北の暮らしに役立つ防災コラム&豆知識

防災委員会情報部会((社)日本技術技術士会北海道支部)

「地震予知について」 北 健治(応用理学・総合技術監理部門)

2007-04-05 11:15:55 | 防災コラム
 本コラムで「地震は休日にやってくる」と述べた能登さん(前防災研究会会長)の仮説?が現実になったのであろうか、3月25日(日)、能登半島西岸沖で発生した地震(M6.9、最大震度6強)は、気象庁によりその名も「平成19年能登半島地震」と命名された。

 さて、日本の地震に関する調査・研究を総括する機関の内、大規模且つ情報公開が進んでいるのが、文部科学省所管の「地震調査研究推進本部」であり、平成18年1月1日を基準日とする今後30年間の「地震動予測地図」(ダウンロード可能)も発表されている。具体的には、基準日以降30年間で震度6弱以上に見舞われる確率について、全国を
①26%以上 :約100年に1回以上。
②6~26% :約500年に1回以上。
③3~6% :約1,000年に1回以上。
④0.1~3% :約1,000年に1回以下。
⑤0.1%未満 :約30,000年?に1回以下。
の5段階に分類し、①~③は「高い」・④は「やや高い」としている。
(この図は損害保険会社の地域別地震保険料算出の資料にもなっている)

 今回の能登半島地震で震度6弱以上が観測された地域は、④・⑤に属し、確率的にはほぼゼロに近かった現象が予測地図発表後わずか1年3ヶ月後に起きてしまったことになる。

 専門家(研究者)の言い分は「予測地図作成に際し、当該海域の活断層データがほとんどなく確率計算に反映できなかった」・「本地域の地震履歴は幾つかあり、平成5年のM6.6・輪島市で震度5(その時点までの最大震度)、という記録もあるが、M7クラスは予想していなかった」等であり、結局、いつものパターン「日本中、何時・何処でもこの程度の地震発生を想定しておく必要がある」に落ち着く。

 しかし、被災者や一般国民は、(多分)莫大な予算と手間を投じて作成された「予測地図」の低確率と被害地震発生という現実との間に違和感を覚えるのではないかと思う。いや、そもそも、予測地図の存在自体を知らない国民が多いとすれば、専門家の結論に従って、地震は常に「不意打ち」と考え、諦めるしかないのであろうか?

 ここで浮上するのが、被害地震の短期または直前「予知」である。地震予知は専門研究者以外でも組し易い分野のようであり、インターネットにより「地震予知」で検索すると100万件以上、「能登半島地震」×「前兆現象」でも1万8千件程ヒットする。(平成19年4月初旬現在)これらの中には、荒唐無稽な前兆に基づくものから、NPO法人として科学的データ観測を背景にするものまで各種の個人やグループがあり、ブログ・HPやメール配信で予知情報を提供しているものもある。(週刊誌の広告には、例によって「これだけあった能登半島地震の前兆」といった見出しが既に出ている)

 ネット社会になる前、一部の「予知マニア」が持論を展開する場は地震学会等の予知に関するセッションであった。(開始に合わせて、専門研究者が一斉に退室するという話を聞いたことがある)また、地震に関するあるシンポジウムで会場前方に陣取った数名の予知マニアが、講師への質問の形をとりながら、強引に自説を披瀝し続け、司会者が収拾に苦労する場面を目撃したこともある。

 一方、国として唯一予知の可能性があるとされ、法律も整備されている「東海地震」について、気象庁HPの関係個所をよく読むと実態はかなり「心もとない」ことが分かる。陸側プレートの跳ね上がり(地震)に先立つ滑り(プレスリップまたはスロースリップ)を主な前兆現象として検出し、最終的に内閣総理大臣が「警戒宣言」を出すのであるが、プレスリップが観測不可能な程小さいか観測直後に地震発生となる場合は事実上予知不能となることを認めている。さらに、警戒宣言発令(1日当たり数千億円以上の経済損失と言われている)後、プレスリップが収まった場合、他の観測データも含め検討し警戒宣言は一旦解除されることになるが、再度プレスリップが観測された場合の対応等、難しい判断が迫られる。

 こうして見てくると、国の施策としての「予測地図」や「東海地震予知システム」の実効性にも疑問が出てくる。とすれば、ネット社会や週刊誌ネタに止まっている予知・予測サイトの中から、線引きは難しいが、科学的観測に基づくものに目を向け、有効性を検証することも無意味ではないと考えられる。

 その方法としては、例えば、「サイトの当事者と専門研究者が民間TV局の番組で討論する」・「しかるべき公的機関に予知情報を伝達集約し、その成果を科学的に検証する」等が考えられるがどうであろうか?

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