曹達記

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2021年11月ポケスペ剣盾編感想

2021-12-21 00:21:00 | ポケスペ
今回は連載開始から2年目の終わりを迎える回である。
ここまでに示された謎の多くを説明し、更に物語がどこに着地するのかも提示された。
あと1年なのかは分からないが、14章時のようなハードランディングはなんとか避けられるかもしれない。
一方でその代償として、DLC関連の話は全く描かれないことになった(と思われる)。
こればかりは仕方ないとしか言いようがない。
そもそも、現在の月1連載ですら尺不足が明確であり、それに起因する14章時からの問題に足を引っ張られている感は否めず、更に何かやるということは無理であろう。
とにかく同じ主張の繰り返しだが、まずはweb連載の体制を早く整え直すよう出版社はバックアップして欲しい。

さて、しーちゃんが昏倒したところから。
窮地に陥る二人だが、ネズの助太刀で脱する。
さらにそのままシーソーコンビの首まで狙おうとするネズだったが、マリィの制止で止めることに。
本気でキレるとダイレクトアタックも辞さない、それどころか命を取る気だったネズ。
彼の気質は明確にアウトローなのだとよくわかる。
ポケスペ世界では「スポーツとしてのポケモンバトル」と「決闘としてのポケモンバトル」の境目が引かれるようになっては来たが、ネズは明らかに後者慣れしているタイプだ。
平和なガラルにしてはかなり異色である。しかしそこに踏み込む尺はないだろう…。

結局シーソーコンビは撤退。ソニアを撃墜して命の危険に晒しておいて、いざ自分が命の危険に晒されたら手早く撤退するというのは、あまりにも紳士的という言葉からは遠い行いである。
話は通じない上に行いは卑劣となると、今後どのような末路をたどるのかは気になる。
ただザオボー並みに悲惨な目に遭うとまでは考えにくいか?
そして、昏倒の理由はニダンギルの攻撃を食らったことにあった。
シーソーコンビは朽ちた剣と盾を奪い、その力こそが英雄たる証明になりうると考えたようだ。
その行いはゲームでの行動と似ているが、しーちゃんの記憶喪失の原因としてニダンギルが出ている点は異なる。

ただこれは野暮な突っ込みだが、どうせなら命をとってしまった方が後顧の憂いを絶てたのではないだろうか?別に伝説の二体を出すことが目的ではないのだし、出現を阻止するためにしーちゃんから手持ちを引き離したのだから…。
ザオボーもそうなのだが、悪人には相手を武装解除した後になぜ殺さないのかという理由付けが欲しいと思うのが正直なところ。
ゲームならそんなの気にならないが、何分ポケスペには武装解除して殺す一歩手前までやった人達がいるから少し気になってしまう。野暮な突っ込みだが。
ありうる答えとしては、あくまで彼らの目的はブラックナイトを起こして自らが解決することにあって、積極的に人を殺めることは好まないのかもしれない。ソニアを撃墜したこととの整合性がイマイチだが…。

ここでマリィがネズの妹であることが明かされ、ジムチャレンジャーのプライバシーが過去の事件を教訓に守られるようになったことが分かる。
この後に語られるソニアにまつわる事件は、様々な方面で関係者の人生を変えてしまったので、この対応も当然のことであろう。
ただ、マリィはここまでのドラマに今一つ絡めていないため、このネタばらしによって進行に影響があまり出ないのは残念なところ。
これはここまでの積み重ねだから、今さらどうにかなるものではない。

一方、意識を取り戻したソニアはダンデと言葉を交わす。
ここからは二人の会話だけで話が進み、今回の話は終わる。ページ数で言えば4割以上は全て二人の会話で費やされている。
それぐらい本章においてこの二人の関係は重要な位置を占めるということだ。
そのため、一つ一つ丁寧に見ていく必要がある。

まずソニアがリタイアした理由。
それはバッシングだけではなく、バトルへの情熱をなくしていたことにあった。
ソニアは言うなれば「博士の孫」であり、グリーンと同じような立場である。しかもそれだけではなく、大会運営トップの利害関係者の身内でもあった。
このことが無用な詮索を招き、彼女本人に大きなプレッシャーをかけることになる。
ポケスペではグリーンが同様に偉大な身内のプレッシャーに苦しんだと示されているが、彼と違ってソニアには師匠筋にあたる人がいなかった。
それと、ダンデが周囲の圧力をも楽しむ材料にして「魅せるポケモンバトル」をする様を見て、余計に自分の弱さを自覚して辛くなったと思われる。
正直、ジムバトルがここまで興業化されていない地方だったらソニアがここまで思い悩む必要はなかったわけで、ガラルという地方の悪い面を一身に受ける立場となった。
ジムチャレンジ以外でバトルで身を立てる術はない以上、ジムチャレンジからの脱落はすなわちバトルをやめることになる。
自信も実力もあったソニアにとってそれがどれだけの辛さなのか、想像するに余りあるものだ。

次に伝説の研究に手を出した経緯。
ここでカブがまたしても出てくる。マスコミ被害の話となればカブが絡むのは割りと自然な流れだと思うので、ここは良い塩梅。
というか、ジム戦があまりにもカットされ過ぎてたので、これぐらいの活躍をしてバランスがとれていると言えなくもない。
ホウエンの伝説ポケモンは甚大な被害をもたらした上に、隕石から星を守ったから人々の記憶に深く刻まれていると思われる。
ガラルの暗黒面にさらされたソニアがそれを知り、一旦全体を俯瞰して見たときに「伝説がない」ということに気づいたのはとても意味深である。
どちらかというとその発想はゲームをプレイする側の見方で、余所の視点があったとしてもそれを追求しようとはならない。
ポケモンバトルから離れたかったソニアが、ポケモンバトルしかないガラルの人々に気づけなかった点に気づく。
弱いからといって、無価値とイコールではないと伝えたいのかもしれない。

そして話の着地点として、弱者であっても助けられる力を持つことが、ガラル全体を強くすることになるということが示された。
ダンデはいうまでもなく強いのだが、果たしてポケモンバトル以外での救済が可能なのかといえば、微妙である。
またそーちゃんは身具にしか興味がなく、更に対人関係に難のあるタイプなので、その点でも着地点にはそのまま至れないだろう。
おそらくしーちゃんが「助けられるべき弱者」となるのかもしれない。
こうして見ると、序盤に「しーちゃんはいくらなんでもバトルでの活躍が少なすぎる」と書いてきたが、それすらも意図的な描き方だったことになる。これは素直に脱帽せざるを得ない。
ならば、パターナリズムとしてそのまま庇護をするのか、自立した行動をさせるために敢えて突き放すのか、という選択がいつか来るのかもしれない。

最後はシーソーコンビとローズが手を組んでいることが示されて〆。
ここから最終決戦になるのか、それともファイナルトーナメントを描いていくのか…あと2年か1年かで方向性を変えていくしかないだろう。


ソニアが脱落した事件は登場人物の多くに影を落としていて、剣盾編の話の発端とも言える。
しかし、残念ながら図鑑所有者の二人はそれに直接的な絡みがない。
そもそも二人のパーソナリティーには明かされていない点が多く、今後物語が終盤に入るにつれてドラマを動かす大きな要素になりそうではある。
確かにダンデとソニアの話はここまでのドラマを引っ張ってきた謎ではあるし、様々な設定の根幹に繋がっていた。
それでもやはり図鑑所有者あっての群像劇なので、二人にはここから他の登場人物に負けないだけの存在感を持てるよう、マナブも含めドラマを積極的に動かしてほしいし、内面を徐々に明かしてほしいところである。


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