怠惰なひな菊

漫画家・萩原玲二(はぎわられいじ)の怠惰なブログ(2006~2019)

新版大岡政談

2013-04-02 02:31:35 | 映画
長編読切時代劇 大岡越前 2012年 10/6号 [雑誌]
 
竹書房


竹書房から、↑のような雑誌が刊行されていて、近代麻雀編集部のフロアーでつくってるのでは?という雰囲気なので、「ナンダヨーイッテクレレバ明日カラソッコー林不忘ノ『新版大岡政談・鈴川源十郎の巻』ヲ描キハジメマスヨーグフフフフフ」と、折に触れ妄想しておったのだった。

『新版大岡政談・鈴川源十郎の巻』は、現在『丹下左膳・乾雲坤竜の巻』に改題。

青空文庫「丹下左膳 乾雲坤竜の巻」

なんなら、『魔像・新版大岡政談』でもよくってよ!

青空文庫「魔像 新版大岡政談」

なにやら、某・芋型編集者(!)も、キンマから異動して、携わってるみたいだし‥‥‥
しかし、次号から新装刊するような情報が! → http://www.takeshobo.co.jp/magazine_d/zid/122

4/7追記:新装刊の「コミック魁」をみたら、すでに神田先生が丹下左膳を執筆されておった!
大岡越前本と遠山金四郎本(こちらで『左膳が疾走る/作画:神田たけ志 原作:林不忘』が連載!)がテレコでイシューされていたとは‥‥‥不覚!
よって、小生の目論見は潰えることに!




んで、『新版大岡政談・鈴川源十郎の巻』といえば、中里介山の『大菩薩峠』の主人公・机龍之介を完全にパクった、かの隻眼隻手のピカレスク剣士・丹下左膳が初登場した作品なわけであり、伊藤大輔監督によって映画化された日活の『新版大岡政談(三部作)』〔1928〕は、日本無声映画の頂点をなす大傑作だろうと思われる。 
ほんの部分しか現存しないが。

忠次旅日記~新版大岡政談 - YouTube


んで、同じく伊藤監督による、『魔像・新版大岡政談』の映画化『続大岡政談・魔像篇(二部作)』〔1930~1931〕も鬼のように現存しないが、以下のような文献にてらすと、この封切りに出くわした後進には、娯楽時代劇映画のステレオタイプというか、なくてはならぬお手本となったことがわかるのだった。


加藤泰(以下、泰) ともかくこれ(『続大岡政談・魔像篇』)でぼくがびっくりしたのは、映画が始まっても、主役の大河内伝次郎が中々顔を上げない。一巻くらい続いたんじゃないですか?

 伊藤大輔(以下、先生) そんなような感じがあるんだ。‥‥‥ 悪口雑言が、字幕で出るんだね。

 泰 そのうちに、うつむいていた神尾喬之助の肩が細かく動き始める。すると「こいつ泣いている!」。それでまたしばらく悪口、罵詈讒謗を浴びせる、と、パーッと顔をあげると笑っておるんですなァ、これが。(笑い)

 先生 だから、これ、サイレントじゃなきゃやれないね。

 泰 そのあとが大河内伝次郎の得意の顔でしてね。笑いながら部屋を出て消えちゃうんですね。
それで皆が追っかけて行く。

‥‥‥
 先生 哄笑して出て行って、ナマイキなと、一人が後を追っかけて出ていったから、それからどうなるんだろうと、シーンとしていると、長い長いサイレントの間―――、といきなりポカーン! 放り込まれるんだ、部屋の中に‥‥‥。

 泰 首が。



このオープニングシーンの、緊張を持続させるケレンに満ちた演出は、『椿三十郎』〔1962〕の最後の殺陣や、時空を超えてタランティーノ(!)の緩急の演出にも通じておる。


 泰 それでいよいよ怨みをはらすということになって、そして貼り紙をしまして「お首(しるし)頂戴」とか何とかで、一番首、二番首と消していきましたですな。いまだにやっている時代劇のパターンが全部出て来るんです。

 先生 「お命頂戴」とか、「只今参上」。

 泰 いま全部やってまんねん。そして後篇のほうでしたかね、神尾喬之助と茨右近と女房お絃が全部同じ格好になって、神尾喬之助が何人も出て来るという‥‥‥

 先生 何であんなことやったのかな。

 泰 いや、おもしろかったですよ、たいへんにおもしろかったです。



この対談の載っている、「時代劇映画の詩と真実」(伊藤大輔・加藤泰編・キネマ旬報社・1976年)は、古書でしか手に入らず、絶対に復刻すべき、「映画術」(ヒッチコック・トリュフォー)に匹敵する良書だと思うが、伊藤大輔の絶頂期の作品がことごとく現存しないという事実に、所詮映画バカのみの愉悦ということに‥‥‥


時代劇映画の詩と真実 (1976年)

伊藤 大輔 (著), 加藤 泰 (編集)
340ページ

キネマ旬報社


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