イギリスはやっぱりマズい

イギリス生活の不満を世界の裏側で叫ぶ

「ごめんなさい」の誤用

2005-02-01 08:54:44 | Weblog
 トラバをいただいて思い出した話があるので、英国とは直接関係ない話ですが書いてみます。「ごめんなさい」に関する話です。

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 私は心配性のうえにトイレが近い。心配すると余計近くなる。
 一番困るのは、トイレに頻繁に行けないような場面。特に長距離を飛ぶ飛行機の機内では必ず通路側を指定する。
 確かに通路側だと客やフライトアテンダントが行き来するのが気にならないわけではないが、隣の人に「excuse me」と言って前を通してもらう気兼ねさに比べればへでもないのだ。
 なので、なるべく早くチェックインして通路側を指定するようにしている。


 その日、関空からロンドン行きの機内はほぼ満席であった。
 私はいつものようにちゃんと通路側に座っていたが、かなり遅れてお年寄りのグループがわらわらと乗り込んできた。ツアー客である。
 個人旅行の人はたいてい、ツアー客が来ると嫌な顔をするものだが、まあその日の私もそうだった気がする。

 ツアーガイドの女性は行ったり来たりしてグループ全員をすわらせていた。
 ただ、チェックインが遅かったのか、まとまった席が取れなかったようで、バラバラにすわらせられていた。
 私の隣の席(4人席の真ん中)がまだ空いていたが、果たしてグループの1人のおばあさんが「すいません」と行って前を通って座った。

 そろそろ落ち着くかなと思った頃に、さっきのガイドの女性が近づいてきて「すみません」と声をかけてきた。
 「はい?」
 「実は…」
 女性はさもすまなさそうな顔で、グループのなかで離れ離れになってしまった人がいるのだと話した後で、「申し訳ないんですが席を替わってもらえませんかね」と言った。
 しかし、聞いてみるとその代わりの席というのが、3人席の窓際だというのである。

 3人席の窓際なんて、トイレに近い席を選んできた私からすればもっとも都合の悪い席である。なにせ、トイレに行こうとすれば2人に「すみません」を言わなくてはならない。気兼ねさは、4人席の真ん中に座った場合の2倍(当社比)である。
 私は眉をひそめて「うーん、ちょっとそれは…」と渋った。

 すると、ガイドは言ったのである。
 
「ごめんなさい!」

 …………は? 
 今、なんと?
 なぜ私があなたに今、謝られなければならないのですか?


 ガイドはなおも続けた。
 
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!!!」

 私は加速度的に嫌になった。
 なぜこの場で「ごめんなさい」を言うのだろうかこの人は。それは、「この場ではあなたは席を譲るのが当然です。なぜなら、相手は海外旅行に慣れていない、大切にされるべきお年寄りなのです。あなたがせっかくとった席に座れないことになってごめんなさい!!」という意味なのではないか。

 なぜ席を譲るのが当然なのか。
 そこに私は無理強いの意味を感じ取ったのだ。

 「どうかお願いできませんか」
と普通に言われれば考えもしただろう。
 が、この明らかな無理強いもしくは日本語の用法の間違いが私の癇に障った。


 かくして私はそっくりそのまま台詞を返し、
 「いえ、やっぱりこの席がいいです、ごめんなさい!!!」
と言った。

 ガイドは何もいわずにふいっとその場を去っていった。


 地獄に落ちろ、と私は思った。