一茶は五十二歳で妻菊を迎え、三男一女をもうけたが、
不幸にしてつぎつぎに夭死している。最愛の娘さとは、
文永二年(千八百十九年)六月廿一日に天然痘を罹って
亡くなっている。
(終に六月二十一日の蕣の花と共に、此世をしぼみぬ、母は
死別にすがりてよゝと泣もむべなるかな、この期に及んでは、
行水のふたゝび歸らず、散る花の梢にもどらぬくひ事などと
あきらめ顔しても、思ひ切りがたきは恩愛のきづななりけり)
露の世はつゆの世ながらさりながら