![]() | 映画狂人 シネマの煽動装置 |
蓮實重彦(著) | |
河出書房新社 |
蓮實先生の会見、動画をチラ見したところ、既視感が‥‥‥
それは回答のなかで、「ジョン・フォード論は完結しなければいけないと思っております」と言及もされていた、そのジョン・フォードのインタビューである。
ピーター・ボグダノヴィッチによる、その痛快無比の映像(1969年撮影)がこちら↓
DIRECTED BY JOHN FORD (Interview) - YouTube
「シーン11 テイク1」
「テイク1? 1回しか撮らんぞ」
「フォード監督 壮大な西部劇『三悪人』〔1926〕では風景描写が凝ってます 撮影法は?」
「キャメラで」
「『太陽は光輝く』〔1953〕はご自分のために…」
「Yeah! Uh Huh」
「監督 私の考えでは―――あなたの西部観は年月を経て―――悲しく暗くなってますね 例えば 『幌馬車』〔1950〕と比べて『リバティ・バランスを撃った男』〔1962〕の―――調子の変化にお気づきで?」
「いや」
「何か言いたいことは?」
「何の話かわからん」
「西部劇のどんな要素があなたを魅了したんですか」
「知らんよ」
「『アパッチ砦』〔1948〕の主眼というのは―――軍の伝統は一個人よりも重要だということですか?」
「カット」
『シネマの煽動装置』の作者が会見中の振る舞いとしてかすかにでもフォードを意識していたのでは?と考えると、これまた捧腹絶倒!である!
アイパッチを装備してくれていたら‥‥‥!!!
ジョン・フォード論とはおそらく↓の講演で語られているようなものになるのであろう。
講演「ジョン・フォードと『投げること』 完結編」
自分の好きなくだりは、『捜索者』〔1956〕への先生おなじみの指摘↓
しかし、今度は投げることで探していた女性が向こうからやって来るという場面、これを見ていただきたいと思います。おそらく『捜索者』のなかでもっとも優れた美しい場面だと思いますし、ジョン・フォードの映画のなかでももっとも優れた場面の一つだと思います。ジョン・ウェインが何気なく物を投げたら何が起こるか、それをじっくり見てください。
(『捜索者』の抜粋の上映)
センチメンタルな話になろうとすると、そこに必ず何かが、弓矢のような物が飛んできたりして活劇になってしまうところがジョン・フォードの特徴です。湖水に石があたると遥かな砂丘の上からデビーが姿を見せる。これは奇跡としか思えない場面だといつも胸がしめつけられます。ジョン・ウェインが湖面に向かってふと小石を投げると、失われていた女性がいきなり現れ、砂の斜面をすべるように湖に近づく。投げることによって女性を失う。あるいは、投げることによって女性を引きよせる。
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