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サイエンスの話 18 水分の摂取量

2022-05-28 14:24:00 | 日記
なんとなく健康に良さそうだと思っていること、習慣にしていること。
ただ、
巷にこの手のいろんな情報が溢れているのでどれを頼りにして良いやら、
実際難しいところがあります。
この点自分で長年注意しているのが水の摂取。
実感するのは皮膚の水分量への反映。
それから、
お酒を飲んだり、疲れたり、身体への負担をかけた後で回復する際の効率。
考えてみれば、どんなにいろんな栄養素をとっても水が無いと働きが鈍って十分に発揮できないのも当然。

さて、関連して、
水分摂取量と死亡率の関連性を探ったところ
死亡率に関して水分摂取量が多いほど、死亡リスクが低くなることがわかった、
というこれまでありそうでなかった内容の論文。
軽くて平易なストーリーですが、目の付け所にセンスを感じます。


Association Between Water Intake and Mortality Risk—Evidence From a National Prospective Study

Front. Nutr., 12 April 2022  

方法

NHANES(米国保健福祉省による全国健康栄養調査 National Health and Nutrition Examination Survey) 1999~2014年の20歳以上の合計35,463人の成人(17,234人の男性、18,229人の女性)の食事と死亡率に関連するデータをもとに、Cox比例ハザードモデル(生存率を解析する)を使用して、取水量(総水、普通水、飲料、および食料水で表される)と取水率(各種類の水の割合で表される)の関連を調査した。

→米国保健福祉省のデータをもとに、1999年から2014年までの間に生存率と水分摂取量の関連について前向き研究、統計解析した。p<0.05を統計的に有意とした。


・NHANES ;
米国保健福祉省による全国健康栄養調査 (National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)

・水の種類としては総水分量(total water)の他に

普通水(plain water、水道水、天然水など)
飲料 (beverage アルコール、コーヒー、ジュースやコーラなどの飲料)
食料水(food water 食べ物に含まれる水分量)

に分けて解析した。

・死亡率、死亡原因に関して

NHANES に1999年から2014年の間にあるデータのうち、
「すべての原因」
「心臓病」
「悪性新生物」
という3つの共通の主要な死因について
それぞれに比較した。

・共変量(covariates, 年齢や性別など生存時間に影響を与える因子)

男女、年齢などの他に基礎疾患として高血圧や心臓病、喘息、甲状腺疾患などにクラスター化して分類した。

・水分量とその背景

一般に、
・米国の男性と女性は1日あたりすべての食品と液体から平均3.46Lと2.75Lの水を消費。
・普通の水は男性と女性、それぞれの総水分摂取量の30%、34%に相当する。
・欧州食品安全機関が推奨する水の必要量は、男性と女性で2.5および2 L /日。

この統計に用いた中央値として、

・すべての参加者
総水分摂取量の中央値は
2,970g(IQR:2,151、4,042)/日

水分摂取の内訳と割合は、
普通の水 6%
飲料(beverage) 37%
食品 36%
であった。

・参加者の男性 で報告された1日の総水分摂取量の中央値は
3,149g(IQR:2,310、4,241)
水分摂取の割合は、
普通の水 24%
飲料(beverage) 41%
食品 35%
であった。

・参加者の女性 で報告された1日の総水分摂取量の中央値は
2,800 g /日(IQR:2,019、3,841)
水分摂取の割合は、
普通の水 28%
飲料(beverage) 34%
食品 38%
であった。

結果

・男性の総水分摂取量と飲料および食品からの水分摂取量はすべて女性よりも高かった(表1)。

・すべての参加者において 
総水分量の分類4群を比較すると、

1群 ~2150g /日
2群 2,151–2,970 g /日
3群 2,971–4,042 g /日
4群 4,043–8,516 g /日

すべての参加者において、総水分摂取量が1群 ~2150g /日と比較してより多いほど、「すべての原因による死亡リスク」が低くなった(図1Fig1)。


図1(Fig1) 

A  水平に総水分摂取量(が増えると)、縦に「すべての原因による死亡」(が減る)
B 飲み水
C 飲料 beverage 
D 食料水

→いずれも『すべての原因による死亡」と相関している。

→ 食料水とは食物の中の水分だが、当然野菜類に豊富なことからその量は野菜の摂取量とも相関すると考えられる。

→ 飲料は守備範囲が広すぎて、例えば、発がんと関連が指摘されている糖質の含有量や、あるいは心臓に影響するカフェインの量は異なるので、可能なら別々にそれぞれのデータが欲しいところ。
ただ、図1のデータはこれで綺麗に統計的相関を示している。

・飲料 beverage

飲料の摂取量については、最低量の群(

・水分摂取量と悪性新生物/がん死亡リスク


図2に示すように、負の相関傾向を示すものの(右肩下がり)、
総水分量が悪性新生物を抑制するという有意な統計的相関は得られなかった。

→これに関しては飲料(ビバレッジ beverage)がU字型の曲線を示し、くぼみ中央あたりは飲料摂取量1,033–1,524 g /日、および1,612–3,802 g /日は35%と相関が見られた(図2C)。

→ やや複雑にしているのがこの飲料というカテゴリー。
紅茶、コーヒーに関しては後述(表5)のように抑制効果が優位にみられたものの、この研究におけるビバレッジという概念がアルコールからジュースや炭酸飲料など幅広いためかと推察される。当然アルコールのような飲料は飲みすぎると飲料の抑制効果は消滅することが推察される。
よって総水分と悪性腫瘍の関連も優位でなくなるという解釈。

・水分摂取量と心臓病による死亡リスク


すべての種類の水分摂取量は心臓病の死亡リスクと関連してなかった(図3)。

→心不全などでは治療として利尿によって水分を引くので、水分がどう影響するのか、気になるところ。
結論は、悪影響はないが、良い影響もない。
ここでも、ビバレッジのカテゴリー(図3C)がフラットで内容との因果関係が微妙。
では、問題の飲料に関して、以下のデータ。

・さまざまな種類の飲料水(ビバレッジの内訳)の摂取量と死亡率のリスク 表5


この表、なかなか面白い。
太字が有意差のある部分で、それをもとに表を読み解くと、

1、コーヒー、紅茶の摂取はガンを抑える、そして全ての原因の脂肪リスクを減らす

2、アルコールはガンを抑える、そして全ての原因の脂肪リスクを減らす

3、アルコール以外の飲料は心疾患のリスクを軽減する

という結論。

この考察は、
コーヒー、紅茶はポリフェノールという因子かもしれない(ポリフェノール好きな著者の解釈がいたるところに出てくる)。
確かに、コーヒー、紅茶=カフェインは心拍を駆り立てるので不整脈はじめ心疾患には良くない。
わからないのが、3 アルコール。

原文における推察そのまま。
「アルコールはWHOによって発がん性物質として明確にリストされており、アルコールの使用は世界的な疾病負荷の主要な危険因子です。
考えられる説明は、アルコールの有害な影響が、ストレス解消や精神的快楽などのいくつかの有益な効果を覆い隠す可能性がある。
また、これらのアルコール飲料のアルコール含有量に関するデータは入手できませんでした。一部のアルコール飲料に含まれる非アルコール含有量であるポリフェノールは、人体の抗酸化作用と抗炎症作用を高め、その結果、死亡リスクの低減にプラスの影響を与えることが実証されています。」

要するに、水分には変わりないが、アルコールはビールやワイン、ウヰスキー、水割り、ソーダ割、ストレート、水分量もアルコール度も全然違うのがごちゃごちゃになっているのがちょっと惜しい。

結論

水分摂取量が多いほど、死亡リスクが低くなる。

考察

水は人体の主成分であり、女性と男性の体重のそれぞれ約50~55%と60%を占めています。
つまり、メジャーな構成成分として、一つの栄養素でもあり、工場の冷却水のように触媒作用でもあり、細胞機能の修復材料の一つであるように思われます。
特に皮膚は体の最外層にあるので地上に暮らす生き物では水分の蒸散を守っている臓器と言えます。
なので、身体の内なる水分は外に表される、肌コンディションに反映されるとよく言います。
そんなこんな、水分摂取の重要性が、実際に統計で示されたという意義。


カクテル 14  ストロベリー・ロワイヤル Strawberry Royale

アルコールに関しては水分補給で冤罪府をもらったような気になってしまう。
気楽になったついでに旬の初夏らしい飲み物を探してみる。
ストロベリー・ロワイヤル Strawberry Royale
 はキール・ロワイヤル Kir Royale のアレンジバージョンでカシス Crème de Cassis をルジェ ストロベリー Lejay Strawberry にかえただけのカクテル。
こうなりゃついでにイチゴも盛って全部イチゴで通してみる。
簡単、綺麗、さっぱり、美味しい。

Notes;  とても5月らしい飲料。



Moon River 🎵
Gunde/Bodilsen/Lund  jazz piano trio