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ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【映画】ちょっと思い出しただけ

2022-02-13 23:35:49 | 映画
ああなんか、よかった。観てよかった。

印象的な断片が、たくさん降り重なってる。


え、踊っちゃうの?とか。
かっわいいなぁ、とか。
その切り返し、いいな、とか。
ざんねん、とか。
あ、そうなったんだ、とか。
そういうすれ違いあるある、とか。

諸々。

甘いのとほろにがいのと。
脇もぜいたく。

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公式サイト:https://choiomo.com/

(2022.1.13)


【映画】名付けようのない踊り

2022-02-05 23:52:41 | 映画
2時間の上映時間の中で、さまざまに感じたり考えたり。

序盤を観る私は、踊りから伝わりくるものが「わからない」。
私は観るにしても物語を読むにしても、おそらくミラーリングして
自分の中に情動を疑似的に起こしている気がするのだけれど、
それを機能させにくいのかな、と思ったり。

畑をやる身体でもって、踊る。

どんな身体でいるか、が、だいじ。
 身体に精神をもってこようとするとき、とてもとてもゆっくりな動きが
 出来た方がよいのだと、身体を動かすワークショップで思ったことがある。
 今の私はぜんぜん、ゆっくり動くことができない。
 急いて、待たずに、移り行こうとしてしまう。
 ゆっくり動くにはちゃんとした身体が要る。

アニメーションで視覚化される「私のこども」のこと。
自分は何を好ましいと思うこどもだっただろうかと記憶を手繰っても
大して出てこない。どれほど私は「私のこども」を封じて来たのだろう。

映像は各地で土地に呼応して踊る田中泯さんを追う。
ふいに、置き去りの生家の畑の土・地面とじゃれ合う自分を想像する。
どんな感じだろう。あんなふうにできたらいい。

頭上の森。ほとばしる。
イマジネーションで描出されるものを必ずしもその形に
身体で表現する必要はないのだという。

そんなこんなで2時間、田中泯さんを見つめていたら、
序盤の「わからない」はゆるゆると融けていった。「わかった」のではない。

田中泯さんの踊りは、開いていて剝き出しで、だから、
何というかたぶん私は照れていたのだ。
ミラーリングは機能していて、オープンに表現された生命そのものに
呼応して私の裡に映るものを直視するという、不慣れな状況に戸惑って
いたのかもしれないし、それは味覚でいえば甘い辛い旨いなどの
馴染みの紋切り表現をあてられない何かのようだった。

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公式サイト:https://happinet-phantom.com/unnameable-dance/

(2022.2.5)


【映画】マトリックス レザレクションズ

2021-12-27 23:56:33 | 映画
私は楽しんだのだけど。
若い人にはそうでもないのだろうか(隣の席の人が…)。

同世代を生きて来たワタシとしては、
「老い」というやつの扱いかたが爽快でよかった。
扱い方というか。扱ってないというか。
視覚的には表れているにも関わらずそれはあるがままとして
加齢上等って、ラナ姐御が言外に言わずに言ってる感じ(思い込みですが)。
マトリックスの中では身体能力はそのままっていうのアリね。

メタバースなんてさ、ついつい若作りして下手すると(本体バレたら)
イタイ感じになりそうだけど。
こっちの在り方のほうが自己受容性高くていいのでは。素敵なことだ。

前作から18年、20世紀の最後と今ではデジタルの在り方が全然違ってて
物語のややこしさはデジタルの重層性と無時間性・非同期性のリアルを
持ち込んでいるからかもしれない。
機械と機械の…(自粛)の様相にはシンギュラリティ悲観論が映ってたり。

アナリストの立ち位置や、モーフィアスとスミスの関係性辺りに
特に色濃く出てると思うけど、そこらへんをしっかりとらえようと思うと
あと1回観る方がよさそう。

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公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/matrix-movie/

終盤のトリニティがたいへんかっこいい。超えてる。

(2021.12.25)



【映画】007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

2021-10-31 21:36:33 | 映画
ジェームスはほぼ全編途切れなく動き続け、アクションにつぐアクション、
場面場面に意表を突く演出が張り巡らされていて飽くことがない。

鍵となる兵器の設定も、荒唐無稽と科学要素の際にあって
触れることへの畏れを先取りしていて、
コロナ禍の今見ることのうすら寒さのリアリティがみごと。

いわゆる悪の組織と要塞の姿は、クラシカルである。
韻を踏んで繰り返し現れる、円の中のボンドという光景もオマージュだろうか。

それでも20世紀のジェームス・ボンドとはずいぶんと違って、
一人の男を演じる俳優が移り変わっていくのではなく、21世紀のそれは
「ジェームス・ボンド」は007というコードネームに付く名跡のようなもの、
という理解に着地したのかな。エンドロールの後の1行のメッセージは。

決着は。そうきたか。

脇をかためる俳優陣も、特にMI6側の人びとのありようもまた21世紀のそれ。
ボンドの同僚諜報員の女性2人がそれぞれたいへんに強くてかっこいい。

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公式サイト:https://www.007.com/no-time-to-die-jp/

(2021.10.30)


【映画】DUNE/デューン 砂の惑星

2021-10-17 00:37:04 | 映画
ロゴが格好いいのだ。21世紀的デザイン。

砂漠・中東的光景にヨーロッパ中世の階級表現に精神世界に作用する力。

どこで切っても名優でぜいたく。

宇宙船と城塞の光景はレトロSFの味わいを保ちつつ科学の雰囲気を漂わす。

とにかくなにしろ、ティモシー・シャラメとレベッカ・ファーガソンの
少し不思議な(姉弟のように親密であり師弟のようであり)親子の姿が
徹底的にうつくしく描かれていて。

砂虫と砂漠のスケール感あふれる光景もみごとだし。

予知夢の使い方も効果的。
(あれがないと、世界観が入り切ってない状態でついてくの大変かも)

文句なく味わいリッチ。

少々サウンドが強すぎるかもしれない。
そして完結していない所為もあって何を(どんなものがたりを)観たのか
腑に落ちずにいる。続編を早めにお願いします。
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公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/

萌えやカワイイが文化輸出されてグローバルで取り込まれているように
BL的表現もそうなっているのか?と思ったりした。

(2021.10.16)


【映画】岬のマヨイガ

2021-09-05 23:47:49 | 映画
宣伝の印象よりもずっと濃かった。よい作品だと思います。

不思議な古民家(マヨイガ)と、
美しい緑と水と海山の光景と、爪痕と。
絵は奥深く、人といきものの表情は繊細。

 爪痕の癒えぬさなかの人びとのいとなみの様から感じたものについて
 感想を述べるのは容易でない。
 何を書いても上滑りしてしまいそう。

少女たちのそれぞれの事情からの痛み、とりわけユイと親との関係は
とても熾烈で、一方で、こんなことはあちこちで起こっているの
かも知れないと思わせるリアリティ。

昔話語りパートの描写もすてき。
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公式サイト:https://misakinomayoiga.com/

アカメの存在がなくても構成できた気もするし、終盤の大集合とか
ちょっと飛んでたけどエンタメジャンルということか。

キワさんの只者でなさの最たるものは、書類手続きの件。
いったい昔、何で稼いでいたのだろう…。

(2021.9.5)


【映画】孤狼の血 LEVEL2

2021-08-22 23:07:14 | 映画
酸鼻度高めのシーンは苦手ながらもぐいぐい引っ張られ最後まで目を離せず。

人物像の第一印象そのままではないこと一度ならず、ものがたりもまた。
想定内と想定外の振れに持っていかれ、
観客にも全体構造が見えた頃に、劇中で日岡が告げることばとか、
何とも言えない妙味。

しかし何なんだろうこの人たち(日岡と上林)。
今まであまり描かれたのを観たことのない関係性というか。
宿命の対決相手のステレオタイプな執着ではないし。
合理性だけでもないし。いや、合理性なのか。どうだろう。
心理的にはさらっとしてそうで(=相手がいないと自分が成り立たない
人たちでない)、チンタを間にして初めて相互関係が立体化してるのかな。
分かり易くなさに興味を引かれて、観終わってからも引きずってる。

そうして、組織の歯車歴が長い私は、
嵯峨管理官(滝藤さん)のキレかたがかなりお気に入り。ステキー。

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公式サイト:https://www.korou.jp/

(2021.8.22)



【映画】Summer of 85

2021-08-21 23:22:18 | 映画
冒頭、夏のビーチ、なつかしい楽曲。The Cure。なるほど'85。
オゾン監督作品。

ピュア―なティーンの甘酸っぱい恋の傷の話だろうと
思っていたから(いや、確かにそうでもあったけど)、
核心における塩辛さに「さすがオゾンかんとく」と思いながら
エンディングを迎えてスルメを噛み締めたような気分で
劇場を後にする私は、苦笑とニヤニヤの間くらいの微笑を、
もしかしたら浮かべていたかもしれません。

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公式サイト:https://summer85.jp/

後味を書くとネタバレになりそうだから内緒だけど、
直後よりも観終えて数時間経った今の方がいい感じ。

服装ダサめにしてるのは、80年代(21世紀から20世紀を振り返るときの
垢ぬけなさ)の演出か、はたまた地方のティーンの雰囲気か、どっちだろう。

(2021.8.21)


【映画】最後にして最初の人類

2021-07-31 23:02:48 | 映画
映画館より美術館が似合うと思う。

ティルダ・スウィントンの声で、未来の人類が語りかける、
人類の行く末の物語と、語り手の時代のありさま。

時に物語に重ね、時に意図を示さず映される巨大な造形物※1のモノクローム映像。
ストーンヘンジやイースターのような、古代の儀式場か記録の碑を思わせる。
未来の人類の技術は遥かな高みにあるから、古代の神と案外印象が近いのか。

メッセージに要求がない方がより素直に受け取れそうな気がするけど、
たぶんそこは本質ではなくて、この映像と音楽と語りが
未来や宇宙のビジュアルイメージを全く用いていないにもかかわらず
壮大な空間と長大な時間を想起させられる体験を味わえばよいのだろう。

この、過去への渡し方はVivy(アニメの)とも近くて、
量子コンピュータが出てきてる今の時代に見ると案外リアリティがある。

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公式サイト:https://synca.jp/johannsson/

それにしても一人の生で長大な歴史を経験した上でないと成熟と呼ばず
かつ、群れ的な精神性がそこに併存する社会とはいかなるものであろうか。
原作読みたくなった。国書刊行会※3による出版。いずこも在庫切れですね。

※1 実際は神殿・墓所等でなく戦争記念碑だそう。
※2 Vivy -Fluorite Eye‘s Song https://vivy-portal.com/#TOP
※3 https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336045386/

(2021.7.31)


【映画】竜とそばかすの姫

2021-07-18 18:06:11 | 映画
ベルの歌唱、しょっぱなからなんだこれ、泣けてくる。
すずがUにアカウントつくって入ったあたりもまた。
うた、音楽の使い方、と仮想世界の映像の組み合わせ、絶妙な揺さぶり。

仮想世界とリアルを行ったり来たり。
リアルはやさしくも熾烈でもある。
日常の熾烈、特異だが起こりうる熾烈、両方。
ざくりとえぐられる感覚への共鳴と、
可愛らしい恋の表情や、大人たちが見守る距離感の癒しとか、
色々で画面を見つめていて飽きることがない。

「美女と野獣」へのオマージュがふんだんに。
終盤の展開を知って振り返れば、最初の印象とは異なる意味を読みたくなる。

フェイク、炎上、ねっといじめの火種、自粛警察的なグループ、
デジタル社会もまた人間社会で、リアルとの接続の在り方を考えさせられもする。
Uはオリジンのバイタル(思考傾向や性格も入るのかな?)が持つ才を
拡張するという。
劇中の観客であるモブはここで消費以外をどう過ごしているのだろうか。

とりあえずもう一回観たい。

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公式サイト:https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/

(2021.7.18)

2回目行ってきました。
見れば見るほど細部にわたって、映像自体ももちろんだけれど、
そこに起きている事象がよくよく作りこまれていて、
日本型のアニメーション(という表現が適切かわからないけど)でなければ
描き得ないだろうと思う。
そしてまたおなじとこで泣く。わかってるのに泣く。

ところで「城」がああなのは、思い出か何かが作用しているのだろうか。
運営のアルゴリズムは何をフックにあれを存在させたのだろう。

(2021.8. 1)


【映画】アジアの天使

2021-07-17 23:32:41 | 映画
ロードムービーだとおもう。
二組の家族を演じる日韓の5人の俳優がそれぞれとてもよい。

日本人な私は、言葉も通じないし、嫌悪を抱かれる恐れを感じるしという
主人公・剛の韓国での不安感を体感する。

すんなりとした物語と時々差しはさまれる捻りや暴走。
諍いと並んで柔らかい気持ちとか融解が、人と人の物理的に詰めた距離の中に
立ち現れるのは、コロナ感染者激増中という都内の劇場で観る私には
ことさら贅沢で豊かなもののように思われたりする。

主人公・剛は、韓国語は分からないし話せないけど日本語で語りかけ、
その表情が、相手の想定する表情とズレるあたりがとてもおもしろく
あじわい。ぬるっとしたおかしみ。
アジアの天使も。(言葉が分かるのね…)。

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公式サイト:http://asia-tenshi.jp/

(2021.7.17)


私は長年、上映館の運営会社のストックホルダー。
優待がそっくり残ってるけど今日は定価で入場です。プチ応援。


【映画】スーパーノヴァ

2021-07-04 23:55:06 | 映画
家族レベルの恋人と周囲の人びとの思いがこまやかに描かれている。
また、命に関する重い問いをも投げ掛ける一作。

壮年に至ってもなお、お互いを慈しみ暮らすパートナー。
その片割れに起きている病状の進行。
近い将来の不安と決意を抱えながらキャンピングカーでの二人の小さな旅。

広大な自然の中に続く長い一本道、人気のない野の夜の星空。
観終わってから思い返せば、あれらのシーンで空撮された車中では
文字通り二人だけの時間を過ごしていたのだろう。
いつもの会話、胸中に葛藤。

カップルの片割れであるサムの実家での人びととの再会。
脳裏に「生前葬」ということばが浮かぶ。

サムとタスカー、どちらの心情にも寄りうる。
そしてどちらの意思を優先させたとしても、
普通なら他方には何等かの悔恨が生じるだろう。
でも彼らが選び決めたことは、そこに至る真情の言葉の応酬は、
お互いを徹底的に尊重するものだから、
この先に過去として振り返って違う選択を想うことはあっても、
納得に立ち戻ることができるのかも知れない。
そういう希望のような何かを、少ない台詞で、情景と俳優の表情だけで
残しているという点が作品の品格を高いものにしている。

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公式サイト: https://gaga.ne.jp/supernova/

(2021.7.4)


【映画】Arc アーク

2021-06-26 23:47:41 | 映画
序盤、どっちにいくんだコレ?とやや惑う。(ダンスは凄い。見ごたえ。)
「プラスティネーション」が公に許容されている世界に入りにくいのは
致し方ないかもなぁ。

30代以降の展開は、演者と映像表現によって、老いない存在が生じることで
起きるあれこれが時間経過も含め上手く織り込まれている。

ケン・リュウ作品は幾つか読んだけれど、本作の原作「円弧」は未読。
原作の表現に近いのか未確認ですが、台詞に哲学の香りあり、
並び立つ芝居巧者の面々がうまくカバーしていると思う。

ああでももしかしたらもっと無機質で平板な表現であればそれもまた
ストーリーの性質、無常観のある淡々とした進行に馴染んだかもしれない。

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公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/arc-movie/

(2021.6.26)



【映画】ノマドランド

2021-03-27 23:45:45 | 映画
ただ見つめていた。そういう映画だった。

車上で、若からぬ女性が単身で日常を生き続けることに映るある種のすごみ。

ファーンや他のノマドな人々の、生活や生業のちょっとした場面に、
定住と定職ではないことに直接・間接に由来するリスクが見え隠れする。
それでも意思をもって選ぶ靭さよ。

いや、靭さって少しニュアンスが違う。
確かに強いんだけど、そんな大味な話じゃないよね。

真摯。

社会のセフティネットの際に在ること、
此方と彼方、向こう岸の話として単純に受け取れるかというとそうでもなく、
暗澹とした不安と安堵の欠片は、意外にも、自分から遠くはない。
もと居た場所から離れて知らない人びとの中で、過去はかつての場所に
くくりついて、人は身ひとつだ。

あるいは、何かにこだわることや、何かを手放すこと。

車一台に積めるものしか手元に残せないとしたら、何を選択すべきだろうか。
今住むとろこを追われるけれど、どこに行くのも自由だというなら、
一体どこに行くだろうか。

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公式サイト:https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html

(2021.3.27)


【映画】すばらしき世界

2021-03-15 22:50:43 | 映画
タイトルは、願いのような、皮肉のような、実感のような。

役所広司さんによる主人公・三上正夫がとてもリアルなので、
こういう人がいたら接し方が分からないだろうなと本気で思う。
特に瞬間沸騰の「怒り」の発露になすすべがない自分を容易に想像できる。

でもセーフティマットみたいな人たちはいて。
(六角精児さん演じる松本には、殊更に唸った)。
(キムラ緑子さんの、下稲葉の妻のことばに泣かずにおれない)。

普通の人たちのよくありそうな感情が、意外ときつくて。

胸のざわざわが完全には収まらない終幕に、何か持って帰る、
そういう映画だった。

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公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/subarashikisekai/

(2021.3.14)