「ひっ!」 首に刺さるすんでのところで毒針を掴み、止める衛兵。そのまま刺そうとする化け物と力比べのようになる。化け物は動きを制しようと衛兵に詰め寄り6本の腕で衛兵の体をつかんだ。 「こっ、こいつめ!」 衛兵は化け物に体を掴まれながら自分の右手で毒針を掴んだ状況で、かろうじて自由になる左手で持ったパルチザンの柄で目の前にある化け物の側頭部を叩いた。つぎの瞬間化け物は大きく口を開けると衛兵の前髪の生え際に噛みついた。 「ぎゃああああ痛ええええ!」 咬傷から血が流れ顔を赤く染める。衛兵が痛みで手を離し、自由になった毒針が衛兵の首を刺した。すると。次の瞬間何故か化け物の姿が漆黒のオーラのような不定形な形状に変わり、刺さった箇所から吸い込まれるように衛兵の体の中に流れ込んでいった。完全に流れ込み終わると、衛兵は気を失って倒れた。
7 ミッシェルとルシフェールは女王宮の入り口の扉をくぐり、中に入った。そこで両者が目にしたのは悪夢のような光景であった。入り口を入ってすぐの位置にロビーのような広いスペースがあるのだが、そこにあのさそりのような白骨死体のような化け物が何匹も入り込んでいた。化け物たちは上半身だけの人間というよりは虫のような動きで床を這いながら、あたかも肉食性の虫が獲物を捕食するように侍女や小姓たちを襲っている。衛兵も数名おり抗戦しているがどうにも分が悪いようだ。一名の衛兵がパルチザン(通常の穂先の両側に翼のような二枚の刃をつけた槍)で化け物を突いた。中心は外れたが左翼の刃が化け物の脊椎に当たった。化け物は一瞬ぐらついたがすぐに体勢を整え、尾の毒針を突きだした。