熊手を持つ人をさかのぼり、祭り会場を逆探知。
どこだかわかんねー。
浅草から離れてるぞこれ、いいのか。
なんか路傍にはイカがいるし。
平目もいるし。
いけすって、なんかあまり飯中に見たい物じゃないんだよな。
「イカくださいって言うと、あのいけすに網を入れて捕るんだろな」
・・・とか考えると注文できねぇ。
たとえ俺の注文により殺されるイカがいたとしても、
それは俺の見えないところでやって欲しいという、
ある意味「いいとこ取り」な考えがある俺。
喰ってうまけりゃ、
敢えてそんな目の前で殺して調理してくれなくてもいいんだよなぁ。
姿造り(活け造り)で動いてたり、鮑の踊り焼きとかも苦手。
・・・そんな事よりも、酉の市はドコだ。
あ、提灯。
発見。
屋台いっぱい。
すげー活気だな。
で、熊手はドコだ。
なんか、行けど進めど、喰い物の屋台ばっかりなんだけど・・・。
俺これ、浅草に戻れるんだろうか。
現時点で充分に迷子の条件を満たしている気が・・・。
・・・・・・。
お。
これか!
へー。
なんだか傍らに突然、謎の名前籤(くじ)を発見。
なに、100円を入れて勝手に持って行く仕様なのか。
・・・誰も買ってない気がするぞ、これ。
買ってみるか。
・・・俺が買ったトコしか「欠」がねーぞ。
実は電光石火で補充されたりするのかと思ってしばし様子を見てみたが、
別にそういうわけでもなさそう。
本当に単に売れてないだけだな、こりゃ。
・・・まぁこれ、特に酉の市と関係ねーだろうしなぁ。
さらに奥に進むと寺発見。
どうやら、ここが中心地らしい。
どうせなら賽銭をと、10円を賽銭箱に投げてみる。
箱上部にある斜めの木の棒に弾かれて、場外へ。
・・・・・・。
神社も発見。
どうせならと思い、御神籤っぽいのを引いてみる。
台に100円を置く。
装束を着た人が、
「無病息災ナントカカントカ」みたいな謎の文言を唱えて、
ガラガラと箱を振って、割り箸みたいな棒を出す。
「ハイ、77番ですねー」
「吉」
・・・つまらんな、わりと。
それにしても人がすげぇ。
なんかみんな、提灯のトコに行こうとしている模様。
こんなに人が・・・。
何があるんだ、あの提灯の先に。
・・・もう何があってもいいや、人が多すぎて泣きそうだから帰る。
でも人が多すぎて動けない、出られない。
やっとのことで、出口っぽい場所へ。
入口専用。
出られねーーーー。
実はさっきから便所に行きたいんだけど、俺。
わかりやすく言うと、このままだとうんこが漏れる。
やべぇ。
そばにある熊手屋に出口を聞く。
「あっちから出るしかないね・・・」
あっちかよ、人の大河を横切るのか・・・。
ひとまず熊手屋、有益な情報をどうも。
なに、「亀谷」って店か。
将来なんかの拍子で熊手が必要になったら買いに来るよ。
必死の思いで、過密地帯から脱する。
やっと自由に動ける道に出た。
・・・と思ったら、いきなり熊手屋と熊手屋の間に民家を発見。
なんかすげーな。
・・・もう民家も熊手も屋台もどうでもいいから、便所はやく。
神懸り的な方向感覚で浅草に到着。
蔵前駅まで、もの凄い勢いで移動。
コンビニエンスストアあたりで便所を借りようと思ったが、ことごとく対岸。
そして、横断歩道の向こうに見える「←蔵前駅」みたいな看板に基づき、
わざわざ駅を目指して道路を渡ったら、実は渡る手前の方に入口があった。
ならこっちに看板を出せ。
「押しボタン式」信号のボタンを押して再横断を試みるも、
信号がまったくかわらない。
漏れる。
効いてんのか、このボタンは。
もはやこれまでと思って信号無視を視野に入れはじめた頃、信号が変わった。
駅になだれ込み、便所に突撃。
あぶねぇ、間に合った・・・。
・・・冷静になって時計を見たら、
すでに京王線の終電に間に合わない時間だった。
なんだか忙しい土曜日だったな・・・。
新宿で中央線を待ちつつ、さっき買った「名前籤」を見てみる。
・・・なんか糊付け部分が軽くきたねーな。
あー、なんか疲れた・・・。