みかづきの夜

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すみれのような人でした

2013年05月06日 | つぶやき
実家に行って思い出していました
その人はすみれの花のような人でした

生きていれば100歳をとうに超えています
(実際の年齢は知りません)
遠縁と言うにはあまりに遠い縁の人です
私の祖父の、また従姉弟にあたる人のようです

年に一度、我が家のお仏壇に手を合わせに来ていました
祖父とお茶を飲み、少しだけ話をした後
待たせていたタクシーに乗って帰るのが常でした

とてもきれいな人でした
私が覚えている頃だとすでに70歳くらいだったと思いますが
背筋をぴんと伸ばし、柔らかな物腰で
とにかくしぐさが美しい

若いころは芸者さんだったという話で、どうして芸者さんになったのかは話してもらえなかった
聞いたところで、子供には詳しく話せないだろうけど・・・・・
第一線を退いてからは、三味線や踊りやお琴の先生をしていたらしいです

身寄りの無い人で、唯一身寄りと言えるような人が祖父のみ
祖父を「にいさん」と呼び慕っていたのだそうです
祖父もまた気にかけ、よくその人の家に様子を見に行っていたらしいです
らしい・・・・と言うのは、祖父はどうも行っていた事を家族には言わなかったようです
祖母に配慮してたのかな? なんせ子供心にも「美しい人」でしたから 
女というのは幾つになっても女なんですね

で、どうしてその人を思い出したのかと言えば
床の間にお琴が立てかけてあったから
お琴の主はその人でした
もう祖父は亡くなっていて、慕っていた唯一の身内(と呼べる人)も居なくなって
どんな最期を迎えたのでしょう

父が連絡を受けすべての後始末をしたそうです
身寄りがないのにもかかわらず、家の中のお金になりそうなものは一切なくなっていて
(父も祖父亡き後、何度か様子を見に行っていたそうです)
酷い状態だったそうです
それが本人によるものか、他の人によるものかはわからず
とにかく家の後片付けをしたそうですが
その時に大事に仕舞われていたお琴を見つけ、立会の人に断りを入れ持ち帰ったのだそうです

奏でる人の居ないお琴と枇杷(注:1)
祖父とその人が寄り添っているようにも思えます

実家でお琴を見るたびに、その人を思い出すのです
生涯を独りで過ごし、その最後も独りだった人
とても美しい、すみれのような人でした・・・・・・・




注:1 祖父は琵琶の師範代でした 



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