最初に現れるIgG3(とIgE)がクラススイッチによってIgM媒介からの防御に加わり、外来抗原を除去していること、続いて、より親和性の高いIgG1とIgG2が産生され、その相対的なバランスにより炎症過程の強さが決定され、最後に、抗原が持続する場合、高親和性のIgG4が産生され、Fc受容体-媒介過程を抑制することで炎症を抑制するという仮説モデルが提唱されている。

・上記モデルによれば、抗原処理という炎症を伴う一連の反応後の沈静化を行うのがやや他と異なる振る舞いをするIgG4であるということになる。

内容 実験

mRNA ワクチン Comirnaty(コミナッティ・ファイザー社)
を3回接種した29人の被研者のコホート調査を行なった。
免疫系における時間的変化を重要視するため直後と長期間(FU)をセットに観察した。

2 回目のワクチン接種後 210 日 (Follow up, FU) および 3 回目のワクチン接種後 180 日 (FU) のフォローアップ期間とした。
IgG サブクラスは、組換えモノクローナル受容体結合ドメイン (RBD) 抗体を標準として使用するフローサイトメトリーによって定量化した。

結果

・Comirnaty による 2 回目の mRNA 免疫の 5 ~ 7 か月後に、抗スパイク IgG4 抗体と IgG4 スイッチ メモリー B 細胞の増加を示した。 

図1 B,C 
2回接種後のFUから、3回以降に IgG4が増加した。

図2 B 
フローサイトメトリーと scRNA-seq 解析により、3 回目の免疫の直前に高頻度の IgG4 スパイク結合メモリー B 細胞の出現、増加が確認された。

・この反応は、3回目のmRNAワクチン接種および/またはSARS-CoV-2 VOCによるいわゆるブレークスルー感染によってさらに促進された。 

SARS-CoV-2 mRNA ワクチンを 2 回または 3 回接種し、25 日から 257 日後にブレークスルー感染を経験した 12 人を特定したところ、ブレークスルー感染の前に 2 回の mRNA ワクチン接種を受けたコホートでは、3 人だけが高値の IgG4 抗体を示した(95 日、201 日、 257 日後で感染)。
他の 9 人の患者では、2 回目の mRNA 注射の 25 日から 78 日後に感染が起った。

・親和性は、3回目のワクチン接種後に明らかに増加したが、貪食作用は低下した。

図3 
親和性は、3回目のワクチン接種後に明らかに増加した(図3C)
スパイクタンパク質に結合する能力 (図 3D) 
および可溶性 RBD の ACE2 への結合を防止する能力 (図 3E) 
などいずれも3 回目の投与後に増加した。

しかし、IgG2 と IgG4 は、FcγR 依存性の二次エフェクター機能を媒介する可能性が低いと考えられており、貪食スコアを調べたところ結果はそれと一致して、低い値を示した(図3H)。 
さらに、スパイク蛋白への抗体依存性補体沈着も3回目のワクチン接種後に採取した血清とのインキュベーション後に大幅に減少した(図3I)。

これらのデータは、スパイクタンパク質反応性 IgG2 および IgG4 が Fc を介したエフェクター機能が低下したことを示している
(スパイクへの結合能力はアップしたものの、その後の処理能力、貪食作用や補体系の活用に関しては低下していた。IgG4のこれまで知られている見解と相違ない)。

考察

・SARS-CoV-2 Comirnaty mRNA ワクチン(ファイザー)接種の2回目以降IgG4が高値になるを発見した。

驚くべきことは、RSV (RSウイルス)などの急性呼吸器ウイルス感染によって、繰り返し曝露された後でもIgG4 はほとんど誘導されず、また、HCMV (サイトメガロ)のような慢性的なウイルス感染でさえ、有意な特異的 IgG4 抗体を誘発しないし、破傷風トキソイドなどの反復ワクチン接種後でも現れないものがどうしてなのか。

2回目の免疫後の後期に抗S IgG4抗体が出現したことは、B細胞の成熟が長期間進行し時間の経過とともにIgG4スイッチ記憶B細胞が生成された可能性がある。実際にフローサイトメトリーと scRNA-seq により、3 回目の免疫の直前に高頻度の IgG4 スパイク結合メモリー B 細胞が確認され、その後さらに増加している(図2)。

Comirnaty mRNA ワクチン(ファイザー)接種または短い間隔での反復接種が、観察された長期にわたる GC 反応(リンパ節における胚中心の活動 germinal center、GC)の原因であるかどうか、現在のところ明らかではないが、潜在的な説明になりる。 さらに、mRNA ワクチン接種後 6 か月までの強力で持続的な T 濾胞性ヘルパー細胞 (TFH) 応答が、リンパ節で報告されており、リンパ節胚中心での反応(GC反応)に伴いIgG4抗体が出現した。
つまり、もともとIgMを細胞表面に発現するB細胞ではB細胞分化の過程で
遷延するイベント※
つまり、IgG4スイッチ(クラススイッチ変換 CSR)が生じる記憶B細胞の成熟が長引いいた結果という可能性がある。
染色体 14 上の免疫グロブリン遺伝子複合体内の 4 つの γ 重鎖遺伝子 (γ3-γ1-γ2-γ4) の順序を考慮すると 、近位 IgG3 から遠位 IgG4 までの連続した CSR の仮説が支持される。

抗原刺激により免疫グロブリン遺伝子においてクラススイッチ組み換えが誘導されIgMから他のサブクラスの抗体に変化する(CSR, class switch recombination)と同時に,可変領域に高頻度に変異を入れることで抗原特異性を変化させる(SHM、somatic hypermutation)というイベントが起こる。

・IgG4の増加は3 回目のブースターワクチン接種によるものなのか?

我々は2 回目のワクチン接種の 210 日後、および 3 回目のワクチン接種の 10 日後と 5 か月後にワクチン接種者からスパイク特異的記憶 B 細胞を分離し、かなりの数のスパイクタンパク質反応性を確認した。 
この期間で考えるとき、実際にブースターワクチン接種直後の IgG4 への de novo クラススイッチングを正式に除外することはできないが、しかし、その時点での血清中の IgG4 抗体の存在は、むしろ追加免疫による既存の IgG4 記憶 B 細胞の再活性化の考えを支持する。

→ むしろ2 回目のワクチン接種により生成された IgG4が3 回目のブースターワクチン接種によりそれを産生する記憶 B 細胞の再活性化に繋がった結果ではないかと考える。

・ IgG4が増加する意義についての考察

根底にあるメカニズムとは無関係に、抗ウイルス IgG4 抗体の誘導はめったに説明されない現象であり、その機能的結果について重要な問題を引き起こす可能性がある。
この点実際に(図3で示したように)IgG4は、ADCCまたはADCPなどのFc依存性エフェクター機能(殺傷能を有するT細胞系への伝達、連携)を媒介する可能性が低い抗炎症性IgGと考えられている。

・ブレークスルー感染とIgG4

Omicron バリアントによって引き起こされる多数のブレークスルー感染は、現在のワクチン接種レジメンが望むほどの防御機能を発揮しないということかもしれない。

これに関して、
これまでのところ、感染症に対するワクチン誘導 IgG4 応答の役割に関する研究はない。
ただ、HIV ワクチン開発の分野での報告例をあげれば、
 VAX(canarypox vector vaccine プラスミドタイプ)の試験的投与で繰り返しタンパク質免疫を行うと、HIV gp120 特異的 IgG2 および IgG4 のレベルが高くなっており、ワクチンによって誘発された IgG3 抗体は、ADCC および ADCP などのエフェクター機能を強化したが、ワクチンによって誘発された IgG4 はこれらの機能を阻害している点は共通する(↓)。

Vaccination with ALVAC and AIDSVAX to prevent HIV-1 infection in Thailand

・2回接種後にいわゆるブレイクスルーで感染した12人中3人がIgG4高値を示したものの他はそうではなかった。これは、母数が少ないこと、3人以外は3ヶ月以内にブレイクスルー感染していることから、ブレイクスルーにおけるIgG4の関与は評価できない。
ただこうしたIgG4 への切り替えが進行中の GC 成熟反応の結果であり、IgG4 に切り替えられた記憶 B 細胞が現れるまでに数か月(3ヶ月以上)かかるという仮説に基づけば、3ヶ月以上のIgG4レベルと易感染性との相関など(寛容という視点から)について観察をすることが今後の研究課題となる。

・IgG4 と予後に関して

SARS-CoV-2 による自然感染後の IgG4 の誘導に関する報告はほとんどないが、パンデミックの初期段階におけるブラジルの研究では、SARS-CoV-2 感染後のより深刻な COVID-19 進行と早期発症および高レベルの抗スパイク IgG4 抗体との相関が報告されており、これは抗体反応の効果が低いことを示している可能性がある。 
さらに、IgG4/IgG1 比が高いことと疾患の転帰が悪いこととの有意な関連性についての報告もある。 

しかし、一次免疫応答の場合、より深刻な感染が IgG4 応答につながり、その逆ではない可能性があるため、因果関係を特定することは困難である。
また我々の研究対象者、ブレークスルー感染症のワクチン接種者のコホート観察では、ほとんどすべての症例で軽度だったため疾患の重症度の変化に関する証拠は得られなかった。
将来的にこの側面に対処するには、疾患の重症度が異なる大規模なコホートが必要である。


私評

その昔ジャワ島に入植して来たオランダ人がもたらした小麦によってそれを有史以来初めて食べた現地人の間に多くのアレルギーが発症したという話。他にも牛乳や卵や当初様々な食物はアレルギーを惹起していたと思われるがこのような有益な栄養素を利用できるかどうかとういのは飢饉とかの時代には重要な問題であったと思われる。このいわば人類にとって比較的有益な経口免疫寛容をもたらすのがIgG4であり、IgG4は免疫に抑制性に働いている。ちなみに考察のところでも触れてあったが、養蜂家は何度も刺されることでミツバチの毒に強い体を作る。
免疫寛容によりウイルス感染に抑制性に働くとすれば、これは今回の研究でのモニター期間が示しているように200日(6ヶ月)以降、中長期的にその関与が疑われることになる。一方ADEは起こるとすれば理論上抗体が生成さる1ヶ月後からなので比較的早期の現象と想定される。

IgG4といえば、もう一つ近年ミクリッツ病に代表されるIgG4関連疾患として注目されている肝臓、すい臓、腎臓などの臓器や、血管、涙腺、唾液腺など、全身の様々な組織に腫れや炎症を生じる原因不明の難病がある。具体的には胆管の硬化を示す病態や膵炎、甲状腺炎、前立腺炎、涙腺炎など多くの自己免疫疾患が含まれる。いずれもIgG4が高値を示す。

免疫寛容、自己免疫異常、いずれの道にもIgG4はあまりありがたくない帰結に関与をしている可能性があるが、一方で例のない大規模治験によりこうして今までレアで不明な部分が多かったIgG4やアミロイド凝集体といった関連する疾患、その機序の解明や治療が飛躍的に進むかもしれない。



カクテル 21

水割り

水割りはカクテルじゃないと言う向きもありますが、
水とウヰスキーのカクテルと考えれば
美味しく作るためのポイントがほんの一つ二つ。
まず氷、そこへ先にウヰスキーを入れる。
冷えてから、水を足して混ぜる、という順番、だけ。
そして、どういうお水が良いか。
できたらスコットランドのお水から産み出されたスコッチウヰスキーにはスコットランドのお水を合わせることでその力量をより多く引き出されるかもしれません。



スコットランドのお水 DEESIDE を合わせてみる



そう考えるとこんな単純な構成のものでも否応なく雰囲気も上がる。
というわけで、スコットランドのお水はバーでのお話を題材にしたマンガ「レモンハート」、ドラマもありますが、、、から。

Note;「青は藍より出でて藍より青し」

Georgia on My Mind ♪
Don Shirley
正月にアマゾンで見た実話モノ映画“Green book”(Don Shirleyの話)と”Catch me if you can”は面白かったよ。