新しい席順では蘭が廊下側最後尾に座り、その前に百合亜が、その前に紗羽が座ることになった。 「いつもの仲良しグループで座れて良かったね」 「ユニット名『弱者の群れ』ってかんじね」 蘭の言葉に紗羽が答える。百合亜はそれには答えず考えていた。なぜ加賀先生はあんなふうになってしまったのだろう。もともと加賀先生はやさしい先生でよく悩んでいる生徒の相談にのってくれた。前に担当していたクラスで家出した生徒を自分のマンションに泊めてあげたと聞いたこともある。それがついこの間、2学期に入ったとたん豹変してしまったのだった。
「だからって点数であたしたちを差別するようなことをするなんて!!」 加賀は眉1つ動かさずに言った。 「風渡さんだけでなく皆も聞いてください。教育にも競争というものを取り入れることが必要なのです。ラスを引いてしまった者でも奮起して次ぎにいい点数を取れば位置を上げてあげます。世の中には機会の平等はあっても結果の平等なんてものは無いんです・・・!」 加賀の強い口調に皆あきらめたように机を動かし始めた。
「どうしてその席順なんです?」 蘭の問いに加賀は答えた。 「この間の学力テストの成績順です。総合得点が1位の者が窓際最前列に座り、2位の者からその後ろに座ってゆき後ろまで行ったら最前列に戻り、ラスを引いた者が廊下側最後尾に座るようになっています」 生徒たちの顔に動揺が浮かぶ。 「ひどい!!セクハラよそんなの!」 席から立ち上がった百合亜に加賀は厳しい眼を向ける。 「風渡さんこういうのはセクハラとは言いません」
そうこうしていると扉が開き、朝のHRのため担任の先生がやってきた。それまで勝手に雑談をしていた生徒たちがあわてて各自の席に着く。 「なに持ってんだろ、加賀先生・・・?」 先生が白い大きな紙を巻いて持っているのを見て、席に戻りながら蘭が呟いた。その加賀という女教師はスーツ姿に髪を長く伸ばし、金縁の眼鏡をかけている。年齢は32歳でまだ独身だった。さて加賀は教壇に来ると持っていた紙を広げ黒板に掲示した。