農ある暮らしの中で

片田舎で過ごす 静かな農ある暮らしを色々な思いをこめながら日々綴っていきたいと思います。

いびき

2011年11月30日 | 日記


 「これ 読んでみて  おもしろかったよ。」

 夫から昨日 一冊の本を 手渡された。
修論提出を明後日に控えているのだが 気分転換に読んだらしい


 津村節子著 紅梅
癌に冒された夫である作家の闘病生活 妻育子もまた作家であり仕事を続けながら夫の看病を続ける。
膵臓にまで転移し壮絶な病との戦いの日々であるのだが あくまでも感情や心理はあらわさず
最初から最後まで静かに綴られる文体は 珠玉の純文学に仕上がっている。

 炬燵に入り 修論を書く夫の傍らで 本を読み進めた。
時々 炬燵の中で交わす足がぶつかり合う。

「う~ん、どう考えても無理じゃのう~」
「出来そうにない?」
「うん、99%無理かも。」
「諦めたら~」
「悔いは残したくない 最後の最後まで頑張るから」
「わかった。」
そんな 会話をしながら 夜は 更けていった

本を 読みながら 眠気がさした私は
つい そのまま炬燵に横になり 朝まで眠ってしまった。
夫も 朝方まで 頑張ったみたいで そのまま 炬燵に寝たようだ。

 朝、支度をしていると 夫が
「お前さあ、 イビキをかくんじゃね。」
「え~ ほんとう~」
「お前、イビキをかきよったけ? 俺は すごいけどね。」
「ゲっ・・・父さん、私 太ったけえかねえ・・・トドみたいじゃったろう。」
「なんか お前のイビキ 俺初めて聞いた。」

 
 夫婦って本当は お互いの寝息が聞こえる範囲で一緒に寝た方がいいんじゃないかなあって思うのだけど・・・・
いつしか夫が 
「俺一人がいい」
と、いうので  いつの間にやら だだっ広い我が家の 
東と西、遠く離れて眠るようになった。
昨夜は 本当に 久しぶりにお互いの 寝息・・いやイビキを聞きながら眠った。
これから先 もう 決して若くはならない 年を重ねるばかりの私たち・・・
夜中に 急に具合が悪くなるかもわからないし
やっぱり お互いの寝息は聞こえていた方がいいような気がする。


                                                  
  

人差し指

2011年11月28日 | 子どもたちとの関わり


  明後日は 校内マラソン大会。
 体育の時間 そして行間休み マラソン大会に向けて運動場のトラックを走り 練習をしている。

 先日から風邪気味の○ちゃんは 咳や鼻水が出て少し辛そうだ。
 だけど学校は 一日も休まずに毎日登校している。

  体育の時間 コースを何度か走ったが 一番最後をいつも一生懸命走る○ちゃん、
「もう、いやだあ いやだあ」
と 泣きそうな表情になり何度も止まりそうになるのを 一緒に走り後ろになったり 前になったりしながら
「○ちゃん あと少し~もうちょと~ 頑張れ~頑張れ~」
と 大きな声で励ます。
止まりそうになると 時には少し背中を押してあげながら 最後まで頑張らせる。

 今日の 行間休み 教室から着替えて出るのも一番最後になってしまうのだが
「さあ、今日が最後の練習よ 頑張ろうね。」
と言って 励ます。
トラックを みんなの流れに合わせて頑張って走る○ちゃんだが 二週目あたりからペースが遅くなり止まりそうになる。
「○ちゃん、止まらないで頑張るんよ 駆け足 駆け足 ファイト ファイト」
と 言葉をかける。
また しばらくすると止まりそうになるので
手をそお~っと後ろへ伸ばし 人差し指を一本だけ差し出した。
すると○ちゃんは 
私の差し出した 人差し指を ぎゅう~っと握りしめて 笑顔で走り始めた。

 人差し指を一生懸命握りしめる○ちゃんの手のぬくもりが 何とも言えず愛おしくなんだか胸が熱くなった。
 
本番は とにかく歩かないで最後まで走り抜くことが 目標。
走りぬくことが出来たら 思いっきり 褒めてあげよう。

 

  
 

    

広高山

2011年11月26日 | 山登り
 

 8時10分出発ー9時20分山葵田林道終点(休憩)-10時ヨケ岩のエキー10時50分尾根ー10時55分寂地山山頂(休憩)-11時半(ボーギのキビレ)-11時40分(昼食)-12時10分出発ー13時30分1056ピークー14時30分尾根(休憩)-15時20分(駐車場)
 
   

心臓がドキドキしながら 集合場所に集まられるみなさんを見て ますます鼓動が高鳴る。
「うわあ 私大丈夫かなあ・・・」
  こんな プロフエッショナルな方々の中に私のような弱輩者が加わるなんてもっての外なんだけど・・・

 「お前 迷うぐらいじゃったら行ったら。」
と 夫の後押しもあり
 意を決して お誘いくださったヤブ山さんにお返事をした。


  みなさんについて行くのが必死で気持にゆとりなど全くなかったけれど 洗い呼吸の中、時々ふっと見上げた時の 
深閑とした深い森や谷は 言葉では言い尽くせないものだった。


     「これは、しそ科の植物ですが 霜柱が立っているのですよ」
と ぼっちさん。
「根っこから水分を吸い上げていることによって こうして霜柱がたつのです。しっかりと 根っこは生きているのです。」
「へえ~そうなんですか」
いままでも きっと山では見かけていたのだろうけれど なんか 昆虫の卵の泡くらいにしか思っておらず 見過ごし通り過ぎてしまっている。 知らないって 恥ずかしい。
 こうして林道を歩きながらも ぼっちさんは ルリビタキやカッコウの托卵の話など自然観察をされた色々な興味深い話をしてくださる。
 ぼっちさんは冒険家とお呼びしてもいいくらい 海底 地底 そして未踏の山々を精力的に単独行をされている。

 
 林道途中
「あ、ここから 寿限無さんと入ったな」
と思い出した。
 山葵田のその後を目の当たりにして さあいよいよ突撃開始。

「よ~しっ。」
と 自分の中で気合を入れる。
 ところが 入ってしばらく 沢を渡るとき飛び越せないで まごまごしていたら クマ対策部長のiさんが手を差し伸べて下さる。
iさんの腕を思いっきり つかんでピョンと飛び越えた私・・・
「すみません」
しょっぱなから こんな事では これから先どんな ご迷惑をおかけしてしまうことか・・・ああ いけないいけない 頑張らなきゃ!

 ルート確認されながら ぼっちさんがどんどん先を登られ その後をヤブ山さん 
そして突撃隊隊長さんが 続かれる。
私が 這いずるようにして登っていると
「登るときは つま先を蹴るようにして足場を確保したらいいですよ。」
と 登り方を教えて下さる。
「はい、わかりました。」    

「這いつくばって~♪ 這いつくばって~♪」
と時々 歌を口ずさんでくださったり
「ほうほう、出ました。これが○○ですね~」 
と ヤブ山さんとのやりとりが 可笑しくって なんだか気持がとっても楽になる。
突撃隊の三人のバランスが良くって 息もピッタリ合っていて ああこうして山に入られるんだなあ・・・と思った。

「休憩しましょう」
ぼっちさんが 声をかけられる。     

あと もうひと踏ん張りで尾根に出られそう
昨日の冷え込みで 山は うっすらと雪に覆われている。
この雪が 冬の山の静けさをより一層感じさせてくれる。

 それから頑張ってやっとこさの思いで 尾根に出た。
「これで 前半戦終了です。」
とぼっちさん。
「はい、わかりました。」

 うわあ 後半戦はどんな苦行が待ち受けているんだろう・・・心の中は不安でいっぱいになった。

休憩ごとに 一服されるぼっちさんやヤブ山さんの煙草の煙を 私もそっと吸い込んでみた。   
すると、す~っと疲れまでを吸い取ってくれる気がする。


  昼食を終え 広高山へ
途中 ブナの木の上高く クマ棚を発見
「こんな 高いところまでクマさん よく上がるねえ~」
とヤブ山さん。
私は クマ棚を見たのは 初めて。
こんな 高い所で木をへし折って集めて坐る場所を確保し餌を食べるのかあと 感心した。 
 
 「ああ、いい森だなあ」
と 途中何度も ヤブ山さんが 足を止められ呟かれる
「この谷はいい。 びっけさん ここは写真ですよ。」
「はい わかりました。」


 「ブナ林の中にこうしてアシオ杉が点在する これがこの辺りの山々の特徴です。」 


 しばらく歩くと笹が消え 間隔を程よくあけ 光の差し込む明るいブナと広葉樹の森に出た。
「もうこれは、極相林と言えるでしょう。」と山口山の会のYさん。
「極相林ってなんですか?」
と 私が尋ねると
「このまま変化をしない 成熟し安定した森です。」
と、ぼっちさんが説明してくださる。
「ああ、そうですかあ。」
私は 改めて森の状態を眺め納得した。

 さあ、これから後半戦の開始
「びっけさんは ぼくの後をついてきてください。」
「はい わかりました。」
かなりの 急勾配を降りるのだが 下手くそな私は 枝にステッキが何度もひっかかったり お尻で滑りこんだりで もう大変。
「かなり 早く降りましたねえ~」
と ヤブ山さんが笑われる。
私も 可笑しくって笑ってしまう。
軍手ももうびっしょり お尻は真っ黒 なんかズボンの中まで木の葉や木の枝が入ったみたいでチクチクしている。

 最後 今度は谷を登って行く

と 思ったら
「これは ルートが違っていました 引き返しまーす」
とぼっちさん。
「は~い。」

「びっけさん ここは登った印に写真です。」
「はい、わかりました。」

そして また しばらく行った谷を登り始める
「は~は~ あともうちょっと 頑張れ~ は~は~」
と一人言を言いながら 必死になって ヤブ山さんの後をついて行く。
 私の鼻息の荒さに ヤブ山さんが 何度も笑われている。
「すみません、うるさいでしょう。」

やっと尾根に出て休憩 
それから 谷筋を降りて林道へ

 駐車場で登山靴を脱ぎながら 満ち足りた達成感でいっぱいになった。
山のエネルギーを体いっぱいに蓄えて また明日から頑張れそう。

 帰りの車中 ヤブ山さんの土地を守り継ぐことの大変さや 兼業農家の話に共感した。
穏やかに語られる中に ヤブ山さんの内に秘められた確かなものを感じた。

帰ってお風呂に入ってみたら 太い足のあちらこちらに 黒あざや傷があった。
枝に突き刺さったり 岩にぶつけたり・・・
お湯に浸かりながら もう一度振り返り なんとも無様だったろう私の山行姿に一人笑った。


根本的問題なんじゃ

2011年11月23日 | 日記


  「今日書けんかったら もう諦めるけえ」
といって 朝 夫は出て行った。

 夕方 帰って来た夫に
「書けた?あと 何万字?」
と聞いてみると、
「いや、字数よりも 根本的問題なんじゃ。」
と 夫。
「もう やめたら~?無理せんでもええいね。」
「お前、人の事と思うてから」

 職場でもかなりの仕事を抱えているみたい。
髪の毛も かなり薄くなった。
でも、食欲だけは しっかりある。 おおらかな性格なので・・・きっとうつにはならないだろう。

 寒くなったので 昨夜から夜は 唯一スト-ブをたいている台所の飯台の上いっぱいに資料を広げて書き始めた。
「おい コーヒーを沸かしてくれ」
「おい お茶を入れてくれ」
と こたつに入っている私に呼びかける

「お前、代わりに書いてくれる?」
「えーー 書けるわけないじゃん。」

夫の部屋 そしてずっと籠っていた貸家も今 足の踏み場もない大変な状態になっている。
きっと 泥棒さんも あまりの惨状にしっぽを巻いて逃げていきそう・・・な 状態なのだ。


はあああ 果たしてこの現状から脱出することは 出来るのだろうか。。。 

「お前、俺の事 ブログのネタにするなよ。」
と 夫。

「ごめーん 書かしてー」


                                            

雑木林

2011年11月21日 | 農業


   「おい、こら くうちゃん、降りちゃあいけん!」
  私が 笹をかきわけ 進もうとすると くうが 踏ん張って登りたがらない 隙さえあれば降りようとする。
 やれやれ 我が家の愛犬は 山仕事のとぎには なりそうもない。
 甘えん坊で かなりの臆病者なのだ。。。

 昨日 自宅から歩いて十分くらい離れた我が家の雑木林へ 久しぶりに行ってみた。
入り口付近の広葉樹が、黄色く色付いていた。
足もとは かなりの笹ヤブで なかなか前へ進めない。
手前は広葉樹 少し登ると ヒノキや照葉樹があるのだが 奥へ進めなかった。

 数年前 夫と境を確認して何度か入った。
好きな樹木を残して 後は光が入るように 間引こうねと話していたのだが 一向に進んでいない。
私は チェーンソーが使えないので のこぎりで一本一本頑張るしかない。
散策できる里山へ 再生させたいと思っている。
 我が家は かなりの山があるらしいのだが 雑木林は 唯一この一か所だけ
あとは 植林されたヒノキや杉ばかりで それも義父が亡くなってからは 一度も枝打ちや間伐をしていないので きっと荒れ放題だと思う。

 
 山から帰ると義母が 米搗き場の倉庫で 火を焚いてくれていた。
母は、お飾りを作る準備のため 藁のしごをしていた。    
  夜、仕事から帰った夫に
 「今日ねえ、一人で 雑木林へ行ってみたんよ。」
 「どうじゃった?」
 「かなり 笹がすごかったんよ。奥までは 入れんかった。」
 「よっし、来年の四月からは やるぞー。お前 山登りばっかりしちょる場合じゃあないぞ。」



 あ~ やることは 山ほどあるのだけれど・・・ 哀しいかな それをこなしていく知恵と器用さが 私にはない。