SABARU一家 前編

2012-05-30 21:14:39 | AROUND THE N818

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 準備運動のつもりで、更新したいと考えている。ある三兄弟の話。遠い国の、古ぼけた割とイカシタ洋館に住む、どうしようもない三兄弟の話。当時の僕のドローイングが見つかったから、思い出しただけ。準備運動のつもりで書きます。

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 末子相続が当たり前のとある国。その国の治安の悪さはなかなかのもので、まずホテルが信用できなかった。寝ていると、その辺の奴が平気で部屋に入って来て、堂々と荷物を物色する。夢か現実か、よく分らないまま朝を迎えたけど、別に困らなかったのは僕がが金目のものを持っていなかったせいだろうと思う。多分、よく分らないけど、ちゃんとしたホテルもなかったんじゃないかな?(あったとしても、泊まれなかったと思うけど)そういった経緯を経て、何度か民泊を繰り返し僕はSABARUの洋館に落ち着いた。その後、約一か月そこにお世話になった。その時の話。

 BEKKU家は、名士の家系だったと思う。親父さんは共産党系に抱えられた絵描きだったと聞いた。少し前までブルジョワな感じだったのは、その家に入ると直ぐに分かった。しかし、どこもくすんでいいる印象だった。落ち着いた広めの洋館に旅人と家族とそれぞれの愛人を含め、10数名ほどが暮らしていた。出入りが激しい家で全体を把握するには、僕がそこに居なさ過ぎた。SABARUは末子でその家を相続していたけど、どうしようもない兄貴二人が家族と愛人を連れだってそこに身を寄せていた。サバルは一応、銀行員だと話していたけど、出勤する姿は残念ながら一度も見られなかった。決定的に、生活の形が違っていたんだろう。どっちが普通とかという話ではなくて。

 一番上の兄貴はアルステンといった。父の跡を継いで、絵描きをしていたらしいけど、当時は怪しい屋台を営んでいた。絵を捨てたらしい、というのは当時同じくそこに身を寄せていたKANさんに聞いた。親父は、「労働こそ美徳!VIVA!労働者!!」と言った絵を受注して商業作家として一代を築いたんだけど、もうそんな時代ではなくなっていたから、それらの技法は相続する価値のないものになっていたから、すっぱりと絵を捨てたんだろう。そう、適当に解釈した。彼には、よく分らない太った愛人が二人居て、結構お世話になった。怪しい屋台には怪しい奴らが連日通ってきて、怪しく忙しいようだった。

 次の兄貴、二男がアルカール。彼はよく分らない人だった。一日中見たところ、一日中庭でチェスをしていた。腕前に関しては訪れた挑戦者が10分程度で帰って行くことから、何となく分かったけど賭けチェスをしているようには見えなかったし、KANさんに聞いたら、電話線を盗んで潜りの公衆電話を営んでいると言っていた。そういえば、気付いたらチェスの合間に走って通りに出て行って見知らぬ人に声を掛けていた。おっさんがめっちゃ前かがみで、通りまで走っていた。「電話掛ける用事ない?」とか言っていたのかな。何度か、拾ったような黒電話で電話を掛けている人を見た気がした。「娘の上履きを買う金を貸してくれ!」みたいなことを何度か打診された。KANさんに決して貸してはならないと言われていたので一度も貸すことはなかった。チェスの合間に「電話掛けない?」ってダッシュかける商売では上履き買ってやれないでしょう。でも、自称、元、科学者の彼には壮大な夢があった!が、それは別の話。酒を飲んでいるところはみたことがなかったけど、雰囲気からして一番アブナイ感じがした、三兄弟の中ではダントツで。

 

 

 

 

 


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