曹達記

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シン・ウルトラマンの取り急ぎの感想(ネタバレあり)

2022-05-14 18:32:00 | 特撮
とりあえずまとまった感想を書こうとすると新鮮味が薄れるので、印象的なところだけさっさと書き出しておく。ネタバレ全開なので注意。











まず、今回のウルトラマンの容姿。
カラータイマーと背鰭を廃したスタイルは着ぐるみの制約から解かれた部分だが、まさかAタイプ~Cタイプの顔の変遷をやるとは思わなかった。そこにまず意表を突かれた。
もしかしたら「シルバーヨード」(Aタイプの口を開けて可燃性の液体を吐く技。没になった)をやるのかとすら思った。
更に、カラータイマーの代わりに設けられた「体力を消耗すると赤いラインが薄れていく」という設定。
こちらもCGならではのアレンジで面白く、かつ音がないので「気がついたらヤバい」という状況が作れていて緊張感がある。

次に、登場キャラ。
人間キャラについてはシン・ゴジラほど深みのある人物造形というわけではなかったかな、というのが率直な印象。
ちょっとドラマ面のテンポが滅茶苦茶速かったので、言動がコロッと変わりがちなのは致し方ないかな…。悪いキャラ作りではないし、特に滝の苦悩は「小さな英雄」をそのまま発展させたようで面白かったのも事実。
敵キャラについてはCGならではの造形がかなり光った。半分しかないザラブ星人には唸らされたし、超巨大レールガンと化したゼットンも良い捻りだった。
狡猾な方法で破壊も織り混ぜて取り入るザラブ星人→破壊は使わず言葉巧みに上位存在に位置付けようとするメフィラス星人→危険と判断して地球そのものを消し去るゾーフィと、敵キャラのランクアップも十分なのだが、できればザラブ星人の前にバルタン星人をいれて欲しかった。構想通り三部作の映画ならそれをできたのになあ…。
怪獣についてはのっけからゴジラ→ゴメスの改造ネタに始まり、バラゴン改造組を出すことで「こいつらには関連性がある」と前フリをするのは見事だった。
余談だが、パゴスを倒したときに死体処理でめっちゃ大変な目に遭ったことを台詞だけで示しているのは面白く、「あとしまつ」への当てこすりかなにかとあらぬ考えを抱いて笑ってしまった。

最後に、ストーリー。
基本的には初代ウルトラマンの話を下敷きにして、現代SF的なエッセンスを注入した作りなので安定感がある。
その中で、縦割り行政や国家間の駆け引きといった内容は割と少なめで、外星人と日本の戦いがかなり強く描かれている。ここは個人的に思いきってて良かった。
メフィラス星人の「侵略に対抗するために人類も巨大化する術を身に付けるべき」という甘言は、「大国によって侵略を受けている国がある現代」だからこそ響いた。ここは期せずして情勢とリンクしてしまったのだろうか。
そしてアレンジの中では、やはり「光の国と地球では根本的に考えが異なる」という強烈な一手が光る。
実は平成セブンでは、同じように光の国と地球の正義がぶつかり板挟みになるという展開をやってるのだが、続編ではない完全なリブート世界として作っている本作の使い方は個人的に上手く感じた。
「ゼットンを操ったのは謎の宇宙人ゾーフィ」「1兆度の火球」という児童誌ネタを取り上げつつ、なぜウルトラマンは地球を守るのかという根本的問題をうまく突いたように感じた。
最初は社会という概念が理解できず、個々の存在すら曖昧だったウルトラマンが、最終的に命を捨てつつ生きたいという意思で神永を助けるという収まり。
命を二つ持ってきてゾフィーが解決するのもハッピーエンドで嫌いじゃないけど、結局最後は希望が宇宙的意思に勝つのも良い終り方だと思う。


まあただ、特撮ヲタク的フェチズムというべき部分は割と強く出ていたように感じたし、「この展開ウルトラマンの文脈読めるから好きだけど、何も知らん人はこれ見てどう思うのかな…」と心配ではある。
そんな問題を払拭するヒット作になってほしいが、どうなるかはまだ分からない。

完全な余談として、「あとしまつ」に出ていた嶋田久作と岩松了がいずれも政治家役として出ていたのには苦笑してしまった。勿論あの映画の悪夢を払拭する演技と役回りだったので安心はしたが。
「あとしまつ」のあとしまつが自分の中でようやくできたのかな…。


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