何ゆえ「麻雀+ハイキング」という発想が浮かんだのかといいますと、小津安二郎の『秋日和』〔1960〕という映画に、司葉子や岡田茉莉子や渡辺文雄が、当時の最先端のユース・カルチャーであるところの合ハイ(合同ハイキング)に出かけ、その晩ヒュッテで麻雀に興じるシーンがあるからであります。
そのシーンで岡田茉莉子が
「はい、それ! リーチゾロゾロのドラ1で、サンパースーよ」
という台詞があり、サンパースーは今のザンク? このアガリは親の2翻40符ってことかしら‥‥‥?
いわずもがな『アーニャの麻雀日和』というタイトルはこの『秋日和』からきています。
小津の映画には、麻雀が頻出します。
『晩春』〔1949〕『東京物語』〔1953〕‥‥‥
マイフェイバリットで、小津の底無しの暗黒面を魅せた、どこかロシア文学風の『東京暮色』〔1957〕などは、雀荘が主要な舞台になっています。
強迫神経症めいた役柄の有馬稲子が、痛々しくも愛らしい。
原節子の冷たいフォトジェニックぶりは、黒澤の『白痴』〔1951〕と並ぶ美しさ。