ココではない何処かへ、ココには居ない誰かと…。

何処でもいいから旅に出たくなる。読み掛けの本とヘロヘロにならない程度のアルコール飲料、そして忘れてはならない海水パンツ（注：使ったことは殆どない）と最低限の着替えをバックパックに詰める。僕にとって大事なのはバスターミナルとバックパックだけだ。バスに乗り、読み掛けの本を膝の上に置く。窓の外には後ろに流て行くだけの退屈な景色が続く。途中で立ち寄った中尊寺パーキングエリアのトイレで『独り言を続けなければ掃除が進まないおばちゃん』に出会う。彼女は延々と独語を吐いていた。「あれ、ココに置いたはずじゃなかったかなぁ？」「いや、絶対さっき置いた」「くそ、次は何だ！」そんなことを延々と繰り返す。僕が隠したのだと疑われていなければ、いつも通りで、いつもそんな感じなんだろう。

バスが目的地に着き、人がそれぞれ薄い目的を抱えて散らばって行く…そんな景色が好きだ。