花日和 Hana-biyori

おとうさんのちず

おとうさんのちずおとうさんのちず
作・絵:ユリ・シュルヴィッツ / 訳:さくま ゆみこ出版社:あすなろ書房絵本ナビ


「人はパンのみにて生くるものにあらず」を体現している絵本ですね。著者の幼い頃の思い出話で、こんなに激動の人生だったとは(巻末の解説で)初めて知りました。

この作家、ユリ・シュルヴィッツは、「よあけ」や「たからもの」など、独特の静かな雰囲気のなかで心に訴えかけてくる作風です。カラーなのにどこか地味に感じますが、よく見ていると緻密な描写で品のいい味わいがあり私は好きです。今回のこの本も、そんな感じ。息子が食いついていたので嬉しかったです。感想は聞いていませんが。

あらすじ> 戦争で何もかも失った少年と家族は、戦火を逃れて遠い遠い東の国にたどりついた。食べ物は乏しく、ベッドも本もない貧しい暮らしの中、パンを買いに行ったはずのおとうさんは、地図を買って帰ってきた。最初はお父さんを怒っていた少年だったが、壁いちめんに貼られた地図を見ていると、ひもじい事も忘れて遠い国に行った気持ちになるのだった。


飢えている時にあえて地図を買ってきたお父さんと、それを見て遠い異国に思いを馳せる感性を持った子供が素晴らしいです。

しかし、幼い子供(4~5歳くらい)が、地図を見ているだけで南国や雪国や砂漠に行った気になれるものでしょうか。もともと、それまでに話で聞いているとか、ある程度の前知識はあったんじゃないかなとは思います。パンよりも、地図という知識・情報資料を買ってくるようなお父さんですから、教育に力を入れていたというか、自身が知識欲のある人だったのではないかと。

「ぼくは、パンをかわなかった おとうさんを ゆるした。
 やっぱり おとうさんは ただしかったのだ」

という最後の言葉で、親を肯定し、たとえ貧しくても心の豊かさを大切にする気持ちを、子供が受け取ったことが伝わってきて、胸が熱くなります。
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