伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

保存会で紙漉きをした

2024年05月30日 | 遠野町・地域

 トロロアオイは、育てた根から粘り成分を抽出し、紙漉きをする際に、漉き舟にはった水に溶かし込み粘性を高めるために使う。水に粘りを浸けることで繊維の沈降をコントロールし、紙を漉きやすくするために使われる。紙漉きの方法の一つ流し漉きに欠かせない材料となる。

 25日、畑に集まった保存会員が、畑に畝を作り、溝を掘り、3cm程の間隔で種を置き、土を被せる。10数m程の畝を7本作り、種を埋めていく。こうして1時間強で作業を終えた。

 種から芽が出れば、15cm間隔程度になるように間引きをし、成長に応じて芽欠きなどの作業を加えて根を大きく育てる。初冬には収穫だ。

 翌日には、自宅の畑でも種植えをした。やはり1時間程で作業を終えた。

 自宅の畑は土が固い。固い土の畑では根が分けつしてしまい、太い根を育てることができない。

 昨年、トロロアオイの産地・茨城県小美玉を視察した際、土を柔らかく深く仕立てることが立派な根を育てる上で大切と知ったので、今年は40cm程の深さで土を起こした上で耕耘機でしっかり耕耘したので、柔らかい地盤になっていると思う。

 今年はどんな根が育つのか・・。

 さて、紙漉きは、保存会員から「今度はいつします?」と柔らかくプレッシャーをかけられ、また、新しく地域おこし協力隊員を迎えたことから実施に踏み切った。一応、紙漉きまでの準備手順を覚え、紙漉きも(厚みを揃える技術はまだまだないが)できるため、何となく中心になって紙漉きに取り組んできた。

 紙漉きは、乾燥してある白皮を1昼夜水にさらす(20日に作業)ことからはじまり、

煮熟(炭酸ナトリウムを加えたお湯で白皮を煮て1晩そのままにしておく。21日)、

釜揚げ・水晒し(白皮を釜から取り出し、水にさらして不純物を流し落とす作業。22日。本来水晒しを1晩した後で次の作業・塵取りに移りたいのだが、体験者がいたことから合わせて同日に一部の塵取りも実施)、

塵取り(皮に残ったゴミや汚れを取り除く作業。23日)、

打解(塵取り後の白皮を木槌でたたき繊維をほぐす作業。24日)、

白皮の繊維化・紙漉き(打解した白皮をなぎなたビーターという機械で繊維にし、その後紙漉き。27日、28日、29日)、

乾燥(漉いた紙は1晩そのままにして自然脱水した後に圧力を加えて脱水して乾燥機にかけて乾かす。28日、29日、30日)

という順番で進む。作業が終ったのは、中断日も含めて11日間、実質の作業日は9日間かかった。

 紙漉きをすると時間がかかる。専業でしているならば、合間合間に必要な作業を続けながら、連続して紙漉きをすることができるが、アマチュア集団の保存会は、毎日紙漉きをしているわけではないので、常に仕切り直しをしながら作業をすることになるので非効率になり、作業に時間がかかることになるのだ。

 一般的に紙漉きは冬場に行われる。歴史的な視点から見れば、紙漉きが農閑期の農家の副業として行われていたことが理由だろう。現在では、トロロアオイを保存して年間を通して紙漉きが行われるが、温度が上がると分解が早くなるため、私たちには使いにくい。化学ネリを利用すれば、気温が高くても問題なく紙を漉ける。

 こうしたことから冬場以降の紙漉きは避けてきたのだが、今回はトロロアオイを使った溜め漉き、化学ネリを使った流し漉きと、粘剤を使い分けて紙を漉いた。

 今回は初心者も含めて5人が紙漉きに取り組んだが、紙漉きを重ねる中で技術的な向上も見られたように思う。

 終った後に「次はいつするの?」という声もあったことから、6月にも紙漉きをすることにして、予定を組んだ。

 ただ、今回は、準備から最後の乾燥まで全部の日程に私が参加したが、来月はちょっと厳しいかも。

 ちなみに、今回私は二尺三尺判の流し漉きを中心に紙を漉いた。漉き舟を交代で使用するため、空き時間には卒業証書判の溜め漉きをはじめ、他の人にアドバイス(役立っているかどうかは分からないけれど)したり、乾燥作業を始めその他の作業を進めたのだが、いつも写真を撮るばかりで、自分の作業の写真はほぼない。今回、漉いている様子を写真に撮ってもらった。



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