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サイエンスの話 2 粘膜ワクチン

2021-02-27 11:09:55 | 日記
霰粒腫(さんりゅうしゅ)というものもらいの一種ができて久々の眼科に👀。
この時点で待合室を「余裕を持って」見渡すと年齢構成が内科のように偏りがなく子供からお年寄りまで分布しているという特徴に気づきます。まるで小さな空間に程よくサンプリングされたかのよう。
長い待ち時間の中で携帯なんか触ったりしているとふと目にした、NEJMに、15歳以下の子供の感染を調べたら171人中27人(15.8%)が無症候というデータがありました。

SARS-CoV-2 Infection in Children


集団とはこの15歳以下を抜きには考えられないはずなのですが、最近ワクチンに関して集団免疫という言葉がやや一人歩きしている気がします。
インフルエンザの場合には効率が40−70%と言われるワクチンを世界中で、韓国、オーストラリア、イギリスなど特に多い地域では80%くらいいろんな年齢層に打っているにもかかわらず、未だインフルエンザの集団免疫を獲得してその地域でインフルエンザが根絶されたという話は聞かない。


てなことを考えているうちに、
いよいよ順番が回ってきて切開をしてもらうことに。
まな板の上では
「血液が付着しないようにビニールのキャップをします。それから、襟にも保護をします。」
と看護師さんに言われてビビり、
「メス入れたら、血が天井まで吹き上がる感じ、、、で、ですか。」
「Ha ha ha 、、、そんなわけないでしょ。」
でもやっぱり始まるとまぶたの裏側とかつまみ出した脂肪とか切る音が直接耳に響いて、、、faint、fainting、almost、、、続きを考えるよう努めても思考が飛び飛びになって、、、
やがて無事終了した時には汗だくでした。
血の涙のついた眼帯をして帰宅しました😭。
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さて、
COVIDの感染を考える上ではやはり当初から言われているように、感染ルートとして経口感染が一定割合いると言われており、日々の混雑の中では疫学上重要なポイントです。
なぜ重要かというと、口腔や腸管、気管などの粘膜で働くのは免疫グロブリンIgAであり、一般的なIgGタイプと若干異なる仕組みがあるから、ワクチンをデザインする際や治療や宇野ターゲットを考える上での手がかりになるかもしれません。
2月15日に論文(review)ではその辺り、経口感染についてまとめられています。

15 February 2021
Potential intestinal infection and faecal–oral transmission of SARS-CoV-2


内容
中国やドイツからの報告では59%ー86%と便中に高率にウイルスRNAが検出され、平均22日間便中にその存在が認められた。いずれも呼吸器から検出されなくなってからも便中には長く、多コピー検出されていたという点に言及されており、これはウイルスが腸管で増殖するということを反映しているのではないかという疑問を呈した。

また、(典型的なCOVID-19患者の増悪所見としての)炎症性サイトカイン IL-2, IL-6, IL-7, IL-10, GM-CSF, IP10, CCL2 (MCP1), MIP1α やTNFに加えて、炎症性腸疾患のマーカーとなるカルプロテクチンcalprotectinが上昇していた。サイトカインの中でも IL-18は腸管症状の重症度に相関することが判明し、その抑制が腸管感染の治療ターゲットとして重要ではないかと考えられた。

COVID-19患者の腸内細菌叢の変化

感染患者の腸管内フローラの変化を観察すると、日和見感染で知られるClostridium など(Clostridium hathewayi, Actinomyces viscosus, Bacteroides nordii and Streptococcus spp.)の細菌が増え、有用性細菌叢であるRuminococcaceaeやLachnospiraceae familyが減少していた。
その他、Bacteroidetes, Roseburia, Faecalibacterium, Coprococcus and Parabacteroides Coprobacillusは相対的に少なくなっていた(ウイルス感染患者においては有用菌の減少など腸内フローラの乱れが観察された)。

Coprobacillus属はマウスにおいてACE2の腸管での発現上昇を来す種類が含まれているが、COVID-19の重症度ともっともよく相関した。また、Bacteroidesはマウス大腸においてACE2の発現を減少させることが知られているが、糞便へのSARS-CoV-2の排出(load)と強い逆相関を示している。(ACE2はウイルスが侵入する際の受容体であり、ACE2の発現量に影響する腸内菌種はウイルスの量に影響した。この結果、どちらが先かというと、ウイルスにとって環境的に都合が良いのはACE2発現が多いということなので先に腸内環境ありきなのか)

患者の腸内細菌叢ではPeptostreptococcus, Fusobacterium and Citrobacterの増殖と IL-18発現量が強く相関し、これらの腸内フローラ機能低下が腸管へのSARS-CoV-2 の感染、炎症の結果として生じたものだと示唆された。それは、感染患者の腸内細菌叢への治療という側面での重要性も示唆している(同時に炎症性サイトカインの誘導により腸内環境はさらに乱れる)(やはり腸内環境は大切ということか)。

免疫グロブリンの変化

159例の解析結果から、IgGに比し、IgA抗体がより早期に出現し、特に感染4-10日では一番感染の検出にIgM やIgG よりも有用な抗体であることが示された。(腸管粘膜ではIgGよりもIgA抗体が主役として働いているのは教科書的に合致する所見)
また、ほかの報告でも、IgA抗体が腸管粘膜での主要な防御抗体として働くことが示されており、そこから引き起こされる呼吸器症状を緩和するためにも経口ワクチンの設計、導入が議論されている。(では、ある程度の割合を占めると考えられる経口ルートに対してより有効なのは口腔や気道粘膜の免疫に関与するIgAを気道させることではないかという発想)

腸内感染モデルとしての実験細胞系

試験管内でIn vitroモデルとしての細胞培養系では、肺がん細胞Calu-3よりも大腸癌細胞Caco-2 の方がウイルス濃度として10000倍の高効率でウイルス粒子を検出したことも興味深い。(大腸由来細胞に肺細胞よりも高い親和性があるというウイルスの組織親和性が明らかに)

腸内感染モデルとしての実験動物系

マウス、フェレット、ハムスター、ヒト以外の霊長類
と様々な実験動物で便ー経口のルートによる感染が強く示唆されている。これら動物系では経鼻、経口で投与されたウイルスが便中に排泄されることが確認された。
(いろんな動物で生体内での動向として経口感染が起こりうるか否か検討したところ口腔、経鼻ルートで便中への排泄が確認され、割と普遍的な現象としてモデル系として有効)

中でも、アカゲザルに経口で感染負荷を与えた実験では肺の炎症所見が通常に認められたにも拘わらず、肺でのウイルスRNAは認められなかった。これは、腸管でマクロファージが活性化され、腸管のみならず肺で炎症性サイトカインを分泌して症状を引き起こしている可能性が示唆された。
(経口感染から気道症状、呼吸器症状が引き起こされる可能性がある)

まとめとして、
胃液、腸液中での生存はすでにいくつかのレポートでも確認されており、便中ウイルス量に関しては最終的にどの程度の濃度のウイルス粒子が感染性を維持するのに必要か、というポイントに関して検討の余地が残る。
また、実際にどのくらいの割合の人が経口感染しているのか、明らかにする必要がある。(下水の調査をしているのも一つにはこの文脈)

・IgAの重要性とワクチンの可能性

この粘膜抗体の主体であるIgAに関しての重要性という意味合いでは、
多くの患者で早期から高値を示し、量も多く保たれている点、
さらに、 
COVID-19がIgA関連疾患(IgA腎症のような)免疫複合体の沈着や血管炎の原因と仮定すると、患者の肺血栓症、腎症などの臓器障害が説明できるのではないかという↓。
(COVID-19の多彩な症状がIgAという側面から説明できるのでは)

Distinct features of SARS-CoV-2-specific IgA response in COVID-19 patients


一方で東アジアに比べIgA欠損症の人口が多い欧米や中東の地域ではCOVID19が重症化しやすいという相関も示した報告もあります↓。
(IgAの多い少ないが地域差を生じている一因にもなっているのでは。)

Host Factors That Aggravate COVID-19 Pneumonia


では、
腸管で働くワクチンの方が効率がよくこの経口感染ルートに対応できるのではないか、という発想が出てきます。
(経口ワクチンのメリットは痛みが少ないとか手軽に使用できる等多い一方で有効濃度を高める工夫が必要)
さらに、
自然な形での意味合いではほかのいろんな食物(残渣)や腸内環境などと混合している環境の中で食べる(経口)の方が筋注など(parenreral)よりも受け入れやすいようなイメージに加えて、もう一つの興味は、IgA抗体を誘導するとADE(抗体による感染増強)はIgGに比べどうなのか、という点です。

実際、これまでにいろんなタイプの粘膜ワクチンがデザインされています。
その一例として、腸管に親和性が高いサルモネラ菌を改変したもの。↓
ポイントは抗体濃度を高めるため胃酸という環境をどうくぐり抜ける工夫とアジュバントをどうするかという点。

Development of an Acid-Resistant Salmonella Typhi Ty21a Attenuated Vector For Improved Oral Vaccine Delivery


Ty21aというサルモネラ菌種から経口生ワクチン用のツールを開発しライセンス化した。
開発にあたってのポイントは胃酸における低PHでenteric-coated capsule (ECC)という一種のカプセル化によってこれを克服した。
胃酸を中和するバッファーを使うという方法もあるのだが、ECCはパッケージや輸送の面で現実的であり、免疫系からの排除も免れやすいという利点があるので採用した。
この Ty21aの機能を高めるために、低いPH下で生存確率を高める赤痢菌由来のGAD(glutamate-dependent acid resistance genes)遺伝子を組み込んだ。GADの発言はPH2.5の状況で3時間以上(5log)生存率を上昇させた。同時に組み込んだ抗生剤のスクリーニングを行うことでGAD遺伝子の100%組み込みを達成し胃酸の問題をクリアするとともに、ワクチンとしての機能は十分に保たれていた。

このようにこれまで
すでにMERSやSARSでトライされたものも含めて、
今後SARS-CoV-2に関してその有用性を論じているレビュー↓。
経口ワクチンにより粘膜防御を担うIgA抗体が産生され流とともに、免疫細胞誘導はTh1がTh2よりも優位で、ワクチンとして使用できるレスポンスが得られた。経口ワクチンで得られたIgA抗体は粘膜の免疫系の作用により鼻腔、気道にも分布が認められた。(現在それなりの形のものが出来上がったというところまで)

Development of SARS-CoV-2 vaccines: should we focus on mucosal immunity?


さらに、
その他いろんなところで作成された粘膜(経口や経鼻など)ワクチンに関するまとめが下記にあります。


これまでADEに関するテストを行ったという記載はなかったので、
代わりにエイズウイルスでやや古いのですが、IgA抗体によるADEに関して、IgGよりもその関与は薄いのではないかとしながらも、普遍的なメカニズムとしてクラススウィッチング(Immunoglobulin class switching)が働き、わずかに惹起されるIgGによってADEが引き起こされ(ワクチン開発に影響した)たとあります↓。
その辺りが今後の課題。

J Immunol 1995 Jun 1;154(11):6163-73.
High prevalence of serum IgA HIV-1 infection-enhancing antibodies in HIV-infected persons. Masking by IgG


科学ではいろんな可能性や選択肢をできるだけたくさん挙げておいて検討し、ダメなものは消えて、また次のが現れて、、、と繰り返していくうちに答えにたどり着く、というのが道筋のない道筋ではないかと思うのです。

じっくりと!芽キャベツのソテー



The Weight
Featuring Ringo Starr and Robbie Robertson 
Playing For Change 
Song Around The World
コメント

サイエンスの話 1 ADE

2021-01-26 13:54:06 | 日記
「今度留学にボストンに行くので、接種項目として、、、」
という患者さんの要望で冷蔵庫に入っているB型肝炎ワクチンのバイアルを取り出してみる。
続いて、
問診で確かめて→ワクチンを注射する
というのは
パターン認識→条件反射
であり、その一連の流れは
診断→治療という他のほとんどのと共通する日常の医療プロセス。
定期航路のように決まったコースに乗って後日証明書を英文で書いてあげればそれで完成。

ただ、手にするワクチンの開発は医療とは全く無縁のサイエンスの世界で作られたもの。指標の無い海に乗り出す船のように幾つもの試行錯誤を経て出来上がったものです。
アポロ11号のように華々しく成功することもあれば、映画にもなったアポロ13号のように失敗を手計算で軌道修正しリカバーしたというのもまたサイエンスの勝利です。
答えのない道に進んでいる以上、途中で止まったり、引き戻したり、向きを変えたり、常に観察をしながら膨大な手間をかけて道を探って行くというのが必要なのではないでしょうか。
今回、書いていて目についたのは中国人の論文ばかりで、日の出る国の科学はどうなったのか。やはりサイエンスは国力と教育の賜物なのか、などと思いつつ。

さておき、
改めてワクチンについて考えてみると、
様々な病原体に対応するワクチンがこれまでにあったり、なかったりします。

ざっと分類すれば、
💮とても有用 (ほぼワクチンで制圧される)
十分な効果が期待され、副反応も少なく医療現場でさっと接種できるよう広まっているもの:天然痘、ポリオ、麻疹、流行性耳下腺炎、水痘、B型肝炎などに対するワクチン。弱毒化生ワクチンが多い。

・インフルエンザ
ワクチンの効果が40−70%と微妙~なラインにあるものの、治療薬が存在し、中でもリレンザでこれまでのところどの変異株にも対応できているので結果オーライか。
毎年割と多くの患者さんから「(ワクチン打ったのに)罹っちゃいました。」
と聞くのでなぜか注射を打っている側がチクンと痛い。

・C型肝炎、エイズ、ATL
ワクチンよりもインターフェロンやヌクレオチドアナログなどの案外身近な薬を適応して治療効果がほぼ完全に得られている。ワクチンはアストラゼネカ社のようなタイプのベクター型に積めば作れるが、今のところ出番はない。
エイズ、ATLなどのワクチンは全く困難であったが、C型肝炎同様治療薬が進歩し、ある程度制圧に成功している。

・試作品程度は存在するが実用化できなかったもの(今回の論文に登場する)
アフリカ系に多いエボラ熱、デング熱やRSウイルス、SARS、MERS

つまり、このように分類すると
「ワクチンで全てが解決するというわけではない」
という一つの理解が得られます。

さらに湧いてくる疑問として、
「2003年に分離されたSARSウイルス(新型コロナウイルス SARS-CoV-2の1番の近縁)のワクチン生成は何故うまくいかなかったのか?」

その理由の一つがADEよ呼ばれる抗体依存性免疫増強現象でした。
(ADEは簡単に言えば接種したことが原因で再感染した際に易感染性から症状が悪化する現象)(デング熱やRSウイルスのワクチンができなかったのも同様の理由)

この点新型コロナウイルス SARS-CoV-2のワクチンでは
十分な検討がなされているのか、
重要なポイントではないでしょうか。

ということで、今回
抗体依存性免疫増強 (Antibody-Dependent Enhancement:ADE)
に関する論文の中でとてもまとまっているnatureのレビューを読んでみました。
(文中COVID-19とSARS-CoV-2の両方の表現が出てきますがいずれも同じ、いわゆる新型コロナウイルスです )

Learning from the past: development of safe and effective COVID-19 vaccines
Nature Reviews Microbiology (2020) 10月20日

Antibody-dependent enhancement and SARS-CoV-2 vaccines and therapies
Nature Reviews Microbiology (2020) 9月9日

それは歴史的物語から始まります。以下原文ほぼそのまま(解説)。

1. RSVワクチンからの教訓

1965年、冬場の風邪、呼吸器感染症の病原体であるRSウイルス感染症のウイルスRespiratory syncytial virus(RSV)に対して、新たに開発されたホルマリン不活化のRSVワクチン(現在のインフルエンザワクチンも同様の手法で生成される)であるFI-RSVが20人の赤ん坊にRSVワクチンを投与された。
結果、16人が入院、うち二人が死亡した。
精査するとFI-RSVはウイルスの糖蛋白に結合する抗体を誘導していたが、中和抗体(ウイルスを不活化する重要な抗体)ではなかったことが判明した。肺には好酸球浸潤とCD4+細胞が見られ、このパラドキシカルな現象(ワクチンを打ったのに、、、)はenhanced respiratory disease (ERD)と呼ばれた。
ERDは一部の免疫細胞Th2が強く誘導されるため他のキラー細胞など有効にウイルスを不活化する役割を担う細胞の働きが抑制されたためであるとわかったのが90年代になってからだ。ウイルスの糖蛋白のいくつかは期待とは逆にこのような偏った免疫誘導をきたすことがERDの原因と考えられた(大まかにここではERD=ADEの扱いで解釈を進めるのがわかりやすい)。
2019年になってアデノウイルスベクタータイプのRSVワクチンがFDAで認可された。このワクチンは中和抗体と共に、前述のERDに関与したTh2とは異なり,Th1(インターフェロン/ Th2は高く)に偏る免疫誘導をきたすことで副反応が少なく有効に作用すると考えられた。ただし、治験では60歳以上にしか投与していないので小児に関してはこれからの課題として残っている。
50年に渡るRSVワクチンの歴史から学べることはなにか。
それは、
・Th2に偏った免疫誘導は(ERD/ADEを誘発するリスクから)危ないという認識が得られた。

・では、それが具体的には、ワクチン設計の段階で、どの部分を抗原にデザインするか、それが抗体にどう結合するのか、結合前段階と結合後の状態はどうなるのか、(うまく結合するのか)、抗原部位が効率よく中和抗体を誘導できるのか、という点が重要であるというポイントを明らかにした。
そのような因子がERDのような現象に関与しているのではないだろうか、と考えられた。

2. デング熱ワクチンからの教訓

RSVよりもっと古く、1920年にデング熱患者の胆汁を注入することでワクチンとして応用したのが始まりとなるがこれは失敗に終わる。デング熱ウイルス(DENV) には4つのセロタイプ(顔が違うように異なるタイプのウイルス)があり(DENV 1−4)、あるセロタイプのものは他をも中和する能力があったりする、つまり交差する中和抗体の存在が知られていた。

重要なのはその濃度が少なくなると(適量を下回る 、抗体価でいうと21~80)他のセロタイプのウイルスには効かずにむしろ感染力を高めてしまうという現象が知られていた。
その濃度が低下した中和抗体、あるいは非中和抗体の元でそれらの抗体がDENV ウイルスに結合するとFcR(抗体分子に対する受容体タンパク質であり、免疫担当細胞表面に存在する)という抗体を介して炎症反応を惹起してしまうことがわかった。

つまり、異なるセロタイプのウイルスが感染した際に引き起こされるこの増悪化(ある種、例えばDENV1の抗体を有する患者がDENV2に感染すると重症化する)こそADEという現象の本体であるという概念を得るに至った。

それ以降77年間ワクチンは投与されなかったが、2006年に、レコンビナント(組み替えDNAから蛋白合成)により、CYD-TDVワクチンが開発され、いずれのタイプにも中和抗体を誘導することを証明した。これはFDAで認可されたものの、少量の抗体が、上記レベルまで減少した状態で体内に残っている場合にはADE誘発のリスクがあるため、宿主を選ばなくてはならないという理由から、DENV感染既往歴がある患者以外での接種はいまだに行われていない。

 デング熱ウイルスとSARSやSARS-CoV-2 はFcR細胞に感染する、しないとその標的細胞の種類が違い、メカニズムが異なるのだが、以下2点が デング熱ウイルスの教訓として得られた。

・抗体価が低いこと、あるいは低くなるのはウイルス感染後の経過、ワクチン接種、モノクローナル抗体の投与などいずれのコースでも起こりうるのだが、
何れにしても、結果として抗体価が低いことでRSVやDENVではERD/ADEが起こったという点。

・現在世界で流行しているSARS-CoV-2 はSタンパク質に D614G変異をきたしたタイプのものだが、ヒトでは少なくとも6種類のバリアント(違うタイプ)があり、動物ではもっと多いが、それが今後も増えていくものか否か、はさておき、理想のワクチンはそのような全てに対応できるものが望ましいと考えられる。

DEGVではウイルスのタイプ、既往のウイルスタイプ、それから宿主の年齢という要素によって影響を受けたのでSARS-CoV-2の場合にもあらかじめワクチン接種以前に性別、年齢、既往を振った実験系でデータを蓄積した上で人の集団にそのデータを反映し応用するのが必要ではないか、という点。

3. SARS、 MERSのワクチン、抗体からの教訓

2003年に分離されたSARSゲノムはSARS-CoV2に対し79%の相同性があることが知られており非常に近縁である。
結論から言えば、現在までに明らかに有効なSARS、 MERSのワクチンは作られていない。その理由の一つは、ADEという壁。もう一つはある時期以降自然と下火になったことである。

その歴史においては、SARSに関するワクチンとしてはSタンパク、不活化、アデノウイルスベクターと多岐にわたり作成され(他のウイルスで応用されている様々な技術)、いくつかでは中和抗体が誘導されたが、同時にフェレットなど実験動物系ではウイルスの再負荷によりADE、ERDが誘発された。また、中和モノクロナル抗体(MAb)による抗体投与、その後のウイルス再負荷テストでは低濃度の抗体を投与した際に明らかなADEが誘発された。

MERSは2012年中東で流行したが、同類のウイルスにより発症する。
そのワクチン候補は多くが有効性を示す一方でADEの報告が少ない。ラビットでは中和抗体を誘導しなかった場合、(不完全な抗体が誘導された結果)ADE所見としての肺浸潤が認められたが、比較するとSARSほどVADE(vaccine induced ADE、ワクチンによるADE)は認めなかった。
また、最近のINO-4700のようにADEもなく中和抗体価が誘導されて成功しているDNAワクチンもある。

このようなSARS,MERSワクチンの歴史から見えてくるのは上記RSVやDENVとも共通する重要なポイントがある。
それは、

・TH1 とTH2細胞のバランスが良く誘導されること(免疫細胞のある種類、特にTH2が突出して影響を受けないよう)がADEを予防する上で重要である点。
これはまさしくDENVと同じ結論。

・もう一つは、低濃度の抗体がSARSでADEを誘発した点を考えると、免疫された側の抗体価というものがVADEにとって重要な因子であるということ。
つまり、宿主であるヒトを想定すると、年齢や既往、ウイルスの曝露歴、特に細胞性免疫や液性免疫の状況、さらに性別や合併症などの因子は大切ではないかという点。

4. VADE(vaccine induced ADE、ワクチン接種により誘導されるADE)のメカニズムに関してーSARS-CoV2でも起きているだろう

FcRレセプターを介する感染をきたすエボラウイルスなどのウイルスではVADEを引き起こしやすい。(Fc受容体FcRは免疫系にとってナイーブな問題となりうる免疫細胞において発現しており、抗体が結合するための単なる器としての役割だけではなく、抗体の結合は細胞の機能調節にも関与するため影響をもろに受けやすいことが原因として考えられる。)

しかしながら、SARS-CoV2やSARSでは免疫系細胞への感染はないと考えられたのでADEの発症は比較的少ないと予想られたが、すでにADE様の症状がが起きている例が報告されている。
具体的にそれを検討してみると、まず、これまでSARS-CoV2の自然感染に関して、宿主(ヒト)の側の因子として、重症化しやすい人のタイプがあることが知られている。重症化している13.9%は何らかの背景因子がある可能性が高い。
また、SARS-CoV2に関してなんども感染を繰り返している人がいてそれらを対象に解析した結果、USAやエクアドルで見られたケースでは、1回目に回復して抗体が認められたのち、2回目に感染したのち重症化した。
対照的に、香港やヨーロッパのケースでは、1回目の感染が十分なセロコンバージョンを誘導しなかったが(十分な抗体ができずウイルスもいなくならなかった)、感染経過がマイルドだった。
(このような症例は特にワクチンや治療用抗体を用いていない。それは何を意味するかというと、自然サイクルの中で感染→抗体産生→抗体低下→再感染→重症化というADE様反応が起きている、という考え。)

つまり、SARS-CoV2でも程々に抗体ができている個体に再感染した場合にはADEに似たメカニズムで重症化リスクがあるということがわかる。

元来、SARS-CoV2が細胞に侵入するACE2受容体は肺のII型肺胞細胞、食道細胞、回腸および大腸の吸収性腸細胞、腎の近位尿細管細胞において高発現していることが知られており、その様な細胞に優先的に感染すると考えられたが、最近、末梢の免疫細胞PBMC(T細胞、B細胞、NK細胞、単球および樹状細胞などの多様なリンパ球を含む)にも感染が認められるという報告があり(下記論文)、この点に関して言えば、上記FcRレセプターを介する感染をきたすエボラウイルス同様比較的容易にADEが誘発されることも想像に難くない。

Infection of human lymphomononuclear cells by SARS-CoV-2

5. COVID-19(SARS-CoV-2)ワクチンに関する影響はどうか

ADEの予測と見極めが難しい理由として、これまで経過から以下のことが挙げられる。

・抗体価の推移という時間をかけて観察しなくてはならない。
・実験動物系は人を必ずしも反映しないので、いくつかの複数の実験動物を使用することで対応していくしかない。

実際に実験動物ではデング熱ウイルスの場合、老化マウスでは若いマウスに比して効果が出にくいという報告があるため、年齢という因子も検討できるようなモデルを用いる必要性がある。
また、実際に合併症を有する感染した患者の予後が悪いので、それを模した実験系とヒト系での検討も必要であろう。

つまり、ワクチンの影響、ADEに関して検討する場合には(残存抗体価の影響など)宿主の側の因子を無視することができない。

さらに、COVID19ワクチンの安全性と効果に関してのパラメーターに関しても現在一定の基準がない。
というのも、中和抗体価の基準は曖昧なままである。
例えば、我々は抗体価189以上の抗体価でマウスの肺からPCRでRNAを検出できないことを示した。
FDAは少なくとも160以上あれば望ましいという。
また、VADEの基準も曖昧なままである。そこで、好酸球浸潤が5%以上はVADEとする提案をしたい。

抗体価の減少は早ければ2−3m、アイスランドの大規模なスタディでは4m程度であった。SARSワクチンによる高レベル抗体価のマウスでも6mであった。そのあたりを基準としてそれ以上持続するものが誘導されれば良いと考える。

6. COVID19(SARS-CoV-2)ワクチンの設計にあたりベストな抗原部位とは何かを考える

SARS-CoV-2に対するワクチンの中でSタンパクの全長をターゲットにしたワクチンは容易にADEをマウスで誘発している。

一方で、SタンパクのRBG(regand binding domain リガンド結合部位、直接結合する部分。Sタンパクといっても直接結合する部分とその間のちょうど浮いている様な結合に関与しない部分等色々ある。直接結合する部分以外を入れて設計すると後述の様に効力のない~弱い抗体ができることでADEを誘発するのではないかという考え)を標的にしたものではADEの発症は見られず、我々の油性ナノ粒子でコートしたRGB mRNAは540の抗体価をマウスで70日間持続するとともにSARS-CoV(いわゆるSARSウイルス)にも交差免疫を示した。 RGBには両者に保存された領域が含まれているということも示唆される。(なので、SARSとSARS-CoV-2の両者に反応する抗体設計が望ましいのでは無いか)

この様に、
RGBはワクチンを作成する抗原部位として理想なのだが、さらに進んでRGBの最適化optimizationを行うと良いかもしれない。
RBG抗体の中で非中和抗体の部分にglycosylation(グリコシル化)という修飾を行い、中和抗体部分には脱glycosylationという修飾をかけることで中和抗体として目立たせるとともに役に立たない部分をマスクする方法もある(必要な部分とそうでない部分を体にうまく認識される様メリハリをつける化学的なテクニック)。
(グリコシル化 (Glycosylation)は細胞内で合成(翻訳後)のプロセスを経て出来上がったタンパク質にのみ行われるマークなのでそれがなければより外敵としてより認識されやすい。)

考察

・不良抗体について

巷でこのADEを説明する際「不良抗体」という表現を目にしたことがあります。
不良抗体とは冒頭で触れたRSウイルスの様な失敗例に見られる「効果のない抗体」やRBD以外のドメインで構成され効果のある部分の働きを喰ってしまう様なデザインを有する競合阻害的に働く抗体などがイメージされる割と良い表現ではないかと思います。
なので、不良抗体は「免疫系のアンバランスを誘導する抗体で結果ADEを引き起こす可能性がある」という定義になるかもしれません。

ただ、ここで考えてみると、
「ウイルスは結合部位を含めて容易に変異していく」ということです。

つまり、今日の良い抗体(RBDに対応する効果の高い抗体)は明日の不良抗体になるかもしれない。いや、それでも、抗体価が高い時には交差して力づくで押さえつけることも想像されますので中和抗体として問題ないかもしれない。
(mRNAワクチンなどは変異種にも有効ではないかという意見が現時点で主流なのはこの原理)
ただ、問題はそれが減少してきたら(上記論文にある低値域ゾーンの数値がありますが)、、、それは働かない不良抗体になってしまう可能性があるという点です。

あえてオヤジくさいと言われる野球の例えをすれば、
ピッチャーが甘い球を投げれば(不良抗体)バッターに打たれる。
ピッチャーが際どいコース(良い抗体)に早い球(高い抗体価)を投げるとバッターは打てない。
ただ、コースは良くても球速が落ちる(抗体価が減少する)と打たれてしまう可能性が上がる。
さて、次のバッターに代わって(変異型ウイルスに変わり)先ほどのバッターに投げていた際どいコースというのはその人にとって打ちづらいコースとは限らないので通用しない(良い抗体、不良抗体という概念はリセットされる)。ただ、球速があるうちはどのコースに投げても打たれにくいのは一理ある。

・つまり、良い抗体、不良抗体はウイルスが変異する以上「定義ができない」のではないか。

・良い抗体が減少してきたとき、変異種による再感染を想定する必要があるのではないか。

さておき、「良い、悪い」という抗体デザインに関して、企業秘密の部分ではあり情婦おは限られているのですが、身近なワクチンはどの部位に対応するよう設計されているものかという興味があるはずです。
日本にも導入予定のモデルナのmRNA-1273に関しては
モデルナ社からのアナウンスが出ていました↓。


・ADEはSARS-CoV-2でも起こりうる。

その際3通りのルートとして、
A. ワクチンによる抗体産生(VADE)
B. モノクローナル抗体など抗体投与
C. 自然感染後の再感染
が想定されます。

前述の第4項. 4. VADE の中にあった
USAや香港の患者のケースを分析すれば
C. の「自然感染後の再感染」によるADE
という自然におけるサイクルの存在が想定されます。

・もしそうだとすると、、、いま現在、すでに欧米のあちこちで
C. 自然感染後の再感染
が起きている可能性は無いか?
感染数が多く、現場の混乱も想像に難くないので交代かを毎回調べて再感染が重症化するという大規模なデータは現在ないのですが、USAやヨーロッパなど多いところは日本の約100倍程度の致死率があるという点は当初からとても気になっています↓。

Reported Cases and Deaths by Country or Territory 
Deaths/ 1m pop (100万人あたりの各告別死亡者数日々公表データ)
をクリックすると順番に並べ替えられる。

ここで少し話が戻って、上記レビュー論文の
「3. SARS、 MERSのワクチン、抗体からの教訓」
の部分に
「ADEという現象のメカニズム」
として
「免疫関連細胞の誘導される際のアンバランスTh1/Th2 ↓」
とあります。
(詳細は込み入っているので省略しますが、Th1/Th2に関しては下記に簡単欄外に記しておきます)

では、
天然のADEが起きている可能性がある場合、
地域によって
「Th1/Th2 バランス」が異なるのではないか。
それを規定している因子とは?背景とは?
(例えば地域性のある習慣、食べ物とか遺伝因子とか)

ここで
昨年からヨーロッパやオーストラリアで治験を重ね、natureやcellなどしっかりしたところにも掲載されて科学的にコンセンサスが概ね出来つつあるかな、というがBCG
BCGはすでにTh1を誘導することが知られており、多くの報告があります。
これを中心に据えて地域性と絡めてみると謎解きがスーッと進むように思えます。

そのいくつかを紹介すると、
・EMBO J の論文でBCGがCOVID19の致死率に影響することがすでに報告されている(2020年5月)。
Is BCG vaccination causally related to reduced COVID‐19 mortality?
EMBO Mol Med (2020)12:e12661

同様に、
Is global BCG vaccination‐induced trained immunity relevant to the progression of SARS‐CoV‐2 pandemic?
ではSARS‐CoV‐2の重症化率に統計学的有意差を導き出している↓。

Our results demonstrated a statistically significant difference in deaths/million on day 7 since the daily confirmed deaths reached 0.1/million (Mann‐Whitney U test; P = .0109) between countries that had ceased vaccination in the last 2 vs the last 3‐4 decades (Figure 1D). This result suggests that BCG vaccination‐induced heterologous non‐specific protective effect could be of long‐lasting duration (~20 years) and therefore could potentially impact the dynamics of SARS‐CoV‐2‐associated community spread and/or disease severity.

・また、2020年5月natureのレビューでは、BCGによる「免疫系トレーニング」と仮説でCOVID-19の感染抑制作用を理論的に支持している↓。

BCG-induced trained immunity: can it offer protection against COVID-19?
Nature Reviews Immunology
volume 20, pages335–337(2020)

We thus propose that induction of trained immunity by BCG could provide protection against COVID-19, but this hypothesis needs to be tested in rigorous randomized clinical trials. 

そして、一気にCOVID19と関連づけてコメントしているものもあります↓。

Is global BCG vaccination‐induced trained immunity relevant to the progression of SARS‐CoV‐2 pandemic?
Indian J Orthop. 2020 May; 54(3): 394–397.

まず、欧米などでのCOVID19による感染率や致死率などの被害状況が異様に高い地域性を挙げ、
COVID-19 has inflicted high morbidity and mortality to only that segment of the world population, [11] which has low Th1 immunity due to poor or no exposure to strong Th1 antigens like Mycobacteria, Salmonella, even Bee stings, etc.
それらの地域では抗酸菌、サルモネラ、ハチ刺されなど(いわゆる汚いものとの接触がない先進国地域特有の)の機会減少に伴うTh1免疫が衰えている事が背景ではないかと考察している。さらに、
Mycobacteria is one of the strongest antigens to induce Th1 immunity [36]; while, Salmonella has also been considered a model pathogen for inducing strong Th1 response [37]. Vaccination of both of these pathogens shall restore the forgotten and decreased Th1 immunity among the immunologically useful antigen starved population of the developed nations, shall downregulate the Th2 bias environment of cytokine storm with IL6 and, thus, help reducing local tissue destruction in COVID-19 patients [38].
抗酸菌(予防接種としてBCGと同義)とサルモネラ菌は最も強くTh1を誘導する抗原の一つであり、先進国では忘れ去られ、衰えたTh1免疫を呼び起こし、IL6などのTh2バイアスを抑制して是正、修復するすることでCOVID19患者における局所ダメージを緩和するのに役立つであろう。

つまり、
・BCGがTh1誘導性に働くという事実に基づき、
BCG接種や衛生状況が悪い地域ではTh1/Th2バランスが程よく保たれている可能性、
それゆえ、
COVID19そのものやその再感染によるADEの抑制に関与しているという可能性。

(あくまでTh1/Th2は免疫細胞のバランスという非常にミクロの繊細な部分であり、BCG接種や自然曝露によっても誘導される度合いや期間などは個人によって違うので摂取地域内での個人差や株の種類による反応の差はあるものの、いわゆる地域集団で考えれば、裏付けにTh1/Th2バランスは検査に値するかもしれない)

これらの事実をまとめると以下の5つになりますが、
それを元に仮説を立てることはできないでしょうか。

事実1 100万人あたりの各告別死亡者数がヨーロッパの1000以上に比して日本及び近隣の10以下という100倍の差がある事実。
事実2 ADEでは免疫関連細胞のアンバランスTh1/Th2 ↓ が認められる。
事実3 BCGはTh1誘導性に働きTh1/Th2バランスを是正する。
事実4 BCG接種がCOVID-19の致死率を統計的有意差を持って低下させている。
事実5 これらRNAウイルスは頻繁に変異する。
仮定1 ワクチン接種により得られた抗体は長期でも半年程度からやがて減少する。
仮定2 感染が半年以内に収束する可能性<収束しない可能性

→仮説:COVID-19でADEは起きる。

しかしながら、
BCGをルーチン化している日本を含む現在地球上のパンデミックの中で
比較的穏やかな感染状況の国では、
上記ルートCの自然サイクルにおけるADEを抑制しており、
ワクチンや抗体投与によるADEは(BCG-群と比べ)比較的起きにくい
のではないかと予想される。

以上
あまり主観を入れずに書こうと思うのですが
論文を書いたりしていたくせでつい意見や主張を入れてしまっているかもしれません。
厚かましいついでにもう一つ主観を入れるならば
「治療薬以外ではADEの可能性はある」
ということになります。

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(Th1とTh2)

Th1細胞とTh2細胞はいずれも、CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)の亜群であり、インターフェロンやインターフェロンの刺激を受けることによりナイーブT細胞とよばれる抗原タンパク質との接触経歴を持たないT細胞からの分化が誘導される。
Th1細胞はインターフェロン(IFN)-γなどのいわゆるTh1サイトカインを産生し、 Th2細胞はTh2サイトカインと呼ばれるIL-4をはじめとしたサイトカインを産生し、B細胞から分化した形質細胞による抗体タンパク質産生の亢進や顆粒球の一種である好酸球などの細胞を活性化する。

Th1細胞とTh2細胞は互いの機能を抑制しあっている。この平衡関係はTh1/Th2バランスと称され、このバランスがどちらかに傾くことによりそれぞれに特有の疾患が生じると考えられている。

ADEではTh1/Th2 ↓の状態であり、肺における好酸球浸潤の所見が見られる。

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お料理にチャレンジしてみました。
師匠はyoutube、、、あまり才能ないみたいです。


Take Love Easy 
Sophie Milman
コメント

病気の話 33 基準 standard & criterion/ criteria

2020-12-30 10:47:38 | 日記
先日久しぶりに誕生日が来てまた歳をとってしまいました。
ここ最近相変わらずコロナの話題ばかりなのですが、
それが1年近く続くとこの混沌とした毎日が
当たり前のように感じられるのもおかしな話です。
おそらく大勢の人がワイドショーなど観ていて
なぜそういう風に思うのか、ふと考えてみました。

一つに基準が異なるという考え方。
「基準」とは、英語ではstandardとcriterion/ criteria(pl)。

では、手元にある仏英/英仏辞書LE ROBERT & COLLINS CADET (今これしか手元にない) で調べてみると、standardはフランス語でniveau, voulu, etalonと数多い。niveauは水平面という意味ですが、au niveau という形で「~のレベル」とかはよく使う言い回しです。
つまり、日本語にも化けている「スタンダード」はもともとちょっと幅がある「基準」。これに対して、criterionはおそらくフランス語由来でそのまま仏語でもcritère。世界中に基準がたくさんあるということなのですが、
それだけいろんな基準を使う人がいるからかもしれません。
「基準がたくさんある」
よく言う「ダブル スタンダード」とか「ブーメラン発言」、ネットで言う「おまいう」。もう一つのタイプは、勉強不足や無知に基づくいわゆる「自己基準」。
混沌としてくるとさらにいろんな基準が出回流のかもしれません。

さて、新種(変異)について。
まず基本ウイルスはどうしても変異する性質があります。特にRNAウイルス。
もちろんヒトもお猿さんと違うようになったのは進化という名の変異の繰り返しによりますが一言で変異といっても個体にとって簡単に言えば都合が良い変異と悪い変異があります。また、それが塩分の保持能力と高血圧の話みたいに後から不都合が生じたりもします。
コロナのは早く多彩です。もちろん日本で流行した株でも、そして世界中で変異は起きているはずです。それはインフルエンザに比べゲノムの長さが長いのでそれだけ変異する部分も多いもが一因です。
したがって、ウイルスは変異をするもの、でそれがどこにどういう風に、どれだけ、と言う問題が次にきます。
これにはもちろん科学的にUSAはじめ大急ぎで全力で調査しているからもう少ししたら色々データが出てくるはずですが、その際問題となるのはスパイクタンパク質というウイルスがエントリーする際に重要な構造部分です。
これが変異して構造が変われば既存の抗体(現時点では既往の感染による獲得抗体しかない)が効かない、感染力、重症化リスクの見直しなどいくつかのポイントとなります。

さほどそうしたデータがない今の時点でこの問題を考える時、歴史的にもよく研究されていて大変参考になるのがやはりインフルエンザウイルスです。

インフルエンザの場合はH1N1というスペインカゼの型から最近話題になったH5N1まで100年かかり、その間に感染に重要なHとN領域において126種類の変異株、つまり新型が出現して、そのうちいわゆるパンデミックと言われる大流行が出たのはアジアカゼ、香港カゼ、ソ連カゼなど数回です。

対するインフルエンザワクチンですが、インフルエンザの場合、その年に流行が想定される変異株4種類があらかじめミックスされています。数撃てば当たる的発想ですが、例え合致しない型が流行ってきた場合も(ワクチン接種から抗体産生までに動員されるコンポーネンツが型によらず同じものである点を考えれば)症状が軽く押さえられることが理論上考えられ、実際に証明もされております。
なので、抗体を作ることを目的としてワクチンはある程度の変異に対して有効といえます。
ただ、ADE(抗体依存性感染増強)の可能性を考慮すると慌ててすぐに飛びつかない方が良いという慎重な意見もあります(後述)。

そして、一番大切なのは、インフルエンザのケースでは、いろんな変異株にもかかわらず、これまでのところリレンザが全てに効く、結果オーライだという点です。もちろん未来永劫そうした状況であるとは誰も考えていなくて常に新しい化合物、薬が耐性ウイルス株の出現によるパンデミックを想定して、開発され続けています。

ただ、現時点で言えることは、
インフルエンザワクチンがあのくらいの有効性(40−70%)であることを考えると、コロナワクチンも同様にこのような有効な薬が出てくれば問題なく収まるのではなかという考え方もできます。それがいつも臨床で言うのですが、作用が異なる薬が2、3種あれば選択肢も広がるし併用もできたりとより良い。何れにせよウイルスの変異に対抗するのはワクチンではなくて治療薬であるという結論です。

私たちはすでにパンデミックという状況にあるわけであって、これ以上なすすべがあまりない状態。考えていくと、起こるべくしておきた変異株、例えば、今2丁目を歩いていて角を曲がったら普通3丁目か4丁目かに出る、そんな感じなのでこれまで通りにワクチンや治療薬に期待することではないでしょうか。

もう一つ言えば、変異は悪い方向ばかりではないのである意味必要性のあるものです。

一つは、弱毒化。
弱毒化の変異によって数年かけて収束するのが通常でスペイン風邪などの場合も何もなかった当時はこうして収ったはずです。

もう一つ、
科学的に重要な変異について考える場合、閑散期にどこにどういう風にプールされているのか、というポイントです。
蚊は冬の間どこにいるのか。
まさか毎年鶏や豚からやってくるはずもなく(そうした場合には大流行する可能性があるので十分警戒されていて、遺伝子型を調べればすぐにわかる)、そうなるとヒトにプールされているとしか考えられない。
いわゆる、無症候性キャリアがいるという仮定。
無症候性キャリアがいて源になるとすれば、そこから誰にどういう風に感染し始めるのかという問題(周りには家族や学校、職場仲間など普通に生活している人がいるのになぜ移らなかったのかという疑問)。
物語の最初はいつも疑問で、例えば風邪などでも、体が疲れるとどこからとなくやってきたカゼウイルスに感染する。カゼウイルスは普段どこにどうしているのか、わからない。そして、カゼが万病の元と良く言う、それはいわゆるカゼウイルスという弱毒株ウイルスが肺炎など2次的にいろんな不都合をもたらす、という解釈ですが、弱毒株ウイルス自体で重症化するような事態が起きるのか、実は変異して強毒化したりしていたのか、業界でもカゼウイルスは雑魚ぽいので興味がなくので誰も知らない。

インフルエンザに関していえば、真夏に数例経験したことがありますが、いずれも子供。聞くと学級閉鎖になりかけているレベルのものもあるという。それがそのまま冬に移行したら、、、と懸念するも、(大人へと)流行はせずにすぐに収まる不思議。
このpathについては2つの可能性。
免疫学的に準備のないスッピンのnullな集団があってそれが無症候性キャリアからもらうことで始まる。日本人のワクチン接種率は案外低く40%代なので割とそういうカテゴリーの子供がいる可能性。
あるいは、が持っているウイルスが変異することで型が異なる抗体しか持たない別の宿主に感染する。
後者の場合は大人にも広がる可能性があるので、両者を合わせた形、

無症候性キャリアからスッピン集団に入り、その中で変異して広がる、ただ、伝播しにくい季節でもあり大人を含めた流行にはなり得ない、という仮説。

こうした穏やかな病原性を持った株への変異は常に起きているはずで、その辺も子供、学童の集団をPCRなどでスクリーニングすれば仮説に対する答えが出るかもしれない。
結果「ウイルスがプールされている源が学校」ということになれば流行する冬場に向けて感染数を減らすなど対策が取れるはずであり、大変重要な知見だと思うのです。

さて、最近候補薬の追加がありました。

有望な候補薬の追加
つい最近 2020年12月3日発行
Nature の記事に追加された候補薬として
MK-4482/EIDD-2801が有望。

Therapeutically administered ribonucleoside analogue MK-4482/EIDD-2801 blocks SARS-CoV-2 transmission in ferrets

Nature Microbiology volume 6, pages11–18(2021)


→ アナログMK-4482/EIDD-2801の作用で変異が起き、細胞培養でも生体内でも使い物にならないウイルス断片が確認された。
副作用が少なく効果が得られたという結果の解釈の一つとして、おそらくアビガンに比して選択性がより高く(GかA⇄C)ピンポイントで作用する、タンデムな取り込みによる激しい伸長反応阻害もないかもしれないが、現時点で確認はしていないため今後の課題となります。

大切なのは、
インフルエンザのケースでは、いろんな変異株にもかかわらず、これまでリレンザが全てに効く、という点です。インフルエンザワクチンがあのくらいの有効性(40−70%)であることを考えると、コロナワクチンで悩むうちに有効な薬が出てくれば問題なく収まる可能性があります。

MK-4482/EIDD-2801は細胞核というかなり内部、際どいところでで働くので、そこまでたどり着くウイルスが少ない方が理想的です。具体的にはカモスタットのように入り口で防いで、スルーされたらこういうので防ぐ。内野と外野みたいに2重で守備ができれば理想的だと思います。
製薬大手のメルクが本気出してくればもしかしたら実用化も早いかもしれません。
希望はあちこちにあるように思います。

過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ。
大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないことであるーアインシュタイン

それでは、皆様良いお年をお迎えください。

成育医療センター付近の銀杏並木


Sail Away
Kenny Barron 


↓以下MK-4482/EIDD-2801に関する論文と解釈(参考まで)

Therapeutically administered ribonucleoside analogue MK-4482/EIDD-2801 blocks SARS-CoV-2 transmission in ferrets

Nature Microbiology volume 6, pages11–18(2021)

Abstract
The coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic is having a catastrophic impact on human health1. Widespread community transmission has triggered stringent distancing measures with severe socio-economic consequences. Gaining control of the pandemic will depend on the interruption of transmission chains until vaccine-induced or naturally acquired protective herd immunity arises. However, approved antiviral treatments such as remdesivir and reconvalescent serum cannot be delivered orally2,3, making them poorly suitable for transmission control. We previously reported the development of an orally efficacious ribonucleoside analogue inhibitor of influenza viruses, MK-4482/EIDD-2801 (refs. 4,5), that was repurposed for use against severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) and is currently in phase II/III clinical trials (NCT04405570 and NCT04405739). Here, we explored the efficacy of therapeutically administered MK-4482/EIDD-2801 to mitigate SARS-CoV-2 infection and block transmission in the ferret model, given that ferrets and related members of the weasel genus transmit the virus efficiently with minimal clinical signs6,7,8,9, which resembles the spread in the human young-adult population. We demonstrate high SARS-CoV-2 burden in nasal tissues and secretions, which coincided with efficient transmission through direct contact. Therapeutic treatment of infected animals with MK-4482/EIDD-2801 twice a day significantly reduced the SARS-CoV-2 load in the upper respiratory tract and completely suppressed spread to untreated contact animals. This study identified oral MK-4482/EIDD-2801 as a promising antiviral countermeasure to break SARS-CoV-2 community transmission chains.

イタチ科のフェレット(ミンクにコロナが感染したとか記事を見たことがありますが、鼻腔などに比較的コロナが感染しやすい動物。自然宿主かどうかは不明)

https://ja.wikipedia.org/wiki/フェレット

にSARS-CoV-2を多量に鼻腔に感染させ、分泌するグループを作成、若い人の集団モデルとして、インフルエンザ治療薬候補であるMK-4482/EIDD-2801による治療を試みた。

結果、この化合物は新型コロナウイルスSARS-CoV-2 に有効なのではないかという論文です。

この化合物MK-4482/EIDD-2801に関しては、
「アビガン 、レムデシビル同様核酸の合成阻害に働く」仲間なのですが,現在製薬大手メルクが実用化しようとしています。
最初に化合物を作り出したという論文が2019年に出ていて詳しく書かれています↓。既存の薬剤特にアビガン との比較が気になります。

Characterization of orally efficacious influenza drug with high resistance barrier in ferrets and human airway epithelia

Sci Transl Med. 2019 Oct 23; 11(515): eaax5866.


要旨
N4-hydroxycytidine (以下NHC) というシトシン(C)のアナログのプロドラッグをインフルエンザ治療目的で新規に合成した。
培養細胞でインフルエンザウイルスに対する抑制効果が認められ、治療薬としての候補に挙げられた。

→N4-hydroxycytidine (NHC)はこれまで見てきたアビガンやレムデシビル同様のRNAに新生取り込まれるリボヌクレオシドアナログ。
では、興味は当然それらと比べていかなるアドバンテージがあるのか、ないのかという点。

その前年2018年に出ている論文で
アビガンとポリメラーゼ変異の関係について、
↓ 詳しく述べられています。

The mechanism of resistance to favipiravir in influenza

Proc Natl Acad Sci U S Av.115(45); 2018 Nov 6


・インフルエンザのポリメラーゼ(RdRP)におけるPB1部位のモチーフFにおけるK229R 変異(ポリメラーゼを構成する第229番目のアミノ酸がK→Rへと変わる)がアビガンに感染細胞における耐性を与える。この変異はウイルスの結合に影響することで機能を低下させている。
一方でP653L変異では結合に影響はないもののK229R 変異をレスキューして耐性をのぞくことで再び有効性が取り戻される。

・つまり、2段階で、2つの変異が起きた際には耐性が生じる(というアビガン耐性のメカニズムがわかった)。

・K229Rがインフルエンザウイルスの高度に保存されたRdRP部分における構造変異を起こしているということから他のRNAウイルスでもmotif Fにおける変異を誘導することがアビガン耐性の原因であると示唆される。

続けて新生化合物の論文
Characterization of orally efficacious influenza drug with high resistance barrier in ferrets and human airway epithelia
を読んでみるとアビガン との比較についてしっかり述べてあります。

Discussion
(略)Our next-generation sequencing analysis of EIDD-2801-experienced virus populations indicated a high genetic barrier to influenza virus resistance to inhibition in cell culture. This observation was reminiscent of slowly emerging influenza virus escape from T-705 (favipiravir) (29), a nucleoside analog currently approved in Japan for use against pandemic influenza viruses that do not respond to conventional therapies. However, a potential for teratogenicity (30) compromises the clinical use of favipiravir especially against seasonal influenza, and we noted that anabolism of favipiravir to the bioactive tri-phosphate is inefficient in some primary human cells of disease-relevant respiratory origin (10). Although it was originally thought that escape of influenza virus from favipiravir was unlikely (31, 32), a recent study combining continued virus passaging in the presence of sub-sterilizing compound concentrations with deep sequencing revealed a 2-step escape pathway (33). Over the course of ten passages, a virus population emerged in which a mutation in the polymerase basic 1 (PB1) subunit mediated resistance to favipiravir, albeit at a fitness cost, which was compensated for by a second mutation in the PA subunit. The equivalent adaptation approach applied in our study to EIDD-2801 did not yield any polymerase allele variations that became fixed in the virus population, providing promise that EIDD-2801 addresses a major limitation of current influenza virus therapeutics, although only prolonged viral exposure to the compound in vivo will ultimately reveal whether some degree of resistance can be achieved.
・favipiravir(アビガン)では、生体内を模した初代呼吸器細胞系では3リン酸化合物への変換が不十分であることを証明した。
→プロドラッグが実際に体内でヌクレオシドアナログ変換して核酸に取り込まれるにはリン酸化される反応(先月11月記載)が必要だが、その効率自体が悪い。

・10代以上継代した細胞ではPB1に変異を有する細胞群が現れたが、これによってインフルエンザウイルスのゲノムとの結合性が変化することでアビガンの耐性が獲得されると考えられる。ただそれは、PAサブユニットにおける新たな変異によってその分帳消しになる。

・これに対して、EIDD-2801 (NHC)ではそのようなポリメラーゼの変異は認められず、EIDD-2801が耐性インフルエンザウイルスの治療においてある程度使えると考えられる。

さらに、読み進めると、

Deep-sequencing of an EIDD-2801-experienced virus population furthermore revealed that the compound caused specifically C-to-U and G-to-A transition mutations in influenza virus genomes, demonstrating that tautomeric interconversions of NHC (34) base pair as cytosine or uracil at replication or transcription once NHC has been integrated into the viral RNA. 

Notably, A-to-G transition mutations were absent in genomes of NHC-experienced influenza viruses, although we had previously observed that transcripts of respiratory syncytial virus, a member of the distantly related pneumovirus family of non-segmented RNA viruses (35), harbored C-to-U, G-to-A, and A-to-G transitions after exposure to NHC (10). 

EIDD-2801(NHC)使用では、
シークエンスして調べてみると
C→U、 G→Aという点突然変異がインフルゲノムに見られたがA→Gは無かった。

これに対して、遺伝子分節ごとに転写していくインフルエンザとは異なり、非分節タイプのRSウイルスの場合にEIDD-2801使用を使用すると
C→U、 G→A、A→Gの3種類の変異が認められた。

We consider it most likely that initial recognition of NHC-TP by orthomyxovirus and pneumovirus polymerases for incorporation into nascent RNAs is distinct. 
Based on transition mutation characteristics, influenza virus polymerase appears to accept NHC at the stage of incorporation only in place of cytosine and not uracil, and tautomeric interconversion must therefore occur subsequently at the replication stage. In contrast, respiratory syncytial virus polymerase appears capable of incorporating NHC in either tautomeric form, resulting in transitions originating from primary incorporation of NHC-TP in place of uracil and subsequent base pairing as cytosine (A-to-G), post-incorporation tautomeric interconversion and base pairing as uracil (G-to-A), and tautomeric interconversion of NHC incorporated in progeny viral genomes prior to reverse transcription and sequence analysis (C-to-U).
These results are consistent with the induction of viral error catastrophe (36) as the predominant mechanistic principle of NHC activity influenza viruses and other RNA viruses such as respiratory syncytial virus. 

We demonstrated that substitution of cytidine triphosphate for NHC-TP partially restores respiratory syncytial virus polymerase activity in a comparable in vitro assay (10), but it remains to be addressed whether NHC increases the frequency of delayed chain termination or interrupts RNA extension after tandem incorporation by influenza virus polymerase.

解説
→先月はアビガンのところでは、ややこしいからアビガンの体内での変化したアナログがG(グアニン)の位置にタンデムに(2個続けて)取り込まれた場合には伸長反応 chain elongationを抑制します。実際にこのタンデムな配列GGは結構無数にありますのでいたることろで伸長反応が止まります。

加えて、詳しくはその中間的な機序もあって、ウイルスのゲノムに取り込まれた不良品の材料(ヌクレオシドアナログ)が具体的には(RNA依存RNAポリメラーゼ)というウイルスが持ち込む最もエッセンシャルな機能性タンパク質を阻害することで伸長反応が阻害されるというメカニズムもあります。
インフルエンザウイルスのポリメラーゼはウイルスゲノム(RNA)8つの分節に結合して働きますが、その結合が転写や複製にはとても重要です。ヌクレオシドアナログで転写を阻害した場合いろんなエラー物質が生じるはずだが、一つの元になる原因はこのポリメラーゼという機能ユニットが変質することです。

さて、今回はEIDD-2801(NHC)ではどのようにして阻害機能を発揮するのかという点。

少しややこしいのですが端折らずに解説すると、
通常のインフルエンザウイルス複製では
マイナス鎖(ゲノム)→プラス鎖→マイナス鎖(ゲノム)の過程で、例えば、シトシン(C)を含む部分は相補的に、

C →G →C 

の順番で合成され
以下同様に
A →U →A
G →C →G
U →A →U

と進み、最後の塩基は最初の延期と同じものが合成されるが、NHC(EIDD-2801)(例えば、CではなくC?と記載)という不良品を組み込んだ結果、C?が構造異性体ウラシルUに変換されるものがある。
その結果、元来両方が生じる(構造異性体の変換 tautomeric interconversion ⇨)。その結果、

C → G → C ? ⇨ U

つまり、C→Uという変異が複製鎖において出現する。

グアニン(G)の場合は

G→  C?⇨U(+鎖の中での反応)→ A

つまり、最終的にG→Aという変異が複製鎖において出現する。

ところが、
アデニン(A) の場合、
A→ U→ A

と原則影響を受けなかった。

つまり、C?はU(ウラシル)にもCと間違って取り込まれる事はない。

このようにインフルエンザウイルスやRSウイルスゲノムに取り込まれた場合変異の嵐が起き、それはすなわち「エラーの大惨事 error catastrophe」によってさらなる増殖を阻害する。

結果
・インフルエンザウイルスのポリメラーゼはこのアナログEIDD-2801 (NHC)をC(シトシン)の代わりに特異的に取り込み、最終的にその機能を妨害することではインフルエンザウイルスのポリメラーゼに対して抑制的に働く。

・結果として、インフルエンザやRSウイルスゲノムの複製では変異が多発しerror catastropheが起きることで役に立たないものが増えることで阻害効果が発揮される。 

・インフルエンザとRSウイルスのRNAポリメラーゼの違いが観察された。
RSウイルスでは、インフルエンザ同様の2種類の変異C→UとG→Aに加えて
A→Gの変異が観察された。
元来のCの位置に加え、Uの位置に取り込まれたからであり、
A→C?→G
おそらくRSウイルスのRNAポリメラーゼはインフルエンザのそれと認識機構の違いがあるゆえと考えられる。

・NHCがアビガン同様にタンデムで、あるいは頻繁に伸長反応  chain elongationを簡単に抑制するのか、否かそれは今後の課題。

考察
アビガンに比してNHCが有するアドバンテージとは、
アビガン(体内でファビピラビ ル RTP )は 「GTP および ATP 」と競合してウイルス RNA 鎖に 取り込まれ,転写と複製を阻害するのに対し、
NHCはインフルエンザにおいてCのみに競合してウイルス RNA 鎖に 取り込まれる。
一個違いでも4個のヌクレオシド成分しか存在しないわけだからその割合は特異性という観点から大変大きいと考えられる。

→イメージでいうと、
アビガンに比較してNHCではより選択制の高いヌクレオシドをターゲットにするのでピンポイント爆弾。

つまり、そこから予想されるのはランダム性が少なくなることで
①「より副作用が出にくい」
ということと、上記2点のポリメラーゼにおける突然変異の可能性も減るので
②「耐性が出にくい」
という点が気になります。

では、実際どうか。
再び最初のフェレットのコロナ感染を治療したというnatureの論文
Therapeutically administered ribonucleoside analogue MK-4482/EIDD-2801 blocks SARS-CoV-2 transmission in ferrets

に戻り、
フェレットにおける「副作用に関する記載部分」を読んでみる↓

The animals in the high-inoculum group experienced a transient drop in body weight that reached a low plateau on days 5–6 after infection but recovered fully by the end of the study (Fig. 1f and Supplementary Table 5). One animal in the low-inoculum group showed a gradual slight reduction in body weight until the end of the study (day 10). No other clinical signs, such as fever or respiratory discharge, were noted. The complete blood counts (CBCs) taken every second day revealed no significant deterioration from the normal range in the overall white-blood-cell counts as well as lymphocyte, neutrophil and platelet populations of either inoculum group (Fig. 1g and Supplementary Table 6). The relative expression levels of type I and II interferon in the ferret peripheral blood mononuclear cells (PBMCs) sampled at 48-h intervals reached a plateau approximately 3 d after infection and stayed moderately elevated until the end of the study (Fig. 1h,i and Supplementary Table 7). IL-6 levels were moderately elevated in some animals but these changes did not reach statistical significance (Fig. 1j). However, we noted a prominent expression peak of select interferon-stimulated genes (ISGs) with antiviral effector function (MX1 and ISG15) 4 d after infection, followed by a return to baseline expression by the end of the study (Fig. 1k,l).

体重減少がドーズに伴い認められた以外特に熱や呼吸器排泄物増加などの副作用はなかった。CBCなど検査も異常なく、IL6やインターフェロンIやIIの誘導(ウイルスによくレスポンスする)も起きなかった。2例では感染4日後にinterferon-stimulated genes (ISGs)が上昇したが実験終了までには治った。

→特に副作用がなく、炎症反応も惹起されなかった。比較的安全性が高い。

・次に、インフルエンザウイルスとの関連でCのみに競合してピンポイントで鋭く抑制作用を示すという点。
残念ながらこの論文内ではシークエンスを調べていなかったので不明ですが、おそらくSARS-CoV-2 のポリメラーゼとの相性は悪くないのか、同様にCのみに競合して働いているのであればアビガンに比し副作用が少なく、かつ耐性もつきにくいと予想される。

Main
This view is consistent with the frequent observation (such as in ref. 28) that many mutant viruses can be propagated in cell culture but are attenuated in vivo and incapable of productive host invasion.

・細胞培養で変異株の広がりは多く見られるものの、生体内ではいずれも弱毒化されており、ホストに侵入して増殖する能力を欠くものである点、MK-4482/EIDD-2801に有効性があると認識するに足ると考えられた。

コメント

病気の話 32 新型コロナウイルス 治療薬候補 ⑤

2020-11-28 13:09:55 | 日記
まとめ

・ウイルスの細胞内への侵入に関与するカスケードにおいて種々のポイントで作用する阻害剤(候補薬)があります。

大まかにこれまで
①TMPRSS2阻害剤
②PIKfyveリン酸キナーゼ阻害剤
③カテプシン阻害剤
④インポルチン阻害剤(多分)
⑤RNAポリメラーゼ阻害剤ですが、もう少し出てくるかもしれません。

ただ、細胞の構造・機能とウイルスのエントリーという関連を既知のモデルも含め考慮するとこれ以外の作用点とその阻害剤は、新たな化合物を求めてアマゾンの奥地に探しに行ったりしない以上、出たとしてもあまり多くはないと思われます。

・治療薬として使用するのか、予防薬として使用するのか。

ワクチンも準備中とはいえ、これという治療薬がない現時点では上記の候補薬は全て治療薬としてそれぞれの状況に応じて使用されるべきだと思うのですが、予防薬としては少し異なる気がします。
予防薬として健常人が服用すると仮定すればワクチン同様副作用がミニマムなものが望ましい。

ここで、
・SARS-CoV-2の細胞内への侵入経路についてこれまで論文に出てきた因子をまとめると、(未だ全てが確定ではありませんが)

ACE受容体へのウイルス・スパイクタンパク質(Sタンパク質)の結合→
TMPRSS2による切断→Sタンパク質が活性化される→
細胞内へと侵入、その際エンドソーム形成(細胞に取り込まれる際に細胞膜の一部からできた小胞を形成、その中に包まれる→
ライソゾーム酵素(によるさらなる修飾)→
細胞質内を移送される→複製するため細胞核に到達する→
複製

という流れになります。

・さらに、ここに
その過程に関与するいくつかのタンパク質、酵素類(下線)とその阻害剤(太字)についてこれまで出てきたメンバーを当てはめるてみると、

ACE受容体へのウイルス・スパイクタンパク質(Sタンパク質)が結合し、細胞膜に結合、複合体形成(作用場所=細胞膜)
切り離され内部に入る準備ーTMPRSS2 カモスタット
細胞内へと侵入=エンドサイトーシスの過程で
エンドソーム(小胞体)形成ーPIKfyveリン酸キナーゼApilimod
ライソゾームによる修飾ーカテプシンCA074me、MDL 28170、ONO 5334
細胞質内を移送~移動ーインポルチンイベルメクチン(場所=細胞質)
核内で複製ーRNAポリメラーゼアビガン、レムデシビル(場所=核)

となります。

上記から見えてくるものとして、

・上流からアプローチする方が有利(効果的)という一般的な考え方。
そうすると、
上流では副作用の少ないカモスタットの内服、
に加えて、下流で(すり抜けたものをターゲットに)いずれかを併用するという考えがあります。よく言う、薬は薬理効果が違うものを組み合わせると相加的効果が期待されるという発想です。
現時点ではPIKfyveリン酸キナーゼやカテプシンの阻害剤はお薬として世に出ているものではなく未だ化合物段階ということで、併せるとすれば細胞内輸送を阻害すると考えられているイベルメクチンが現時点では安全面からの予防薬候補として有望なのではないでしょうか。

・一連の論文データ(ヌクレオチドアナログ以外)、PIKfyveリン酸キナーゼやカテプシンの阻害剤に関しては、いずれの論文もTMPRSS2が発現していないという前提条件で、細胞系(293T cells)を使っています。
これはおそらく、そのままTMPRSS2が強く発現している系においてはONO5334の例が示すように、実験系においてもTMPRSS2が作用しているとその下流をいくら抑制しても効かないということです。

・つまり、その状態を生体内でその状態を模擬的に再現するならば、TMPRSS2を抑制する、すなわち、カモスタットの投与しているというのが前提条件になるという点に留意しなくてはなりません。
これらの実験データを臨床薬に応用する際には、生体内でプラスαの効果として下流にあるApilimod、CA074me、MDL 28170などの化合物効果の相加相乗効果があるか否かを判定するところからストーリーが始まるということになります。

・5月から重症患者へのアビガンとフサン(カモスタットの注射)の併用療法の臨床研究開始されています。治療薬としての併用アプローチです。
その他、来年には同様の治療結果がいくつかの施設から報告されると思います。


これらのことから、
・現存する薬剤で治療的選択、その組み合わせは現場での判断。

・予防的選択としてはそれぞれに副作用が少ないカモスタット+イベルメクチンというコンビネーションが効果を増強するに際していまのことろ理想的だと考えられます。

・前述のヘルスケアワーカーのケースのようにイベルメクチン単独でも良いデータも出ているのでコンビネーションではより良いデータが期待されますが、その際にはいわゆる飲み合わせという問題とそれぞれの投与量加減の問題は課題として残ると思われます。

fini

Japanese maple tree

Lullaby Of Birdland
Lee Konitz featuring Barry Harris
コメント

病気の話 32 新型コロナウイルス 治療薬候補 ④

2020-11-28 09:44:02 | 日記
8. イベルメクチン ivermectin(ストロメクトール)

元来寄生虫治療薬で通常の臨床家には馴染みのない謎の薬。
大掴みに把握すると抗生物質の一種という見方もあります。もともと寄生虫(回虫、フィラリアなど)に対しては無脊椎動物特異敵構造の一つであるクロライドチャンネル(塩素Cl)に作用し過分極を引き起こすことで選択的に(宿主に無傷で)致死性に働くとされています。放線菌から分離されたという一面からも抗生物質という分類でよいかと思います。
ただ、それだけではないようです。
細胞内でインポルチンinportinは細胞核へと必要な物質を運ぶ担体物質ですが、
イベルメクチンはこのはインポルチンの作用を妨害することで、核へ運ばれた、
ウイルスなどの核酸が複製するにあたって、その前段階を阻害してしまう作用が
あるということがおそらく、もうひとつの重要な作用であろうとされています。

2つの重要な点は、これまでに出てきた様々な物質がひとの細胞に侵入する際の、
いわば水際での食い止め作用を担っていたのに対して、イベルメクチンはそれ以降、つまり、細胞の中に入ってしまってからそれを核に移行して複製するという次のステップをブロックする作用があるということです。ここから、必然的に、両者、つまり水際の守りとその後の守りを固めればより強力な防御ができるということが想像に難くないという点です。

それから、もう一つ。この薬剤の優れている点はこれまで元来の使用目的である
寄生虫感染が多いアフリカなどの地域を始め長年にわたり多くの使用実績が有る
にも関わらずほぼ有害な副作用が報告されていない安全な薬剤として認められて
いる点です。行ったことはないので真偽はわかりませんが、ご当地アフリカではヤクル
トおばさんならぬヤクルトおじさんがいてこのイベルメクチンを村々に配り歩いている
という記載を見たことがあります。

ということで、これまでにもデング熱、インフルエンザなどRNAウイルスに応用
されており、

"The FDA-approved drug ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 
in vitro"
 
Abstract 
Although several clinical trials are now underway to test possible 
therapies, the worldwide response to the COVID-19 outbreak has been 
largely limited to monitoring/containment. We report here that 
Ivermectin, an FDA-approved anti-parasitic previously shown to have 
broad-spectrum anti-viral activity in vitro, is an inhibitor of the 
causative virus (SARS-CoV-2), with a single addition to Vero-hSLAM cells 
2 h post infection with SARS-CoV-2 able to effect ~5000-fold reduction 
in viral RNA at 48 h. Ivermectin therefore warrants further 
investigation for possible benefits in humans. 

オーストラリアのチームから発表された論文
Antiviral Res. Published online 2020年4月

要旨
FDA認可済みの薬剤vermectinを実験的にSARS-CoV-2感染培養細胞へ投与した結果、ウイルスRNAを対非投与群5000倍(48時間後)の抑制効果を示しその治療への有効性が期待された。

これに対して、FDAから
イベルメクチンは動物用(の寄生虫治療)としてFDAが認可しているのでコロナ
目的で人には使用しないよう勧告。人への影響とコロナウイルスへの作用につい
ては現在調査中であり、結果が出たら発表する(2020年4月10日)。

"FDA Letter to Stakeholders: Do Not Use Ivermectin Intended for Animals as Treatment for COVID-19 in Humans"


Ivermectin tablets are approved for use in people for the treatment of some parasitic worms (intestinal strongyloidiasis and onchocerciasis) and ivermectin topical formulations are approved for human use by prescription-only for the treatment of external parasites such as headlice and skin conditions such as rosacea.  
Ivermectin is FDA-approved for use in animals for prevention of 
heartworm disease in some small animal species, and for treatment of 
certain internal and external parasites in various animal species. 

イベルメクチンは日本発、世界中で寄生虫治療薬として使用されているが、アメリカFDAはUSAでの同役の許認可は動物に対してのみなので人のウイルス治療には使用しないようにという内容です。一応、日本でもヒトに認可されアフリカでも普通に使用されています。上記オーストラリアの論文では「FDA認可済みの薬剤 Ivermectin」とタイトルにあったので、おそらく、現時点では動物のみに適応としているFDAとしてはおそらくドキッとして、USA国内ではあまり勇み足にならないようにということではないでしょうか。

・もう一点のイベルメクチンに対するクレームとして、臨床で使用するためには薬剤の濃度が上がらないので(多めに内服した場合には副作用との兼ね合いから)今後の検討が必要、という見解です↓。

"The Approved Dose of Ivermectin Alone is not the Ideal Dose for the 
Treatment of COVID-19"
Clin Pharmacol Ther. (2020 May 7)


…In summary, the likelihood of a successful clinical trial using the 
approved dose of ivermectin is low. Combination therapy should be 
evaluated in vitro. Repurposing drugs for use in coronavirus disease 
2019 (COVID-19) treatment is an ideal strategy but is only feasible when 
product safety has been established and experiments of repurposed drugs 
are conducted at clinically relevant concentrations.

公認されている濃度(200 μg/kg))での単独投与ではイベルメクチンは冒頭のオーストラリアのチームのような結果は出せない可能性がある。他の薬剤と兼用するのがありかもしれない。
臨床的に(現実的に到達できる血中濃度など)実現可能な線でさらに検討すべき、という主張。

・同様にイベルメクチンはヒトに対して600μg/kgの投与でも冒頭のオーストラリアのチームのような血中濃度は得られず、通常投与では臨床面での効果は期待できないだろうという反論↓。

"Ivermectin and COVID-19: A report in Antiviral Research, widespread interest, an FDA warning, two letters to the editor and the authors' responses"


・ここで改めて、イベルメクチン(ストロメクトール 2mg/tab)の添付の効能書きを確認してみると、通常の線虫症の治療では「体重あたり200μg/kg、成人体重60kgで4錠、2週間後にもう同じ量」を内服とあります。

この線で、少し多めに投与して「臨床的に予防効果」が得られた、という報告もあります(査読を経ていないので未だ論文として認められたものではない、現段階でいわば提出レポートのような形のものです)(10月29日)。

Role of ivermectin in the prevention of COVID-19 infection among healthcare workers in India: A matched case-control study

マッチドペア分析 Matched pair analysis
(対象群と比較群を個々に対にして外的因子について比較する解析法)

インドで行われた186人ずつのマッチドペア分析において、体重あたりイベルメクチン300μg/kg(線虫の通常量比1.5倍)を(ハイリスクな公衆衛生関連の職場にいる)ヘルスケアワーカー3日後に繰り返した結果1ヶ月の(PCRによる)観察で73%の感染減少効果が認められた。対象に用いられたたの薬剤ではそうした効果が認められなかったことから予防的効果が期待される。


Results
Ivermectin prophylaxis was taken by 77 controls and 38 cases. Two-dose ivermectin prophylaxis (0.27, 95% CI, 0.15-0.51) was associated with 73% reduction of COVID-19 infection among healthcare workers for the following one month, those who were involved in physical activity (3.06 95% CI, 1.18-7.93) for more than an hour/day were more likely to contract COVID-19 infection. Type of household, COVID duty, single-dose ivermectin prophylaxis, vitamin-C prophylaxis and hydroxychloroquine prophylaxis were not associated with COVID-19 infection.
Discussion
Our study findings throw light in the same direction that ivermectin may play a vital role in the prevention strategy of COVID-19 infection.


考察
準備段階のデータですが、300μg/kgを3日後に繰り返す、つまり、通常の線虫対策とさほど変わらない量で73%と統計的に予防効果がある投与量が示されています。1.5倍量ですから、副作用は出ていないはずなのですがそれに関してコメントがなかった点は論文として未完。ただおそらく、通常の薬剤の安全域を考慮すれば1.5倍はなんら影響はないと思われます。
ここで大切なのは試験管やシャーレの中での結果ではなく、ケアワーカーさんの職場での予防効果として実際にヒトでのコントロールスタディの形になっている点。
前述のアビガンでも第3相臨床試験の用量は、1日目1800mg×2回、2日目以降は1回800mg×2回で、最長14日間。インフルエンザの3倍量を約3倍期間投与しているので投与量加減に関しては難しい裁量で今後の検討ということです。
もともとあまり馴染みがない線虫治療薬のイベルメクチンは4錠→2週間後もう4錠、というかなり変則的な投与法がスタンダードなのでこれも投与方法や量に関しての判断が難しいのですが、これまでの歴史の中では副作用が少ない点、予防薬候補としては検討の余地が大きいのではないでしょうか。

9. レムデジビル

レムデジビルはアビガン同様のプロドラッグで体内ではヌクレオチドアナログであるGS-441524三リン酸に変化しウイルスのRNAポリメラーゼに(おそらく取り込まれて伸長反応を阻害する)という点でアビガンなどと同様の薬理作用でエボラウイルスなどに抑制効果があるのではないかとされ研究されてきた。

"Therapeutic efficacy of the small molecule GS-5734 against Ebola virus in rhesus monkeys"

Nature. 2016; 531(7594): 381–385.
Published online 2016 Mar 2.

アフリカアカゲザルにレムデジビル(コードネームGS-5734)を用いたエボラウイルスの治療効果は対死亡で見みれば100%であったが、投与量などは検討課題という2016年の論文。

アビガン同様ヌクレオチドアナログ(核酸塩基の類似体)はウイルスに特異的ではなく、ヒトに存在する酵素によってその過程に取り込まれる可能性があるので全身の細胞に働くことがあり、大きな副作用が出る可能性がある。この点、同様に構造的な欠陥が否めない。
もともとシークエンス反応などに用いるddNTPなどヌクレオチドアナログは昔からいろんな種類のものが数多くありますが、もしそのまま身体に入れば全身でDNAやRNAの伸長反応を阻害します。ただ、その華麗なメカニズムでノーベル賞をもらったアシクロビル(ゾビラックス)のようにウイルス感染細胞に特異的に働くというプロセスは非常に重要です。それがなければ全身細胞の複製や増殖にブレーキをかけるただの毒という解釈になります。
実際に肝障害、腎障害など結構重篤な副作用が出るとされています。

“Remdesivir for the Treatment of Covid-19 — Final Report”

This article was published on October 8, 2020,
一応有名雑誌の査読前段階の記事で5月に有効性があると判断したものです↓。
(その後そのまま10月に発表された。)


CONCLUSIONS
Our data show that remdesivir was superior to placebo in shortening the time to recovery in adults who were hospitalized with Covid-19 and had evidence of lower respiratory tract infection.

結論
レムデシビルはCovid-19で入院中の患者の回復期間を短くし、呼吸障害を抑制する根拠が示された。

この中の結論の部分
Serious adverse events were reported in 131 of the 532 patients who received remdesivir (24.6%) and in 163 of the 516 patients who received placebo (31.6%).
重大な副作用がレムデシビル投与群の24.6%、対照群では31.6%認められた、との記載部分は疑問。それが正しかったとしても、レムデシビル投与で24.6%は結構な数字ですから、ここはさらに深くは読まず置いておいて、
その後の流れとして、
20 November 2020

「WHOはレムデシビルに関して効果がほとんどないか、全くなかったとして、入院患者に対して重症度によらず、必要と判断された場合(conditional)以外の使用はしないよう勧告した。」

WHO has issued a conditional recommendation against the use of remdesivir in hospitalized patients, regardless of disease severity, as there is currently no evidence that remdesivir improves survival and other outcomes in these patients.


で終えておきます。

つづく


Goodbye, Mr. Evans
Tommy Flanagan

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