なめ猫

kyouiku&entame

おそるべき人権擁護法案

2005年03月05日 | Weblog
明るい話題を書きたいが、憂鬱だ
懸念していたことが現実になろうとしている。以前、ある掲示板にも書いたが、人権擁護法案が国会に再提出されようとしているのだ。この人権擁護法案についてはメディア規制の観点からばかり取り上げられているが、本当に問題なのは国民の主義主張が特定の立場からチェックされ思想統制を受けることである。
その内容は「不当な差別的言動」にあたると判断されれば勧告を受けるというものだが、男女共同参画のときと同じで拡大解釈が際限なく行われかねない。条文を少し抜粋する。

http://www.moj.go.jp/HOUAN/JINKENYOUGO/refer02.html ←人権擁護法(案)
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(人権侵害等の禁止)
第 三条 何人も、他人に対し、次に掲げる行為その他の人権侵害をしてはならない。
  一  次に掲げる不当な差別的取扱い
  イ  国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い
  ロ  業として対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い
  ハ  事業主としての立場において労働者の採用又は労働条件その他労働関係に関する事項について人種等を理由としてする不当な差別的取扱い(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第八条第二項に規定する定めに基づく不当な差別的取扱い及び同条第三項に規定する理由に基づく解雇を含む。)
  二  次に掲げる不当な差別的言動等
  イ  特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動
  ロ  特定の者に対し、職務上の地位を利用し、その者の意に反してする性的な言動
  三  特定の者に対して有する優越的な立場においてその者に対してする虐待
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差別的取扱いっていうけれど、人によって受け止め方は様々で、それを一方の立場からのみ取り上げることこそ「不当な差別」だろう。中立公正であるべき公務員が特定の立場に与することの恐ろしさは参画の例がある。それに以下の条文にある人権委員会ていうやつがくせ者だ。

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第 四十二条 人権委員会は、次に掲げる人権侵害については、前条第一項に規定する措置のほか、次款から第四款までの定めるところにより、必要な措置を講ずることができる。
ただし、第一号中第三条第一項第一号ハに規定する不当な差別的取扱い及び第二号中労働者に対する職場における不当な差別的言動等については、第六十三条の規定による措置に限る。
  一  第三条第一項第一号に規定する不当な差別的取扱い
  二  次に掲げる不当な差別的言動等
   イ  第三条第一項第二号イに規定する不当な差別的言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
  ロ  第三条第一項第二号ロに規定する性的な言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
  三  次に掲げる虐待
    イ  国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる職員が、その職務を行うについてする次に掲げる虐待
    (1)  人の身体に外傷が生じ、又は生ずるおそれのある暴行を加えること。
    (2)  人にその意に反してわいせつな行為をすること又は人をしてその意に反してわいせつな行為をさせること。
    (3)  人の生命又は身体を保護する責任を負う場合において、その保護を著しく怠り、その生命又は身体の安全を害すること。
    (4)  人に著しい心理的外傷を与える言動をすること。

第 四十四条 人権委員会は、第四十二条第一項第一号から第三号までに規定する人権侵害(同項第一号中第三条第一項第一号ハに規定する不当な差別的取扱い及び第四十二条第一項第二号中労働者に対する職場における不当な差別的言動等を除く。)又は前条に規定する行為(以下この項において「当該人権侵害等」という。)に係る事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
  一  事件の関係者に出頭を求め、質問すること。
  二  当該人権侵害等に関係のある文書その他の物件の所持人に対し、その提出を求め、又は提出された文書その他の物件を留め置くこと。
  三  一  事件の関係者に出頭を求め、質問すること。
  二  当該人権侵害等に関係のある文書その他の物件の所持人に対し、その提出を求め、又は提出された文書その他の物件を留め置くこと。
  三  当該人権侵害等が現に行われ、又は行われた疑いがあると認める場所に立ち入り、文書その他の物件を検査し、又は関係者に質問すること。
2  人権委員会は、委員又は事務局の職員に、前項の処分を行わせることができる。

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第44条に「事件の関係者に出頭を求め、質問すること」「当該人権侵害等が現に行われ、又は行われた疑いがあると認める場所に立ち入り、文書その他の物件を検査し、又は関係者に質問すること」とあるのを見てオンブズパーソンのことを思い出された。出頭を求める、立ち入りとはまるで警察や検察ではないか。おそるべき監視社会の悪夢が

そもそもこの法案の出元は政府・与党ではない。一番熱心に推進してきたのが解放同盟であることは見逃せない事実だ。2月13日の東京新聞に「人権関連法案突然の再浮上 仕掛けは解放同盟」という記事が載っている。それによると、年明けの某日、与党人権問題等懇話会座長の古賀誠・元自民党幹事長と解放同盟の組坂繁之委員長の会談が持たれそこで、法案を国会に提出することが話し合われたようだ。両氏とも福岡県出身である。冒頭の掲示板に書いた懸念もまさにそれだった。問題となった福岡県八女市の男女共同参画条例に性的指向という文言が当初入っていたのはこの人権擁護法案の先取りをするのだと審議委員が公言していた。

★参考
http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/2002/ronbun/06-r2.html 『正論』平成14年6月号皇學舘大学助教授 新田均

この法案は平成14年に廃案になっている。あのとき一番熱心に取り上げたのが朝日新聞だった。解放同盟はあのとき、法務省の外局にすることは人権委員会の独立性をおかすということで修正を求めていた。(http://www.blhrri.org/topics/topics_0038.html)

だから、今回の動きに対して解放同盟批判も一部にあるようだが、相手が相手なだけにあまり表立っては聞こえてこない。どうして人権問題に熱心な解放同盟が反対したのかというのは、この法案が1993年12月に国連総会で決議されたパリ原則(国内機構の地位に関する原則)に基づいているということに関係している。

参考* パリ原則(国内機構の地位に関する原則)http://www.moj.go.jp/PUBLIC/JINKEN04/refer05.html

構成並びに独立性及び多様性の保障

1 国内機構の構成とそのメンバーの任命は,選挙によると否とにかかわらず,人権の促進及び擁護にかかわる(市民社会の)社会的諸勢力からの多元的な代表を確保するために必要な担保をすべて備えた手続に従った方法でなされなければならない。特に,それは,次に掲げるものの代表者との間に効果的な協力関係を築くことを可能にする社会的勢力によって,又は次に掲げるものの代表者を参加させて,行われなければならない。

(a)人権と人種差別と闘う努力とを責務とするNGO,労働組合,例えば弁護士会,医師会,ジャーナリスト協会,学術会議のような関係社会組織や専門家組織
(b)哲学又は宗教思想の潮流
(c)大学及び資格を有する専門家
(d)議会
(e)政府の省庁(これが含まれる場合, その代表は助言者の資格においてのみ審議に参加すべきである。)

2  国内機構は,活動の円滑な運営にふさわしい基盤,特に十分な財政的基盤を持つものとする。この財政基盤の目的は,国内機構が政府から独立し, その独立に影響を及ぼすような財政的コントロールに服することのないように,国内機構が独自の職員と事務所を持つことを可能にすることである。
3  機構のメンバーに対して実際の独立性に不可欠な安定した権限を保障するため,メンバーの任命は,一定の任期を定めた公的行為によりなされるものとする。機構のメンバーの多様性が確保されているならば,任期は更新することができる。
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要するに独立性とはお金は国に負担させながら政府から独立させて、自分たちの思いのままにしようということ。既に地方自治体ではお葬式後に撒く清め塩が差別に当たるという理由で廃止する啓発が行われ、福岡の伝統行事、博多山笠でも「不浄の者立ち入るべからず」が女性差別に当たると指摘を受けるなど伝統的な慣習が一方の立場からのチェックを受けている。

この法案はそれを国レベルでもっと機能的に行おうとするものだ。

人権を守るためとして人権を侵害するという矛盾をおかすことに殆ど誰も気がついていない。そのなかでいくつかのブログでこの問題を正面から取り上げている。

http://blog.newsch.net/home/zk1/ ←人権擁護法案BLOG(臨時)

そのなかの一つ人権擁護法案BLOG(臨時)はよくまとめられている。よくぞいってくれた。タブーを恐れないその姿勢に敬意を表したいと思います。この法案、与党の法務部会で議論され採決される。出席者の全員の賛成が得られなければ提案されないようになっているので、皆さん、地元の議員の先生、選挙区外でもよいので法務部会への出席をお願いしてください。評論家は要りません。行動しましょう!