欧州のみならず、金融機関の信用不安に伝播して国際金融市場を震撼させたギリシャの財政危機だが、同国経済に関するIMFからの監査(Health Check)に先立ち発表された、 Stournaras 財務相の発言によれば、同国経済は最悪期を脱し、回復の兆しが見えているという。IMFの監査については、同国経済が6年間の深刻な不況が続いた後転換期を迎え、従来よりも明るいという報告になるとみられており、特にギリシャの喫緊の課題とされていた税徴収面での改善を評価しているようだ。
経済の回復を受けて、財務相は来年にも市場調達が再開できるのではないかとの期待を表明している。同国財政収支は予定より1年早くプライマリーバランスで黒字化の見通しにある。これにより、IMF,EU,ECBのいわゆるトロイカからの支援条件についてもその充足に目処が立ったとしている。
のど元過ぎれば、との例えの通り、回復傾向を受けて早速 Stournaras 財務相は、今回の危機の原因がユーロ圏の貧富の差にあり、貧しい国が財政赤字から脱却しようとすれば厳しい緊縮財政を取らざるを得ず、このようなユーロ危機によって利益を得ている国はその利益の配分を考えるべきだと、暗にドイツを批判している。このあたりがいかにもギリシャ人らしい。そもそもギリシャの財政危機は身の丈に合わない浪費を続けてきたことの結果であり、ドイツが責められる筋合いのものではないことは、EUのバローソ欧州委員会委員長も明言しているところだ。
回復の兆しが見えてきたとはいえ、失業率は27%、債務残高はGDPの150%、2013年の経済成長率はマイナス4.2%と見込まれており、まさに最悪期を脱した、に過ぎない。 Stournaras 財務相の発言は説得力に欠けるどころか、まだ認識が甘いのではないかと言われても仕方ない。