曹達記

ゲーム、特撮、ポケスペ等について比較的長めの文章を書く場所。

ポケスペ剣盾編総括感想2-キャラクター各論

2023-09-10 23:16:00 | ポケスペ
前回の記事はこちら↓

本記事では、キャラクター面からポケスペ剣盾編を総括していく。
ただ、山本先生はサイドストーリーを相当切り落として連載したことを述べている。
なので、キャラ描写については相当な手落ちがある状態での批評となるため、あらかじめご了承いただきたい。



図鑑所有者たちとマナブ

ポケスペという作品は、初期からキャラクターについて独自の味付けをしてきた。
しかし時代が下るにつれて、ゲームとメディアミックスでキャラに違いがあることを許さない風潮が強まっていく。

こと剣盾については、ネット上でのキャラ人気が最高レベルのものであった。SMは割と特定キャラへの人気が高かった印象があるが、剣盾は登場する殆どのキャラに満遍なく固定ファンがいて、ゲスな悪役がいないゲームシナリオも相まって「ポケスペでの悪役化が心配」という些か奇妙な意見もあったほどだ。

そのような事情に配慮したのか、剣盾編はキャラの改変が少ない。
無論ゼロではないし、ある改変について許せないと怒っていた人もいたが、個人的な見解としては、
「原作はゲームであり、ゲームとして最適なキャラと漫画として最適なキャラは異なる。漫画としてのストーリーに合わせるためなら改変はあって良いことだし、そもそもキャラクターはストーリーの中で機能しなければ意味はない」
と思うので、改変の是非については議論しない。
ポケスペはポケスペであって、原作の続きや補完では決してないのである。

前置きはこの程度にして、まず語るべきは図鑑所有者とマナブからだ。
図鑑所有者のキャラは14章と対になっており、男子が落ち着いた性格(パッシブ)で女子が活発な性格(アクティブ)である。
しかし図鑑所有者の多分に漏れず、表面的な性格の奥には複雑な内面がある。


そーちゃんは落ち着き払った所作に社会的信用のある職人と、一見した印象は良い。だが内面では周囲に対して関心がなく、身具のことに集中すると他のことはなにも考えられない。
しかし外面だけは良いので、深く関わらなければその異常性に気づかれることなく過ごすことになる。
このことが、彼に自身の問題点を気づかせることなく過ごさせてきた要因でもあった。さらに父を早くに亡くしたことで、周囲にそれを指摘できる大人がいるわけでもない。
彼は徹底して内心の描写を削られており、そのことが終盤でのムゲンダイナの毒を受けた暴走の意外性を強く引き立てる結果となる。
最初から長く置かれてきた伏線を巧妙に機能させたポケスペらしい描き方で、最初に読んだときは衝撃的だったものの、これまでの描写と突き合わせると合点が行くという巧さには舌を巻いた。

しかも、その欠如した倫理観は指摘こそされるものの、より社会に適合した形に矯正されるということもなく、事態が収拾したあとも「またこのような危機が起きてほしい」とすら言ってしまう。
社会のあぶれ者として存在を否定する方向に行くのではなく、それすらも存在して良いと肯定する方向になったことに、制作側の考えの変化を感じた。

手持ちのポケモン達は、彼自身の信念が終盤まで明かされなかったために、あくまで身具を鍛えて強さを求めるという一点で協力しているように感じられた。
ただ、アーマンについてはヨロイ島での修行で心通わせる様子がじっくり描かれたため、身具がないポケモンを手持ちにすることでそーちゃんの度量が少し広まったことを表現したのは巧かった。


しーちゃんは逆に、落ち着かない挙動に周囲を閉口させる大声で喋る癖もあって、一見した印象があまりいいとは言えない。
しかし、彼女はコンピューター技師としての確かな腕前があるし、物事の観察眼も備わっているし、他者と内面から対話する優しさもある。
他者を疑うことを知らない純真さが図鑑所有者としては希少で、ゆえにバトルで相手の裏をかくことがあまり得意ではない。
そのため、彼女が本領を発揮するのは人とのバトルではなく対話になってくる。
しかし序盤では彼女の内面がそーちゃん共々隠されていて、手持ちとの再会を通じて内面が明かされていく流れにより、人物像が浮き彫りになっていくのは丁寧だった。

彼女については、一つ指摘しておかなくてはならない作劇上の問題がある。それはジムチャレンジャーという属性を、そーちゃんと被らせてしまったことである。
このことは作劇に大きな制約を与え、しーちゃん自身のジム戦のほぼ全てがカットされるという憂き目に遭った。
無論、漫画だから同じ展開の繰り返しは面白くないし、カットすること自体は仕方ないと思う。
ただ良く考えなくとも、この設定にすればそうせざるを得ないと最初からわかりきっていたであろう。
どこかで敗退することを決めていたにしても、もう少し早くても良かった。
無論布石として、最初のヤロー戦からバトルのセンスが致命的に欠けていることは描かれていて、何れ負けることを予感させてはいた。
しかし、やはり負けた回の演出が本当にあっさりしすぎで、もっと大きな挫折としてのし掛かるような重さがあってよかったはずだ。

これは全くの素人考えだが、ジムチャレンジャーにしたところでジム戦を描けないなら、その設定は不要だったと感じてしまう。
彼女の根幹である手持ちが行方不明という設定自体は、ムーンが手持ちを揃えられなかった反省から来ていると考えられ、割と上手い改善ではないかと思った。
それだけにジムチャレンジャーという一点だけが本当に惜しい。これさえなければダイマックスを描く必要性が一つ減り、視点も増やせたと思うのである。


マナブについては以前考察記事を書いたのでそちらも参照していただきたい(ポケスペ剣盾編におけるマナブの立ち位置について - 曹達記)が、結局「第三の御三家をもつ枠」としての存在以上になることはなかった。
終わった感想としては、結局彼をどう機能させたかったのかな、と思ってしまったのが正直なところである。
そーちゃんとしーちゃんの内面を見せないようにする、という点からマナブが狂言回しとして機能していた部分もあったのだが、中盤以降彼の視点が描かれなくなっていったので、狂言回しとしてもトロバには遠く及ばなかった。
重要な要素である不登校という部分も、結局ストーリー展開で機能することがなかったため、彼単体では本当に「いるだけ」である。

さらに、最終盤でホップに一時的にナミダくん(インテレオン)を貸すという見せ場があったものの、ホップとのドラマは特にない状態であった。
これについては尺のカットがあったから仕方ない、と考えることもできるが、現時点で読めるもので判断すると「片手落ち」と言わざるを得なくなってしまう。

そーちゃんの別の面の対比としてマナブが設定されたことは明白なのだが、しーちゃんは対比としての役割をよく果たしたのに対し、マナブは対比としての要素が生きていない。
本来は三人が巴になるように設定するのが妥当だと思うのだが、厳しい尺の関係上焦点を男主人公に絞らざるを得なくなる。
そうなると更に歪になってしまうので、一人の対比で二人を作ったのだろうが、結局生きていないのでは、どうにも評価に困る。
異例の抜擢に読者の戸惑いが強かったことは想像されるが、それでも図鑑所有者に並ぶ存在として置いたのであれば、きっちり描いてほしかった。


ジムチャレンジャー達とダンデとソニア

主人公サイドに近い味方キャラとしてまず語るべきは、ビート・マリィ・ホップのジムチャレンジャー組であると考える。

ビートはストーリーの考察でも書いた通り、テーマに則したキャラとして随一の存在感を見せた。
そーちゃんとの因縁と和解、ローズからの切り捨てと対話、ポプラによる指導等々、図鑑所有者組を除けばサイドストーリーで描かれた要素がしっかり繋がっており、裏の主人公と言っても良いぐらいの活躍である。
彼がそーちゃんに当初一方的な言いがかりをつけていたのは、ローズに目を掛けられていたことへの嫉妬があったのだが、そーちゃんの本質がローズに近いことを感知していたこともあるだろう。
最終回でもローズの真意を問う重要な役回りを演じており、「大局的な善意でしか動けないローズ」という存在の影として、同様の本質を持つそーちゃんの影ともなりつつ本筋を回す重要な役割を演じたのだと思う。


逆に、図鑑所有者達との絡みが少なかったのがマリィ。原作でも実はストーリーへの絡みが薄く、彼女のキャラ描写と良いところで応援してくれる点でプレーヤーの印象に残っているにすぎない。
ローズの動きを中心にした縦軸を強めにしたポケスペにおいて、彼女の存在感が薄くなったのは仕方ないことであろう。
ただ、折角図鑑所有者に準ずる存在を用意してまで御三家を分散させたのだから、マナブとの関係性構築ぐらいはしてほしかった。
マナブはネズの楽曲のファンであるという、絡むには十分な設定があったのだから、そこで何かフックでも用意しておけばよかったのだが…。
キャラ単体としては悪くないし、カンムリ雪原においてはビート・ホップとの会話が良い味を出していただけに、もう少し有効に機能させられる手はあったのではないかと思ってしまう。


ホップは、個人的意見として別のベクトルで存在を出せていると思う。
チャンピオンの弟という重圧のかかるアイデンティティを切り離して、あくまで1トレーナーとして競技に挑む側面と、ガラルの危機に何をするべきか悩む不安定な側面が良い対比になっている。

またホップはしーちゃんと絡む機会が多いのだが、それはどことなくソニアを探し求めるダンデの姿が被ったからなのかもしれない。
二人を繋ぐものとしては他に直情的で裏表のないところぐらいしかないのだが、強引に考えるとしたら「ダンデを利用するものと利用しないもの」だろうか。
かなり悪意のある言い方ではあるが、しーちゃんはダンデの威光を利用している側面があるし、真剣にジムチャレンジには挑んでいない。一方でホップは真剣にジムチャレンジをしているし、だからこそダンデの推薦を蹴った。
ここだけ書き出せば対立の線を引いてもうまく転んだかもしれない。

ただ、だからと言って二人は対立をしているわけでもないし、むしろしーちゃんの直情的なコミュニケーションにホップが絆されているのが作中の流れなので、ビートとそーちゃんが対立→和解なのに対して、ホップとしーちゃんは打ち解け→一歩引き、という対比構造を狙ったのかもしれない。
ここについては正直描写が不足しているので、現時点では確証をもって対比であるとまでは言いきれないのだが。


ダンデは原作より無理をして振る舞っている面が強調されていて、影が深いキャラ造形は個人的に好み。
ムゲンダイナの登場という「スポーツ選手としての戦いから外れた危機」に対しても、あくまでポケモンバトルで解決するためにどうすべきかをホップに教えるのは良い描写であった。
またソニアにはダンデとの関係が拗れているという重要なファクターがあり、それゆえに自信のなさや弱さが強調されている印象だ。

ダンデとソニアの関係に密接に絡むのが、過去の挫折。
ジムチャレンジという制度の暗黒面に深く踏み込んだドラマであり、14章と別のベクトルで地方そのものの問題を炙り出している。
しかしこれ自体は割と好みであるものの、図鑑所有者たちにあまり絡まない点がどうにも惜しい。
無論全くの無関係ではないし、ダンデがホップを差し置いて彼らを推薦した理由にも繋がっているのだが、ではそれが図鑑所有者たちのドラマにどう絡んだのかと言われれば、現時点ではない。
ソニアも過去の英雄についての知識をもたらす役割を果たしているものの、図鑑所有者たちのドラマに置いては脇役である。
特にジムチャレンジを途中でリタイアしてしまったという共通点があるしーちゃんとは、もっと密接に絡む必要があっただろう。
例えに出すのが適切かは分からないが、4章ではミクリとナギの過去の別れがルビーとサファイアの関係に対比されるように置かれていたように、ダンデとソニアの関係も図鑑所有者たちの関係と対比すべきだったと思う。


その他味方キャラ群

マグノリアは図鑑所有者組の保護者として振る舞い、舞台がヨロイ島とカンムリ雪原に移るまで彼らの拠点を提供する立場で活躍した。
これまでのポケモン博士と比べて、そのアクティブさはオーキド以上と言える。
日下先生が高齢フェチなのかは不明だが、ポケスペの老人キャラは大体がアクティブで屈強なイメージがあり、マグノリアもそれに準じたキャラ付けだ。
ただ、彼女自身のスタンスとしては図鑑所有者達の振る舞いを見守ることに徹しており、問題点を指摘して教え導くところまではしていない。
ソニアに厳しく接しているのとは異なり、身内ではない協力者に対してはあくまで自主性に任せる方向で育てたい方針なのだろう。 


ジムリーダーの中で筆頭といえる活躍をしているのはネズ。
テーマの一つが「居場所」である以上、その居場所が肩身の狭いスパイクタウンしかない、という設定は話に絡むのに使いやすかったのもあるだろう。
弱い者の居場所に気を払う彼のスタンスは、大義名分を理由に強引な行動を取るローズと真っ向から対立するものであり、中盤での話を主導するにふさわしいキャラであったといえる。

更に、彼は本章でも数少ない他地方の悪を知っているキャラでもあるので、シーソーコンビを出し抜いて正体を暴いたり、ローズの行動の裏を読もうとしたりと、他のキャラと比べて切れ者としての描写が目立った。
本質は小者のシーソーコンビとは異なり、いざとなれば相手に止めを刺すことも厭わないダーティーっぷりは、本当のワルとやりあってきた経験値を感じさせる。


ネズ以外のジムリーダー達の中でも、活躍しているのがキバナ。
個人的には、原作でのエネルギープラント事故にあたる話で、しっかり活躍してみせたのが印象的である。
これは原作だと主人公が何も関わらず終わってしまうイベントなのだが、ポケスペではキバナの視点を用意することで、きっちりストーリー上の意義を強調してみせた。
彼のキャラも「情報収集に余念がなく、ルールを破る行為に立場上躊躇いが少ない」というもので、ストーリーに積極的に関わるのに説得力があった。
図鑑所有者との関わりという点では弱かったものの、ストーリーを引っ掻き回す役回りとしてはネズ共々活躍の場が多くなったと思う。


6巻以降のDLC編においては、マスタードの存在感が大きい。
そーちゃんの欠点を指摘し導ける、今までになかった大人として設定されたことで、終盤に向けた話の総括に多いに貢献していた。
マスタードは数多くのトレーナーを指導してきた経験から、ともすれば道を踏み外しかねない危険性を有するそーちゃんに対して、しーちゃんとの対話を促したりダクマとの修行をさせたりして、彼の関心にゆとりをもたせることに成功した。


ローズとオリーヴとシーソーコンビ

一応本章における敵対側といえる組。
しかし悪役のない物語を目指した、と山本先生が書いている通り、悪役としては微妙な立ち位置である。
その試みはさておき、ローズについては縦軸の記事でも書いた通り「権力者の失敗」としての側面が強調されており、他者と相容れない思考で行動する悪役とは少し異なる印象を受ける。


ローズはそーちゃんと似たところがあるという点については、作中で繰り返し示されていた。
というより、原作のローズからそーちゃんのキャラクターが逆算して作られたと考えられる。
図鑑所有者と悪のボスというものは何かしら対比となる点を用意してあるものだが、本章においては「本質がほぼ同じ」というもので対比を狙っていた。
原作をプレイした自分としては、序盤からそーちゃんの行動に独善的なものを感じ、そこがローズと似ているのではないかという予測を立てており、実際にその通り類似していると示されたのはうまく嵌まっていたと思う。
何が二人を分けたのかについては縦軸の記事で説明したので、ここではローズ本人のキャラ描写について詳しく見ていく。

まず、チャンピオン推薦という立場にあるそーちゃんとの会食が最初に描かれた。だが、もう一人の推薦者であるしーちゃんには全く関心がないようで、全編通して会話すらない。
ローズは他人に関心がないと後で示されているが、ではそーちゃんと会食をなぜしたのだろうか?彼に自分と同じものを感じた、にしては接触が少なすぎるし、本当にその時居合わせたからという意味しかないのかもしれない。
これをローズに気に入られてるからだと勝手に解釈したのはビートだけであるし。
むしろこの時はソニアの状態を心配した台詞の方が多い。ローズにとってもソニアの挫折の件が心残りであると示されると共に、ガラル全体のことを考えるローズらしく挫折に対する眼差しもあると示しているシーンだろう。
結局この後も、ローズは直接図鑑所有者達と対峙して言葉を交わすシーンが殆どない。
やはり他者に関心がない気質からして、これまでの悪役と違って図鑑所有者との因縁を作る方向性になり得なかったのだろう。

次にエネルギープラントの事件でキバナと相対したとき、ガラル粒子の枯渇を1000年先であると嘯いてみせる。
ムゲンダイナの不完全な覚醒は事故だったと思われるが、キバナの乱入すら読んでみせ、彼を通す形で「ローズは何かを隠している」とジムリーダー達に共有させる一方、肝心の「ガラル粒子の枯渇は近い」という部分を覆い隠してみせるローズの狡猾さが際立った下りであった。

さらにブラックナイトの実行について、自分が本当はどこにいるのかを隠して誘導し、ジムリーダー達をエネルギープラントの地下に閉じ込め、映像をみせてムゲンダイナとの戦闘に備えさせるという鮮やかな策略もこなしてみせた。
改めて振り返ると、ダンデとジムリーダー達は所詮スポーツ選手であって、謀略で相手を出し抜くというやり口については、政治も知り尽くしたローズに二手も三手も及んでなかった。
結局彼の思惑を超えていたのは、ビートがローズへの忠義を失わずにいたことと、ザシアン・ザマゼンタの登場という二点ぐらいであろう。

彼自身は悪人ではないとされつつも、情報の出し入れで他者を巧妙にコントロールし、見事ガラル粒子の補充を達成してみせたのは、これまでのどの悪役も達成してこなかったこと。
自己犠牲精神の強さゆえに悪人にはならなかったものの、用意周到さや戦略の巧さについては前の章のどの悪役よりも上だったと自分は思う。


オリーヴは悪役というより味方側に近いキャラとして描かれている。
ローズの右腕として彼の真意を理解し忠実に実行している面が強いのだが、彼女自身はそこまで強引な手法をとることに賛同していない。
そのため、ローズが不在となった終盤では、ムゲンダイナからガラルを守るために図鑑所有者達と共闘する方向へと進んだ。
終始クールでありながら、身勝手な王族の末裔に対しては一喝してみせるなど、彼女なりの矜持を持って事態に対応している描写は好感を持てる。


シーソーコンビはまず見た目がギャグキャラなのでシリアスを担当しえないため、結局小者としての役回りしかなかったのが大変残念だった。
最初こそ無表情で話が通じないという恐怖感があったものの、あっという間にメッキが剥がれて小者になり、最後は誰も見舞いに来てもらえないというギャグで終わった。
再び英雄の物語の主役となることを望んでいた彼らとして皮肉な終わり方ではあるのだが、では手持ちを奪った件は一体どう落とし前をつけるのかと疑問に思ってしまった。
話のきっかけを作った因縁ある敵であるのに、図鑑所有者達にバトルでやられるでもなく、罪を認めて謝罪する(それか図鑑所有者達が許すか)でもなく終わっているのが、本当にスッキリしない。
前章のザオボーもそうだが、シビアな場面でシリアスを維持できないなら、悪役足り得ないとしか言いようがない。
悪役は悪役らしく、締めるところはしっかり締めて振る舞ってほしい。


キャラクターの総論

剣盾編全体としては、キャラの味付け自体は基本的に好みである。そこはポケスペ読者としてのこれまでの信頼も否定できないが。
だが、尺不足でキャラ描写が足りないのは仕方ないにしても、一部設定面での練り込みが不足しているのではないかと感じた。

図鑑所有者達については主役として重要な役回りをこなしてきたし、彼らの内面も話の筋として機能しているのでそこまで不満はないのだが、やはりしーちゃんが不憫に感じられる。
マナブに至っては必要な描写が足りなさすぎるし、不登校という側面については事実上投げ捨てられてしまった。
そーちゃんというキャラの組み上げはかなりよくできていただけに、そのカウンターとなるしーちゃんとマナブの動かし方で一部失策があったのは今一つだと思う。

他のキャラについては、ビート・ホップ・ダンデ・ポプラ・ネズ・キバナ・ローズ・マスタードの描き方は割と好みであった。
ソニアについては挫折のドラマが良かったものの、それ以降の絡みの少なさで相対的には普通という感覚。

それ以外のキャラについても、良くないとダメ出ししたいキャラはほぼいない。
ただ、シーソーコンビだけは例外である。悪役のいないストーリーを目指したと言っても、彼らの行為はいくらなんでも「悪」だ。
そこは貫徹して描いて欲しかったのが本音である。
尤も、キャラデザインの時点で悪役足り得ないことは明白だったので、そこは割り切ってオリジナルの悪役を出しても良かった気もする。

キャラクター全体の総括としては、良くないところもあるものの全体としては良いキャラ付けができている、という結論になる。


さて、最後の一つはバトルについての総括である。 
先に予告しておくと、こちらはきつめの論評となっているので、気分を害される方が多いかもしれない。

次の記事はこちら↓

記事をお読みいただきありがとうございました。
また、普段の発言についてはこちらのTwitterにて行っております。


よろしければご覧ください。



最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ジュパー)
2023-09-12 00:37:13
>事態が収拾したあとも「またこのような危機が起きてほしい」とすら言ってしまう。

そんな事言ってません。

「しーちゃんの言う通りムゲンダイナを封印せず共存できるようになったら、またムゲンダイナが暴れてザシアン達が止めにくるかもしれない」「今回の戦いは、雲でよく見えなくてどうやってザシアン達がムゲンダイナを倒せたかわからなくて残念だった」と言っただけです。

前者のセリフはしーちゃんの優しさのマイナス面を指摘しただけであり、後者のセリフはそーちゃんの忌憚なき個人的な感想でしかないように思います。それを「またこのような危機が起きてほしい」と捉えるのは早計と考えます。少なくとも、そーちゃんは「またこのような危機が起きてほしい」とは一言も言っていないわけですから。というかムゲンダイナの毒で人間関係を壊しかけて罪悪感に苦しんでいたそーちゃんが「またこのような危機が起きてほしい」なんて本気で思ってるとは考えづらいです。

もちろん前者のセリフも後者のセリフも空気が読めてるとは言い難く、これまで決して少なくない被害が出たあの状況でそういうセリフを言えるそーちゃんは間違いなく社会のあぶれ者です。それをしーちゃんが受け入れ、比較的空気の読めるホップが「お前たちにはかなわない」と敗北宣言をした以上、社会のあぶれ者を肯定する内容である事は間違い無いと思います。
返信する
Unknown (h2co3na)
2023-09-12 08:02:49
コメントありがとうございます。

ご指摘箇所ですが、仰る通りしーちゃんの優しさのマイナス面を指摘したという一面もあります。
しかし、その発言をした表情が明らかに「何かを期待して笑顔になっている」のは見過ごせないと自分は考えました。

確かに、ムゲンダイナの毒のせいで人間関係を壊しかけた罪悪感はあったと思います。しかし、ストッパーになると表明したしーちゃんの存在がいるからこそ、再度そのような危機に陥っても問題ないと考えているのではないでしょうか。
返信する
Unknown (ジュパー)
2023-09-12 17:27:03
> しかし、その発言をした表情が明らかに「何かを期待して笑顔になっている」のは見過ごせないと自分は考えました。

確かにあの場面のそーちゃんは何かを期待してそうな笑顔をしていましたね。そこは深く考えておりませんでした。

なので、あの場面のそーちゃんの笑顔について私なりに改めて考えてみました。

そーちゃんがあの場面で笑顔だったのは「しーちゃんの度量と優しさ」を期待していたからではないでしょうか。

もしもそーちゃんの指摘通り、共存したはずのムゲンダイナが再び暴れて甚大な被害が出たとします。

そうなった場合、しーちゃんはムゲンダイナが再び暴れてしまった理由を考えるでしょう。自分の頭で考えて考えて周りの人間にも一緒に考えてもらう事でムゲンダイナが再び暴れた理由に辿り着くのではないでしょうか。そして、しーちゃんはムゲンダイナが再び暴れた理由を理解した上で、また同じ間違いが起きないようにする妙案を周囲から募り自分でも考え、再びムゲンダイナと共存する道を提唱すると思います。しーちゃんにはそれだけの度量があり優しさがあります。

あの場面のそーちゃんが期待していたものはそれだと思います。

しーちゃんは(毒のせいと理解しているとはいえ)自分を裏切ったそーちゃんをその度量と優しさで包み込み許してくれました。それと同じように、ムゲンダイナがどんな過ちを犯そうとしーちゃんは共存を諦めないでしょう。そんな「しーちゃんの度量と優しさ」をそーちゃんは期待し笑顔になっていたのではないでしょうか。

要するに、それだけの善性を期待できる人間が自分の近くにいる事自体が嬉しいからそーちゃんは笑顔になっているわけです。罷り間違っても「またこのような危機が起きてほしい」と思っているわけでは無いという事です。

ただそれを家族同然の相手に正直に言うのはそーちゃんのような朴念仁でもさすがに恥ずかしいと思います。だからこそ照れ隠しに「今回の戦いは、雲でよく見えなくてどうやってザシアン達がムゲンダイナを倒せたかわからなくて残念だった」という感想を直後に言う事で恥ずかしさを誤魔化しているという考えが浮かび上がりました。

もっとも全て私個人の見解ですが。

>確かに、ムゲンダイナの毒のせいで人間関係を壊しかけた罪悪感はあったと思います。しかし、ストッパーになると表明したしーちゃんの存在がいるからこそ、再度そのような危機に陥っても問題ないと考えているのではないでしょうか。

それで被害に遭うのがそーちゃん達だけならそれでも良いかもしれませんが、ムゲンダイナは天災に等しいポケモンであり、被害規模がそーちゃん達だけでは済まない事は簡単に予想できる事です。

ムゲンダイナにその巨体で暴れられるだけでガラルに住む人々の生活が破綻しますし、当然命の危機だってあるのです。

また毒の影響で欲望を暴走させた結果取り返しのつかない事態になる事もあるんじゃないでしょうか。そーちゃんの場合は運良く誰も死なせずに済みましたが、他の人も同様の天運を持っているわけではありません。仮にクララが毒の影響を受けたら、ライバルとなるセイボリーを海や池にでも突き落としてその命を奪ってしまったかもしれません。

そこまでいかずとも毒の影響で親しい誰かを裏切るような事があれば、それは裏切られた人の心に大きな傷を負わせます。しーちゃんレベルで度量と優しさを持っている人なら持ち直せるかもしれませんが、そういった人は大多数では無いでしょう。毒のせいとはいえ裏切る事で人間関係が完全に破綻する事は充分あり得るのです。

その上でそーちゃんが「再度そのような危機に陥っても問題ない」と考えているとは、やはり思えませんでした。

これも個人の見解です。
返信する

コメントを投稿