曹達記

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2022年2月ポケスペ剣盾編感想

2022-03-19 03:18:00 | ポケスペ
※当記事は、4/30に誤操作で削除したものを再投稿しています。コメントが削除されているのはこのためです。コメントいただいた方にはお詫び申し上げます。

2月27日、ポケモンの世代交代となる新作「スカーレット・バイオレット」が発表された。
新作の発表自体はめでたいが、ポケスペ読者としては複雑な心境である。
これによりポケスペ剣盾編の年内終了が確実になった上に、BDSP編(あるいはLEGENDS編)の開始が絶望的になったからである。

尤も、新作の発売ペースにポケスペが追い付けなくなった責任は、連載機会を確保させてくれない出版社側にあると自分は思う。
無論先生方の負担が厳しい面もあるだろうが、そこを補うのが製作体制(アシスタント等)の拡充であり、プロジェクトというものではないだろうか?
11章のWeb連載終了後の3年間、編集部は一体何をしていたのか。現状維持で良くなるわけがないということは分かりきっていた筈だ。
いずれ苦しくなると分かりきっていながら放置することは、作品を放棄したことに等しい。改めて厳しく指摘しておきたい。

とにかく残り少ない剣盾編、一つ一つを丁寧に見ていきたい。



ローズの真意とムゲンダイナ

前回、エネルギー問題の解決を宣言したローズ。
それに対しそーちゃんは、以前言っていた通り「ブラックナイトを起こしてガラルを滅ぼす気なのか」と問うが、ローズは涙ながらに否定する。
ブラックナイトで発生した被害についてはマクロコスモス社員が対応していると述べ、実際に人々を苦しめるつもりはないと主張するローズであるが、どうもその考えは周囲に伝わりきっていないように思える。
シーソーコンビは結果的にソニアを殺そうとしたわけだし、極端な秘密主義が事態を面倒な方向に進ませたと、ローズの思考なら思い付きそうな気もするが…。
独りよがりな正義、そこが本作におけるローズの描かれ方である可能性は高いと思う。

そして、プラント地下へ誘導したのは一切シーソーコンビに手出しをさせないための策略であり、ローズ自身は立体映像で現地にはいないという用意周到ぶりを見せる。
完全に一行は手の内で踊らされている状態だが、ここからどう思惑を打ち破っていけるのだろうか?
ポケスペでのローズは完全な悪というわけではないようだから、全否定して惨めな最期を迎えさせる必要はないだろうが、やはり終始思惑どおりというのは少ししこりがある。

ソニアはシーソーコンビの出自を問うが、ローズは正直に英雄の末裔であることと、歴史を彼らが隠してきたことを示唆する。
この認識は話の中で裏付けられていくし、ゲームと特に変わらないので深掘りはしないが、ソニアはここからどう考えていくのだろうか。
もし彼女の行いがゲームと同じだとしたら、書き上げた本はどのようになるのか…。

この状況のなか、脱出方法を探る図鑑所有者達とネズ等とは対照的に、ダンデとソニア、ルリナとメロンはバトルの映像からムゲンダイナの弱点を探ろうとする。
ここはどちらをするのか迷ったホップの言動を通じて、各人のスタンスの違いが出ていて面白い。
シーソーコンビがムゲンダイナを抑えられる可能性はあまり高くないというのは全員の一致するところだが、バトル以外での解決法を考慮しがち(言い換えれば、盤外戦を得意とする)なキバナとネズ等は迅速な脱出と事態の打開を試みている。
主導権をローズに握られている状況をまず破ることが、緊急時における最適解だと考えているようだ。

対して、ダンデ達は自分にできることはバトルしかないと割り切り、スポーツ選手としてバトルの枠内で事態を収拾することをあくまで望んでいる。
ガラルにおけるジムリーダーはスポーツ選手としての意味合いがポケスペでも強く、ゆえにローズとの戦いでは終始後手に回る結果となってしまった。
そのために今や傍観者の立場にならざるを得ない状況なのだが、それでもガラルの秩序のためにはスポーツ選手として戦うことを選択したいという意思ともとれる。
自らは実力者であって革命家ではないという宣言と読み解くのは、若干穿った考えだろうか。

どちらが力のあるトレーナーとして大事なのか、現段階では作中の答えはないので、もしかしたら今後サブテーマとして入ってくるのかもしれない。

シーソーコンビの破滅

ムゲンダイナにポケモンで立ち向かうシーソーコンビであったが、ローズはムゲンダイナが本気を出してないことを伝えて煽る。
これに対しシーソーコンビは悪態をつきつつも、切り札として朽ちた剣と盾を出す。
しかし使い方を間違えていたため、ムゲンダイナには通用せず手痛いダイレクトアタックを食らった挙げ句、転落するところをローズに助けられる無様な姿をテレビで晒すことになった。

やはり本音ではお互いに信用をしていないことが明確になった、シーソーコンビとローズ。
動機の根本が違いすぎたとしか言いようがない。
ただ、ここで転落するのを放置せず助けてしまうところに、ローズの博愛主義と言うべき部分があると思える。
結局、ローズとしてはムゲンダイナに力を発揮させた上でシーソーコンビが倒せていれば最良だと考えてはいたものの、根本では二人が語る英雄譚は所詮偽史に過ぎないと見抜いていたようだ。
彼の思考能力からしても妥当な落とし所だろう。

ボールが手元から離れたことで、しーちゃんの手持ち2体が川に転落。2体はしーちゃんと再会しようとするが、この動きと連動するかのように、まどろみの森で光が生じた。
シーソーコンビが見立てた通りならば、手持ちとの再会がすなわち伝説の2体の登場ということになりそう。
ただ、そこで単に登場して力を貸すだけではゲームの劣化コピーにしかならない。しーちゃんのラビフットの件やそーちゃんに興味をあまり示さなかった件など、引っ掛かりそうな要素をどう使うのかが次回の見所だろう。

オリーヴの行動は、ローズの思惑に従う形で間違いないようだ。
終始ローズの指示に従って動いてれば最適な結果となる、本当にそれで話としていいのかは分からない。
一つだけありうることとしては、必ずローズの想定外の事態は起きる
だろう。そうでなくてはストーリーとして成立しない。

まとめ

本当の意味で協力関係を築けていなかったローズとシーソーコンビだが、特に図鑑所有者サイドと対比がされているようには思えない。
これに限らず、ポケスペ剣盾編ではどうも人物の対立構造が今一つなケースが多いように思える。
推測だが、それは「少年少女達が地方を揺るがす巨悪と対峙し、ポケモンと共に成長する物語」という、今までのストーリーラインに当てはめられるゲームの登場人物があまりいなかったことに起因するのではないだろうか。

巨悪はこれまでのシリーズでも様々で、13章のように人ですらない巨大隕石だったケースもあるが、剣盾は原作ゲームからして巨悪に当てはまる存在がいない。
13章の場合、明白な危機を前にした諸勢力のいがみ合いという形で対立構造が形成され、うまく話の緊張感を保ってきたものの、剣盾編ではそれすらかなわない状態だ。

図鑑所有者とシーソーコンビが対立する理由は、「手持ちを奪われたこと」の一点であり、それがどう全体的なストーリーの中でのテーマに合わさっていくのかはよく分からない。
無論、自分の読み方が不徹底でテーマの見出だしに失敗している可能性は否定できないので、それは差し引いておかねばならないが、もっと根本的な部分での対立があれば、バトルがより盛り上がる文脈を得られると思う。
ただ、文脈がなくても盛り上がるバトルは作れるはず(好例が7章か)なので、そこは前回書いたダイマックスの弊害も大きいように思える。

やはり剣盾というゲームはポケスペに不向きであり、それをポケスペに落とし込むためには相当慎重な作業が必要だと、改めて考える次第だった。

一方で今回の話の中では、ここまでの話の布石を生かした展開や今後の展開に向けた前振りもされていたので、以前のポケスペと比べなければ十分に読める話にはなっていると言えよう。


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