もっと空気を

私達動物の息の仕方とその歴史

タコとイカ その2

2019-11-04 12:07:55 | 日記
さて、今回は頭足類であるタコとイカの呼吸循環器官、とくに換水装置についてです。

人間では胸と横隔膜を動かして空気を肺のなかに出し入れ(換気)しています。タコやイカは水棲動物なので、魚と同じエラ呼吸をしていて、胴体の中に水を吸い込み、吐き出す(換水)ときにエラに流れる水から酸素を吸収しています。
その換水のためには、釣り鐘型の胴体を作っている分厚い筋肉を収縮・弛緩させています。この筋肉は頭足類に固有の斜紋筋が縦横に発達したもので、イカの刺身などはこの胴体です。ちなみに、私たちほ乳類は横紋筋と平滑筋を持っていて、斜紋筋はありません。
この分厚い筋肉層は斜紋筋が3層、4層にも重なってその間に補強材のコラーゲン線維が挟まっているので、丈夫で収縮力の強い構造になっています。腕足の筋肉も斜紋筋でできています。

ところがなんと、この筋肉の袋は何億年も前には外套膜という膜でした。この膜の本来の役割は血液中のカルシウムを結晶化させて真珠層を分泌して、それで貝殻をつくるというものでした。アコヤ貝などの真珠貝は、外套膜に紛れ込んだ砂粒を包むように真珠層を成長させて真珠を作っています。タコとイカは外套膜で貝殻を作るのをやめて、今ではそれが分厚い筋肉となって内蔵を守る外皮、息をする換水装置となっています。
こように外套膜の袋は私たちの胸の動きをして空気の代わりに水を出し入れする換水装置であるとともに、吐き出す水を噴出させると反動で移動するという移動装置にもなっています。この水のジェット噴射でイカは水中で最大時速40kmものスピードを出すこともできます。
イカやタコの胴体は換水装置であり、大昔は貝殻を作るものでしたが、それが今では美味しい刺身になったのです! 鯨など海の動物たちはこのイカを大量に食べていて、その消費量は人間が捕る量の何百倍(何千倍?)にもなって、比べものにならないほどだそうです!
なので、イカがなくなることを心配せずに食べることができますよ。

参考 頭足類の筋肉(土屋隆英 無脊椎動物の筋肉構造と厚生たんぱく質 調理科学 21(3):159-166,1988)

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