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サイエンスの話 42 ニューロンにおけるゲノム情報の空間的編集

2024-05-30 15:58:04 | 日記
とても斬新で面白いサイエンスの論文。

(背景) RNA編集

1980年代後半にRNA編集という現象が確認された。RNA編集は神経細胞で観察されるRNA修飾の一つで、二本鎖RNAのアデノシン(A)をイノシン(I)へと変換する現象で、結果mRNAの配列はイノシンは構造がグアノシンと類似しているため,翻訳ではグアノシンとみなされる、つまり、ゲノムにDNA変異がないにもかかわらずアミノ酸置換が生じる。最初からその配列を有さずに、この手の込んだアミノ酸置換劇は何故か、進化の途上という解釈がある。つまりRNA編集は,“脳の複雑性”獲得に有用な働きをしている。RNA編集の異常は,筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患,プラダー・ウィーリー症候群やうつ病を含む精神疾患との関連が示唆されている。RNA編集遺伝子の一つadenosine deaminase acting on RNA1(ADAR1)は神経細胞でRNA編集効率は非常に高く、また、ADAR1と同様の活性を有し,高頻度にA-to-I RNA編集を引き起こす酵素としてADAR2を同定されている。一方で、神経細胞にのみ発現し,N末端側にアルギニンリッチな一本鎖RNA結合ドメインを持つがRNA編集活性は持たないADAR3(まで)も同定されている。ADAR3は,in vitroでRNA編集活性を抑制する。

ただ、ここで一つのルールが確認されるべきである。
真核細胞では、ミトコンドリアとプラスチドという特殊なゲノムを除いて、遺伝情報はすべて核内に封じ込められる。このような配置は、特に神経細胞のような複雑な形態を持つ細胞では、情報を様々な細胞領域に合わせて調整する方法に制約を課している。メッセンジャーRNA(mRNA)とそれがコードするタンパク質は、細胞領域間で異なるように選別することができるが、情報そのものは変化しない。アデノシン脱アミノ化によるRNA編集は、mRNAを再コード化することでゲノムの設計図を変えることができるが、このプロセスも核内に限定されると考えられている。

つまり、「核内で」mRNAに読み込まれた元のDNAに刻まれた遺伝情報は絶対であり、核外に出たmRNA、それを元に「核外で作られる」タンパク質情報そのものは変化しない、いわばドグマ dogma。

もし、核外でRNA編集が起きると仮定するとどうなるのか、「核内」に蓄えられた遺伝情報が最終段階で勝手に書き換えられてしまうことになる、、、

ところが、これまでよく研究されている脊椎動物と異なり、RNA編集が核外で起きている生物が見つかった、という論文。空間的編集 spatial editing という表現もおしゃれ。

(ポイント)

sqADAR2(ADAR2オーソログ)

甲殻類の頭足類は、A→I編集を用いてタンパク質のリコーディングを行うが、その頻度はこれまでに研究されたどの生物よりも桁違いに高い。例えば、スルメイカは神経メッセージの約3分の2をこの機構で再コード化しており、タコやイカも同様の頻度で編集を行っている。現在のところ、この高レベルの再コード化を推進するメカニズムの違いは不明である。
イカとタコのゲノムはともにADAR1とADAR2のオルソログをコードしており、イカADAR2の基質要件はin vitroで研究されている。イカK+チャネルとNa+/K+ ATPase αサブユニットをコードする成熟メッセージはイカADAR2によって編集され、少なくともいくつかのケースでは、適切な構造を形成するためにイントロン配列は必要ないことを示している。


Spatially regulated editing of genetic information within a neuron
ニューロンにおけるゲノム情報の空間的編集
Nucleic Acids Research, Volume 48, Issue 8, 07 May 2020, Pages 3999–4012, 
Published: 23 March 2020

要旨

真核細胞では、ミトコンドリアとプラスチドという特殊なゲノムを除いて、遺伝情報はすべて核内に封じ込められる。このような配置は、特に神経細胞のような複雑な形態を持つ細胞では、情報を様々な細胞領域に合わせて調整する方法に制約を課している。メッセンジャーRNA(mRNA)とそれがコードするタンパク質は、細胞領域間で異なるように選別することができるが、情報そのものは変化しない。アデノシン脱アミノ化によるRNA編集は、mRNAを再コード化することでゲノムの設計図を変えることができるが、このプロセスも核内に限定されると考えられている。
 
 今回我々は、RNA編集酵素であるADAR2(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ)が、イカの神経細胞では核外に発現していることを明らかにした。
 さらに、精製した軸索原形質(軸索原形質 axoplasm は軸索とニューロン中にある細胞質成分)はアデノシン-イノシン活性を示し、既知の基質中のアデノシンを特異的に編集することができる。

 また、RNA編集のトランスクリプトーム全体の解析から、イカの巨大な軸索では、細胞体よりも何万もの編集部位(全編集部位の70%以上)がより広範囲に編集されていることが明らかになった。

 これらの結果は、神経細胞内でRNA編集が領域特異的に(region-specific manner)遺伝情報を再コード化(recode)できることを示している。

結果

・sqADAR2はイカの体節の細胞質に発現している

(直径約500μm、長さ1cmのイカ D. pealeiiのGA (giant axon 巨大軸索)は、手作業で解剖することができる。解剖後、軸形質を押し出し、細胞膜とそれを包むシュワン細胞から切り離すことができる。軸索、体節、そして軸形質さえも分離して分析することができる利点がある)

(GA の神経伝達速度は小さい繊維束の哺乳類と変わらないが、情報が統一しやすい。これにより反応に対して迷いがないので、俊敏な動きができる)

(軸索は核を有さない神経組織の足=核外組織)

イカ組織におけるSqADAR2aとSqADAR2bの分布と細胞内局在を調べるためにウェスタンブロットを用いた。両方のsqADAR2について予想されるサイズのバンドは、試験したすべての組織で明らかであったが、神経組織[中枢神経系(CNS)のOLおよび末梢神経系(PNS)のSG]で最も強かった。非神経組織(鰓、心臓、上皮)でも発現は同様であったが、神経組織ではSqADAR2bがより顕著であった。

D.pealeiiから抽出し、α-sqADAR2抗体でプローブした神経組織と非神経組織のウェスタンブロット解析(上パネル)。ブロックコントロールも示す(下パネル)( Fig. 2aおよび2b)。

(GAー軸索では特に強く、他神経系の核外組織にSqADAR2b=71kdが発現している)

・sqADAR2はイカの軸索に発現している

ウェスタンブロットと免疫染色のデータを総合すると、核以外のいくつかの場所でSqADAR2がしっかりと発現していることがわかる。
それらは、いずれも核外である
(i)体節の細胞質
(ii)軸索の軸形質
(iii)シナプス
だった。

このデータは、次に、mRNAが核外で再コード化(recode)されうるかどうかという疑問につながる。

Fig4 (A)平行に走る小神経軸索(SN)を取り囲むイカGA(巨大軸索)の図。(B)イカGAにおけるsqADAR2タンパク質の免疫染色(i)。同じ部位の拡大図(ii)。

・軸質にはA→I変換活性がある (RNA編集活性)

(では、実際にSqADAR2は機能しているのか、という疑問からまずA-to-I編集アッセイ=RNA編集アッセイを試みた)

A-to-I編集アッセイ(RNA編集アッセイ)では2つの異なる実験アプローチを用いた。

一つ目は、様々な領域からの組織抽出物を、全てのアデノシンがα-32Pで標識された完全RNA二重鎖基質とインキュベートした(Fig 5 A)。インキュベーション後、反応物をP1ヌクレアーゼで消化してヌクレオシド一リン酸塩を遊離させ、次いで薄層クロマトグラフィープレート上でアデノシンからイノシンへの変換を評価した。予想通り、水(陰性コントロール)対照ではAからIへの変換は起こらず、組換えSqADAR2b(陽性)対照では58%の変換が見られた。

下の欄Bにはその返還率を棒グラフで表している。
変換は試験したすべての組織で明らかであり、その範囲は19%から38%であった(Fig 5 B)。

(神経線維と軸形質がA-to-I編集が可能であるという結論)

・イカの軸形質がK+チャネル・メッセージの自然発生部位を編集できる

前項では実際に軸索の軸形質でA-to-I編集(RNA編集)が起きていることを証明したが、では、次に、そもそも核外である軸形質においてmRNA中のコドンを再コード化され得るのかどうかを調べた。

(最終産物であるタンパク質ーアミノ酸の置換に至る変化が起きているのか否か検討した)

5つの個体を対象に、基質中の126個のアデノシンすべてにおけるA→G変換を調べてみた(Table 1)。

結果、中でも2つのアデノシンが特に高い頻度で編集された:134位(0.78%)と418位(10.33%)はコントロールの78倍と258倍の割合で編集された(各反応の個々の編集割合は補足図S1A に示す)。

さらに、チャネルの4量体化ドメインの位置をコードする両部位は、イカでは高い頻度で編集されている。以前の研究で、134位(N45S)の編集がチャネルの4量体化に影響を与えることが示された。

これらの部位に加え、139位、175位、190位の3つの位置が有意なA→G変換を示した。in vitroのアッセイで検出された5つの部位はすべて、イカで自然に編集される部位であったことは注目に値する。

しかしながら、in vivoで編集される他の17部位は、in vitroアッセイでは編集されなかった。これらのデータは、GA軸質(GA=巨大軸索)に存在するADARが部位特異的mRNA編集を再現する能力を持つことを示している。

(標的になるアデノシンについて全箇所の検索をしたら、実際に多くのアミノ酸置換ーグアノシンが起きていた)

・メッセージは細胞体よりも軸索(GA)でより広範囲に編集された

軸索やニューロンなど神経組織(の核外)でこのアミノ酸置換という現象が観察されたが、その理由はなぜなのか、、、以下の考察へとつながる。

考察

遺伝情報が細胞内で異なって編集されうるという考え方は斬新であり、遺伝情報の単一の青写真がどのようにして空間的複雑性を生み出すかについての我々の考えを拡張するものである。このような過程は、異なる細胞領域特有の生理的要求を満たすために、タンパク質の機能を微調整する可能性がある。

・本論文のデータは、イカの軸索において領域特異的なRNA編集が行われていることを示唆している

(i)SqADAR2タンパク質は、PNSのSGとCNSのOLの両方の神経細胞体の細胞質に存在する。

(ii)GAの軸索質は、完全なRNA二重鎖のA→Iの加水分解脱アミノ化を触媒することができる。編集は核でもほぼ確実に起こる。SqADAR2は、本研究で調査した神経系の領域全体の多くの核に明らかに存在している。

(iii)GAの軸形質は、イカK+チャネル基質の部位特異的RNA編集を触媒できる。編集は核でもほぼ確実に起こる。

したがって、これらのデータから、すべての編集が核で行われ、SqADAR2Bに結合した編集メッセージが優先的に軸索に振り分けられる可能性を排除することはできない。しかし、軸索質に活発なA→I変換活性があることを考えると、このメカニズムで観察された編集パターンの違いを完全に説明できる可能性は低いと思われる。例えば、軸索の多くのメッセージには、細胞体よりも高度に編集されている部位とそうでない部位がある。軸索と核の両方で編集が起こっている可能性が高い。この特徴は頭足類に特有である可能性があり、この分類群における編集過程について根本的な違いがある可能性を示唆している。

・考え得るメカニズムとしては、SqADAR2Bの細胞質局在には2つの可能性がある

①翻訳後、非効率的に核に取り込まれること。
②脊椎動物のADAR1 p150のように、核内インポートと核外エクスポートの両方の配列を持ち、これら2つのプロセスの均衡が正味の分布を決めるというものである。

SqADAR2の一次配列には、これらの可能性を区別するための明確な手がかりはない。
哺乳類ADARの核局在シグナルはなく、SqADAR2にもコンセンサスモチーフはない。

SqADAR2にも核外へのコンセンサス配列はないが、これらの配列は実質的に縮退している可能性があり、306-315位のモチーフ(LNELRPGLKY)が一致する可能性がある。核内インポートと核外エキスポートのバランスは、他のタンパク質でも細胞内局在を制御することが示されている。
興味深いことに、核内ではADARの核極局在はrRNAに結合するdsRBMモチーフによって駆動される。SqADAR2aは3つのdsRBMモチーフを持ち、SqADAR2bは2つである。このことは、SqADAR2aが主に核内で見つかったのに対し、SqADAR2bがそうでなかった理由を説明する一助になるかもしれない。

(どのようにしてRNA編集を行う酵素SqADARが細胞質へ移送されているのかー脊椎動物のADAR1 p150では核内インポートと核外エクスポートの両方の配列を持っていてそのバランスが形成されていることがわかっている。脊椎動物のADAR1とADAR2はともに全身に発現し,特にADAR2は神経細胞に強く発現し、一方,ADAR3は神経細胞にのみ発現しRNA編集活性は持たない偽遺伝子ぽい。比べて、イカのSqADAR2bは核外にも存在し突出した存在であり、核内にのみあるサブタイプSqADAR2aよりも標的モチーフが少ない。系統を比較すれば、コンセンサスモチーフを持たず自由度が高いうちにSqADAR2bは核外で仕事をするという特殊な役割を持っていたのかもしれない)

・メッセージは細胞体よりも軸索(GA)でより広範囲に編集された

全編集部位の70%以上が、GFL(GFL=巨大線維葉、GAの手前の構造)よりもGAで有意に高く編集され、22/22部位がサンガー配列決定で検証された。GFLでは17部位(0.1%未満)だけが有意に高く編集され、サンガー配列決定で検証された1部位は検証に合格しなかったため、他の16部位は偽陽性の可能性がある。残りの部位はすべて、地域間で統計的な差は見られなかった。我々はGAにおいて新たな編集部位を発見しようとしたのではなく、既に決定された部位にのみ注目したことを指摘しておく。基本的にすべての差分部位がGAでより高い値を示したという事実は、発見すべき新たな部位が存在する可能性を示唆している。また、この現象の根底にある共通のメカニズムを示唆している。おそらく、GAメッセージがSqADAR2と接触している時間が長いか、接触を仲介する他のタンパク質がこの領域に存在するのだろう。注目すべきは、SqADAR2抗血清による免疫染色で明確な点刻が見られたことで、少なくとも酵素の一部は複合体や顆粒と結合していることが示唆された。このメカニズムにとどまらず、GAにおけるRNA編集のレベルが一般的に高いことが、なぜ有利なのかは不明である。

(なぜ軸索でのRNA編集のレベルが高いのか、それが有利なのか、過去の研究を引用して以下に続く考察)

・軸索において空間的に制御されたRNA編集は、それが機能的な利点をもたらすことを示唆している

編集部位の違いはタンパク質の機能に影響するのだろうか?
過去の研究で、イカのNa+/K+ポンプのαサブユニットをコードするメッセージの編集イベントが、メカニズムレベルで調べられた。この編集は、第7膜貫通スパンの高度に保存されたイソロイシンをバリン(I877V)にリコードし、Na+イオンの電圧依存的な外液への放出を修正することによって、ポンプ固有の電圧感受性の変化を引き起こした。この変化の正味の効果は、ポンプの順方向輸送速度を増加させることである。

この研究では、I877V編集はGFL(GFL=巨大線維葉、GAの周辺構造)では非常に低いレベル(2.8%)であるが、GAではかなりのレベル(47%)で起こることが明らかになった。I877V編集がポンピング速度を増加させることを考えると、GAでこの編集が必要とされるのにはいくつかの説得力のある理由がある。GFL細胞体は電位依存性Na+チャネルを発現しないが(74,75)、GAでは高密度に発現している。さらに、GFLの膜抵抗は軸索の100倍近い。これらの要因により、GFLではNa+のリークが増加すると考えられる。

(例えとして挙げられている細胞機能の一つ、電位依存性ナトリウムチャネルは、現存する生物種の中で最も動物に近縁な単細胞生物であるとされる襟鞭毛虫のメンバーにも存在するある種我々の動物細胞にとってエッセンシャルな機構。I877V編集はポンピング速度を増加させ、ポンプの順方向輸送速度を増加させる。細胞機能は亢進する。)

(周辺の神経組織GFLよりもGAという機能上の主構造部分において細胞機能の更新はストレートに個体の機能亢進に結びつくのではないか)

・核外再コード化は他の生物でも起こるのか?

ADARの局在は、少数の実験条件下で、数例しか調べられていない。
哺乳類でも、ADAR1 p150は細胞質に発現しており、編集可能な基質は成熟mRNA内に存在する。このプロセスが頭足類でどのように制御されているかは、RNA編集が細胞生理学を調整するためにどのように利用できるかを明らかにするはずである。

(ヒトでは正常細胞と比較してRNA編集活性が増加し,がんの悪性化を引き起こすという現象は,慢性骨髄性白血病や,乳がんでも報告されている。さらに,ADAR1遺伝子を含む染色体1qのコピー数自体が,乳がんで高頻度に増加していることが明らかにされている。ADAR1の高発現はインターフェロン、もしくは,コピー数の増加によって引き起こされるが,このような現象は乳がんのみならず卵巣がんや肺がん,子宮頸部がんなど多くのがんで起こっているーRNA編集の過剰は病的環境に結びつく)



私評

ドグマ dogma
ーキリスト教、特にカトリック教会における教条。公に決定された権威を与えられて、反論する余地のないものとされた宗教的真理を表明する命題。

中世の有名な「それでも地球は回る」。歴史の中には常識を覆す発見が節目節目にある。分子生物学ではD Baltimore はその発見をパクられないよう論文ではなく大勢の前で発表したところ、誰も内容を理解できずに会場は静まり返った。やがて、その場の一人の日本人が手を挙げて「それはRNAをDNAに逆方向に転写する酵素があるということでしょうか。」「そうです。」そして、拍手喝采ー昔聞いた分子生物学の面白い話。
RNAコドン表を見ればすぐにわかるがタンパク質からRNAが読み込まれるということは決してありえないーという常識、ドグマ。
でも常識は常に疑ってかかれ、というのがサイエンスの常識(二律背反)であり醍醐味でもある。
例えば、非常に病的な状態下で、哺乳類以外の生物で、そのようなことは起きないか、よく空想したものだ。今回の発見はタンパク質を直接読み込んでいるわけではないが、RNAの配列が変わり結果としてタンパク質が変異しているので、一種の逆翻訳の流れにある。遺伝情報が変わり、子孫が変わる、生命体にとって非常にリスキーなそれは何故必要なのか。
おそらく答えは進化というキーワード。
そしてそれは一種の禁じ手。
つまり、進化、特に神経系の進化を獲得し、より優秀なシステムを手に入れて(タコになる、という話ではなく)優れた知能や運動能を手に入れるか、はたまた新作は失敗しイカさないまま暮らすか、あるいは致命的な病的変異が蔓延して個体を滅ぼすか、、、進歩か破滅か、という生きるということは常に賭け、そして戦い。こんなのロマン以外の何ものでもない。



カクテル 41

コカレロ COCALERO

コカの葉の抽出物ほか9種類のハーブミックスしたアンデスのお酒。巷で流行りらしい。コカといえばコカインなどの麻薬も抽出できるため日本では栽培が禁止されています。COCALEROとはアンデスでコカの葉を栽培する者という意味。

クラブなどではやはり同類のコカ・コーラで割って飲むらしいのですがコーラはおいてないのでソーダ割りに。他にはライムを入れたり、トニックウォーターで割ったりするのもおすすめとか(とても合いそう)。

グラスに注いで、何よりこの蛍光色はちょっと毒々しいし、味は全く想像がつかない。
では、実際飲んでみると普通に美味しい。
独特のものなので既存の味に例えるのはやや難しいけれど、
近いものといえばコカ・コーラ。
コカ・コーラを知らない人にコカ・コーラの味を教えるのにはペプシコーラやコカレロに似ていると表現する、、、でもって、ペプシコーラを知らない人に教えるのにはコカ・コーラやコカレロに似ている、、、Oh、なんとこのメビウス感。

まあ、何よりコカという、ちょっといけないことをしているような感じも良い。ラベルのオヤジの顔も十分怪しくて非日常気分で飲める一杯。
場合によっては盛り上がっちゃうこと請け合い。


Keith Jarrett
Don't Worry 'Bout Me.mp4 ♪ ♪

サイエンスの話 41 日本におけるCOVID-19パンデミック時のmRNA-脂質ナノ粒子ワクチン3回目投与後の年齢調整がん死亡率の増加

2024-04-26 12:43:51 | 日記
過剰死亡、そのうち一定の種類の癌死亡が最近増えたという疫学的事実に基づき、その時期、その間の環境変化についての原因として現時点で有力だと考えられる事象との関連性を考察し論じている論文。

Increased Age-Adjusted Cancer Mortality After the Third mRNA-Lipid Nanoparticle Vaccine Dose During the COVID-19 Pandemic in Japan
日本におけるCOVID-19パンデミック時のmRNA-脂質ナノ粒子ワクチン3回目投与後の年齢調整がん死亡率の増加
Published: April 08, 2024 
Cureus 16(4): e57860. doi:10.7759/cureus.57860

背景

・COVID-19以外の原因による過剰死亡がさまざまな国で報告されており、日本も例外ではない。がんは日本における主要な死因であり、死亡者全体の4分の1を占めている。したがって、パンデミックが2020年から2022年までのがんの死亡率に及ぼす影響を把握することが不可欠である。

・日本には、人口が1億2,300万人と多いこと、公的統計が利用できること、剖検調査による死亡診断書の正確率が80%と高いことなど、パンデミックががん死亡率に及ぼす影響を分析するのに理想的な環境がいくつかある。


要旨

COVID-19パンデミック(2020-2022年)期間中に、日本におけるさまざまな種類のがんの年齢調整死亡率(age-adjusted mortality rates、AMR)がどのように変化したかを評価することを目的とした。
日本の公式統計を用いて、観察された年間および月ごとのAMRを、ロジスティック回帰分析を用いてパンデミック前(2010~2019年)の数値に基づく予測率と比較した。
パンデミックの最初の年(2020年)には、有意な過剰死亡は観察されなかった。
しかし、1回目と2回目のワクチン集団接種後の2021年には、いくつかのがんによる過剰死亡が観察され、2022年の3回目のワクチン集団接種後には、すべてのがんといくつかの特定のがん種(卵巣がん、白血病、前立腺がん、口唇・口腔・咽頭がん、膵臓がん、乳がんを含む)で有意な過剰死亡が観察された。
死亡者数の多い4つのがん(肺がん、大腸がん、胃がん、肝臓がん)のAMRは、パンデミック初年度の2020年までは減少傾向を示したが、2021年と2022年には減少率が鈍化した。

結果

調査結果ー全死因および全がんによる死亡率

パンデミックの最初の年である2020年には、全死因で有意な欠損死亡率(<99%下限PI)がみられ、全がんでは過剰死亡率はみられなかった。

しかし、
2021年には、全死因で2.1%(上限PI99%以上)、全癌で1.1%(上限PI95%以上)の有意な過剰死亡がみられた。

2022年には、超過死亡率は全死因で9.6%(PI値上限99%以上)、全癌で2.1%(PI値上限99%以上)に増加した。

2022年の過剰死亡数は、全死因で115,799人(95%CI:106,018人、125,501人)、全癌で7,162人(95%CI:4,786人、9,522人)であった。20の下位分類のうち、死亡数の多い5つのがん(肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がん)が全がんによる死亡数の61%を占めた。

全がんの年齢別死亡率

パンデミック(2010~2019年)以前は、すべての種類のがんの年齢別粗死亡率は、90歳以上の年齢群を除くすべての年齢群で減少傾向にあった(データは示していない)。2020年には、75~79歳を除くほとんどの年齢層で死亡率の赤字が観察された。しかし、これは2021年には徐々に超過死亡率に移行し、2022年には65-69歳と85歳以上の群を除くほとんどすべての年齢群でエスカレートした。

すべてのがんによる死亡者数が80~84歳群で最も多いことを示している(図2)。表2によると、70歳以上の90%以上が3回目のワクチン接種を受けている。厚生労働省の報告によると、投与された製剤の99.9%以上がmRNA-LNPであり、1価ワクチンで3回目までの投与では、BNT162b2が78.1%、mRNA-1273が21.8%を占めている。

がんの種類別死亡率

図3は、がんの種類別の超過死亡率を示している。
2020年には、膵がんのみが95%上限PIをわずかに超えている。

・しかし、2021年には20種類中3種類のがんで、2022年には20種類中5種類のがんで、統計的に有意な過剰死亡が観察された。
その5種類のがんは、2022年には順に卵巣がん、白血病、前立腺がん、口唇・口腔・咽頭がん、膵臓がんであった。

乳がんは2020年と2021年に有意な欠損死亡率を示し、2022年には統計的有意差はないが過剰死亡率に転じた。

月間死亡数が超過したがん種:乳がん
女性の乳がんの年間AMRは、2020年と2021年には95%PIの下限を下回り、2022年には上昇したが95%PIの範囲内にとどまった(図6左側)。毎月の統計的に有意な過剰死亡率は、3回目の集団予防接種のピークから数ヵ月後に現れ、2022年に2回95%上限PIを超えた(右側)。


考察

・パンデミック初年度の2020年の調査結果では、2020年には、すべてのがんによる死亡率は増加しなかった。

・2021年8月以降、毎月の死亡率の有意な過剰が観察されたが、一般住民への集団予防接種が2021年4月頃に開始された以降ほとんどの年齢層でがん死亡に過剰傾向がみられた。しかし、これらの傾向は、がん死亡率が最も高い年齢層(2021年の75~79歳、2022年の75~84歳)においてのみ統計的に有意であった。70歳以上の90%以上が3回目のワクチン接種を受けている。

・研究者らは、SARS-CoV-2 mRNA-LNPワクチンが癌の発症や進行のリスクをもたらす可能性があると報告している。さらに、いくつかの症例報告では、ワクチン接種後にがんが発症または悪化したことが報告されており、がんとmRNA-LNPワクチン接種との因果関係の可能性について議論されている。

・接種後、mRNA-LNPは様々な臓器、特に肝臓、脾臓、副腎、卵巣、骨髄に送達される。ある研究では、2回目のmRNA-1273またはBNT162b2投与から7~60日後に、SARS-CoV-2 mRNAワクチン特異的プローブのハイブリダイゼーションにより、ワクチン接種者のリンパ節でワクチンmRNAが検出された。N1-メチル-シュードウリジンで修飾されたmRNAは、大量のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(S-タンパク質)を翻訳することができた。S-proteinはワクチン接種者の血液中のエクソソーム表面に出現した。ワクチン特異的組換えSタンパク質の断片は、ワクチン接種者の50%の血液検体から検出され、3~6ヵ月後も検出された。

・一方、基本的に呼吸器感染症であるSARS-CoV-2感染の場合、ウイルスS蛋白は急性重症患者であっても最長10~20日間しか血清中に検出されなかった。弱毒化されたオミクロン株は、2022年初頭に日本で出現し、その後さまざまな時点で流行している。図1、5、6のグラフに示すように、毎月のワクチン接種者数は新たに感染が確認された症例の何倍も多く、2022年末までの累積接種者数(3億8000万人)は新たに感染が確認された症例(3000万人)の13倍であった。

・米国の医療機関で働く50,000人以上の従業員を対象とした研究では、26週間にわたるワクチン接種回数(0回、1回、2回、3回、4回以上)に基づくオミクロン変種の流行発生率を観察し、ワクチン接種回数とCOVID-19の累積発生率に正の相関があることを示した(以下論文)。

Effectiveness of the Coronavirus Disease 2019 Bivalent Vaccine
Open Forum Infectious Diseases, Volume 10, Issue 6, June 2023, ofad209, https://doi.org/10.1093/ofid/ofad209 Published: 19 April 2023

結果:51017人の従業員のうち、4424人(8.7%)にCOVID-19が発生した。多変量解析において、二価ワクチン接種状態は、BA.4/5優位期(ハザード比、0.71[95%信頼区間、0.63-79])およびBQ優位期(0.80[0.69-.94])におけるCOVID-19のリスク低下と関連していたが、XBB優位期(0.96[0.82-.1.12])におけるリスク低下は認められなかった。
BA.4/5期、BQ期、XBB期において、ワクチンの有効性はそれぞれ29%(95%信頼区間、21~37%)、20%(6~31%)、4%(-12~18%)と推定された。COVID-19のリスクは、直近のCOVID-19既往からの経過時間および過去に接種したワクチン回数とともに増加した。
結論:BQ系統が優勢な場合は予防効果が低く、XBB系統が優勢な場合は有効性が示されなかった。

・SARS-CoV-2 mRNAワクチンによる癌発生

 我々の研究では、卵巣がん、白血病、前立腺がん、口唇・口腔・咽頭がん、膵臓がん、乳がんのAMRは、特に2022年に予測された割合よりも大幅に増加した。これらのがんはすべて、エストロゲンおよびエストロゲン受容体α(ERα)感受性のがんとして知られている。9,000以上のヒトタンパク質に対するSARS-CoV-2のSタンパク質の結合能に関するSolisらによる最近の研究で、Sタンパク質がERαに特異的に結合し、ERαの転写活性をアップレギュレートすることが示された。ヒト乳癌細胞にエストラジオール(E2)を添加すると癌細胞が増殖するが、選択的ERαモジュレーターであるラロキシフェンを添加すると増殖が抑制される。E2の代わりにSを添加すると乳癌細胞は増殖し、ラロキシフェンを添加すると増殖が抑制される。Solisらはまた、S-ERαの細胞質共局在の発見は、膜結合型ERαシグナル伝達の増強につながるかもしれないとも述べている。膜結合型ERαは、細胞周期を促進し癌の発生に影響を与えるc-Mycの活性化を含む多くの経路に関与している。

 ERαが介在する転写は、ER感受性のがんにおいて内因性のDNA二本鎖切断(DSB)を誘発する可能性がある。転写により活性化されたERαは、トポイソメラーゼIIや最近知られるようになったR-ループ/G-四重鎖構造形成によりDSBを誘導し、乳がん細胞におけるその修復のためにBRCA1の必要性を著しく増加させることが研究で示されている。ある研究では、核局在シグナルを持つmRNAとSタンパク質の核内移行が示され、インシリコバイオインフォマティクス解析では、Sタンパク質のS2サブユニットとBRCA1、BRCA2、P53との相互作用が示され、その結果、それらの隔離と機能不全が生じた可能性がある。Sタンパク質に隔離されたBRCA1の機能障害とともに、Sタンパク質と結合したERαを介して活性化された転写によって引き起こされたDNA損傷を修復するためのBRCA1の要求が高いことが共存する可能性は、mRNA-LNP SARS-CoV-2ワクチンのレシピエントにおけるERα感受性細胞での発がんリスクの増加について懸念を抱かせる。
上述したように、エクソソーム中の特定のmiRNAによる干渉を介したIRF9のダウンレギュレーションや、ワクチン中のSタンパク質のS2サブユニットによる隔離の可能性を含むメカニズムを通じて、BRCA1だけでなく、重要ながん抑制遺伝子であるbrca2やP53の機能障害のリスクも大いに懸念されている。BRCA1活性の低下は、女性では乳がん、子宮がん、卵巣がん、男性では前立腺がんのリスク上昇と関連し、男女ともに膵臓がんのリスクも中程度に上昇する。BRCA2が関連するがんには、女性では乳がんや卵巣がん、男性では前立腺がんや乳がん、小児では急性骨髄性白血病などがある。これらの所見は我々の結果と非常に一致している。

・癌の発生に寄与すると思われるその他の要因についても研究が進められている。内因性活性酸素は酸化的DNA損傷を引き起こすので、S-protein によるACE2のダウンレギュレーションに起因する過剰な酸化ストレスが、がん発生に寄与している可能性がある。ある研究では、Mas受容体のダウンレギュレーションが上皮性卵巣がんの転移を促進することが示された。mRNA-LNPワクチン接種後にS-proteinに結合したACE2受容体は、Mas受容体のダウンレギュレーションとその後の機能不全を直接引き起こす可能性があり、おそらくワクチン接種を受けた卵巣がん女性における転移リスクの上昇につながる。注射されたLNPは特に卵巣と骨髄に蓄積されるという観察結果 は、2022年に卵巣がんと白血病による死亡率が過剰であったというわれわれの所見をよりよく説明するものであろう。

・頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)における性ホルモン受容体に関する科学文献の分析によると、ERαはHNSCC、特に中咽頭癌の生物病理学において様々な役割を果たしている。これらには、DNAの超変異の促進、HPVの統合の促進、上皮成長因子受容体(EGFR)との協調などが含まれる。このことは、我々の研究における口唇/口腔/咽頭癌の死亡率の上昇を説明できるかもしれない。

・最近の研究で、SARS-CoV-2 RNAはDNAに逆転写され、in vitroでヒト細胞ゲノムに組み込まれることが示された [95] 。別の研究では、BNT162b2に暴露されたヒト細胞にトランスフェクトされたmRNAは、内在性レトロトランスポゾンであるlong interspersed element-1 (LINE-1)のサイレンシングを解除し、ワクチンmRNAの配列が核内のDNAに逆転写されることが報告されている。ワクチンのmRNAと逆転写されたDNA分子が細胞質に蓄積されることで、感受性の高い人において、慢性的な自己炎症、自己免疫、DNA損傷、がんリスクが誘発されることが予想される。

・米国食品医薬品局(FDA)は、感染症用ウイルスワクチン製造のためのガイダンスの中で、「残存DNAには、コード化されたがん遺伝子の統合と発現、あるいはDNA統合後の挿入突然変異誘発を含む、いくつかの潜在的な発がんメカニズムがある」と述べている。COVID-19パンデミックの際、日本の特別緊急使用承認はFDAの承認に依存していたため、FDAのガイドラインは日本にとって不可欠である。

限界

本研究は公式情報源からの記述統計を用いて実施されたものであり、臨床的検証は行われていない。ワクチン接種状況別のさらなる分析統計研究が必要である。

結論

回帰分析により、がん死亡の各タイプにおける死亡率の過不足に注目した。日本人集団の3分の2がSARS-CoV-2 mRNA-LNPワクチンの3回目以降の接種を受けた後の2022年に、すべての癌およびいくつかの特定の癌、すなわち卵巣癌、白血病、前立腺癌、口唇/咽頭癌、膵臓癌、乳癌の年齢調整死亡率において統計学的に有意な増加が観察された。これらのERα感受性がんの死亡率が特に顕著に増加したのは、COVID-19感染そのものやロックダウンによるがん治療の減少ではなく、mRNA-LNPワクチン接種のいくつかのメカニズムに起因している可能性がある。この可能性の重要性については、さらなる研究が必要である。

私評

よく知られたアインシュタインの舌を出した写真。映画back to the future なんかでも科学者ドクのモデルになってとても愛されキャラ。みる人がそこに何を感じるのか。おそらく、お腹の出たプロ野球選手より無心にボールを追いかけるサッカー選手のような邪気の無い姿。寝ても覚めても無心に考え続けて理論を構築し、数式で実証していく姿とか連想される。晩年も実際バス料金の支払いにもたもたして、運転手さんに「算数ができないんだね」といわれたり、自宅に帰る道がわからなくなったりしたというエピソードも読んだことがある。きっとひたすら難しいことを無心に考え続けていたんだと思う。この度の注射騒動を振り返ると出どころはUSAの製薬会社やベンチャー。押せ押せで世に出た背景もどこもかしこも全くそうした無心さ・純粋さからは程遠かった。残念。


カクテル 40

ヴェルジーネ vergine

タイトルのヴェルジーネは天女とか乙女座という意味。

アマレット 30ml
ブランデー 15ml 
カシスリキュール 15ml
オレンジビターズ 2dash

シェイクして注ぐ。

実際にカシスの甘酸っぱさに加え、アマレットとブランデー織りなす濃厚さからちょっと幻想的ないっぱい。オレンジビターズは2振りだけ、あまり入れすぎないのがコツ。口当たりが良い。甘くてちょっぴりほろ苦い。山羊座との相性も良いし。
さて、この乙女の甘いお酒を飲みながら音楽をかけてみる。
She Drives Me Crazy♪ーたまたま最近観ていた古い映画で流れてたテーマ曲で1989年にリリースされ流行った曲。当時よく聴いた好きな曲。ああ懐かしいー、、とyoutubeを探して聴きながらふと下のコメントを読んでみると、両親の思い出、おじいちゃんや犬の思い出、80年代と90年代の間の魔法のような時期とか、いろんな人の思い出がそこにはたくさんたくさん詰まっていて読んでいるうちになんだか胸がいっぱいになってきた。いくつかピックアップしてみました。
ー今、私は56歳で、がんと糖尿病を患っている。目を閉じれば、私の素晴らしい身体と大きな髪を思い出すことができ、私は幸せだ。
ーRest in peace. 父の冥福を祈る。彼は今日亡くなった。これは私たちの歌でした。小さい頃から歌ってくれた。あなたが恋しい…これからもずっと。
ーこの曲は、私が生まれて初めて両親がラジオで聴いた曲で「私の歌」になった。両親はいつもこの曲をラジオからかけて、私に歌ってくれた。 私の結婚式でもこの曲をかけ、一緒に踊った。
ーこれが発売された年に私の妹が生まれた。 当時10代半ばだった私は、妹が泣くとこの曲を踊りながら歌った。 彼女はそのたびに泣き止んだ! 私たちは今でも特別な絆で結ばれていて、この曲がもたらしてくれる思い出が大好きです。
ー私が結婚した1989年の夏にリリースされた。 トルコでの新婚旅行を思い出させてくれる素晴らしい曲。そして、今私は病気の夫を看病しながら、一緒に最後のクリスマスを祝っている。32年間、なんて楽しかったんだろう。 あっという間だった、、、

当時自分はというと、臨床医として自信もついた頃。そして、なんといってもこの国に勢いがあった良い時代。今では淡くもそんなお天気日和の記憶。良い歌はまるでモノクロームの写真の様。思い出のアンカーポイント。

She Drives Me Crazy♪
Fine Young Cannibals

サイエンスの話 40 nfP2X7を標的とする汎癌CAR-T細胞免疫療法の前臨床検証

2024-03-28 11:40:00 | 日記
前回は老化細胞の除去にキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞が有用だという内容でしたが、それをがん細胞の除去に使えるのではないか。その際、何をターゲットに基本的なゲノム構造が一緒の癌細胞と正常細胞を区別するのか(何を特異抗原とするのか)。この点においてnfP2X7という固形癌で多く固有に発現しているタンパク質を用いたら結果が良かったよという話。

Pre-clinical validation of a pan-cancer CAR-T cell immunotherapy targeting nfP2X
nfP2X7を標的とする汎癌CAR-T細胞免疫療法の前臨床検証
Nature Communications
volume 14, Article number: 5546 (2023)

背景

・CAR-T細胞プラットフォームの優雅で単純な点は、MHC非依存的に抗体様結合ドメインを用いて未処理の抗原を標的にする能力と、T細胞の細胞傷害活性を開始するのに必要な細胞内シグナル伝達能力を兼ね備えている。

(持続感 染を示すウィルスの感染細胞や一部の腫瘍細胞では MHC クラス I の発現が低下していることが多い。しかしながら、例えば、NK 細胞は MHC クラス I 抗原を認識する抑制化レセプターを用いて, MHC クラス I 抗原を発現している細胞を自己と見なし, 発現していない細胞を非自己と認識するのでMHC クラス I の発現低下による免疫応答低下に対応することができる)

・最近の血液のがん細胞に対するCD19標的CAR-T細胞療法の臨床試験では、再発または難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)1,2患者における完全寛解率が最大80~93%、再発B-ALLの疾患負荷が低い成人患者における長期寛解期間が20カ月であるなど、素晴らしい結果が示されている。

(CD19は、B細胞特異的分子。B細胞受容体(BCR)と複合体を形成することによってB細胞活性化を制御しているのでB細胞性急性リンパ芽球性白血病における標的に設定した)

・しかしながら、固形がんに対するCAR-T細胞療法の臨床試験は、奏効率が9%であったように、期待外れの結果しか得られていない。これはCAR-T細胞の質、CAR-T細胞の非効率的なホーミング、腫瘍微小環境内の免疫抑制など、多くの要因による可能性がある。
 一方で、腫瘍の不均一性は固形がんで頻繁に観察され、CAR-T細胞治療を妨げるもう一つの問題であり、腫瘍の脱出や患者の再発を引き起こす可能性がある。 加えて、悪性細胞のみに存在する標的抗原の選択は困難である。この点、先述のB細胞性白血病に対する
CD19標的CAR-T細胞療法では健常B細胞と悪性B細胞の両方が除去され、B細胞低形成が生じるが、この標的にされた健常B細胞の低下は臨床的に管理できるレベルにある。

 今日までに研究された固形がんが発現する抗原の限られた選択肢の多くは様々な組織の健常細胞にも存在するので標的にされた健常細胞の細胞傷害性と臓器障害のリスクがあし、また正常細胞と異なる固形がん特有の抗原など少数のがんにしか存在しない。
 つまり、深刻な副作用を避けるためには、健常細胞には存在せず、できれば広範な固形がんに発現するCAR-Tターゲットを見つけ、検証することが重要である。

(そもそも正常細胞と異なる固形がん特有の抗原は未だ見出されていない。つまり、優れた特異抗原探しががこの手の標的研究のずーっと以前から今に至るまで変わらぬ課題)

・そこで目をつけたのがP2Xピュリノセプター7(P2X7)
 
 P2Xピュリノセプター7(P2X7)は、多くの組織や造血細胞に広く発現しているATPゲート陽イオンチャネルである。正常に機能している場合、P2X7はATPに応答してイオン輸送を制御し、短時間のATP結合によって陽イオン選択的チャネルが開口し、Na+とCa2+の流入とK+の流出を可能にする。

(普通に生理的に働く陽イオンチャンネル)

 これにより、サイトカイン放出、細胞の生存や増殖に関わる下流のシグナル伝達経路が駆動される。ATPリッチな条件下でATPとの結合が長く続くと、P2X7は非選択的な孔として機能し、大きな分子(<900 Da)にも透過するようになり、その結果、プログラムされた細胞死が起こる。
(ATPリッチな条件下では穴が空いていろんなものが通過する結果機能を失い、アポトーシスによって処理される運命のチャンネル)

 この結果、陽イオンチャネルの活性が細胞の生存と死のいずれかを促進するという「二律背反」(Antinomy 矛盾・パラドックスが同時に存在する)の反応が生じる。

これまでの研究では、nfP2X7(non functional P2X7)と名付けられたP2X7の非機能性バージョンの特徴が明らかにされている。重要なことは、nfP2X7のコンフォメーション変化により、通常はタンパク質の内部構造に埋もれている細胞外ドメインにユニークなエピトープが露出することである。最近このエピトープを認識する抗体が開発され、乳房、卵巣、脳、前立腺、皮膚、腸、卵巣、子宮頸部、肺、膵臓、胃を含む多くの固形腫瘍でnfP2X7が著しく過剰発現していることが明らかになった。対照的に、nfP2X7の発現は、nfP2X7陽性腫瘍検体の近位組織内の健常細胞を含め、健常細胞では検出されていない。

(P2X7が機能喪失して片付けられる運命かと思いきや、構造変化により生き延びるP2X7バリアント=nfP2X7はなんとがん細胞の多くで発現されており、がん細胞とともに生き延びているということが明らかに)

ここ一つのポイントなのでもう一つ別の論文から

Oncogene. 2019 Jan;38(2):194-208. 
doi: 10.1038/s41388-018-0426-6. Epub 2018 Aug 7.
ATP in the tumour microenvironment drives expression of nfP2X7, a key mediator of cancer cell survival

要旨

 ATPを介したP2X7の迅速な活性化は、細胞内に陽イオン電流を誘導する。しかし、ATPを介したP2X7の活性化が長く続くと、膜透過性を増大させる孔が形成され、最終的には細胞死を引き起こす。腫瘍微小環境には、P2X7孔を活性化し細胞死を引き起こすのに十分なレベルの細胞外ATPが存在するため、これは潜在的なパラドックス(二律背反)となる。
 しかしながら、P2X7の発現は、がん細胞の生存、増殖、転移能の増強と関連している。P2X7には、少なくとも1つの異なる立体構造があり、非細孔機能型P2X7(nfP2X7)と呼ばれているが、これは機能的な細孔を形成することができない。

つまり、
通常のP2X7の場合、
ATP→開口→大きな分子の流入→アポトーシス(細胞死)誘導→細胞死
と働く一方、
異なる立体構造を有する非細孔機能型P2X7(nfP2X7)では、
ATP→開口が妨げられるので細胞死に至らず、細胞が延命する。

したがって、多くの固形癌でnfP2X7が発現し、腫瘍細胞の生存に必須になっている。
そして、その変化の主体はE200という箇所のアミノ酸配列の変異であるので、E200に対する抗体は、癌において重要な役割を持つP2X7受容体の形態を区別することができる。
図解


さて、本文に戻り、

nfP2X7の広範な固形がん標的としての可能性を評価するために、我々はnfP2X7上の露出したエピトープに結合する親和性成熟ペプチド結合ドメインを用いて、nfP2X7に対する第二世代CARを構築しその効果を調べた。

結果

・nfP2X7-CAR-T による広範な癌細胞株への特異的殺傷 

複数のドナーから作製されたnfP2X7標的CAR-T細胞が、in vitroで12の異なるがん種(乳癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、脳腫瘍、皮膚癌)を代表する24のがん細胞株に対して幅広い抗腫瘍効果を示すことを実証した(図3)。

(様々な固形癌由来細胞株に有効)

・nfP2X7標的CAR-T細胞はin vitroおよびin vivoでがん細胞と結合し、がん細胞に対するエフェクター機能を発揮する

 nfP2X7標的CAR-T細胞がin vivoで固形腫瘍に浸潤するかどうかを調べるため、NSGマウスの乳腺脂肪パッドにMDA-MB-231-LM2乳がん細胞、またはNSGマウスの脇腹にPC3前立腺がん細胞を注射し、非導入型またはnfP2X7-M CAR-T細胞をi.v.注射する前に腫瘍を12日間形成させた。腫瘍はT細胞注入の約2週間後に採取され、ヒトCD3+(hCD3+)T細胞数を測定するための免疫蛍光分析用に処理された。nfP2X7-M CAR T細胞を投与したマウスのPC3およびMDA-MB-231-LM2腫瘍内には、非導入T細胞を投与したマウスと比較して、有意に多くのhCD3+ DAPI+ T細胞が認められた(図5a)。
 これらの結果は、nfP2X7-M CAR T細胞と非導入T細胞の両方が腫瘍実質に移動し、浸潤することができる一方で、nfP2X7-M CAR T細胞は腫瘍内に優先的に蓄積したことを示している。

(実際に腫瘍実質に潜入しがん細胞と結合して作用している)

・nfP2X7標的CAR-T細胞はin vivoでヒト腫瘍異種移植片の増殖を抑制する

nfP2X7-M CAR-T細胞療法のin vivo抗腫瘍効果を調べるため、CAR-T細胞を2つの異なるヒト腫瘍異種移植モデル、MDA-MB-231とPC3に導入した。MDA-MB-231乳癌とPC3前立腺癌は、nfP2X7標的CAR-T細胞のin vivo試験用に選択した。これらの細胞株は、最も一般的な2種類の癌を代表し、ヒト腫瘍異種移植片の前臨床モデルとして広く研究されているからである。
 腫瘍内CAR-T細胞集団において、注入前の表現型と比較して観察された劇的な表現型の変化(補足図6)は、CAR-T細胞が腫瘍細胞と抗原特異的相互作用を形成し、腫瘍微小環境において慢性的に活性化されている可能性が高いことを示している。

 結果として、nfP2X7標的CAR-T細胞が、トリプルネガティブヒト乳癌および前立腺癌異種移植マウスモデルにおいて、強固なin vivo抗腫瘍効果および長期生存を示すこと、そしてnfP2X7標的CAR-T細胞が腫瘍実質に移動、浸潤し、腫瘍内に優先的に集積することを実証した。

(CAR-T細胞が腫瘍実質に移動、浸潤し、腫瘍内に優先的に集積する)

・P2X7遺伝子を選択的に欠失させることで標的特異性を確認し、nfP2X7標的CAR-T細胞は欠失した細胞に対する細胞毒性の低下を示した

(CAR-T細胞の効果はがん細胞に特異的で正常細胞へのダメージは少ない)

考察

・CAR-T細胞免疫療法は、がん治療において大きな可能性を秘めている。しかし、現在までのところ、成功例は血液悪性腫瘍に限られている。現在、固形腫瘍の治療のために多くのCAR-T細胞療法が初期臨床試験中であるが、腫瘍特異的抗原ターゲットの選択、固形腫瘍の効果的な根絶のために必要なCAR-T細胞の最適な表現型の同定など、多くの課題が残っている。

・CAR-T細胞療法を臨床応用するための重要な要件は、ナイーブおよびメモリー・サブセットの表現型など、望ましい表現型の属性を保持し、自己複製能力を高め、再発を予防するための長期的な保護免疫監視に適したCAR-T細胞を強固に増殖させることである。
 様々な培養条件を試験し、T細胞増殖因子を併用することで、他のT細胞サブセットと比較して、自己複製能力を持ち、増殖性が高く、メモリー型とエフェクター型に分化し、多くのがん免疫療法モデルにおいて優れた持続性と抗腫瘍効果を持っているCAR-T細胞プールを作製することに成功した。

・nfP2X7-M CARの大きな利点は、広範囲のがんに対する幅広い特異性が期待できることである。合計で、nfP2X7-M CAR-T細胞は、12のがん種に由来する24の異なる細胞株に対するin vitro細胞傷害性を試験され、その結果、試験された異なるがん細胞株それぞれに対して様々な程度の細胞傷害性を示した。
 
 我々は、2つのトリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231とBT549に対してnfP2X7-M CAR-T細胞を試験した。
 結果、CAR-T細胞は、試験したすべての E:T比※ において、MDA-MB-231細胞よりもBT549細胞に対して高い細胞傷害性を示した。

(MDA-MB-231細胞は浸潤性など攻撃性が高く、生存率が低いトリプルネガティブ乳がんのモデルであるが、BT549は攻撃性が低いと考えられている)。

 このことは、BT549細胞の細胞溶解が、非導入のコントロールと比較して増加したことを伴っており、この細胞株が非抗原特異的T細胞介在性殺傷に対してより感受性が高いことを示唆している。また、P2X7とnfP2X7の両方が卵巣がんで発現していることが報告されている。これと同様に、nfP2X7-M CAR-T細胞はin vitroで2つの異なる卵巣がん細胞株;OVCAR5とOVCAR3に対して有意な細胞毒性を示した。

(nfP2X7-M CAR-T細胞に対する感受性の差異が存在する。中にはBT549細胞のようにnfP2X7じゃないルートで、非抗原特異的T細胞介在性殺傷を受けるものもある)

E:T比:Natural Killer(NK)細胞の細胞障害活性を見ることによって、生体防御機構を知る検査の一つ。患者のリンパ球数(E)と使用する標的細胞数(T)の割合(E/T比)

・nfP2X7がヒト腫瘍に広く発現していることから、免疫療法のターゲットとして適していることを示しており、今後ヒトの固形がんに対する広範ながん免疫療法としての可能性がある。

私評

これはなかなか良いと思う。
なぜって、二律背反って何かロマンを感じて面白い。
もともと二律背反は哲学者カントの用語「アンチノミー antinomy」の訳語として知られる哲学用語で「互いに矛盾する二つのものが存在すること」を指す。オリジナルは
「世界は有限である」と「世界は無限である」
から格調高く始まって、
買取業者の宣伝文句「高く買って安く売ります」
昔話の始まり文句「今は昔、、、」(真意は文面通りじゃないが)
それから、
「賛成の反対なのだ」
「ギンギラギンにさりげなく」
「物事に絶対なんてことは絶対にない」
とか哲学・文学的。
ただ日本語の哲学というとあれだけども、語源のphilosophyには原理という意味合いもあり、それを追求するサイエンスにも通じている。
癌細胞が生き延びるために細胞死が起きない変異を持つ。
そして、それが仇となって選択的に叩かれる。
良いんじゃないでしょうか。


カクテル 39

オールドイングランド old england

ウォッカとドライシェリーをで作るお酒同士でととても濃いアルコールが出来上がります。

ウォッカ 45ml
ドライシェリー 45ml

ステアしてカクテルグラスに注ぐ。

飲んでみるとシェリーの味が全面に出ていてシェリー好きにはすんなりスッキリ飲みやすい。
意外なバランスの良さ。
でもって、飲みながらふと、どの辺がオールドイングランドなのかしら、、、という謎について考え始める。
その昔イギリス人がシェリーやポルトをぶんどったり、それ以前の相手は隣のワインの国だったけども、、そういう馴染深い歴史背景があるからか、、、うーん、それに映画でいつもウォッカ・マティーニを頼む主人公もいるから案外ウォッカ好きなのか、などなど、、、よくわからないまま良い気分になってしまいます。

Emilie Claire Barlow
Don't Think Twice, It's Alright🎵

サイエンスの話 39 老化CAR T細胞の加齢に伴う代謝機能障害に対抗する予防的ならびに長期効果

2024-02-25 15:51:17 | 日記
老化CAR T細胞の加齢に伴う代謝機能障害に対抗する予防的ならびに長期効果
Prophylactic and long-lasting efficacy of senolytic CAR T cells against age-related metabolic dysfunction 
Nature Aging (2024)Cite this article
(2024)  Published: 24 January 2024 

最近のトピックでもある老化細胞については以前も触れたことがあります。
老化細胞はSASP(senescence-associated secretory phenotype)として知られる炎症性サイトカインの分泌現象、アポトーシスでを受けずに生体内に蓄積していくなどの特徴が知られている。
実験的にはガン抑制に働くp16ーRB経路の遮断(KO)により老化細胞は形成されず、発がんへと誘導される。
この現象は一通りの役割を終えた細胞が老化細胞としてマークされ、例えば、社会の片隅に大人しく残存していくことで(=老化)若い元気な細胞のように「悪さ」(=発がん)をしないようにプログラムされている一種の防御機構のように(良い側面として)解釈されている。

でもって、実際に多くの組織にそうした老化細胞が加齢とともに蓄積されていることがこれまでに確認されている。当然がんや神経変性などの疾患との関与も研究されているが、ここはシンプルに、その老化細胞が老化の本態であるとするならばそれらを除くとどうなるのか、という疑問に端を発している。
果たして、人類古代からの夢、不老不死なるか、、、、

要旨

老化関連タンパク質であるウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR, urokinase plasminogen activator receptor )を標的とするキメラ抗原受容体(CAR, chimeric antigen receptor)T細胞を用いた老化細胞除去療法を開発し、これが若い動物で安全に老化細胞を除去できることを示した。
 抗uPAR CAR T細胞による治療は、生理的老化における運動能力を改善し、老化マウスおよび高脂肪食マウスにおける代謝機能不全を改善した。さらに重要なことは、これらの抗老化CAR T細胞を1回投与するだけで、長期的な治療・予防効果が得られることである。

(マウスで老化細胞を標的とするT細胞を作成しそれを用いて老化細胞を除去療法を開発し実際に投与したところ老化細胞が除去されマウスは種々のマーカーで観察されるように実際に若返った)

背景

老化細胞溶解療法を開発しようとする努力のほとんどは、老化細胞に存在する定義づけの不十分な分子依存性を標的とし、長期間にわたって繰り返し投与しなければならない低分子薬剤の開発に焦点を当ててきた。対照的に、CAR T細胞は、特定の細胞表面抗原を発現する細胞にT細胞の特異性を向ける細胞療法の一種である。低分子化合物とは異なり、CAR T細胞は、標的抗原が正常組織と比較して標的細胞上で異なって発現していればよい。さらに、「生きた薬物」として、これらの治療薬は、1回の投与後何年にもわたって持続し、強力な効果を発揮する可能性がある。
CAR T細胞が高齢マウスにおいて安全かつ効果的に老化細胞を除去し、健康寿命を調節できるかどうかを同時に検討する。

(不老不死の研究においては繰り返しの投与を必要とする薬剤より一度で済むT細胞を用いる方が優れているのではないか)


結果

・uPARは生理的加齢で発現が上昇する

uPAR(urokinase plasminogen activator receptor )は線溶、創傷治癒、腫瘍形成において細胞外マトリックスのリモデリングを促進するタンパク質として知られている。
生理的条件下では、主に骨髄系細胞の特定のサブセットと、低レベルではあるが気管支上皮に発現している。以前さまざまな細胞種や老化の複数の誘因にわたって、老化細胞におけるuPARのアップレギュレーションについて報告し、この細胞表面タンパク質を標的とするCAR T細胞が、正常組織に悪影響を及ぼすことなく、若いマウスの組織から老化細胞を効率的に除去できることを示した。これらの結果を踏まえ、老化組織においてuPARが老化細胞除去CAR T細胞の標的となりうるかどうかを検証することにした。

まず、加齢組織におけるuPAR発現との関連をさらに調べるため、免疫組織化学を行ったところ、肝臓、脂肪組織、骨格筋、膵臓において、加齢に伴うuPARタンパク質の増加が実際に確認された(図1)。

次に、加齢組織におけるuPAR陽性細胞の分子特性をより詳細に理解するため、肝臓、脂肪、膵臓から蛍光活性化細胞選別法(FACS)で選別した約4,000~15,000個のuPAR陽性細胞およびuPAR陰性細胞について、単一細胞RNA配列決定(scRNA-seq)を行った(図1b-mおよび拡張データ図2、3)。
 uPAR発現の異なる集団を分析した結果、肝臓では、内皮細胞と骨髄系細胞が最も顕著にuPARを発現する集団であった(図1eおよびExtended Data図2b)。一方、脂肪組織では、uPARは主に前脂肪細胞、樹状細胞、骨髄系細胞のサブセットで発現した(図1fおよびExtended Data図2d)。
 老化した膵臓では、uPARの発現は、内皮細胞、線維芽細胞、樹状細胞、骨髄系細胞のサブセットで顕著であった(図1gおよびExtended Data図2f)。uPAR陰性細胞と比較して、uPAR陽性細胞は、炎症、補体経路、凝固カスケード、トランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達に関連する遺伝子像において有意に多く認められた(Extended Data図3a-c)。また、uPAR陽性細胞は、種々の組織における老化細胞のかなりの割合を占めていた(肝臓では67-90%、脂肪組織では92-66%、膵臓では76-63%;図1i,k,mおよびExtended Data図3h,k,n)。

それから、
ヒト組織において加齢とともに蓄積する老化細胞でuPARが発現しているかどうかを確認するため、若年者(0~6歳)および高齢者(50~76歳)から採取したヒト膵臓の入手可能なデータセットを解析した。これらの環境ではPLAUR転写産物量の解析にとどまったが、高齢者ではPLAUR発現細胞の割合がかなり大きいことがわかった(図2)。

 全体として、これらの結果は、uPAR陽性老化細胞のレベルは加齢とともに増加し、加齢組織に存在する老化細胞のほとんどがuPARを発現していることを示している。

・自然老化マウスにおけるuPAR CAR T細胞の効果

「uPAR CAR T細胞の作成」

m.uPAR-m.28z CAR T細胞は、抗マウスuPAR一本鎖可変断片(scFV)をマウスCD28コスティミュレ ーションドメインおよびマウスCD3ζシグナル伝達ドメインに連結したもの※であり、完全なマウスCAR T細胞であるため、同系遺伝子研究が可能である。

※(変異型CD28エンドドメインを持つCAR T細胞でターゲット効果を強化したもの)

重要なことは、CAR T細胞はCD45.1マウスから作製され、CD45.2であるC57BL/6マウスに注入されたことで、CAR T細胞が内在性T細胞から分化し、経時的にモニターできるようになったことである(図3a)。対照として、性別と年齢を一致させたマウスの平行コホートに、同じ用量の未導入T(UT)細胞、またはマウスCD19タンパク質を認識しないが全く同じシグナル伝達構造を持つヒトCD19(h.19-m.28z)を標的とするマウスCARを発現するT細胞を注入し、非特異的T細胞細胞傷害性を制御した。
CAR陽性細胞の投与量は0.5×106個とした。この用量は、以前にわれわれが若い動物で安全性と抗老化効果のバランスがとれていることを発見した。

「CAR T細胞をマウスに注入した結果uPAR陽性細胞が減少した」

m.uPAR-m.28z CAR T細胞を注入したマウスでは、膵臓、肝 臓、脂肪組織など、調べた組織全体のSA-β-gal陽性細胞とuPAR陽性細胞の割合 が減少した(図3bおよびExtended Data図4)。すでに報告されているように、我々の高齢マウスコホートは、末梢血中のSASPに関連する炎症性サイトカインのレベルが上昇しており、これはしばしば「炎症老化」と呼ばれる現象である。老化細胞負担の軽減や生体の健康状態の改善と一致し、m.uPAR-m.28z CAR T細胞を投与した動物では、これらの因子の血漿中濃度が低下した(図3c)。

「CAR T細胞に毒性は確認されなかった」

良好な忍容性を示し、すべてのマウスは罹患、体重減少、血清化学や完全血球計数の関連する変化の観察可能な徴候なしに活動性を維持した(図4)。加えて、組織の顕微鏡的評価では、年齢をマッチさせた対照処置動物と比較して、m.uPAR-m.28z CAR T細胞処置マウスの全身剖検から得られた老化組織では、毒性に起因する二次的な組織損傷は認められなかった(Extended Data Fig.5)。

「抗老化の指標としての耐糖能障害、代謝機能障害のの改善」

ヒトやマウスにおける加齢の顕著な特徴の一つは、耐糖能障害や運動能力に関連する表現型の集合である加齢に伴う代謝機能障害の出現である。
興味深いことに、高齢のm.uPAR-m.28z CAR T細胞を投与したマウスは、UTまたはh.19-m.28zを投与した対照マウスと比較して、空腹時血糖値が有意に低下していることが観察された(図5a)。
 m.uPAR-m.28z CAR T細胞を投与した高齢マウスは、末梢のインスリン感受性も改善しており、グルコースホメオスタシスが多臓器にわたって協調的に改善されていることが示唆された(Extended Data Fig.)。
 加えて、m.uPAR-m.28z CAR T細胞を投与したほとんどの高齢マウスは、投与2.5ヵ月後に、投与前と比較して運動能力の改善を示した(図5e,f)。

 重要なことに、m.uPAR-m.28z CAR T細胞を投与した老齢マウスで認められた代謝機能の改善は、フローサイトメトリーで評価したところ、m.uPAR-m.28z CAR T細胞の拡大と、肝臓や脾臓などのいくつかの臓器へのそれらの輸送を伴っていた(図5g,h)。これらのm.uPAR-m.28z CAR T細胞は、肝臓ではほとんどが細胞傷害性CD8+T細胞であり、脾臓ではCD4+T細胞であり、活性化応答を示すエフェクター表現型を示した(Extended Data Fig.) 注目すべきことに、このような拡大は、年齢をマッチさせたUTやh.19-m.28zで処理した対照マウスでは起こらず、m.uPAR-m.28z CAR T細胞で処理した若いマウスでは低かった。
 この結果は、若い動物ではuPAR陽性細胞の割合が低いことと一致している(図1aおよび5g,h、Extended Data Fig.)

 これらの結果を総合すると、uPAR CAR T細胞は、自然老化したマウスの組織において、安全かつ効果的に老化したuPAR陽性細胞を除去し、加齢に依存した代謝および身体機能障害を改善できることが示された。

・老化におけるuPAR CAR T細胞の持続性と予防効果

 低分子化合物とは異なり、CAR T細胞は生体内に残存し、長期にわたって効果を発揮する。実際、病気が治癒したヒトのがん患者において、CAR T細胞の存在は、最初の注入から10年も経ってから確認されている。このような持続性から、若い動物にuPAR CAR T細胞を投与することで、加齢に誘発される表現型の発生を予防したり、遅らせたりすることができるのではないかという疑問が生じる。この可能性を探るため、我々は若いマウス(3ヶ月齢)に0.5×106個のm.uPAR-m.28z CAR T細胞、h.19-m.28z CAR T細胞、またはUT細胞を1回投与し、マウスの寿命を観察した(図6)。老齢動物と比較して、uPAR陽性細胞の数が当初は少なかったにもかかわらず(上記参照)、uPAR CAR T細胞は、最初の単回注入から12ヵ月後の処理マウスの脾臓と肝臓で検出可能であり、残存するUTまたはh.19 CAR T対照の低い数よりもかなり高いレベルであった(図6a,b)。持続的な活性と一致して、uPAR CAR T細胞治療マウスの脾臓と肝臓のフローサイトメトリーでは、持続している細胞のほとんどが、脾臓でメモリーおよびエフェクター表現型を保有する細胞傷害性CD8+ T細胞であることが示された(Extended Data Fig.) 従って、uPAR CAR T細胞は動物の寿命を通じて持続し、拡大する。おそらく、標的uPAR陽性細胞の頻度が時間とともに増加するにつれて、抗原刺激が増加するためであろう。

(なぜ一度の注入で長期間の老化細胞除去効果が得られるのか、、、下線部の結果と考察が重要)

・メタボリックシンドロームを治療・予防するuPAR CAR T細胞

  加齢マウスにおけるメタボリックシンドロームに関連する特徴の多くは、高脂肪食(HFD, high fat dietry)を与えた若い動物でも再現できる。実際、肥満は「老化時計」を早めることが報告されている。加齢動物と同様に、このような処置は老化細胞の蓄積を引き起こす。
このような状況におけるuPAR CAR T細胞の治療可能性を検証するため、肥満と代謝ストレスを誘発する高脂肪食をマウスに与えて、メタボリックシンドロームをモデル化した。

 高脂肪食で2ヶ月間飼育した後、マウスに0.5×106個のm.uPAR-m.28z CAR T細胞またはUT細胞を投与し、そのまま飼育を続けた(図7a)。注入から20日後、uPAR CAR T細胞で治療したマウスは、対照と比較して体重が有意に減少し、空腹時血糖値が改善し、グルコース耐性とインスリン耐性の両方が改善した(図7b-g)。この治療効果はモニタリング期間中(細胞注入後2.5m)持続し、SA-β-galで評価した膵臓、肝臓、脂肪組織における老化細胞負荷の減少を伴っていた(図7h,i およびExtended Data図8e-h)。このように、uPAR CAR T細胞療法は、自然老化マウスで観察されたのと同様に、若齢動物のメタボリックシンドロームにおける代謝機能障害の改善をもたらした。

 さらに、uPAR CAR T細胞を予防的に投与することで、高脂肪食を与えた若いマウスの代謝異常の発症を抑制できるかどうかを調べるために、高脂肪食を与える1.5ヶ月前に0.5×106個のm.uPAR-m.28z CAR T細胞を投与した(図7j)。驚くべきことに、m.uPAR-m.28z CAR T細胞は、経時的な老化細胞の蓄積を抑制する予防的作用を示し、この作用は注入3.5ヵ月後の体重増加およびグルコースレベルの低下にも関連していた(Extended Data図8i-lおよび図7k-n)。この時点で、m.uPAR-m.28z CAR T細胞は、処理したマウスの脾臓と肝臓で検出可能かつ濃縮されており、そこでもまた、エフェクター表現型を持つCD8+ T細胞がほとんどを占めていた(Extended Data 図9)。
  代謝機能不全に対するこの予防効果は、高脂肪食に曝露し続けたにもかかわらず、細胞注入後少なくとも5.5ヵ月間持続した(図7o,p)。

 全体として、これらのデータは、加齢および肥満マウスにおける代謝機能不全へのuPAR陽性細胞の寄与を強調し、CAR T細胞を通じてこれらの細胞を標的とすることで、ヒトにおいて治療効果が得られる可能性を提起している。

考察

この研究では、老化細胞治療が生理的老化に伴う症状を改善できるという原理的証拠を提供した。uPARを標的とするCAR T細胞が、若い動物の肝臓の老化細胞を安全かつ効果的に除去できることを応用し、ここでは、加齢に関連した顕著な病態のひとつである代謝機能障害に焦点を当て、以下のことを示した。

(i)uPAR陽性細胞の割合は加齢とともに増加する。
(ii)これらの細胞は加齢組織の老化負荷に大きく寄与する。
(iii)老化サインを持つuPAR陽性細胞は免疫集団と非免疫集団の両方から成り、後者は臓器に依存する様々な細胞タイプから成る。
(iv) uPAR CAR T細胞は、uPAR陽性の老化細胞を除去するのに有効である。
(v) uPAR CAR T細胞の作用は、老化マウスの組織における病理学的変化や肝・腎機能パラメータの変化とは無関係である。

重要なことは、これらの治療効果をもたらすために使用された用量では、uPAR CAR T細胞による明らかな毒性は見られなかったことである。

遺伝学的あるいは薬理学的なアプローチによる老化細胞除去の研究は、老化細胞の除去が寿命を有意に延長するかどうかについては、はっきりしない。我々の現在の研究は、現段階では寿命に関する結論を出すには十分な検出力を有していない。

最近の研究では、老化の特徴を持つマクロファージ集団を除去することで、マウスの組織衰退も改善することが示唆されている。これらのマクロファージが本当に「老化」しているのか、それとも別の細胞状態なのかは議論の分かれるところである。

(良いことづくめなのかどうかは現時点ではわからないものの)

私評

一度のT細胞注入によりマウスの老化を阻止、マーカーの若返りを、ほぼノーダメージで可能にしたという画期的なトライアル。人の場合には改変した自己T細胞を用いるという未来も見える。
考察の最後あたりにマクロファージについて述べられているが、このマクロファージはこの問題を考える上で非常に重要な細胞だと思われる。
といのも、マクロファージのルーツは単核白血球であり、進化上もかなり早い段階から存在し、ほぼ全ての動物に存在し血管や心臓を構成する細胞とも起源を同一にしているという点、さらに食作用以外にも色々な機能があり、免疫B細胞、皮膚組織球、肝臓のクッパー細胞、骨の破骨細胞、脳のミクログリアなどがマクロファージの一種であり、文中の免疫集団と非免疫集団という表現にあるそのルーツと考えればこうしたマクロファージ・ファミリーは動物組織、個体の相当部分の中枢的役割を担っている元祖細胞と考えることもできる。
 つまり、このように貪食細胞から組織適応していったマクロファージ・ファミリーの老化こそが個体の老化そのものであるという発想がみえてくる。例えば、原始的な腔腸動物の腸管形成を見張る役割の免疫細胞、それに遅れて神経細胞、やがてシナプス形成により脳細胞が高度な機能を形成するシステムのすべてでマクロファージは必要不可欠な免疫細胞の根幹に存在するいわばルーツであり、その老化が個体の老化にを代表している。そうすれば、今回の論文の内容に筆者らが匂わせてある不老不死の一番のターゲットはマクロファージではないか、と読み取ってしまう。


カクテル 38

ドルチェ アンド バナーナ Dolce and Banana

バナナを使ったカクテル。モーツアルト・ホワイトチョコレートリキュールは普通のモーツアルト・チョコレートリキュールと同じような味だけれども白色でやや風味は少な厭く感じられますが、何よりもオシャレで絵になる可愛いパッケージ。グラスに氷とか入れてはそのまま飲んでも美味しい。写真左がモーツアルト・ホワイトチョコレートリキュール、右は普通のモーツアルト・チョコレートリキュール。
真ん中はバナナ。


このシリーズにはダークチョコレレートリキュールもあります。これは生クリームと相性抜群。


さて、
このモーツアルト・ホワイトチョコレートリリキュールを使用したカクテルの
ドルチェ アンド バナーナ。

モーツアルト・ホワイトチョコレートリキュール 15ml
ココナッツリキュール 15ml
ベイリーズ(アイリッシュ・クリームリキュール) 30ml
バナナ 1本
氷 適量

ミキサーにかけてグラスに注ぐ。


オリジナルではクラッシュアイスの上にミキサーしたものを注ぐのですが、今回は氷と一緒にミキサーして作りました。ちょっとバナナを入れすぎたのでつぶつぶですがいずれも相性がよくてアルコール入りの芳醇なバナナジュースという感じの一杯はちょっと風変わりで美味しい。
そういえば、似たような名前の洋服がクローゼットにたくさんあったような、、、



We'll Be Together Again 🎵
Red Garland 

サイエンスの話 38 ギラン・バレー症候群の引き金としての新型コロナウイルス感染症: 分子メカニズムのレビュー

2024-01-28 12:00:53 | 日記
ギラン・バレー症候群(GBS)はインフルエンザワクチンの効能書には稀ながら一定頻度で発生するので注意、とある。インフルエンザの自然感染は、インフルエンザワクチン接種よりもギラン・バレー症候群の強い危険因子である。また、帯状疱疹ワクチンShingles vaccineやCOVID-19注射接種後や感染後にも発生している点から(すぐに効能書には追加されている)、漠然と神経向性のあるウイルス構造タンパク質との交差免疫かな程度の認識であったが、注目したのはガーダシルなどHPVワクチンでも周知されていることからどういうメカニズムなんだろうという疑問。
結論から言うとはっきり出ていない。

REVIEW ARTICLE
COVID-19 as a trigger of Guillain-Barré syndrome: A review of the molecular mechanism
ギラン・バレー症候群の引き金としての新型コロナウイルス感染症: 分子メカニズムのレビュー

背景

ギラン・バレー症候群(GBS)は最も頻度の高い急性末梢神経障害であり、しびれ、進行性の脱力感、疼痛、麻痺、しびれ、自律神経機能障害を特徴とする。 呼吸不全はGBS患者の20-30%にみられ、自律神経機能障害とともにGBSの死亡率の3-10%を占める。他の多くの疾患と同様に、GBSの発生には遺伝的要因と環境的要因の両方が重要な役割を果たしている。世界的なGBS発生率の推定値は、年間1.1/100,000~1.8/100,000人であり、年齢とともに増加する。 血清学的データに基づくと、COVID-19患者におけるGBSの発生率は62,500人に1人であり、この発生率は、ジカウイルス(約4,000人に1人)やカンピロバクター・ジェジュニ(約1,000人に1人)など、GBSとの関連が知られている他の感染症よりも低いものの、COVID-19ワクチン接種後にGBSが発生したという報告があり、この可能性のある関連性の重要性を高めている。

有髄神経の構造は、電気的な興奮を伝える軸索が中心にあり、軸索の周囲を絶縁体である髄鞘が覆っている。ギラン・バレー症候群は髄鞘が傷害される脱髄型と、軸索そのものが傷害される軸索傷害型、両者が傷害される混合型に分類できる。
従来は脱髄型が多く生命予後、機能予後ともに良好とされていた。しかし大規模調査の結果、日本では軸索傷害型と混合型の割合が高く、長期的にも機能が完全には回復しない例も多いことが明らかとなってきた。
こうしたニューロパチーの病理的観点から以下の2つのタイプ
・軸索型GBSをAMAN(acute motor axonal neuropathy(AMAN、急性運動軸索型ニューロパチー)
・脱髄型GBSをAIDP(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy (AIDP)
とに分類できる。

・メカニズム解明に至るいくつかの可能性と考察

1. SARS-CoV-2の向神経性と神経病原性

SARS-CoV-2の神経向性および神経細胞感染能は以前に証明されている40。SARS-CoV-2の神経向性は、MERSやSARS-CoVなどの神経侵入性コロナウイルスのリストに加えられている。SARS-CoV-2は血液脳関門(BBB)を通過し、感染した白血球を介して、あるいは毛細血管内皮細胞に感染して損傷した後に移動してCNSに侵入することができる。その他の侵入経路としては、末梢神経への感染が考えられ、ウイルス粒子のCNSへの逆行性軸索輸送や迷走神経および消化管への感染が考えられる。いったんウイルスが脳組織に侵入すると、神経細胞や非神経細胞(主にアストロサイト、オリゴデンドロサイト、内皮細胞)と相互作用する可能性があり、これらの細胞はACE2受容体を発現し、脳全体に分布するゆえ、COVID-19感染に関連する神経学的合併症の範囲が広いことは、この分布によって部分的に説明できる。COVID-19の神経侵襲性の影響の可能性がある。

(CNSへ侵入するところまでは良いとしても末梢神経の脱髄所見との関連性はあまりないと思う)


2. 微小血管障害

SARS-CoV-2のパンデミック中、いくつかの血管障害や血栓性事象が世界中で報告された。

SARS-CoV-2は、一酸化窒素の生物学的利用能の低下、酸化ストレス、直接的な病原性、自己抗体によって、直接的、間接的に微小血管機能を障害する可能性がある。微小血管の障害は、長期にわたる低酸素症やアシドーシスを引き起こし、血液-神経関門(BNB)障害や糖尿病性ニューロパチーのような神経障害を引き起こす可能性がある。仮説として、SARS-CoV-2感染時の微小血管機能の障害は、GBSの発生に寄与する可能性がある。この現象を確認するためには、さらなる研究が必要である。

(これも、脱髄と血管障害、循環障害の関連性が直接的なものではないことを考慮するとむしろあったとしても背景の一つ)

3. BNB血液神経関門(blood-nerve barrier、BNB)の破壊

血液神経関門(BNB)は、末梢神経がホメオスタシスを維持するために不可欠な 内膜微小環境を提供している。GBSの亜型であるフィッシャー症候群(MFS)における神経筋接合部の病変のように、BNB破壊がそのメカニズムと考えられている。

フィッシャー症候群またはミラー・フィッシャー症候群(Fisher syndromeまたはMiller Fisher syndrome、FSまたはMFS)は急性の外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失を三徴とする免疫介在性ニューロパチーである。多くは上気道系感染後に発症し、1~2週間進行した後に自然経過で改善に向かうという単相性の経過をとる。先行感染、髄液蛋白細胞解離などギラン・バレー症候群(GBS)と共通する特徴が見られ亜型と考えられている。
 フィッシャー症候群の血液検査においては抗GQ1b抗体が80~90%で認められる。1992年患者の80~90%において血清ガングリオシドGQ1bIgG抗体が検出されることが報告された。そしてこの自己抗体が診断マーカーとして確立した。
フィッシャー症候群の三徴(外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失)をヒト神経系におけるGQ1bの局在により説明しようとする意見が強まりつつある。FS患者血清から高頻度にガングリオシドGQ1bIgG抗体が検出されることが報告され、さらに眼運動神経(動眼神経、外転神経、滑車神経)に傍絞輪部にはGQ1bが豊富に発現していることからGQ1b抗体が外眼筋麻痺に関与していると考えられている。さらに眼運動神経の中でもその神経終末にGQ1bの発現がより高いことも報告されており、障害部位に関しては神経幹の傍絞輪部に加えて末梢神経において血液神経関門を欠如する神経終末部も抗体介在性機序で障害されている可能性が指摘されている。


(本文に戻る)
ACE2レセプターは、内皮細胞、ニューロン、グリア細胞で高レベルに発現しており、直接的な細胞病理学的作用に関する推測を裏付けている。グリア細胞におけるACE2受容体の発現は、以前COVID-19によるBBB障害で見られたように、BNB神経ウイルスによる直接的なBNB障害を引き起こす可能性がある。グリア細胞におけるACE2受容体の発現は、以前COVID-19によるBBB障害で見られたように、BNB神経ウイルスによる直接的なBNB障害を引き起こす可能性がある。COVID-19に関連したGBS症例のほとんどがGBSの脱髄性変異を報告しており、また抗体がCOVID-19の病態に大きな影響を及ぼしていることから、抗体がCOVID後のGBSの病態に重要な役割を果たしている可能性が考えられる。

(ACE犯人説。ただ、冒頭で述べたように他のインフルエンザなど他のワクチンでも生じている点、どちらかと言うとベクターワクチンによるワクチン接種がGBSのリスク上昇と関連している点=下記の論文、などを考慮すると免疫異常の方が説明されやすいように思われる)
(ただこう言う論文もある;COVID注射後の片頭痛は、スパイク糖タンパク質によるACE2受容体の破壊と、ミクログリアの炎症反応とスルファチドの喪失による重要な顔面神経を覆うミエリン鞘の破壊の両方から生じると考えられる。そのスパイク糖タンパクの供給源は、外因性か内因性かのどちらかである可能性がある) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9012513/

Risk of Guillain-Barré Syndrome Following COVID-19 Vaccines: A Nationwide Self-Controlled Case Series Study
PMID: 37788935 PMCID: PMC10663040 (available on 2024-11-21) 
DOI: 10.1212/WNL.0000000000207847

4. 免疫系の亢進とGBS

SARS-CoV-2が免疫を介した神経学的結果を引き起こすという証拠が増えつつある。正確な病態生理学的メカニズムはまだ不明であるが、潜在的なメカニズムを示すいくつかの証拠がある。髄液中にウイルスが検出されなかったことは、ウイルスの直接的な影響ではなく、神経学的合併症の免疫介在性メカニズムを支持するものである。
SARS-CoV-2によって引き起こされる "サイトカインストーム "は、COVID-19に関連したGBSを引き起こす可能性のある自己免疫経路のもう1つのメカニズムとして提唱されている。IFN-γ、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、IL-1β、IL-6、IL-17などのケモカインに加え、サイトカインの急激な増加が観察されており、多臓器障害を引き起こす可能性がある。免疫応答中に、※ 好中球は細胞外トラップ (neutrophil extracellular traps;NET) を形成することがある。実際、炎症は NET 形成を引き起こす可能性があり、NET 自体が炎症を引き起こす可能性がある。 
さらに、炎症状態にあるヒト細胞のアポトーシス中に生成される自己抗原に作用し、自己抗体産生を引き起こす。 

好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)とは,細胞内のDNAやヒストンを顆粒球タンパク質とともに細胞外に放出する現象であり,異物を捉え,殺菌する自然免疫応答の一種として発見された.近年,関節リウマチなどの自己免疫性疾患や糖尿病,がんなどの炎症性疾患においてその誘導が確認され,NETsは様々な疾患の増悪に関与する因子として考えられている。

(広い意味で免疫系の亢進といわばその悪影響による末梢および中枢神経系のダメージという解釈)

5. 分子模倣と自己抗体

自己抗体はCOVID-19の病因において重要な役割を担っている。自己抗体はCOVID-19の重症患者の約10%~15%で検出されている。

これらの自己抗体は血栓症を誘発したり、サイトカインシグナル伝達を阻害したり、インターフェロンを中和したりする。例えば、インターフェロンに対する自己抗体はインターフェロンを中和し、その結果SARS-CoV-2の複製を増加させ、体内の炎症亢進状態を誘発する。

ヒトのタンパク質の塩基配列が他の抗原と類似している場合、これら2つの抗原の間に分子模倣が起こる。様々な塩基配列解析の結果、ヒトのペプチドとSARS-CoV-2タンパク質の間に類似性があることがわかった。また、別のバイオインフォマティクス解析では、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質と、さまざまな神経細胞タンパク質や抗原との間に、交差反応性の可能性を示す分子模倣が見つかっている。

一方、自己抗体はGBS発症の主な原因の一つである。
また、GBSの各サブタイプでは、特異的な自己抗体が産生され、これがサブタイプの検出に寄与している。ガングリオシド(フィッシャー症候群の項)は、GBS患者の神経およびミエリン細胞上の主な抗原であり、自己抗体の標的である。GQ1B抗体は、GBSのサブタイプであるフィッシャー症候群の主要な自己抗体のひとつである。COVID-19後のGBS患者では、ニューロファシン、スルファチド、ガングリオシドを含むヒト抗原に対するさまざまな自己抗体が認められた。以前の研究では、抗ガングリオシド抗体はCOVID-19後のGBS患者のごく一部に存在することが示されている。

また、主に活性酸素と活性窒素種の存在により、炎症過程で新抗原がランダムに形成される可能性もある。アポトーシスが亢進し、アポトーシス細胞と壊死細胞のクリアランスが減少するため、自己免疫原性の高い抗原が形成される可能性がある。これらの新しい抗原は、細胞内に見られる抗原と類似していると、他の炎症性脱髄病変 (acute inflammatory demyelinating AIDs) でみられるように、免疫細胞も自己抗原に反応する可能性がある。
したがって、細胞の酸化還元レベルの維持における調節障害は、GBS、てんかん性疾患、脱髄性痴呆などの神経疾患の発症に重要な役割を果たしていると考えられる。 体内の炎症状態の結果として、炎症部位でいくつかの刺激因子が産生され、免疫細胞による自己抗原検出のリスクが高まる。一部の患者では、自己抗原と刺激因子が同時に提示されることにより、自己抗原に対する寛容が破壊され、結果としてAIDsの発生につながる。

(most likely…本文中下線部分の記載通りなら交差免疫という機序がある。しかも、ARS-CoV-2のスパイクタンパク質と、、、注射のコードする部分と同じ)

4 素因についての考察

・腸内環境の異常

SARS-CoV-2の患者の多くには、下痢や腹部不快感のようなSARS-CoV-2の消化管症状がみられる。一方、SARS-CoV-2の感染は症状がなくても消化管細胞に広がる可能性があり、SARS-CoV-2感染時に腸が侵される頻度が高くなる。COVID-19に関連した腸内細菌異常症は、免疫系の不均衡や細菌の移動、あるいは二次的な細菌感染の促進によって、GBSのようなAIDsと関連する可能性がある。

正常な腸内細菌叢は、免疫系のバランスを整え、自己寛容を強化することで身体を自己免疫から守るのに役立つ可能性がある。常在細菌叢の種は、その発生と機能に影響を与えることで、免疫系のTh17/制御性T細胞と炎症性/抗炎症性細胞サブセットのバランスを調節する。ある研究では、全身性エリテマトーデス(SLE)患者の腸内細菌叢とSARS-CoV-2との類似性が示された。両疾患ともマイクロバイオームの生物多様性を減少させ、炎症に関連する病原体を増加させ、炎症に対して防御的な共生細菌を減少させる。結果プロバイオティクスはGBSの緩和に役立つ可能性がある。

消化器系はSARS-CoV-2のレセプターであるACE2を発現していることから、COVID-19に関連した胃腸炎もGBS発症の引き金になる可能性がある。胃腸炎とGBSの関連は過去から現在に至るまで認められているが、COVID-19患者におけるその可能性については、さらなる調査が必要である。

(腸内環境がここら辺で出てくるとは正直意外でした。やっぱりヨーグルト最強!)

・遺伝的要因

COVID-19のパンデミックの際、異なるタイプのヒト白血球抗原(HLA)を持つ人がSARS-CoV-2感染を合併しやすいことを示した研究のように、遺伝が疾患の発症時期に影響を及ぼすことがさまざまな研究で示された。
 一方、ある研究では、例えばSLEのようなAIDs患者の遺伝と、SARS-CoV-2感染が患者に与える影響の間に密接な関係があることが示された。興味深いことに、最近の症例報告では、COVID-19後にGBSを発症した患者が、GBS患者とHLAを共有していることが示された。特に、この患者はHLA-A33、HLA-DRB1、HLA-DQB1のサブタイプを持っており、これらのサブタイプは以前から世界中でGBSに罹患した人々に認められていた。この原始的な結果から、SARS-CoV-2感染後のGBSに対する遺伝的素因の影響が結論付けられた。

GBSの遺伝的ルーツについては議論のあるところであるが、いくつかの家族性研究から、遺伝的パターンがGBSの発生につながる可能性があることが示された。特定の変異を持つさまざまな遺伝子が、以下の3つの柱に寄与するGBSに関係しているようである:

1. 病原体抗原の同定、処理、提示に寄与する遺伝子。
Fcガンマレセプター(FcGR)やHLAなど

2. サイトカインと炎症因子。
サイトカイン因子、リンパ球活性化因子遺伝子など

3. 神経細胞の自己抗原。
神経の表面タンパク質をコードする末梢ミエリンタンパク質など

(GBSに限らず多くの変性疾患には遺伝的要因の関与はあると思う)

5. SARS-COV-2ワクチン接種とGBS

GBSとワクチン接種との関連については、1976年に米国で実施されたNational Influenza Immunization Programで、A/ニュージャージー州のインフルエンザワクチン接種後にGBSの発生率が増加したことがきっかけとなっている。さまざまなワクチンでワクチン接種後のGBSが報告されているが、GBSとほとんどのワクチンとの因果関係を結論づける証拠はほとんどない。

アデノウイルスベクターのCOVID-19ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19 [Oxford-AstraZeneca])およびAd.26.COV2.Sワクチン(Ad.26.COV2.S [Japan-AstraZeneca])の接種後に、GBSのリスクが(予想されるバックグラウンド率と比較して)増加することを示す研究がいくつかある。しかし、他のいくつかの研究では、COVID-19ワクチン接種後のGBS発生率の有意な増加は認められなかった。

COVID-19ワクチン関連GBSの正確なメカニズムは不明なままである。Nachamkinらが1976年の豚インフルエンザワクチンについて示唆したような分子模倣が、COVID-19ワクチン関連GBSのメカニズムである可能性がある。Kowarzらは、アデノウイルスベクターを用いたCOVID-19ワクチンが、細胞からSARS-CoV-2スパイクタンパク質を分泌させることを示した。アデノウイルスベクターは、スプライシングのようなRNAの転写後修飾の場である細胞核内で転写物を生成する。SARS-CoV-2スパイクタンパク単独、あるいはそのS1サブユニットが、炎症反応、内皮障害、内皮バリア機能低下に果たす役割は、いくつかの研究で示されている。

GBSの急性期、または発症から3カ月から1年以内の患者にはワクチン接種を遅らせ、ワクチン接種関連GBS(ワクチン接種により6週間以内にGBSが発症する)の症例にはワクチン接種を避けることも提案されている。

(アデノウイルスベクターを用いた注射はDNAが細胞内で核を潜って出てくるので負担も大きい。その分免疫系への負担と考えればより多く、より強い反応が出るとも考えられる。)

私評

免疫系の活性化が想定外の方向にも向かう、いろんなことが起きる、という一般的なストーリーのレビュー。ここでは述べられていないが、以前触れたmiRNAの誘導などはまだ新しく未知の部分が多い。冒頭のワクチン類や他の多くは、ターゲットにするウイルスやバクテリアの構成要素のみならずその免疫原性を高めるためにアジュバントを加えてあるので様々な免疫系が惹起されるような仕組みが目的で作られている。アジュバントは製作者が研究して選択される病原体とは無関係の化合物なのでそうした意味合いからはむしろ「薬」の色合いが濃い。一方でインフルや帯状疱疹には優れた治療薬が既にある。そのような背景を踏まえ、予防という観点から何を体に入れたら良いかよく考えて。



カクテル 37

セレブレーション Celebration

シャンパーニュを使ったカクテル。
まずはシャンパーニュをグラスに注いでおいてそれ以外のお酒をシェイクして後から注ぐという2段階で作ります。

クレームドフランボワーズ 20ml
コニャック 10ml
ライムジュース 1sp
をシェイクする。

あらかじめグラスに注いだシャンパーニュに加えれば完成。

シャンパーニュに軽やかなフランボワーズの甘みとブランデーの香りがミックスされてとても華やかな一杯に仕上がります。
さて、何を祝いましょう?

Softly, As in a Morning Sunrise🎵
Arnett Cobb