お地蔵様は 穏やかに いつもそこに在る。
今日も、ハナシバとかわいい小菊が添えられ 供えてある。
母の手作りの毛糸の赤の帽子と前掛けが とてもよく似合っている。
実家の裏庭続きにある薬師堂
その入り口に お地蔵様が鎮座する。
仕事帰り 薬局で養命酒を買って
久しぶりに実家へ立ち寄った。
夕方、煙突から出る煙を見ると
「ああ、今日も元気でいてくれる。」
と 安心する。
「おう、○子かあ。よう来たのう。」
「お父さん 養命酒買ってきたよ。 もう 無くなったじゃろう。」
「すまんのう・・・。長く生きると憐れみをかう それがやりきれん。」
「お父さん そんなあ・・・。」
「思った以上に長生きをして ワシは、恥を忍んで生きている。」
「お父さん、元気で長生きで ありがたいことよ。」
夕飯の支度をしている母を見ていると
以前に比べて 随分と動きがゆっくりになった。
考えては 次の行動に移ってる。
「お母さん 何か手伝おうか。」
老いの二文字が 日に日に両親に覆いかぶさるようで
なんだか 寂しくなる。
「まだ もう少し おりんさいねえ。」
と 引き留める母に 後ろ髪をひかれる思いで
「また 来るからね。」
と 言葉をかける。
小さいころから ずっと 変わらず静かに佇むお地蔵さんが
両親を見守ってくれているかのように
少し微笑んで見えたのは 気のせいだろうか・・・。