タコ

⑨🐙🐙タコ🐙🐙


ストレスの絶えない現代社会では、生きづらさを感じている人は多い。

ストレスのあまり、希望を失っている人もいる。

🐙タコ🐙

は、「最も賢い無脊椎（むせきつい）動物」と言われている。

ビンの中から抜け出したり、道具を使いこなすのもお手のもの。

「タコの寿命が長ければ、海低に都市を築くことができた」

などと言われることもある。

またタコは、外敵に襲われると捕らえられた足を切り離し、逃げることができる。

しかも、切り離した足は再生する。

同じところから2本以上の足が生えていることもあり、

過去には96本の足を持つタコも捕獲されている。

このように非常に高い能力を備えたタコであるが、

一方で、ごく繊細でストレスを感じやすい動物として知られている。

「エサが少ない」

「狭いスペースに複数匹がいる」

などの環境ストレスが原因で、

自分の足を食べてしまうことがある。


「足の1本や2本くらい」

と思うかもしれないが、

実は天敵に食べられた足は再生しても、

ストレスによって自分で食べた足は再生しない。

はっきりしたことはわかっていないが、

「自分で食べた足は再生しない」

というより、

「自分の足を食べるほど追い込まれたタコの足は再生しない」

といったほうが正しいだろう。

なぜなら、自分の足を食べ始めたタコは、その後、弱って死んでしまうからだ。


そんなタコの生態から何を学ぶことができるだろうか。

それは、自分を追い詰めてしまう前に、

行動を変えると言うことだ。

タコと違って、人間は自分で環境を変えられることを忘れてはいけない。


🌸多彩にして多様な進化の形🌸

タコはストレスを感じやすい生物だと説明したが、

もちろん生き残るための武器も多数持ち合わせている。

そのバリエーションは多岐にわたる。

まずはタコの代名詞、墨（スミ）。

逃げるときに忍者の煙幕のように墨を吐いて身を隠すイメージがあるが、

実はあの墨は目隠しだけではない秘密が隠されている。

タコの墨には外敵の嗅覚を鈍らせる麻酔のような成分が含まれていて、

それ以上の追跡を難しくする効果があるのだ。

身を隠すという面では、海底で拾ったココナッツのカラや二枚貝を合わせて簡単な家を作り、

その中に身を隠すという習性も知られている。

また、カラストンビと呼ばれるクチバシ状の硬い歯もあり、

これで好物の甲殻類をバリバリと噛み砕く。

さらに、ほとんどのタコは毒を持っている。

よくスーパーに並んでいるマダコも「チラミン」という毒を持っており、

噛まれるとしばらく痛みが取れない。

中でも毒ダコことして有名なヒョウモンダコは、フグを餌にしているため、

フグ由来の「テトロドトキシン」という毒を持っている。

小型のタコながら、その毒は青酸カリの850倍〜1000倍と言われ、

噛まれると呼吸困難や麻痺などの症状があらわれ、90分ほどで死に至ることもある。

日本では小笠原諸島や南西諸島以南の太平洋にしか見られなかったが、

海水温の上昇にともない分布を広げ、

九州、大阪湾や日本海側での捕獲も報告されている。


もう一つ、擬態（ぎたい）能力も非常に優れている。

身体の色を変えて、海低や岩などに巧みに化ける。

しかも、その形状を記憶することができる。

特に有名なのがミミックオクトパスだ。

ミミックは「擬態」を意味する言葉で、

ミミックオクトパスが真似をすることができる他の動物のレパートリーは10種類以上。

中には少しクオリティーが怪しいものがあるものの、

毒を持つウミヘビやヒトデのものまねはじっくり見てもわからないほどの完成度である。

身体の形や色だけでなく、泳ぎ方などもそっくりに真似することからタコの知能の高さが伺える。


まだまだ、すごいタコは存在する。

コウモリダコというタコの祖先に近いといわれる深海生物がいる。

脚はイカと同じく10本あるものの、

近年ではどちらかというとタコに近いと考えられている種だ。

このコウモリダコは強い光を放つ発光器官を持っていって、

敵に襲われそうになると繰り返し強い光を放って相手の方向感覚をなくす。

（ちなみに、コウモリダコの名前の由来は、脚と脚の間に膜が張られているからで、別名「吸血イカ」などと呼ばれているが、

実際はプランクトンの死骸を食べて生活している無害な動物だ）

環境により多様な特性を持ち、生き残ってきたタコ。

その進化は非常に多様で、多才である。


🍀タコの豆知識🍀

・心臓が3つある。

・吸盤が揃っているとメス、バラバラだとオス。

・オスよりメスのほうが大きい。

・自分の身体には吸盤がくっつかない。

・タコが自分の足を食べてしまう様子から、
会社が自己資本を食いつぶして配当出す行為をタコ配当と呼ぶ。

・らっきょうで釣ることができる。


（「LIFE 人間が知らない生き方」麻生羽呂、篠原かをりさんより）