伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

ご飯論法とはこのことか・・ALPS処理水再質問へのエネ庁回答

2020年05月18日 | 原発
 多核種核種除去設備処理水の取り扱いに関する資源エネルギー庁の回答に対する再質問を、5月7日、市議会事務局に提出していた。

 議会事務局は提出があった3会派、共産党・市民共同と創世会及び公明党の再質問をまとめ、資源エネルギー庁に送付していた。この回答が18日に市議会に届けられ、明らかになった。

 ご飯論法という言葉が、一世を風靡した時期があった。「朝ご飯を食べてきたか」という質問に、パンを食べたにもかかわらず「ご飯は食べていない」と答えるように、論点をすり替えて答えることをいう。安倍首相の国会答弁等をとらえて発明された言葉だったが、このご飯論法には、
論点のすり替え
はぐらかし
個別の事案にはお答えできない
話を勝手に大きくして、答弁拒否
過去の事実の書き換え
があるという。

 資源エネルギー庁の再回答は、一回目の回答と同じ回答を繰り返したり、「はぐらかし」ともいえるものとなっており、ご飯論法そのものという感がある。

 例えば、会派の質問に次のようなものがある。

(最初の回答にあった)丁寧に「ご意見を伺う」ことは、1度程度の意見聴取をして方針を決定するという方法ではなく、政府がまとめる方針案に対する関係者の意見を聴取し、その再度の意見も方針案に反映する方法、すなわち意見交換をしながら方針案を策定する方法によって実現することになると考える。
 政府が方針を決定する前に方針案を示し、関係者・住民と意見交換を重ねながら、その意見を方針決定に活かす考えはあるのか。


 回答はこうだ。

 まずは、これまでに伺った意見を政府として受け止め、引き続き、幅広い関係者の意見をお伺いした上で、ALPS処理水の取り扱いについて、責任を持って結論を出していきます。

 質問は「考えはあるのか」なので、回答はイエスあるいはノーでの回答となるはずであるが、あえて、その回答はせずに、最初の質問への回答と同じ回答を繰り返す。

 また、次のような質問もしていた。

 (1回目の質問である)問21(1):連番36への回答は、
「政府としては、いつまでも時間をかけて検討するものではないと考えております」
「スケジュールありきで進めるものではないと考えており、幅広い関係者のご意見をお伺いした上で、結論を出していきます」
としている。
 関係者から「放出に反対」という意見があることを踏まえれば、政府の「時間をかけて検討するものではない」という考えは「スケジュールありき」を前提としなければ成り立たず、政府の本音は「処理水の取り扱い」に関する早期の方針決定というスケジュールに沿って進めるところにあるとしか考えられない。
 「時間をかけて検討するものではない」「スケジュールありきで進めるものではない」のいずれに重きを置いて対応していく考えなのか、お伺いします。


 回答はこうだ。

 いずれかに重きを置いて対応するといった考えはありません。その上で、ALPS小委員会の報告書においても確認されているように、発電所の敷地には限りがある、追加的にタンクを設置する余地は限定的であるため、こうした状況を踏まえれば、政府としては、いつまでも時間をかけて検討するものではないと考えています。
 他方で、スケジュールありきで進めるものではないと、考えており、幅広い関係者のご意見をお伺いした上で、結論を出していきます。


 質問は1回目の回答を踏まえて、その回答の先の回答を求めているにもかかわらず、前回と同じ回答を繰り返している。

 ご飯論法なのだろう。率直にそう思った。国というのは、もともとこういうものなのかもしれないが、安倍政権のもとではこれが標準的な姿になっているのかもしれない。

 さて、会派として提出した再質問の基本的なスタンスは、政府が方針を決定するまでの手続き論にある。現在、政府は関係者等からの意見聴取を進めており、これまでの回答だと、聴取した意見を参考に政府として方針を決定するという考え方に立っている。

 原発事故とその事故処理・廃炉作業が40年以上の長期にわたり、その間、放射性物質の拡散や環境中への放出という事態が問題になることを考えれば、風評被害への対応は、今後、長期にわたる重大な課題となることは間違いない。

 今回、ALPS処理水の対応の問題の中心は、放射性物質の中でも汚染水から取り出すことが極めて難しいトリチウムの環境中への放出の是非となる。汚染水は、今後とも長期にわたり発生が続くと考えられるので、トリチウムの環境への放出による風評被害の克服は、短期にとどまらず、長期にわたるものとなる。それだけに、関係者・住民及び国・東電が相互の理解のもとで協力し合いながら、この問題に対応していくことが必要となる。その前提が、住民の理解と納得のもとでの国の対応方針の決定ということになるだろう。

 今回、政府が住民の意見を聞くとした姿勢は当然のことながら評価されるものと思う。同時に、意見を聞くにとどまらず、決定する方針に、できる限り住民の意向を反映することだろうと考える。

 ところが1回目の質問に対する回答及び今回の再質問に対する回答からは、意見は聴取して次の段階はいきなり政府の方針決定に進むことが見て取れる。

 意見を聴取するのはいい。しかし、その聴取した意見が方針に反映されなければ意味はない。この意見をしっかり反映するためには、政府の方針案に聴取した意見をどのように反映したのかを関係者等に説明して、これに対する意見を、良いも悪いも含めて再度聴取し、その意見を反映させて最終的な方針決定をはかる。このようなプロセスが必要になると思う。意見を聞いて、一発回答の方針決定では、せっかくの意見聴取の機会はいわゆるガス抜きになりかねないと思われるのだ。

 ところが、政府が方針案を示し、これに対する関係者・住民の意見を聴取する機会を設けることに関する質問への政府の回答は先に示した通り、「これまでに伺った意見を政府として受け止め、引き続き、幅広い関係者の意見をお伺いした上で、ALPS処理水の取り扱いについて責任を持って結論を出していきます」となっている。つまり回答は「ノー」、意見を聞くものの、政府の方針決定は一発回答である、そういう考え方に立っているとしか読めない回答なのだ。

 また、公明党から住民の疑問に対する対応についてこれまでの実績及び評価を示すように求める質問があった。

 回答は、2018年からの実績を掲載している。一読すると「資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ」という、同庁のホームページで配信している記事の他は、ほとんどが福島県内イベントあるいは福島県関連イベントで細々と説明をしてきたようにしか見えない。

 風評被害の克服は、県内を相手にするというよりも、県外を相手に全国に向けて幅広く啓もうすることが必要と思う。だが、現実には積極的にこのような取り組みを進めるという姿勢にはなっていなかったようだ。その点では政府の責任が問われるのではないだろうか。

 ALPS処理水、つまりトリチウム水の処理のあり方についての議論は、東京電力福島第一原子力発電所構内の保管タンクが限界に近づいてきて、急転直下、あわてて動き出した感がある。私は、4年前のいわき市議会の資源エネルギー庁及び東電関係者が出席した特別委員会で、風評被害への対応として、稼働する原発からはトリチウム等の放射性物質が、管理基準値を定めて放出されている事実も含め、トリチウムの安全性等を、国・東電が説明するよう求めていた経過があった。仮に4年前の本市議会における指摘、一介の市議会議員の指摘であったとしても、真摯に受け止め、全国的にしっかりと啓もうすることを4年間かけて進めていれば、今回とは違う経過をたどったかもしれないのにという忸怩たる思いを持っている。

 再質問への回答を見て、関係団体及び住民の納得を得ながら風評被害をはじめとしたALPS処理水に対応していくという点での国の姿勢には疑問を感じざるを得ない。方針を最終決定するのは国だとしても、関係団体・住民の意見をしっかり反映させるという観点から、現在の方針決定に関するプロセスを再検討することが必要と考える。

 以下、当会派の質問とこれに対する資源エネルギー庁からの回答。

多多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する質問回答への再質問

2020年5月7日 
日本共産党・市民共同




 処理水の処理のコストに関する質問1(1):連番1に、回答1は「コストが小委員会の判断に大きな影響を与えているとは考えておりません。」としている。

 「コストが小委員会の判断に大きな影響を与えているとは考えていない」ということであっても、水蒸気放出のコスト削減は可能なのか、また、コスト削減に関する検討経過を示していただきたい。

回答
 処分方法ごとのコストについては、トリチウム水タスクフォースにおいて、各処分方法を技術的に比較するため、処分長等を仮定して評価しています。コスト削減に関する検討は行っておらず、その可否についてお答えすることは困難です。



 他地域での処理に関する質問1(2):連番2等に、回答2はALPS処理委員会の「自治体や関係者等の理解」などの課題を紹介する報告書を説明するにとどめている。

 県外への運搬も視野に入れているのか否か明確にお答えいただきたい。

回答
 ALPS処理水野取り扱いについては、結論ありきでなく、関係者のご意見をお伺いしながら検討していくため、現時点で明確にお答えすることは困難です。なお、敷地外へのALPS処理水の持ち出しについては、ALPS小委員会の報告書において、
➀ALPS処理水の処分施設を設置する自治体や関係者等のご理解や、原子力製委員会による設置許可、
②運搬時の漏洩対策を含む運搬方法の検討や移送ルートの自治体の理解を得ることが必要となる
とされており、こうした課題を踏まえて、関係者のご意見をお伺いしながら、検討していきたいと考えています。



 結論ありきの意見交換ではないかという質問に対する回答6は、「海洋放出ありき」ではなく、ALPS小委員会の報告書を踏まえ、まずは関係者のご意見を丁寧にお伺いすることが重要だと考えております。その上で、政府としての方針を決定してまいります。」としている。
 また、意見聴取後の対応についての質問には、回答4で「頂いたご意見に対しては、今後、政府の考え方をとりまとめ、公表いたします。」としている。

 丁寧に「ご意見を伺う」ことは、1度程度の意見聴取をして方針を決定するという方法ではなく、政府がまとめる方針案に対する関係者の意見を聴取し、その再度の意見も方針案に反映する方法、すなわち意見交換をしながら方針案を策定する方法によって実現することになると考える。政府が方針を決定する前に方針案を示し、関係者・住民と意見交換を重ねながら、その意見を方針決定に活かす考えはあるのか。

回答
 まずは、これまでに伺った意見を政府として受け止め、引き続き、幅広い関係者のご意見を追う海外した上で、ALPS処理水の取り扱いについて責任を持って結論を出していきます。



 汚染水の総量の減少に関する質問4(1):連番8及び燃料デブリの空冷への切り替えに関する質問10(1):連番17等に、回答7及び回答12はそれぞれ、減少させていく考え等を示している。
 東京電力の福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップでは2025年内に100㎥/日以下の目標となっている。更に減らすことについてどのような見通しを持っているのか。

回答
 2026年以降の具体的な見通しについては、今後の対策の進捗を踏まえながら検討していきますが、引き続き、汚染水発生量の低減に努めていきます。



 発電所敷地外での処理水の保管等に関する質問17(1):連番30等に回答は、「自治体や関係者等の理解」など、ALPS小委員会の報告書に列挙された課題を紹介するにとどめている。

 回答の内容は承知しているが、中間貯蔵施設予定地以外を新たに用地を確保して、タンクエリアを増やすことは検討されていないのか。

回答
 ALPS処理水野取り扱いについては、結論ありきでなく、関係者のご意見をお伺いししながら検討してまいります。なお、敷地外へのALPS処理水の持ち出しについては、ALPS小委員会の報告書において、
➀ALPS処理水の処分施設を設置する自治体や関係者等のご理解や、原子力規制委員会による設置許可、
②運搬時の漏洩対策を含む運搬方法の検討や移送ルートの自治体の理解を得ることが必要となる、
とされており、こうした課題を踏まえて、関係者のご意見もお伺いしながら、ALPS処理水の取り扱いを検討していきたいと考えています。



 1回目の当会派からの質問である質問23(3):連番44の今後行う風評被害対策はどのようなものを考えているのか。特にトリチウム等についての原発からの日常的な放出等の歴史的な経過や影響に関する科学的な情報の国民的規模での周知については、どのように考え、どのように実施する考えか。」に対する回答9は、ALPS小委員会の報告書である「できる限り風評被害が生じない処分方法」の検討を前提にした、
「リスクコミュニケーションの取り組み」
「地元産品の展示スペースを常設化」
「継続的な対応」
の3つの指摘をあげ、関係者の意見を「丁寧にお伺い」したうえで、「政府として結論を出していきます」としている。

 これまでの意見聴取において、放出に反対という関係者の声の背後に風評被害への強い懸念があると考えられる。このため、大気及び海洋放出の是非も含めて何らかの結論を導き出す前提に具体的な風評被害対策が必要であり、その一環として「トリチウム等についての原発からの日常的な放出等の歴史的な経過や影響に関する科学的な情報の国民的規模での周知」で国民的なトリチウム等に関する理解を広げる必要があるとの考えからの質問であった。

 回答9では、この質問の趣旨に沿った回答はいただけなかった。また、質問23(1):連番42の風評被害に対するこれまでの国の取り組みについてでは、これまでの情報発信や経済対策にふれたALPS小委員会報告を参照するよう求める回答31をいただいた。これらの取り組みが、国民的に十分浸透しない結果が県内関係者の風評被害への懸念につながっていると考える。
 この点からあらためて具体的な風評被害対策の実施を、処理水の取り扱いに関する何らかの政府の方針決定の前提とすべきという会派の指摘をどのように受け止めるのか、お答えいただきたい。

 質問23(2):連番43では、原発稼働に伴う放射性核種の放出について国民的な周知の取り組みについてお伺いし、回答32で資源エネルギー庁のホームページ上の取り組み等の回答をいただいたが、この回答には、国が積極的な姿勢で情報発信を行ってきたとは受け止めることはできない。風評被害の状況からは、これらの取り組みにより必要な情報の国民への浸透はまだまだ不十分と考えているが、国としてはその状況をどのようにとらえているのか。

 講演会の開催を全国的に展開する等、国自ら国民の中に入って説明することが求められていると考える。今後の国が責任を持った取り組みをどのように考えているのか。

回答
 まずは、これまでに伺った意見を政府として受け止め、引き続き、幅広い関係者のご意見をお伺いした上で、風評被害対策も含めて、ALPS処理水の取り扱いについて責任を持って結論を出していきます。
 また、ご指摘いただいた「トリチウム等についての原発からの日常的な放出等の歴史的な経過や影響に関する科学的な情報の国民的規模での周知」については、ALPS小委員会の報告書においても「政府や東京電力は、マスメディアに対して、速報性はもとより、経緯や科学的知見など総合的で分かりやす情報の提供に努めていくべき」とされており、こうした指摘を踏まえて、政府としての取り組みも一層拡充しえ行きたいと考えています。
 なお、これまでの情報発信の取り組みについては、回答30の通りです。

回答30 地域での説明について、これまでの実績は下記の通りとなっています。引き続き、ホームページやSNS等の手段も活用し、各自治体とも連携しながら、精力的に説明を進めていきたいと考えています。
〈実績(【】は参加者、ブースへの訪問者数)〉
2018年
7月31日 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ(筆者注、以下エネ庁SCと略す)「現場で進む、汚染水との戦い~漏らさない・近づけない・取り除く~」記事配信
10月25日 エネ庁SC「「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策➀「ALPS処理水」とは何?「基準を超えている」のは本当?」配信記事
11月22日 エネ庁SC「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策②「トリチウム」とはいったい何?」配信記事
11月30日 エネ庁SC「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策③トリチウムと「被ばく」を考える」配信記事

2019年
1月11日 南相馬市住民説明会【63名】
1月18日 エネ庁SC「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策④放射性物質の規制基準はどうなっているの?」配信記事
5月11、12日 浪江町まるしぇの日【約65名】
6月15日 浪江町民向け視察・座談会【20名】
8月8日 エネ庁SC「汚染水との戦い、発生量は着実に減少、約3分の1に」配信記事
8月10、11日 浪江町夏祭り【約300名】
9月28日 浪江町民向け視察・座談会【13名】
10月5日 ふたばワールド@Jヴィレッジ【約400名】
10月14日 エネ庁SC「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策⑤ALPS処理水の貯蔵の今とこれから」配信記事
10月19日 エネ庁・東電主催視察・座談会【15名】
10月26日 標葉祭り(浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村)【約85名】
11月23、24日 浪江町十日市祭り【約400名】
12月7日 エネ庁・東電主催視察・座談会【29名】
12月14日 浪江町民向け視察・座談会【8名】
12月18日 エネ庁SC「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策⑥ALPS処理水の処分による放射線の影響は?」配信記事
12月21日 ふくしま大交流フェスタ@東京【約380名】

2020年
2月8、9日 浪江町まるしぇの日【約60名】
2月15日 エネ庁・東電主催視察・座談会【58名】
4月24日 ALPS処理水の取り扱いに関する書面での意見募集について、経済産業省福島復興推進グループのフェイスブック、経済産業省のツイッターにて記事投稿
5月1~6日 エネ庁SCの記事について、経済産業省福島復興推進グループのフェイスブック、経済産業省のツイッターにて記事を投稿し再周知
5月10日 多核種除去設備等処理水の取り扱いに係る「関係者の御意見を伺う場」について、経済産業省福島復興推進グループのフェイスブック、経済産業省のツイッターにて記事を投稿



 年間のトリチウム排出量について伺った質問22(3):連番41では、具体的な数値はウ示さず、「ALPS小委員会の報告書を踏まえ、関係者のご意見もお伺いしながら~政府として結論を出していきます。」とするにとどめている。

 政府としては具体的な放出量を示さないが、放出量による海洋への影響の東京電力の試算が報道されている。この現実には、情報開示に対する国の消極姿勢、あるは情報を小出しにして世論を探り、海洋放出ありきに誘導する情報操作がされているように思えてならない。処理水の年間放出量など放流に関する具体的な情報を提示しながら、関係者・住民に説明し、意見を伺う機会をあらためて設けるべきと考えるが、いかがか。

回答
 東京電力による資産は、関係者の検討の参考となるよう、小委員会の報告を受けた処分方法の具体的・技術的な検討素案について、という恐電力としての考え方が事前に示されたものと認識しています。
 ご指摘の海洋放出の拡散シミュレーションは、実際の年間放出量の案を示しているものではなく、年間のトリチウム放出量に応じた拡散の様子を示したものと認識しています。
 ALPS小委員会の報告書においては、処分量等について、風評への影響を抑えるために、関係者のご意見などを踏まえて適切な方法を決定することが重要とされており、関係者のご意見もお伺いしながら、ALPS処理水の取り扱いについて、政府として責任を持って結論を出していきます。



 現在おこなわれている説明会は7月末までの方向性確定を前提とするものかという質問21(1):連番36への回答は、
「政府としては、いつまでも時間をかけて検討するものではないと考えております」
「スケジュールありきで進めるものではないと考えており、幅広い関係者のご意見をお伺いした上で、結論を出していきます」
としている。
 関係者から「放出に反対」という意見があることを踏まえれば、政府の「時間をかけて検討するものではない」という考えは「スケジュールありき」を前提としなければ成り立たず、政府の本音は「処理水の取り扱い」に関する早期の方針決定というスケジュールに沿って進めるところにあるとしか考えられない。

 「時間をかけて検討するものではない」「スケジュールありきで進めるものではない」のいずれに重きを置いて対応していく考えなのか、お伺いします。

回答
 いずれかに重きを置いて対応するといった考えはありません。
その上で、ALPS小委員会の報告書においても確認されているように、発電所の敷地に限りがあり、追加的にタンクを設置する余地は限定的であるため、こうした状況を踏まえれば、政府としては、いつまでも時間をかけて検討するものではないと考えています。
他方で、スケジュールありきで進めるものではないと考えており、幅広い関係者のご意見をお伺いした上で、結論を出していきます。


 「幅広い関係者のご意見をお伺いした上で、結論を出していきます」としている。この回答には「ご意見を踏まえ」あるいは「意見を参考にして」など、意見を方針に反映させる意味を持つ言葉が見当たらない。この「伺う」は、聞く行為のみをさすのか、それとも「踏まえる」という意味も含んでいるのか。

回答
 ALPS処理水の取り扱いについては、ALPS小委員会の報告書を踏まえ、幅広い関係者のご意見を丁寧にお伺いした上で、これらの意見を参考として、政府として責任を持って結論を出していきます。


※1回目の質問への回答は本ブログの次の記事でご覧いただけます。クリックするとページに飛びます。

国の回答読んでみたが・・あれれ


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2021-12-07 13:00:00
勝川準教授の基礎からわかるトリチウム排出の話 3 4 5
人為的につくられるトリチウムについて
地球温暖化のように、人間活動は地球規模で環境に影響を及ぼしています。1960年代には、核実ました。下のグラフは、東京と千葉に降る雨にふくまれていたトリチウムの含量を示したものですが、核実験が盛んだった1960年代にはトリチウムが100ベクレル/Lにも達した年もありました。その後は核実験が禁止されたことから、徐々に減少し、現在は自然発生する量とほぼ近い水準まで下がっています。1960年代にもトリチウムによる害は観察されていませんので、現在のレベルのトリチウムが、環境や人間に深刻な影響を及ぼすとは考えられません。
子力発電所を稼働させると、トリチウムが発生します。すべての原発はトリチウムを、海か空に排出しています。それらの総量は経産省がまとめた資料にあります。現在、福島原発には1000兆ベクレルのトリチウムが存在すると考えられています。これらを毎年22兆ベクレル程度ずつ排出していく計画ですが、それとは桁外れの量のトリチウムが世界中で、環境中に排出されていることがわかります。これらの排出は、特に問題視されていないし、実際に問題が発生していません。また、近年の世界のトリチウム濃度が上がっていないことからも、環境中にどんどん蓄積していくような量ではないことがわかります。福島原発の事故によって、短期間の内に3400兆ベクレルのトリチウムが環境中に放出されましたが、すでに検出できない水準になっています。
トリチウムはなぜ除去できないのか?
福島原発の処理水をALPSという装置で放射性物質の除去を行っています。ALPSで処理をする前と後の核種の量を比較したのが下の図です(引用元)。縦軸の告示濃度比は、法律で決められた排水の濃度上限との比を示していて、赤線よりも下なら排水可能と言うことになります。ストロンチウムやセシウムなどの核種は、排出限界を大幅に下回り、処理後の青い棒グラフがほとんど見えないようなレベルまで除去できています。しかし、トリチウムだけは、殆ど減少していません。なぜ、トリチウムは除去できないのでしょうか。
セシウムやストロンチウムは、これらの物質が吸着しやすい素材を用いて、取り除くことができます。放射性のセシウムや放射性のストロンチウムを選択的に取り除くのではなく、放射性ではない普通のセシウムやストロンチウムも一緒に除去しています。水から不純物を取り除く処理をすることで、他の核種を取り除いているのです。
トリチウム水の場合、放射性ではないトリチウム水はすなわち水ですから、他の核種を分離した手法は適用できません。トリチウムを分離するには、放射性の水とそうでない水を分けることになり、物質そのものを除去すれば良かった他の核種と比較して、技術的なハードルが段違いに高いのです。
超高性能の遠心分離機を利用すれば、分子の重さの違いを利用して、水とトリチウム水を分離することは可能です。ただ、コストも時間もべらぼうにかかります。カナダは原発由来のトリチウムの純度を高めて販売しているのですが、1グラムあたり300万円と高価です。分離されたトリチウムは、水素爆弾の材料なので、核拡散禁止条約によって、日本はそのような設備を持つことが許可されていません。いろいろな意味で現実的とは言えません。
トリチウムは生物濃縮をしない。その理由は?
水とトリチウム水を分離するのが技術的に困難であるということは、生物濃縮が起こりづらいことを意味します。生物濃縮は、生物が特定の物質を捉えて放さないので起こります。トリチウム水の場合は、普通の水と性質の違いが殆どありませんから、トリチウム水だけを選択的に蓄積するような生物は見つかっていません。トリチウム水は、普通の水と一緒に吸収され、普通の水と同じように排出されるので、生物のトリチウム水の濃度は、環境の濃度とほぼ等しくなります。
トリチウムを濃縮する生物が見つかったら、世紀の大発見です。その生物がトリチウム水を集めるメカニズムを解明して、海水からトリチウムを集める方法が確立できれば、水の中からエネルギーを無尽蔵に取り出すことができるようになるかもしれません。
トリチウムの海洋放出は、他国から非難されるようなことなのか?
トリチウム水を海に流すのは、海に塩を撒くようなものだと筆者は考えます。そもそも環境に大量に存在するものを低濃度で流したところで、影響が出るとは思えません。他国も当たり前のようにやっていることですし、それによって国際的な非難をあびるような事で無いはずです。中国や韓国が日本を非難しているのは、純粋に政治的な理由によるものでしょう。本当にトリチウムの排出が問題だと考えているなら、まず、自国の原発を止めているはずですから。
他国の人は、日本で大騒動が起こっているので、何かとんでもないものを流そうとしていると勘違いしているのかもしれません。世界中で認められているトリチウムの排水で大騒ぎしているとは、普通は思わないでしょうから。科学を無視した日本国内の騒動が国際的な誤解を招いているのかもしれません。

トリ
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合意 (伊藤浩之)
2021-12-08 09:33:03
詳しいコメントありがとうございます。

全く同じ思いです。
そして、最後の風評の問題にどう対応するかが、政府・東電にとっての課題になっていると思っています。

事故発生から、海洋放出の方針を決定するまでの間、国民的規模での放射性物質に関する情報発信等を十分に取り組んでこなかった。そして、何かあると、被災地の関係者に同意を迫る。この繰り返しだったと思います。

結果、放出に反対する方々の批判的視線が被災地の関係者に向く。こういう悪循環があったのではないか。

こうした事態を打開し、事故を起こした責任者である国と東電が、その責任にふさわしく矢面に立って除法発進をし、国民に理解を広げることで被災地の安心・安全を確保することが求められている。

私はこうした立場から、政府や東電が国民に向けて情報発信を積極的にし、おおむねの国民的理解を確保すること。その上に、処理水等への対応をすることが必要と考えてきました。

コメントを読んで、あらためて学びの機会をあたえていただいように思っています。

重ねてコメントに御礼申し上げます。
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