追い求めてきたもの

美容師になって２７年ほどがたった

長い道のりだったが、今日初めてお客様の感動の涙を見た


昨年１０月にウイックを作られたO様

自分もまだまだウイック作りは駆け出しで特に短めのヘアスタイルは思いきり切りきれないでいた


昨年１０月製作し切りなおした写真

O様の「もっと切っていいですよ」の一言で
自分は目を覚ますことが出来た。高価なウイックとはいえ中途半端では
何も残らないことを教えていただいた

また作った時しっかりあった髪は、２回目にはほとんど脱毛していて
お互いに慰め合ったり
脱毛した姿を家族にも見せてなかったり

とにかく印象に残るウイック作りだったO様


きの　　　 「お久しぶりです９カ月ぶりですね、ホント心配してました」

O様　　　　「結構抗がん剤は辛かったです。仕事もやるはずだったけど
　　　　　　　のんびりすることにしました。髪ものびてきました」

O様の髪は５センチほど伸びていて毛先が細く、いい表現ではないが
部活をやめた方が伸びるのを待っているような感じ

きの　　　「まだ短いですけど、カットにメリハリをつけなるべく自然にします」

O様　　　「この短さで大丈夫ですか？できれば南フランスにいるブドウとか
　　　　　　摘んでる人みたいに」

　南フランス　ブドウ？？？？？？　でも　なんとなくイメージは伝わった

１年間の積もる話に花が咲いた

とにかくたくさんのお話をしてくれるO様自分は聞き役だが
元気で顔色のいいO様がここにいる事がうれしく　話がはずむ
まだ自分以外に脱毛した姿は見せてないらしい、ご主人にも、小学生のお子さんにも

いろいろな思いを聞く


病気を告知された時、病院で泣き叫んだ事

ストレスも関係あるとご主人にあたってしまった事

低学年のお子様は一緒にお風呂に入りたがるので仕方なく帽子をかぶって入ったら
今日はいいと言われた事

書ききれないほどのエピソードを聞いた


カットが終わり　少し明るくカラーもした




きの　　「いい感じに仕上がりました」

O様　　　「・・・・・・・・・・」

O様は目頭を押さえた

言葉が出ない・・・・

自分もつられ、アシスタントも　もらい泣き


O様　　　「ありがとうございます　素敵になりました　・・・」


がんを経験していない自分は、患者さまと同じ立場ではない

患者さまを理解するということは　おこがましいと思ってきた

今日　少しだけ患者さまに近ずけた気がした


自分のやるべきこと

たいそうなことはできない

話をいっぱい聞いて　ウイックを作り

元気になって自髪デビューのお手伝いをする


でも涙を流して感動して下さる方がいる


女性にとって改めて髪の大事さを知ることになり

体の一部の髪を扱わせていただいている事に感謝し

「こんな仕事したくて美容師になったんだよな」って

神様に感謝をした


美容師になって一番感動した１日になりました

Oさま　ありがとうございます