寒いです。今年は西日本で厳寒になるそうですねぇ...
新型インフルエンザの件もあるし、「引き篭もり」改め、「おウチ大好き」のワタシにとっては、かなり自己正当化できる季節。
そんなわけで?、昨日あった中之島ラボカフェも、テーマが暗号などと大変興味深かったので直前までは行ってみようと思っていたのですが、雨が降りはじめちゃったので即断念(笑)
K_Tachibanaさんは相変わらず精力的に出かけてはって、やっぱスゴイわと思う今日この頃。
さて新型インフルエンザと言えば、先日のサイエンスアゴラで、「めぐる、感染症そして研究の今 サイエンスカフェP4」という展示および交流の場があったのでのぞいてみました。
以前からK_Tachibanaさんのところでリンクされていた同タイトルのブログがあって、その微妙にひっかかる言い回しが気になっていたのでした。
感染症研究の今 めぐる、感染症そして研究の今
「めぐる、」と「そして」が入るだけで、なんだかとてもオシャレなカンジ
...いや、感染症に対してオシャレっちゅうて面白がるのもヘンですが...そのココロは、どちらも流行になるかどうかがポイント、ですしね。
さてこの企画、朝から晩まで(10:00~17:00)、3日間通しで行われていたみたいです。こういったタイプの企画、つまりポスター・ブース展示や実演は、未来館なら1階の企画・展示ゾーンに集中していたのですが、これと「シルク・ド・さいえんす~科学技術広報いろいろ」だけは7階の奥まった会議室が会場でした。
言わば「穴場」的スポットで、人の流れ的にはマイナスだったのかなと思いますが、その分、研究者の方にゆっくりとお話を聞くことが出来る空間が、誇大広告でなくて実現できていたと思います。
会場内はこんなカンジ
ワタシは逆に、未来館1階の展示ゾーンには全く行けてないので、まぁ比較は出来ないのですけど、ワタシが展示物を見ていると自然なカンジでお声をかけていただいて、おバカな質問にも親しみやすくお答えいただいたし。
サイエンスカフェという括りで、こういうスタイルがあってもいいかもと思いました。
ゲームも面白かったです
主催は、「BSL-4施設に関するリスクコミュニケーション研究会」さん。
これからも頑張ってほしいですね。
ところで、P4のPとは、実は「physicalcontainment=物理的封じ込め」のことみたい。ワタシは「phase =フェーズ:段階」のことだと勘違いしてましたよ。
病原体の取り扱いに関する4段階の国際基準がBSL=「bio safety level」で、BSL-4は、その最も厳しい安全対策を定めた基準らしいですが、具体的には、感染が死に結びつく可能性があって、有効な予防法がない状態においては、病原体が外部へ漏れないよう、空気の流れなどが厳重に管理=物理的封じ込めが行われなければなりません。で、その物理的封じ込めのレベルが最も厳しい状態がP4と呼ばれるみたいです。
これがP4施設の模型!
だけど、先日某TVメディアで新型インフルエンザの動向を図式にしていて、P4は感染が「人から人にうつる」、ここを過ぎるとP5、P6となり、つまりパンデミックまで一気に加速するとか言ってました。ここではフェーズ:段階って意味で使ってますね。
同じPなので、わかりにくいんですけど...どうにかならないでしょうか。
【追記】国立感染症研究所の感染症情報センターのページで、WHOによる新型インフルエンザの警報フェーズの図式がありました。こちら
つまり、この「サイエンスカフェ P4」施設というのは、新型インフルエンザの対応施設じゃないんですね、おそらく。対象とされるのは、エボラウイルス、ラッサ熱ウィルス、マールブルグウィルス、黄熱ウィルスなど、日本で暢気に暮らしているぶんには、あまりピンと来ないもので、発生確率も低いだろうという考えがあるので、どうも「新型インフルエンザ」ほど危機感が煽られない。
あるいは、エボラウィルスの研究者やラッサ熱ウィルスの研究者は、新型インフルエンザの研究者じゃないわけです。新型インフルエンザについては専門外なのです。
ただ、万が一の事態(エボラウィルスが日本で発生する事態)になった場合に、国家的な安全管理が対応可能かどうかという点を真摯に検討するリスクコミュニケーションは重要だろうとワタシは思うです。
そういうわけで、2005年頃から、東村山市にある国立感染症研究所内で、P4施設(物理的封じ込めがレベル4の施設)の稼動が検討されているというのは、ひとつの方向性だろうと思います。しかし立地条件を3年以内に明確化して、早期稼動を目指す目論見だったみたいですが、地域住民の方々の反対があって実現できていないみたい。
まっそういう意味でも、リスクコミュニケーションが必要なのでしょうけど、もうひとつの方向性として、波打ち際で止めるという対策はうまく機能しないのかどうか。
つまり入管における検疫機能について質問したのですが、mobilityの高い人間相手だし、何しろ自己申告なのでかなり難しいみたい。
そう言えば、2年ほど前に何十年ぶりかの狂犬病患者が出たことを記憶していますが、あれもフィリピンから帰国者でした。狂犬病だと正式に認定したのが国立感染症研究所らしいです(認定可能な機関は日本でココのみ)。
そんなわけで、いろいろと考えさせられました。「BSL-4施設に関するリスクコミュニケーション研究会」さんには、今後ともリスクコミュニケーションをめぐらせてほしいと思います。
ちなみに,P4施設は感染研の村山支所以外に,つくばの理研にもありますが,実際にP4として使われたことは一度もありません.
日本のウイルス学の権威といわれる日沼頼夫さんの話をしても,ふつうに通じてしまうところが,とっても居心地が良かったです♪
一般的なバイオ系の研究者やコミュニケーターに日沼さんやHTLV-1の名前を言っても,ほとんど通じないくらい,ウイルス学が廃れていることに,私自身は危機感をもっているのです.
まったく知識のない状態でお恥ずかしいのですが、P4施設ってすでに稼動しているのですか。何か地域住民の反対にあってるみたいな話をされてましたけど...
あと、こういった施設がちゃんと機能するためには、窓口である医療機関、医師たちが適切な診断をしなければなりませんね。ワタシの質問に答えてくださった方も、そこが重要なポイントだとおっしゃってました。
ウィルス学が廃れているというご指摘はとても意外です。むしろ、あまりにも当たり前の存在になってしまったという感覚があります。HTLV-1も知らず、慌ててネット検索してるような無知な者が言うのも何ですが...
つくばの理研も戸山の感染研(早稲田のすぐ近く)も,村山の感染研も,すべからく地域住民と話をする機会はつくれど反対にあってどこも実際には稼働できていない,よって国内でP4の研究や緊急時の対応はできないということです.
ウイルス学が廃れているのはかなり問題に思っていて,ウイルス学の基礎知識をもたないがためにたとえばインフルエンザにかかっても電車の中でところかまわず咳の飛沫をとばす方や病院に行っても手指消毒をしないどころか手も洗わずに素手でお菓子を食べたりという方があまりにも多いのです.
適切な対応のできる施設だけにとどまらず,ウイルスに対する正しい知識をだれもが持ちたいものですね.
HTLV-1は成人T細胞白血病ですね.
日沼さんは熊本大学から京大ウイルス研に来られて,もっぱらHTLV-1の研究一筋でした.HTLV-1のキャリア(保菌者)は九州ですと人口の約1割に達するくらい多いのですが,誰もが発症するわけではないものの,長い潜伏期間をへて高齢者になって発病すると,劇症化して有効な治療法もないので早晩死に至るという病気です.社会が高齢化社会になるほど問題が顕在化すると思いますが,最近は九州のひとでさえもHTLV-1のことを知る人が少なくなってきたのは,研究にお金がつかなくなってきたことと,母子感染を防ぐために(HTLV-1は経口感染が主)母乳を飲ませないで人工乳に変える運動を徹底的に行って,病気自体の影が薄くなってきたということがあるのでしょう.
たとえば鹿児島大学で糖鎖研究が比較的盛んなのは,おそらくこれまでのHTLV-1研究の系譜があるからだと思います.研究の系譜を追っていくのも,個人的には興味があります.
そうなんですねぇ。よくわかりました。
HTLV-1についても、詳しいご説明をありがとうございました。
治療法がなくても、ウィルスを特定して、それへの対処法を確立することで感染を防ぎ被害を最小限に抑えることができるというのがウィルス学の重要な点ですね。
新型インフルエンザは、本日、職場で啓蒙パンフが配られてましたけど、対処法が適切なのかと考えてしまいました。
研究の系譜のハナシも興味深いですね。