伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

楮の皮むき、しょしとりの体験イベント

2023年02月18日 | 遠野町・地域
 体験会は地域おこし協力隊員が企画し、遠野和紙・楮保存会が主催した。応募条件は20代から40代で、今日の体験イベントには10人が参加した。
 今日のというのは、先週11日にも実施され、ここにはたしか6人が参加している。イベントの様子はいわき民報が報道している。



 この時、保存会の1員として私も参加するつもりでいたのだが、当日、なぜかイベントは次週という思い込みをしていた。つまり、その日は4日という認識をしていたことになる。午後3時頃、あれ今日は11日、あれ、イベントの日だと思い至ったものの、時すでに遅し。思い至った時間が終了予定時刻だった。そのおかげで1週間の時間のずれが修正されたようだ。

 それはさておき、今日のイベントに参加した10人には、あらかじめ楮の枝を蒸し始めていた釜の周りで、蒸しあがりの合図となる甘い香り(サツマイモのよう)をかいでもらい、学舎の前庭に広げたシートの上で、釜から取り出した枝の皮むきに取り組んでもらった。

 皮むきは2つの方法で行われている。遠野の、たぶん伝統的な方法は、枝の元(根っこに近い方)の皮をよじって切れ目を入れ、皮をつまんだ後に、枝の芯を人差し指と中指で挟むようにもち、枝から45度の角度になる感じで皮をグッと引っ張る。すると皮は2つに裂かれて芯から外れる。

 もう1つの方法は、皮に切れ目を入れるまでは伝統的方法と同じだが、皮をつまんだ後に、枝を立てて地面に押し付け、斜め上方に一気に引きはがす方法だ。埼玉県の産地で行われていた方法をまねたものだ。

 どちらの方法でも、皮が避けて1枚のシート状になればそれで構わない。

 参加者は保存会や協力隊員のアドバイスを受けながら皮むきに取り組んだ。

 最初は、皮を下方に引っ張ってしまう失敗例がある。私も最初そうだったのだが、下方に引っ張ると剥き終わりの枝の端の皮は筒状になってしまう。こうなると次の作業となるしょしとりで不具合が生じるので、ご法度の形だ。筒状になった部分は、あらためて裂く作業をする。

 こうならないためのアドバイスは、枝に対して斜め上方あるいは斜め前方(枝を立てるか横にして持つかの違い)に皮を引っ張るようにするだ。アドバイスでたちまち上手に皮を剝ぐことができるようになった。

 枝の芯を指で挟む方法での皮剥ぎも分かりにくかったようだ。まず、利き手と逆の手の人差し指と中指で枝の芯を挟む。枝は立てても、横にしてもいいのだが、分かりやすくするために横にして腰の辺りに構え、刀を鞘から抜くようなイメージで皮を斜め前方に引く。すると芯と皮が挟んだ指で引き離され、芯は勝手に前方に飛び出てくる。こうしたアドバイスをすると2本、3本の皮むきで、もうベテランの域に達してしまう。

 オートキャンプ場に移動してこうして剥きとった皮の「しょしとり」をする。茨木の方では「ひょうひとり」というそうだ。文字通り、表面の黒皮とその下の甘皮を剥いで白皮を取り出す作業だ。遠野の呼び方は、たぶんこの「ひょうひとり」が訛った言い方だと思う。

 しょしとりは、皮の根に近い方に包丁をあて、黒皮と濃い緑色をした甘皮の部分までこそげて立ち上げる。その立ち上げた部分をつまんでぐっと引っ張ると、包丁がこそげた部分までの皮をむくことができる。一気に皮が剥きとられるその瞬間は、実に心地よい。失敗もあるのだが。

 遠野で行われる方法は、包丁を動かすのではなく、包丁をしょしとり用の台の上に固定して構え、皮を引っ張ることによって表皮等を剥いていく感じだ。どこまでしょしとりをするかによって変わるが、白い層までむきとる場合は、とにかくこの方法によって表皮の黒皮、濃い緑あるいは黄緑色っぽい甘皮の層まで削ぎ落し、白い皮だけを残す。最近は、白い皮の層まで落とすことにこだわらず、黒皮と濃い緑の甘皮の部分まで剥ぎ取るようにしているので、最初の方法で皮を剥げば、残った黒皮や濃い緑の甘皮をこそげるあるいは剥ぎ取るだけで、目的の白皮を作り出すことができる。

 もちろん、徹頭徹尾、包丁を当てて皮をひっぱることで黒皮等不要な部分を取り除くことは可能だ。ただ、経験上、この方法は、一つは包丁を固定するために力むため、包丁持つ腕の肘に疲労が蓄積し痛みが発生しかねない。皮を引っ張る左手も相当に疲労する。こそげて皮を一気にむく方法は、作業を楽に進める上でぜひみにつけたい。

 参加してはじめて体験したみなさんは、最初の黒皮と濃い緑の甘皮をこそげ立ち上げる作業が難しかったようで、みなさん試行錯誤しながらしょしとりに取り組んでいた。

 2つの作業で午前中は終了し、午後ははがき大の和紙漉きの体験をした。1人2枚、摘み取ったオオイヌノフグリやサザンカ、草の葉などを挟み込んだははがきを作成し、ついでに白皮から塵等を除去する作業をして体験を終えた。



 感想などを書いてくださっていたが、読んではいない。今回の体験で、少しでも和紙作りに興味を持っていただいたら幸いだ。

 今回の体験で、一つ、決意したことがある。昨年、細川和紙の谷野工房で研修した際、菊版の和紙作りをしっかり練習するよう指導されていた。ただ、楮の絶対量に余裕があるのかどうか分からなかったことと、練習するとなると、水さらし、煮熟、塵取り、打解と手間がかかる作業をしなければならない。量にもよるが、この作業に1週間程度を要するだろう。菊版づくりの習得は、あくまで遠野和紙・楮保存会の取り組みだと考えているので、その作業を地域おこし協力隊員に丸投げしてはならないと思っている。すると自分が中心に、この作業をすすめなければならないことになる。そこにちゅうちょがあった。

 参加者の1人が、自分が漉いた和紙に書を書いてみたいと考えているが、どこかで漉いてみることはできないだろうかと言っていた。この話を聞いて決意した。菊版づくりのための準備を進めよう。来週からその準備に入り、3月初めにもタイ産楮を使った流し漉きの練習をしようと思う。

 結果はまたの機会に報告する。


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