
「デューン 砂の惑星」フランク・ハーバート著。
世間的に評判の良い石ノ森表紙があまり好きでは無く旧訳一作目は積んでる筈なのだけど、今回初読。一万年もの未来世界の話なのに大航海時代の植民地のよう。描かれる特殊能力も救世主然とした主人公も秘教的。しかるに作者の世界観が他に無いくらい独特で面白い。
その面白さとは、かならず取り上げられる惑星環境の詳細な設定の事でななく、作者の人間観、行動原理のようなもの。作者には人のあやなす世界がこんな風に見えるのだろうかと異様な感じ。ハーバートのものの見方、考え方が、なんか変(個性的)なのだ。どのあたりがどう変なのかということは、なかなか短い言葉では伝えにくい。お話の大きな構造はファンタジィ王道の貴種流離譚。一読では表面をなぞっただけという感じ。王道なはずの話が、それぞれの場面や展開で微妙に王道とは違う。「え、こう考えるの?」「こうくるか?」という小さな驚きが連続。これは再読(可能なら)や、シリーズを読み進めていくにつれて自分でも明確になってくると思う。
(映像化が結局デビッド・リンチによってなされたことも、それはそれでよかったのでは無いかとも思える)
その目線ゆえか発表から50年もたって古びた感じが全くしないのも驚き。苦難の民を導く主人公(覚醒者?)をおそう殺戮衝動、その自覚と怖れ。このテーマだけでもどう発展するのか気になる。多様な未来の予兆が収束かつ分岐するという多元的予知も面白い。続きが読んでみたい。
それにしても、質素で平和な暮らしをしていた王が、環境の変化から非業の運命にさらされ、その息子が…。というのはつい最近も、なんか読むか見るかしたような。ほんと、基本なんでしょうか。