ジョン・フォードやハワード・ホークスの映画というものは漫画でいえば『火の鳥』や『まんが道』のようなものだから、ふと何の気なしに観返して、精神の落ち着きを得るべきなのである。
She's Wore a Yellow Ribbon | Who's Dog Is This?
↑自分が『黄色いリボン』〔1948〕で一番好きなシーン。
メイキング的な資料を読むと、フォードの作品で印象的なシーンは即興であることがやたらに多く↑もそのようなのだ。
以下、『ジョン・フォードを読む』(リンゼイ・アンダースン)の、ハリー・ケリー・ジュニアのインタビュー↓
‥‥‥軍曹役のヴィクター・マクラグレンは隊員一同を前にして出発前の訓示を垂れていた。‥‥‥リハーサル中に、一匹の犬――雑種だったよ――がしっぽを振りながらカメラの前にのこのこ入ってきた。するとフォードが「ヴィクター、その犬をかわいがるんだ」。ヴィクターは呑み込みの遅い男だったから、「何ですと?」と訊いた。「‥‥‥そいつの頭を撫でて“誰の犬だ? いい犬だ。アイリッシュ・セッターじゃないか‥‥‥と言え」とフォード。傑作なアイディアだった。アイリッシュの犬とはね!‥‥‥カメラが回った。‥‥‥マクラグレンは「さて者ども!」と演技を始め、‥‥‥「誰の犬だ? これは?‥‥‥いい犬だ。コッカー・スパニエルじゃないか」とやっちまった。フォードは「違うッ。ロシアン・ウルフハウンドだ!」というのを聞いたときには、腹を抱えて吹き出したね。‥‥‥フォードはわれわれの大笑いに目を向ける余裕もないほど、頭から湯気を立ててヴィクターに怒っていた。‥‥‥(307P)
↑の挿話も大好きなのだった。
『荒野の決闘』〔1946〕の、フォンダが床屋に吹きつけられた香水で、2回繰り返される天丼ユーモアも即興。
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ジョン・フォードを読む―映画,モニュメント・ヴァレーに眠る (ブック・シネマテーク 7) | |
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