伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

今月下旬にも処理水処分方法決定で納得を得られるのか

2020年10月15日 | 原発
 事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所では、事故原子炉から発生する汚染水の処理水が日々発生している。
 この処理水の処分に関しては、その前にやることがあるという立場から今月10日のブログにも書いたところだった。


 その主旨は、4年前のいわき市議会の特別委員会で、稼働する原発からはトリチウムをはじめとした放射性核種が放出され続けてきた事実を、国民的規模で説明することを求めた経過にふれながら、処分の前提は、こうした事実も含めて処理水の安全性について説明し、国民的な規模での理解と納得を得ることが政府と東京電力の責任だとするものだった。

 今日の報道では、今月末にも処分方法を決定するという。もともと、処理水を保管するタンクは2年後にはほぼ満杯になるとされており、処分をするための準備にはだいたい2年かかることから、今年の夏にも処分方法を決定することがタイムリミットだとみられていた。若干、遅れたとはいえ、今回の処分方法決定のタイミングは、これまで言われてきたタイムリミットに間に合わせるためとみて良いのだろう。

 しかし、こうしたやり方で、処分に反対し陸上保管を求める農林漁業者をはじめとした被災地の住民の納得を得られるのだろうか。大いに疑問が残る。

 処理水の放出に反対する理由は、原発事故後、汚染水への懸念から福島県産の食品等は危険という風評被害が広がったことにある。原発事故後、安全の確保をしながら県産食品等の販売を拡大しても、原発がらみの問題が明らかになるたびに販売が縮小するなどの風評被害に苦しんできたことにある。トリチウムを含む処理水の処分によって、原発事故、安心・安全のの確保に慎重を期しながら回復をしてきた福島県産の食品等が、再び風評被害を受けかねない。この10年の努力を活かすためにも、処分は許されないと被災地住民が批判を強めているのだ。

 その通りと思う。処理水の放出等の根拠の一つに、稼働する原発からは基準を定めているとはいえ、大量の放射性核種が放出されてきた事実がある。福島第一原発でも、トリチウムで年間4兆ベクレル程が放出されていた。これだけの量が放出されながら、健康等に対する影響は確認できていないと、政府や東電等は捉えているものと思う。

 それならば、こうした事実も含めて、処分水の安全性を国民に向けてしっかり説明し、理解を広げることが、風評被害をもたらさない条件を拡大することになる。しかし、国として、積極的に取り組んだ形跡を見ることができない。せいぜいホームページへの掲載と、福島がらみのイベントの場で、多少説明した程度でしかないようなのだ。

 これでは、国民的な理解を広げたとはとても言えないだろう。

 こうした状況の中で、海洋放出を軸に処分方法が決定されるならば、再び、福島県産への懸念を広げかねない。被災地の関係者も、これでは納得がいかないだろう。

 大切なのは、処分方法決定前に、風評被害が起きにくい状況を作ることにある。風評被害が起きにくい状況があれば、処分にたいする考え方の幅が広がり、被災地の納得を得ながら様々な選択肢を検討することが可能になるのではないだろうか。

 政府には、あらためて、処分方針決定前に処理水の安全性等について説明し、国民的理解と合意を広げることを求めたい。


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