太古の世界 〜マニアックな古生物を求めて〜

恐竜は好きか? 恐竜以外の古生物もか?
マニアックな種類を前に情報不足を嘆く心の準備はOK?

今見直す、恐竜ドキュメンタリー 『発見!恐竜の墓場』(2)〜泥だらけの走り屋

2020-05-24 17:32:27 | 今見直す、恐竜ドキュメンタリー
 前回はグアンロンやリムサウルス分類について軽い説明を行った。
そこで今回は、題名にもなった“恐竜の墓場”に踏み込んでいく。今回は修整箇所が少ないため、化石の解説がメインとなる。ご了承願いたい。
また墓場については各種の図鑑にも掲載されているため、このブログと手元に図鑑に用意し、同時進行で読み進めてもらえると私としては楽な解説ができる。これについては強制ではないので、各々の判断に任せる。

それでは第2回解説を始めよう。



まず始めに読者の方々へ聞きたい事が何点かある。それは田植え(もしくは田んぼ遊び)を経験した事があるかどうか?だ。なければ一度ここでブログを読むのを中断し、youtubeで『田植え 泥んこ』と検索してほしい。おそらく田んぼの泥に四苦八苦しながら、全身泥まみれで不格好に動く人が見られるだろう。
この映像は、よく覚えておいてほしい。特に重要なのは、足の沈み方と纏わりつく泥の様子である。
…さて、毎度のようにズレた話を元に戻す。上記の“恐竜の墓場”はDVD内において、“死を招く落とし穴”とも呼ばれていた。名の由来は形状にあり、
(↑外から見た落とし穴。写真は落とし穴の研究論文より)


(↑ウィキメディア・コモンズより、埋葬されたいた亜成体のグアンロン。この裏に別の恐竜が眠っていた)

およそ高さ1〜2メートル、直径も1〜2メートルの円柱状構造となっている。イメージとしてはドラム缶かホールケーキのような形だ。そして内部は幾層もの堆積物が詰まっており、そこに複数の小型脊椎動物が折り重なるようにして“埋葬”されていたのだ。――さながらショートケーキのスポンジに挟まれた苺のように。
これらの保存条件は極めて高かった。通常なら骨格の脆い小動物の遺骸は、短時間で分解や破損の憂き目に遭ってしまう。こうなると化石としての保存は絶望的だ。だが今回に限り、ほぼほぼ完全な骨格が多数産出している。これは遺骸が急速に穴の中へ沈んでいた事が原因だとされている。つまり墓穴に囚われた犠牲者は、内部に満たされていた土砂によって命を落したか、もしくは墓場の上層より発見された新手の肉食動物に襲われたらしい。


(↑ウィキメディア・コモンズより、脊椎動物3体の集合化石。緑→リムサウルスの成体、水色→リムサウルスの幼体、紫→死肉目当てに囚われたワニ)

そして不運なことに、夕飯を確保したはずの肉食動物も途端に穴から出られなくなり、最初の犠牲者と同じような末路を辿ったと推測されている。つまり肉食動物や死肉食動物(分解者)が、十分に遺体を食い荒らす時間がなかったため、多くの生物が良好な状態を保って現代にまで保存されたと考えられているのだ。また仮に分解者には見つからずとも、落とし穴の表層で長期間風雨に晒されていれば表面の劣化は進み続ける。このような浸食作用も化石には見られないため、おそらく犠牲者は余程急速に埋葬されていたようだ。
https://pubs.geoscienceworld.org/sepm/palaios/article-abstract/25/2/112/146116
穴については、↑の有料論文が詳しい

…実は私は今まで、墓場に関する重要な秘密をひた隠しにしてきた。感の良い読者はお気づきだと思うが、先に述べた土砂にも重要な秘密が隠されているのだ。
皆さんは冒頭で唐突に湧いて出た田んぼの話を覚えているだろうか?ここでは覚えているという前提で話を進めさせてもらう。墓場の内部に溜まっていた土砂は、湿地や沼地の土砂であった事が分かっている。ここでピーンと来る方がいるはずだ。

さてここで思考をジュラ紀へ飛ばそう。



遠い昔の中国の水辺…
その畔で天を仰ぎ見るように大口を開けていた陥没穴…。偶然にも通りかかった小型恐竜(リムサウルス)が、うっかり脚を滑らせて中に転がり落ちたことで、この1連の悲劇は始まってしまう。中に溜まっていたのは泥混じりの土砂だった。当然リムサウルスは脱出せんと、菜箸のような後ろ脚をフル回転させて藻掻きに藻掻く。
https://www.nature.com/articles/nature08124
 ←の研究によると、リムサウルスは長細い後ろ脚を持っていた。
(脚は各種の図鑑でも写真が掲載されているので、各自でも観察してほしい。)

(↑ナショナルジオグラフィックHPより、バラけたリムサウルス(幼体)の化石。)

 ――ここから先は↑の論文や写真を元にした私の推測となるが、リムサウルスは身体が小さく体型も細身だったため、走れば快速が出せる動物だと考えられる。つまり現在のレイヨウのように、敵から素早く走って逃れる動物だったのではないだろうか。
そして私の仮説を補強するように、リムサウルスの親戚にあたるエラフロサウルスについての研究が掲載された洋書『Foster, John (2007). Jurassic West: The Dinosaurs of the Morrison Formation and Their World. 』によると、「彼らの中足骨(踵から先の骨)の長さが大腿骨の長さを上回っていた。」そうだ。
これは現在の脚力の強い動物(例はダチョウ)にも見られる特徴で、リムサウルスの仲間が強い脚力を持っていたことを示唆している。――

普段ならこの程度の段差など苦もなく跳ね超えるはずのリムサウルスだったが、今回ばかりは様子が変だった。

(↑DVD本編より、泥に足を取られたリムサウルスと思しき小型恐竜)

…いつまで経っても出られそうにない(!?)
それどころか泥が前にも増して身体に纏わり付いてきた。これはちょうど田植えをしている人と同じである。一歩踏み出そうとすれば、途端に大量の軟泥が動きを阻害する。まるで泥は重りだ。
しかも穴の深さが災いした。穴の深さは1~2メートル。これはリムサウルスの身長(体高)を超えている。つまり底に足がつかない。これでは沈んでいる間に頭まで浸かってしまう。そうなれば一巻の終わりだ。
しかも当のリムサウルスは、懸命に藻掻き暴れるうちに衰弱してしまった。これも田植え終盤の人と同じである。筆者も一度経験したが、一仕事終える頃には、もうクタクタで立つ気力もなかった(金輪際やりたくない)。この場合のリムサウルスでもそれは同じで、じきに首を持ち上げるだけの気力すら失ってしまっただろう。
こうして沈むに任せていると、周囲を囲む土砂によって、犠牲者の内臓が圧迫され始め、これが最終的な死を招く。
皆さんは小学校で水圧について習ったはずだ。水中(この場合は粘度の高い泥水)の物体は360°あらゆる方向から内向きの圧力を掛けられる。今回の落とし穴では水圧が生物の内臓を常時圧迫し続け、遅かれ早かれ呼吸困難を引き起こしてしまうのだ。この危険性は現在の流砂と同じである。また水圧には耐えられても、最終的には鼻先まで埋まって生き埋めになるか、脱水症状か飢餓により衰弱死することになる。 

(↑「プラネットダイナソー」より、生き埋めに遭った小型恐竜。)

やがて力尽きたリムサウルスは沈降を続け、半日も経たずに鼻先まで泥へ埋もれてしまった。こうした悲惨な事故が何度も繰り返された結果、幾重にもなった犠牲者が穴に残されたのだ。そして穴が棺の、泥が防腐剤の役割を果たし、遥か先の未来で探究心の塊たる我々人類によって掘り出され、今ではブログの記事ネタにもなっている。
たかだか穴、されど穴。
このような悲惨な末路を考えると、私はつくづくジュラ紀の中国に生まれなくて良かったと思う(皆さんはどうだろうか?)。ちなみにリムサウルスの正式な学名は、《Limusaurs inextricabils》となっている。前半のL〜が『泥のトカゲ』を意味し、後半の種小名inextricabilsが『脱出不能な』を意味する。もちろん上記の事故から取られた名前だ。…なんとも物悲しいと思うのは私だけだろうか? ――私ならリムサウルスの健脚や小顔を名前にするはずだ。―― とは言うものの、この種小名は本種の堆積経緯が非常に分かりやすい。よって命名に対する私のgdgdはチリ紙1枚分の価値すらない。

さて、今回の記事も一区切りがついただろう。
というわけで第2回解説は以上となる。冒頭で述べたとおり、今回は解説メインのため、あまりDVD本編と絡ませることが出来なかった(申し訳ない)。
そして本来は“泥”に関する秘密がもう一つあるため、それも解説してから〆ねばならないのだが、例によって筆者の気力が続かず、さらには解説進行の都合のため今回はここで〆させてほしい。



(3)へ続く…(ヨテイ)


《参考文献》

・落とし穴についての論文
https://pubs.geoscienceworld.org/sepm/palaios/article-abstract/25/2/112/146116
・リムサウルスについての論文
https://www.nature.com/articles/nature08124
・オーストラリア産の新種
https://amp.9news.com.au/article/3ef78a7f-aea9-4f7d-86ba-f19dc839089a?__twitter_impression=true
・エラフロサウルスについての洋書
Foster, John (2007). Jurassic West: TheDinosaurs of the MorrisonFormation and Their World.

・日経ナショナルジオグラフィックHP
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2184/?ST=m_news
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0808/feature02/gallery/10.shtml

《ネタ元》
・発見!恐竜の墓場

・筆者のやる気(!?)


今見直す、恐竜映画 〜狡猾なる反逆者

2020-05-20 07:47:45 | 今見直す、恐竜映画
 〜コツコツと響く無機質な足音。目前に迫った捕食者を前に、哀れな獲物は今にも命を刈り取られかける。しかし捕食者は気付いていなかった。自らが女王の“御膳”へと成り代わっていた事に。
突然3トンをゆうに超える力で無礼者が噛み砕かれる。藻掻く暇すら与えない、正に一撃必殺の裁きだ。
…ところが、女王もまた油断していた。矮小な親戚に力負けするはずも無く、例え小賢しい策を弄されようと、やはり自らの絶対的な力で捻じ伏せるだけ。そう決め込んだ彼女は、大胆不敵にも早めのディナーに取り掛かったのである。
それこそが命取りとなった。
およそ10mは慣れた地点から、弾かれたパチンコ玉の如きスピードで復讐鬼が駆け出す。今まさに夕餉を食い千切ろうとしていた女王に身を躱す術など無い。攻撃者は最大の弱点である首根っこに勢い良く飛び付き、自慢の「必殺兵器」を躊躇なく振り下ろした…〜


これは言わずもがな恐竜映画の金字塔、初代『ジュラシック・パーク』の最終決戦を筆者が書き表したものだ。この映画はどこを取っても名シーンだらけで、筆者は「どのシーンが好きか?」と聞かれると丸一晩は答えに悩む ――「ガリミムス暴走」か「キッチンの追跡」か、あるいは「ブラキオサウルス」か…。

しかし断トツ1位は初見の時に確定付けられている。それは終盤での『ラプトルvsティラノサウルス』に他ならない。

(↑JPより、暴君を怯ませた急襲)

ティラノサウルスの不意討ちに始まり、グラント一行の避難を挿みつつ、ラプトルの機動力や凶暴性を遺憾なく描き出している。そして最後には、暴君の暴君たる所以がスクリーンいっぱいに映し出されるのだ。長きにわたるジュラシックシリーズにおいても、堂々の1位に君臨する名シーンだろう。


今回の本題は、この名シーンと切っても切り離せない。それはラプトルをラプトル足らしめている最凶の武器。先に述べておくが知能ではない。――どれだけ知恵が回ろうが、向けた刃が相手を食い破らねばなんの意味もなかろう。―― ラプトル最凶の武器。それは後ろ脚に装填された二振りの曲刀…正式名称をシックルクロー《sickle claw》という鋭利な鉤爪だ。
(↑@gracilis_delta 氏より、「恐竜博2019」で展示されたシックルクロー)

この標本は昨年(2019)の恐竜博で目玉の1つとして展示されたため、記憶に焼き付いている読者も多いのではなかろうか。では一旦2019博の図録を確認してみよう。P16には次のような記述がある。
『第二指(シックルクロー)は獲物を“切り裂く”働きがあると推測されていたが、近年では切り裂きは不可能とされ、代わりに獲物を“抑え込む”のに使われたという仮説が提唱されている。(要約)』

「なるほど〜」

と思った読者は少なくないはずだ。確かに湾曲した鉤爪は、現代のワシ・タカネコ科の持つものに酷似していそうに思える。これなら振り下ろすだけで足元の獲物を釘付け(物理)に出来ただろう。

しかし初代ジュラシック・パークでは、全く違う使われた方が描写されていた。

(↑「Movieclips」よりJPの映像)

急所を一突きにするなんて次元ではない。あろうことか何度も相手の体表を蹴り付け、古今東西で最強の恐竜に痛々しい裂傷を幾筋も与えているではないか。

「結局JPも古い映画だからね。これも現代だと間違いになっちゃったんでしょ?…ちょっと残念。」

筆者も気持ちは分からんでもない。だが文句を零したところで学説が変わるわけではない。ここは素直に、ラプトルの描写が間違っている訳を、論文(#4)や化石証拠を元に解s(...せ?

(何ですかディレクター?今から解説するですよ。読者を待たせちゃいかんでしょう。ただでさえgdgdに定評があるのが我々のブログなんですから...ダニィ!?)

…えぇっと、何でもディレクター曰く、

『ラプトルのシックルクローは、やっぱり切り裂き目的の武器だったみたいです。新しい論文(#6)が出てました(笑)。』

(笑)じゃねぇよディレクター。どうしてくれるんだ!これじゃ構成を全て練り直さないといけないよ。それに論文とかも1から集め直さないt(...あっ、うん。あるのね? 補足情報(#2)も揃ってるの? そりゃ容易周到な事で何よりですわ。…はーい。


…度々すまないとは思っている。
という事でラプトル自慢の殺戮兵器こと、シックルクローの解説に今度こそ入ろう。

シックルクロー(および持ち主のドロマエオサウルス科)の研究は意外にも古くから行われてきた。有名なヴェロキラプトル《Velociraptor》(1924年)は、その先駆けと言える。だが真価を引き出した研究は約40年後のデイノニクス《Deinonychus》――および恐竜ルネッサンス――発見(1969年)を待つ必要があった。

(↑デイノニクスの論文(#1)より、ロバートバッカーの描いた素晴らしき挿し絵。)

この発掘地からは、デイノニクスが4頭もの集団で息絶えていたり、残された化石が全てバラバラにされていたり、と色々ネタに事欠かない。それらは別の機会に解説するとして、本記事で注目すべきは、デイノニクスの群れの真っ只中から中〜大型の植物食恐竜テノントサウルス《Tenontosaurus》が共産した事である。

(↑ウィキメディア・コモンズより、テノントサウルスの復元骨格)

そして、やはりと言うべきか、テノントサウルスの骨格も大部分がバラバラに引き裂かれていた。興味深いことに発掘地からはデイノニクスの単離歯(抜け落ちた歯)が、何本も何本も見つかっている。記載者ジョン・オストロムのおかげで『デイノニクスが素早く活動的な温血動物である。』という知見は得られつつあったものの、これにはオストロム本人も相当に頭を悩ませたらしい。そんな中でオストロムはデイノニクスの歯が短く、一方で鉤爪(シックルクロー)は大きい事に気が付いた。しかもシックルクローはただ単に大きいだけでなく、備わった第二指全体が弧を描くように広く動かせた事にも気が付いた。この瞬間オストロムに電流が走った

(デイノニクスの鉤爪は驚くほど可動域が広かった。まるで太古の飛び出しナイフだ。それなら歯や前肢だけでは殺せない大物であろうと“切り裂いて仕留められた”のかもしれない…)

果たしてオストロムの予感は正しかった。方法こそ変わりつつも、この『シックルクロー=大物用の武器説』は概ね定説としての地位を現代まで保持している。こういった“大物狙い”はデイノニクスの特権ではなく、より小型のヴェロキラプトルでも確認されている。何を隠そう、かの有名な闘争化石(#10)の事だ。こちらではシックルクローを使った瞬間が、まるで切り取られたかのように保存されていた。鉤爪の切っ先は見事に獲物の喉笛(頸動脈と気管の集中点)へ命中していたのである。そして獲物のプロトケラトプス《Protoceratops》はヴェロキラプトルの約10倍はある体重の持ち主だった。

(↑「肉食恐竜の真実」より、獲物の喉笛に食い込んだシックルクロー(実物化石)

生々しさには欠けるかもしれないが、デイノニクスの化石に含まれた同位体の研究(#3)からも面白い報告がされている。この結果によると、少なくとも成体デイノニクス(体重100kg)はテノントサウルス(体重700kg〜1t)を主食にしていたらしい。やはり彼らは大物狙いの捕食者だったようだ。


こうした「大物用説」と並行して『シックルクロー=斬撃武器説』も、暫くは何食わぬ顔で論文、書籍、各種メディアに踏ん反り返っていた。最たる例が初代ジュラシック・パークである。それなら2019博の説明も「斬撃説」を採るべきと思われるだろう。だが、それに真っ向から反発した研究が、1990年代末期〜2000年代前半にかけて大量に発表されてしまったのである。「斬撃説」支持派にとっては寝耳に水どころか“寝耳に濃硫酸”だ。慌てて反論しようとした彼らへ思いがけぬ方向から追撃が飛んできた。2005年に放送されたドキュメンタリー番組肉食恐竜の真実』にて、ドロマエオサウルス科の後ろ脚が油圧式装置で復元され、実戦形式の実験が敢行されたのだ。

(↑「肉食恐竜の真実 ~第2回」より、実験に使われたマシンと豚肉)

そして人造ラプトルは見事に実験対象の豚肉を切り裂k( …そんな訳はなかった。自動で射出された後ろ脚は、豚肉に小さな刺突跡を残すに留まり、あろうことかワニ革相手には傷一つ残してやれなかった。そして上記の実験は古生物学者フィル・マニングらの学術的実験も兼ねており、2ヶ月後には正式な論文(#4)までもが発表されてしまったのである。こうした研究を踏まえてか、ジュラシックシリーズでも3作目(JP3)でも、ラプトルがシックルクローを刺突武器として使う様子が見せ場になった個人的には数分後の“罠”のほうが怖いと思わなくもない。この時の犠牲者ユデスキーの絶叫は必聴である。

(↑JP3より、刺突寸前のシックルクロー)

また刺突説を鳥類の進化に絡めて説明した研究も出された。こちらではドロマエオサウルス科が獲物を仕留める際に、刺突状態でも効率良く獲物を衰弱させるため、獲物に飛び乗ったまま前肢を羽ばたかせてバランスを保っていた可能性が示された(#5)。

(↑ウィキメディア・コモンズより、小型恐竜に拘束攻撃を仕掛けるデイノニクス)

かくして恐竜博2019の開催時点では、『シックルクロー=刺突武器説』が一般的な“定説”とされている…。そして元々は本記事をこの時点で〆るつもりだったのだが、かくなる上は地獄まで突き進むしかなさそうだ。ここから先は古生物界隈でも5割の人が知っているかどうか…といった内容になるため、今まで以上に丁寧な説明を心掛けようと思う。

まず刺突説の弱点を指摘しよう。それはズバリ『鉤爪の断面を考慮していない』点である。例えば人間は扁爪と呼ばれる扁平な爪を持っている。対して多くの肉食動物は釣り針のように湾曲した鉤爪を持っている。これは冒頭のワシ・タカやネコ科にも共通しているのは元より、有名な肉食恐竜のアロサウルス《Allosaurus》を代表とする殆どの恐竜もそうだ――例外はメガラプトル科Megaraptora》のみ?
そして2005年の実験でも当然のようにシックルクローの断面は丸みを帯びた形状で再現された。それでは実際のシックルクローはどうだったのだろうか?百聞は一見にしかず! 下図を見てもらおう。

(↑ダコタラプトルの記載論文(2015年)より、Aダコタラプトル、Bデイノニクス、Cバンビラプトル、Dユタラプトルの末節骨)

大きな鉤爪がシックルクローである。ものの見事に薄い刃状(二等辺三角形)になっているのが確認できたはずだ。こうなると当然、シックルクローが攻撃時に生み出せる威力は格段に跳ね上がる。同じ出力でも一点突破の力が容易なためだ。元々「刺突説」の時点で(箇所は限定されるにしろ)、文字通りシックルクローが獲物に突き刺さる事は証明されていた。そこに内側面のエッジが加われば、犠牲者の肉体は一切の抵抗を許さず八つ裂きとなったに違いない。例え相手が大きかろうと関係ない。ただ的が大きくなっただけである――小型恐竜ならば一撃でフレ/ンダにされてしまったはずだ。

また「斬撃説」を補強し、「刺突説」を弱める証拠として、『角質(生爪)の存在』も忘れてはならない。角質(ケラチン質)は動物が生きている間は生涯伸びて更新され続ける。実はこれまでの本文で散々使ってきた“鉤爪”という単語は、正確には末節骨と呼ばれる指骨の一部だ。

(↑ウィキメディア・コモンズより、猫の鉤爪。とりわけ角質部分)

言ってしまえば鉤爪全体における芯棒に当たる。そして芯の上から覆い被さる鞘が角質(ケラチン質)だ。これは自分の指を直接確認したほうが手っ取り早い。人差し指の先を注意深く見てみると、多くの方は生爪が僅かに突出しているのが分かるはずだ。その幅は平均して約5.5mm。これは言うまでもなく指先の骨(末節骨)より薄い。もちろん扁爪と鉤爪を同列に比較することは出来ないが、理屈としては同じである。――恐竜博2016 で限定公開されたサウロルニトレステスSaurornitholestes》の標本が分かりやすかった――末節骨だけでもシックルクローの内側面は剃刀のように薄いのだ。そこを角質が補強すれば、身の毛もよだつ恐ろしい殺傷兵器が生まれる事は想像に固くない。ちなみに例の実験では角質の存在が加味されていなかった。どうやら現生動物の角質を参考にしたらしいが、筆者に言わせればナンセンスである(#4)。

(↑「恐竜Xを探せ」より、獲物の腹を切り裂こうとするヴェロキラプトル(鉤爪)


(↑用途の論文(#7)より、シックルクローの使い方。可能性はピンキリである)

ここまで長々と説明してきたが、要約してしまえば次の2つが「斬撃説」の論を形作る上で最も重要な柱である。
・『シックルクローの断面の形状』
・『末節に沿った角質の存在』
これの前ではどんな「刺突説」の論文も瓦解してしまう。といってもシックルクローが斬撃用の武器だからといって、決して刺突技を使わなかった訳ではない。何故なら、シックルクローで深い斬撃を繰り出すには、1度は相手に突き刺す必要があったからだ。
『蹴りで鉤爪を獲物の体内へと突き刺す→深く食い込んだところでシックルクローを振り降ろす→最後には後ろ脚全体をも後方へ蹴り飛ばす。』こうすることで映画さながらの深い裂傷が生まれたはずだ。これこそがドロマエオサウルス科の秘めた王を殺し得る暗器、シックルクローの具体的な使い方だろう(あくまで1例である)。

付け加えると、ドロマエオサウルス科ミクロラプトル亜科《Microraptoria》や子供のデイノニクスの研究から、ドロマエオサウルス科は(生涯の一時期にせよ)樹上を棲家とする種が少なくなかったと考えられている。

(↑「プラネット・ダイナソー」より、樹上に潜むシノルニトサウルス)

であればシックルクローを含む四肢の鉤爪は、アイゼンに近い役目を果たしたはずだ――現代のヒョウに近い狩りさえ可能だったかもしれない。
とはいえシックルクローの主な用途は、やはり斬撃用の武器として考えたほうが良さそうだ ――クライミング専用にしては構造が繊細すぎるし、刺突専用なら他の獣脚類との違いに説明が付かない。


忘れがちだが、ドロマエオサウルス科の武装はシックルクローだけではない。先祖代々の顎と前肢も恐るべき兵器だった。

(↑JP3より、獲物にトドメを刺すラプトル)

ある説によると、デイノニクスの咬合力は現生のアリゲーターに匹敵(約6000N)したらしい(#8)。もちろん「6000N説」は最大値の話であって、別の推測では最低値900Nが導き出されている ――こちらはシェパード犬と同等と言ったところだ。顎の使用用途(採食、喧嘩、威嚇etc)は諸説ありとして、度胸試しに噛まれるのだけは絶対に避けたい。

(↑「恐竜博2019」より、デイノニクスの前肢)

前肢については、他のマニラプトル類と同じ特徴を共有していた。手根骨(手首の骨)が半月状だったため、手を自由に動かせたのである。これはカルノサウルス類(例アロサウルス)や基盤的なコエルロサウルス類(例グアンロン)には見られない構造であり前述の木登りはもちろん、やはり獲物を取り押さえる際に使われた事は間違いない。とりわけ大物相手にはアンカー代わりの働きを担っただろう。


これほどの武装を積んでいながら、クライマックスで敗れ去ったのはラプトルの方だった。怪力によって振り落とされ、その拍子に胴体を噛み砕かれて即死。善戦したことにはしたが、これではラプトルのファンクラブが黙っていないかと思われる。がしかし、化石証拠は時として残酷である。

(↑JPより、餌食となったラプトル)

いくつかの事例により、一部のドロマエオサウルス科はティラノサウルス科の餌食となっていた事が判明している(#9)。とあるティラノサウルス科の糞化石には、ラプトルの1種サウロルニトレステス《Saurornitholestes》の歯が混ざっていたし、さらに別のサウロルニトレステスの頭骨には、ティラノサウルス科による噛み傷が残されていた(確実に致命傷)。前者は死骸を漁っただけとも考えられるが、後者は息の根を確実に止めようとした結果だろう。サウロルニトレステスは映画のラプトルよりも俄然小さい(全長1.8m)にしても、これは重要な報告だ。さらにティラノサウルス・レックスと同時代同地域からは、全長5.5mのダコタラプトル《Dakotaraptor》の生息も確認されている。

(↑ウィキメディア・コモンズより、大型ドロマエオサウルス科の一覧。焦げ茶がダコタラプトルである)

こちらはJPラプトルの体格に等しい。もし互いが引くに引けない状況であれば、もしかしたら映画さながらの対決が実現したかもしれない。一撃必殺の暴君か、あるいは手数の略奪者か…。いずれにせよ見物だったに違いない。



「狡猾なる反逆者」完


※補足 ジュラシック・ファイト・クラブ(ヒストリーチャンネル制作)では、『ラプトル類は手の爪で獲物を切り裂いていた』などという話が真しやかに語られているが、実際に切り裂き型の爪をしていたのは後ろ脚のシックルクローだけである。ご注意されたし…。


《参考文献》

[論文]
#1『Osteology of Deinonychus antirrhopus, an Unusual Theropod from the Lower Cretaceous of Montana』(デイノニクスの論文)

#2『Taphonomy and paleobiological implications of Tenontosaurus-Deinonychus associations』
(食性についての論文(群れ))

#3『Ontogenetic dietary shifts in Deinonychus antirrhopus (Theropoda; Dromaeosauridae): Insights into the ecology and social behavior of raptorial dinosaurs through stable isotope analysis』(食性についての論文(同位体))

#4『Dinosaur killer claws or climbing crampons?』(刺突説についての論文)

#5『The Predatory Ecology of Deinonychus and the Origin of Flapping in Birds』羽ばたき拘束についての論文

#6『The first giant raptor (Theropoda: Dromaeosauridae) from the Hell Creek Formation』(ダコタラプトルの記載論文)

#7『Testing the function of dromaeosaurid (Dinosauria, Theropoda) ‘sickle claws’ through musculoskeletal modelling and optimization』(シックルクローの用途についての論文)

#8『A Description of Deinonychus antirrhopus Bite Marks and Estimates of Bite Force using Tooth Indentation Simulations』(デイノニクスの咬合力についての論文)

#9『Gut contents from a Cretaceous Tyrannosaurid: Implications for theropod dinosaur digestive tracts』
(ティラノサウルス科の論文)

#10『“The Fighting Dinosaurs”: The position of their bodies before and after death』(ヴェロキラプトルの闘争化石)

[書籍]
・恐竜博2019 図録
・恐竜博2016 図録
・恐竜の教科書
・ホルツ博士の最新恐竜事典
・恐竜探偵 足跡を追う
・肉食恐竜事典



今見直す、恐竜ドキュメンタリー 『発見!恐竜の墓場』(4下) 〜サバ折りの達人

2020-05-16 23:45:58 | 今見直す、恐竜ドキュメンタリー
(4上より続く)

…例えばグアンロンと同じくらいの全長ながら、体重は良くて1/3とされる恐竜界の“ハンニバル・レクター”ことコエロフィシス《Coelophysis》の体内や吐瀉物からは、丸呑みなど到底不可能に思えるサイズの陸棲ワニ類(スフェノスクス亜目 )や同種の幼体が見つかっている。

(↑ウィキメディア・コモンズより、コエロフィシスの腹部。中で散らばっているのが獲物の骨。)

(↑ウィキメディア・コモンズより、コエロフィシスの前半身。華奢な頭部と手に注目。)

筆者としては消化の進み具合を鑑みるに、これは生きた獲物を襲ったように思える。実際コエロフィシスは死体漁りもしただろうが、基本的には生きた獲物を積極的に食べるハンターだと考えられてもいる。しかもコエロフィシスの前肢は全く無用の長物とまでは言わないが、グアンロンに比べれば使い勝手や破壊力が劣る得物と言わざるをえない。鼻先も強固とは言い難い造りだった。
次なる例は更にグアンロンとの比較が容易だろう。それはコエルロサウルス類のコンプソグナトゥス科に属するシノカリオプテリクス《Sinocalliopteryx》である。


(↑ウィキメディア・コモンズより、シノカリオプテリクスの全身骨格)

この種からは驚くべき胃内容物が報告されており、なんと小型獣脚類のシノルニトサウルス《Sinornithosaurus》に初期の鳥類コンフシウソルニス《Confuciusornis(通称は“孔子鳥”)、そして謎の小型鳥盤類(痕跡のみ)とプシッタコサウルス《Psittacosaurusが残されていたのである(全てが同一個体から見つかってはいない点に注意)。やはりシノカリオプテリクスも活発なハンターだったと考えられており、一部(筆者が思うに、シノルニトサウルスと孔子鳥は特に)は生存時に狙われた獲物だったはずだ ――プシッタコサウルスの存在も興味深いが、これは後で説明する。

それにしても悪食大食漢であろうか。いくら活動的で高代謝な小型獣脚類でも、こりゃ常軌を逸しているとしか思えない。人間ならイエネコや柴犬を丸呑みしているに等しい食事だ。
しかし獣脚類には喉や顎を広く開けておく仕組みが備わっていたため、こうした手品まがいの芸当も可能だったと考えられている ――現代の獣脚類(鳥類)でもカモメやアオサギが頻繁にウサギやらカモやらを飲み込む様子が観察されている。

(↑ウサギを丸呑みにする大型のカモメ)

そしてシノカリオプテリスは体格や武器がグアンロンと似ているとはいえ(前肢はより短い)、全長は2.5mを超えないとされている。さらに鼻面は華奢で頭骨もグアンロンより小さかった。であればグアンロンも同程度のポテンシャルを秘めていた可能性は十分にあるだろう。

これでグアンロン(全長3m)の潜在的な恐ろしさは痛感してもらえただろうか?
例えばグアンロンと同時代/同地域からは、小型の半水棲ワニ類だけでなく、陸棲ワニ類のジュンガルスクス(スフェノスクス亜目で全長1m)が見つかっている。


(↑DVD本編より、ジュンガルスクス。後ろ脚の復元が間違っている(本来はベタ足)点に注意)

さらに鳥類こそ未発見だが、同じく飛翔性動物の翼竜が少なくとも2種見つかっている(KryptodrakonSericipterus)。

(↑DVD本編より、Sericipterusと思しき翼竜)

順に翼開長が1.5m、1.7mで体重も軽い(やや反則気味だが獣脚類と翼竜に関係には根拠もある)。翼竜を襲って無事仕留められたのなら、食べるべきは胴体(とりわけ胸部)だ。皮膜は繊維のせいで食えたものではないだろうし、なにより胸には山のように飛行用の筋肉が搭載されていた。――学習図鑑などでは「小型翼竜は筋肉量が少なく、自力で羽ばたくのが苦手だった。」と書かれがちだか、実際は羽ばたき飛行のほうが得意だった。
また翼竜とグアンロンは餌の小動物を巡って互いに盗みを働いていた疑いもあり、現代の大型猛禽類中型食肉目に近いライバル関係だった事だろう。


ここまでグアンロンの体格で仕留められそうな獲物を他種からの類推で探ってきた。だが上記だけでは心許ない。何かグアンロン自身から更に知り得る情報はないのだろうか?
…実はそれを探る“手掛かり”がグアンロンの足元から掘り出されている。

(↑ナショナルジオグラフィックHPより、未記載の獣脚類。)

(↑DVD本編より、死ぬほど疲れた亜成体。急カーブに注目)

ここから先は“墓場”のシナリオに纏わるネタバレとなってしまうため軽くしか触れないが、言ってしまえば上2体はグアンロンの犠牲者になった可能性が高い(とりわけ亜成体は)。未記載のほうは詳しい情報が公開されていないが、おそらく全長1〜1.5mのコエルロサウルス類だろう。そして亜成体は全長1.5mと推測されている。この内グアンロンはグアンロンでも、未記載を殺したのは亜成体の可能性が高く、逆に亜成体を殺したのは状況からしてグアンロンの成体(全長3m)しかありえない(後者は落とし穴の論文でも言及済み)。

※上記は“手掛かり”であって“証拠”ではないため異論を挟まれる余地がある(シナリオの解説回に解説予定)。

これまでの根拠を総合してジュンガル盆地を総覧すると、前述の他にも何種類か絶好のターゲットが見受けられる。

リムサウルス(←3へ飛ぶ)
・アオルン《Aorun
・ハプロケイルス《Haplocheirus
・シショウグニクス《Shishugounykus
・“ゴングブサウルス”《“Gongubusaurus”
※↑彼らの詳しい解説は別記事にて行う。

その中でも特に面白いのが、基盤的な角竜、インロン(全長1.2m)の存在である。こちらはプシッタコサウルスと同程度かより小型の恐竜である。そのためグアンロンのメニューに取り入れられる資格は十分にあると言えるだろう。

(↑DVD本編より、インロンのCG復元)

(↑@harutrex氏による寄稿。題は「初期の角竜を仕留めたグアンロン」。)

――想像力を掻き立てる話として、これらインロンやグアンロンに代表される角竜と暴君竜の系統では、「軍拡競走」が起こっていた可能性が指摘されている。これはDVD内の言葉を引用すると『熾烈な進化の追いかけっこ』と言え、その究極に位置するのが、今から6600万年前に勃発したトリケラトプスとティラノサウルスの好カードなのだ。その起源が両雄の登場から9000万年以上も遡った先で跳ね回っていた小型恐竜にあると思うと、どこか感慨深く感じられる。――


ざっと挙げれば以上の6種。実際には未同定の小型獣脚類(ドロマエオサウルス科?)が他にも確認されているし、周辺の大型恐竜(マメンチサウルスなど)の卵や幼体も格好の獲物だったに違いない(「無抵抗」「高カロリー」「ありふれている」の三拍子バーゲンセールを逃す手はない)。
これら全長1〜2m前後の相手ならば、自慢の速攻を遺憾なく発揮できただろう。後は空宙で振り回すなり、地面に投げ飛ばすなりして息の根を止めるだけ。この際には前述の湾曲した顎が、獲物を咥え留める助けになった事は想像に固くない。さらに(1)で解説したように、グアンロンを含むティラノサウルス上科目の全上顎骨歯(前歯)の断面には、他の獣脚類よりも厚みがあった。これにも獲物を振り回す際に発生する負荷に耐える役割があったのだろう。

これらの事からグアンロンは、『ジュンガル盆地の小型恐竜の中では』という
限定を付けた上で、やや頭一つ抜き出た存在だったと思われる。これは落とし穴のシナリオに多少関わってくるため、あえて書き残しておく ――これは落とし穴の論文でも指摘済みの事柄である。

(↑恐竜博2009より、インロンを追うグアンロンの群れ。奥には別の小型獣脚類の姿も見える。

(↑ウィキメディア・コモンズより、インロンに飛び掛かるグアンロン)


…かくして結論は出た。

《結論》おおむね間違っていない(笑)。

やや不安の残る箇所はあるとはいえ、亜成体の殺害は確信犯だし、それ以外にも余罪を疑わせる情報が多数存在する。
グアンロンには申し訳ないが、当ブログでは『疑わしきは罰する』がまかり通るのだ。もっとも、こうした同体格前後の相手を狙えたのはグアンロンに限った話ではなく、タニコラグレウスTanycolagreus》やドラコラプトルDracoraptor》といった全長3〜4m級の肉食性獣脚類の多くでも同じだったはずだ。決してグアンロンが特別な恐竜だった訳ではない!!

ただしDVD内におけるグアンロンの描写として、決して見過ごせない誤りが1つある。それはグアンロンを指して『ジュラ紀のライオン』と表現したところだ。たしかにグアンロンは狡猾で油断ならない捕食動物だったかもしれない。だが当時の生態系における彼らの生態的地位は、ちょうどライオンに一歩及ばないヒョウやカラカル(中間捕食者)だと推測されている。(4↑)で述べたとおり、自身の10数倍を軽く超える体重、体格の持ち主に敵う道理など存在しないのだ。

(↑ウィキメディア・コモンズより、小型恐竜を咥えたシンラプトルの復元骨格。)

ちなみに真の頂点にはメトリアカントサウルス類(例→シンラプトル)と基盤的なテタヌラ類(例→モノロフォサウルス)が位置していた。こうした大型獣脚類はジャンジュノサウルス(ステゴサウルス類)やマメンチサウルス科(マメンチサウルス)といった大型の植物食恐竜が主な餌食だった。


…ここまでで上下で3万8千文字を執筆してきた筆者である。色々と悪寒混じりの冷や汗を隠せないが、残る力で次々回以降の伏線モドキ(もとい予告?)を張らなければ筆を置くに置けない(悲しい性である)。

件の落とし穴に埋もれていた者として、グアンロンは落とし穴に嵌った殆どの恐竜とは真逆の意味で異質だった。

(↑落とし穴の論文より、埋まっていた恐竜の産状図の一覧。都合により横転してるため、右が最下層(リムサウルス)で左が最上層(グアンロン)である)


グアンロンの足元から3〜4体の小型獣脚類が見つかっただけでなく、その殆どは骨が無残にもバラバラで最期の様子を伺い知る事すら困難だった。それなのに落とし穴の中でも2頭のグアンロンだけは違っていた。冒頭のとおり(ほぼ)完全な骨格が、それも間接が繋がったまま化石化していたのである(とりわけ亜成体は)。とはいえ単純に埋まった順に保存状態が良かったのではなく、成体と亜成体では亜成体のほうが明らかに保存状態が良好だった…と思いきや、何故か亜成体は首だけを見事にサバ折りにされていた。全くもって不可思議怪奇の極みだ。
これについては皆様なりの推理をしてみてほしい(まず当たらないだろうがw)。これらの謎は後々(6以降?)で解説していこう。

それでは筆者の気力が復帰しだい、またブログ内にて会おう!(covidに負けるな)



(5)へ続け…たいが、もしかすると次回はジュンガルスクスやインロンなど、他の生物の簡易解説記事を投稿するかもしれない。


※補足 グアンロンの鶏冠はハンディキャップ理論により説明される事が多い。これは活動的な捕食者であるグアンロンにとって、頻繁に使いやすい頭部に脆い鶏冠を発達させるのは不利益にしかならないが、そのハンデを背負うことで自身の健康さなどを強調するディスプレイ戦術の1つである。だが筆者はもう1つ別の意味が隠されていると考えたい。それは『獲物の種類に制限がかかる事』だ。というのもグアンロンが狙うだろう小動物は、大抵サッと藪の中や岩の割れ目に逃げ込んでしまう。この際に頭部が細ければ難なく口を突っ込んで獲物を掻き出せるが、ことグアンロンにとっては無理な相談だ。

(↑ウィキメディア・コモンズより、肉食の鳥類ジサイチョウの写真。目立つ鶏冠を持っているが、それは採食時に邪魔にならないように配置されている。)

というのも鶏冠は薄くて脆いため、下手に狭い所へ突っ込もうものなら簡単に傷付きかねず、さらに鶏冠が“突っ張り”となって隙間への侵入も拒んでしまう (グアンロンは鶏冠を傷付けずに済むような広い場所で狩りしていたかもしれない)、とも考えられる。だが以上の話はハンディキャップ理論と若干の矛盾が生じる点や、そもそも逃げられる前に自慢の快速で仕留めれば良い問題なので、上記の補足については余談程度に留めておいてほしい。


《参考文献》

・落とし穴についての論文(有料)
https://pubs.geoscienceworld.org/sepm/palaios/article-abstract/25/2/112/146116
・グアンロンの記載論文
https://www.nature.com/articles/nature04511
・コエロフィシスについての論文
https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsbl.2006.0524
・シノカリオプテリクスについての論文
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0044012
・軍拡競争についての論文(1)
http://www.diva-portal.org/smash/record.jsf?pid=diva2%3A1114214&dswid=-1021
・軍拡競争についての論文(2)
https://dugi-doc.udg.edu/handle/10256/16906
・前歯についての論文
https://www.nrcresearchpress.com/doi/abs/10.1139/e11-068
・オーストラリア博物館HP(解説記事)
https://australianmuseum.net.au/learn/dinosaurs/fact-sheets/guanlong-wucaii/
・捕食者の力関係についての論文
https://www.nature.com/articles/439665a.pdf
・ナショナルジオグラフィックHP(解説)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2178/?ST=m_news
・ナショナルジオグラフィックHP(写真)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0808/feature02/gallery/10.shtml
・中国の落とし穴を報じたニュース記事
http://www.yidianzixun.com/article/0Hl0aUdO/amp
・ホルツ博士の最新恐竜事典
・恐竜異説
・恐竜の教科書
・肉食恐竜事典
・恐竜探偵足跡を追う
・愛しのブロントサウルス

《ネタ元》
・発見!恐竜の墓場

・筆者の気力(!?)


今見直す、恐竜ドキュメンタリー 『発見!恐竜の墓場』(3上)〜異端だらけの鳥モドキ

2020-05-12 19:52:00 | 今見直す、恐竜ドキュメンタリー
 前回は堆積経緯の説明を“軽く”書き連ねた(あくまで“軽く”である)。これで墓場ないし落とし穴の仕組みについてはご理解いただけたと判断したため、今回はそこに埋没していた恐竜を解説/考察していく。


今回取り上げるのは(前回でも触れた)リムサウルス《Limusaurus》だ。

(↑ウィキメディア・コモンズより、リムサウルスの生体復元図。)

作中での描写を含む)概要は(1)で説明済みであるため、ここ(3)ではリムサウルスの詳しい生態に焦点を当てよう。

※生態について深く突っ込んだ記事は今回が初めてだが、新企画概要に書いてあるとおり根拠は提示しておくため、読んだ後に各々で反芻してほしい。くれぐれも内容を鵜呑みにしないようにセンセイトノヤクソクダゾ!!


(↑落とし穴の論文より、産出した獣脚類の一覧。リムサウルスは下層の2体だが、シルエットの外見が正確ではない)

くどいようだが、リムサウルスは獣脚類において異端とされる存在だ。たしかにテリジノサウルス《Therizinosaurus》やオヴィラプトル《Oviraptor》など、ここ数年は雑食〜植物食獣脚類が認知されつつある。

(↑植物食獣脚類の論文より、様々な(菜食主義の)コエルロサウルス類の頭骨。A,現生鳥類 B,オルニトミムス C,シェンゾウサウルス D,インキシヴォサウルス E,カエナグナトゥス)

しかし彼らは九分九厘コエルロサウルス類に属していた。感覚的な話だが、こうしたコエルロサウルス類は鳥類と密接な繋がりが認められている。そのため…

「まぁ、鳥っぽい輩だったら自然っちゃ自然だよね?」

という謎理論により、それらの発見で波風が立つ事はなかった(オルニトミモサウルス類が古くから知られていた影響も少なくない)。

『だがしかし… リムサウルスはそんなに甘くなかった!!』

そう、(1)の分類欄で示したように、本種リムサウルスは初期の獣脚類グループであるケラトサウルス類に堂々の所属を果たしていた。もちろん大まかな分類は当初〜2020年現在まで変更されていない。
それまでのケラトサウルス類には、ディズニー映画「ダイナソー」に登場した暴れん坊カルノタウルス《Carnotaurus》やドラゴンを彷彿とさせる風貌のケラトサウルス《Ceratosaurus》といった強面の“肉食恐竜”によって構成されていた。――エラフロサウルスのように怪しい種はいたにせよ―― その中に全長2mを割ったモヤシっ子の植物食恐竜が追加されたのだからたまらない。

(↑リムサウルスのホロタイプ。見た目だけも“肉食恐竜”とは程遠い。)

(↑デルタドロメウスの最新復元。ツッコミは少し待ってもらおう。)

…このリムサウルスの発見により、デルタドロメウスやエラフロサウルスに付き纏っていた謎に薄い光が当てられるようになったのは、また別の話。


さて発見当初は鳥類と恐竜の繋がりを象徴する存在として一躍脚光を浴びたリムサウルスだったが、その栄光は長く続かなかった。というのも後の研究からリムサウルス自体は鳥類との関係が薄いことが判明したからである。
しかしリムサウルスは黙って時の流れに沈黙する恐竜ではなかった。彼らには古生物学会を再び震え上がらせる奥の手があったのだ。それは次の2体を見比べてもらえば自ずと分かるだろう。

(↑CNNニュースHPより成体(左)と幼体(右)の頭骨の比較。幼体の口先に注目)

幼体の口元に﹆のような粒が見えるはずだ。これはリムサウルスの歯だが、何度見ても成体には歯らしい物が見当たらない。錯覚だろか…?いや違う。

『なんとリムサウルスには成長に伴い歯が消失する特徴があったのだ!!』

「???」おそらく大半の読者は意味が分からないあまり困惑しているはずだ。そりゃそうだろう。皆様は歯がどれだけ便利な代物か熟知しているからだ。硬い煎餅をバリッと砕き、手が塞がった時には臨時の保持器として、そして発声の補助機としても、歯の用途は計り知れない。そんな歯を(誕生時は持ち合わせておきながら)わざわざ捨て去るなど愚の骨頂に思えるだろう。

筆者「そんな歯抜けの口で大丈夫か?」


リムサウルスは自信を持って答えるだろう。決して強がりではない。彼らには彼らなりの生存戦略があったのだ。そんな不可思議極まりない生存戦略を説明するには、まずは成体と幼体の食性から説明しなければならない。

〜幼体〜

(↑ウィキメディア・コモンズより、リムサウルス(幼体)の頭骨。下部の黒いスケールバーは差し渡し5cm)

(↑ウィキメディア・コモンズより、コンプソグナトゥスの頭骨スケッチ。)

幼体の頭骨にこれといった特徴はない。小型獣脚類の基本に則った先細りの口先、そして無数の鋭い歯が並んでいた。これはコンプソグナトゥスとの比較でも顕著だろう。コンプソグナトゥスは虫やトカゲなどの小動物を食べた事が判明しており、幼体も同じような高カロリーの餌を好んでいたと考えられている。

(↑日刊電工新聞HPより、小動物を食べるリムサウルス(幼体)のイラスト)

その頭部は箸やピンセットに近い働きをこなしていた。つまり逃げる小動物を素早く摘み取るのに適していたのだ。これは現代のトカゲや小鳥、そして他の小型獣脚類()にも共通している。

〜成体〜
問題は老人会が総ギックリ腰を起こしかねない顎をした成体だ。身体は2m近くに成長になるのに対し、頭部は殆ど成長していない。もはや8頭身とか言ってはいられない究極の小顔竜、それがリムサウルスの正体なのであるそれに比べりゃ前肢なんてクシャポイしても変わらない

(↑ナショナルジオグラフィックHPより、リムサウルス(成体)の頭骨。)

こうした特異的な頭部は類縁種でも滅多に発見例がない。それでは本当に植物食だったのか確かめようがないように思えるが、実はそうでもない。というのもリムサウルスの頭部は、まるで予想外の動物と酷似していたのだ。それはXmasにお世話となる“アイツ”。
世界全体で200億羽を超えるとされる世界最多の家畜。…ニワトリに他ならない。
ではニワトリとリムサウルス(成体)の頭部を筆者と共に比較してみよう。すると次のような点を見つけられるはずだ。

(↑手持ちのニワトリの頭骨。問題があれば削除/差し替えを行います。)

·『歯が1本も生えていない』
·『先端以外は一定の厚みを保っている』
·『顎が緩いアーチ描いている』
·『顎関節の付け根が低い』
※眼窩の大きさも似ているが、食性と密接ではないため省略する。

目敏い読者は「!?」と思ったはずだ。本記事冒頭で見せた画像の中にも瓜二つの頭部をした獣脚類がいた。それでは一旦ブログ上方へ戻って「植物食獣脚類の画像」を見直してきてもらいたい。そうすれば“B,オルニトミムス”と示された頭骨を見られる。念ため、ここで再びオルニトミムスの頭骨画像を貼っておこう。

(↑ウィキメディア・コモンズより、オルニトミムスの頭骨。)

すると先程挙げ連ねた条件にピタリと当てはまる事が分かるはずだ。そして冒頭のとおりオルニトミムス(類)は以前から概ね植物食の恐竜だと考えられてきた。

(↑プレヒストリックパークより、木立で食事中のオルニトミムス。)

加えてリムサウルスの化石に含まれた同位体の研究からも、成体は主に植物を食べていた事が示されている。

(↑リムサウルスの論文(成長)より、同位体の比較研究。赤が肉食、青が植物食となっている。)

こうした情報からリムサウルスが植物食だった事はほぼ確実と言って良いだろうこの説は敗北を知りたいらしい


…リムサウルスは概ね植物食だった。だが植物を主食にするのは構わないが植物を自らの血肉へと還元できたかどうかは別問題である。というのも植物という食物は非常に消化しにくいのだ。枝葉なんて序の口も序の口。それを乗り越えた先に立ち塞がるのは、大量の繊維質や細胞壁である。それらは中身の栄養分を強固に守ろうとし、また消化作用を頑なに受け付けようとしない。そのせいもあって古くから植物食動物は(多少の差はあれど)皆デブであった。これは現代の牛や馬を観察してもらえると更に分かりやすい。こうしたビール腹の中には、膨大な消化器官(複数の胃や全長の10数倍の腸)が収められており、とにかく時間をかける事で地道に植物を消化している。

(↑「istock」より、正面を向く乳牛。)

ところが、リムサウルスは胴体が横長気味とはいえ、デブとは程遠い体型だった。この問題は小型獣脚類のトロオドン科でも抱えていたと容易に想像できる。これについては別記事で解説済みなので今回は割愛する ――恥骨が後方へ変形しているのは興味深いが。
しかしリムサウルスが同じ戦略を採ろうとしても、それに必要不可欠な物が殆ど手に入らなかった。…無い物ねだりをしても仕方あるまi...a"a"a"a"a"(発狂)


いっそ清々しい程の圧倒的「無」。これじゃ「みんな餓死するしかないじゃ


Question①
こんな三重苦を抱えた植物食動物など本当に存在しえたのだろうか?

①Answer
実は可能だったのである。

コールド負け寸前で一発逆転の光明を差し込んだのは、彼らの体内に隠されていた秘密兵器であった。その名も胃石砂嚢(砂肝)。概要はリンク先のWikiを読んでもらえば分かるだろうが、言ってしまえば「石臼」と「撹拌機」による伝統的なコンボ技だ。

(↑リムサウルスの論文(手指)より、ホロタイプ標本の化石と図。足先の密集した粒々が溢れた胃石である。スケールバーは2cm)

まず嘴で千切り取られた植物片が食道を通って胃(砂嚢)に運ばれてくる。そこにで待っているのが胃石だ。もちろん胃石は自力で動いて植物を擦り潰すのではなく、筋肉質な砂嚢自体が蠕動運動に近い動きする過程で、中身は何かれ構わず手当たりに揉み混ぜられる。

(↑「ウォーキングwithモンスター」より、胃石と植物が詰まった胃袋の中身。)

すると首尾よく胃石が植物片を押し潰してくれる。同時に胃液(もしかすると協力的なバクテリア)が植物の傷から中へ侵入して本格的な消化を開始するのだ。

そして実はニワトリを含む鳥類やオルニトミムス科も同様の消化戦略を採っていたと考えられている。前者ならホームセンターに行くと鉱物飼料が売っているから、怪しいと思うなら読者自らで確かめてみると良いstayhome?。そしてオルニトミムス科についても、多くの種(基盤的な種も、派生的な種も)が胃石を備えていた事は周知の事実。

(↑ナショナルジオグラフィックHPより、胃石を持つ獣脚類(シノルニトミムス)。)

それにしたってリムサウルスの体格で植物食を貫くのは容易ならざる生き方だったはずだ。彼らは不足しがちなエネルギーを補うべく、四六時中チマチマと餌を摘んでいたのだろう ――そうした生き方もニワトリと似ている。
ジュラ紀のジュンガル盆地では、そうした風景が日常茶飯事だったはずだ。


ならリムサウルスが啄んでいたのは、果たしてどんな植物なのだろうか?それは(3下)にて解説/考察する。乞うご期待!



次は数日以内に投稿する…(ヨテイ)


※5/15追記
獣脚類かどうかを問わず、胃石は数多くの古生物〜現生動物で報告されている。中には消化とは全く関係のない目的で石を飲み込む種類や、採食時の誤飲や二次嚥下といったケースも存在する。そのため今回は『リムサウルス=植物食』の根拠を頭部の形態などへ求め、胃石については、ニワトリやオルニトミムスでの使い方を参考にしつつ、『胃石=食物破砕の道具』としての位置づけに留めた。


《参考文献》

・落とし穴についての論文(有料)
https://pubs.geoscienceworld.org/sepm/palaios/article-abstract/25/2/112/146116
・リムサウルスについての論文(手指)
http://doc.rero.ch/record/209594/files/PAL_E4066.pdf
・リムサウルスについての論文(成長)
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(16)31269-6?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982216312696%3Fshowall%3Dtrue
・歯の退化についての論文
https://www.researchgate.net/profile/Shuo_Wang35/publication/320025128_Heterochronic_truncation_of_odontogenesis_in_theropod_dinosaurs_provides_insight_into_the_macroevolution_of_avian_beaks/links/59c999e345851556e97a718a/Heterochronic-truncation-of-odontogenesis-in-theropod-dinosaurs-provides-insight-into-the-macroevolution-of-avian-beaks.pdf
・ジュンガル盆地についての報告
http://english.ivpp.cas.cn/rh/as/201012/P020101207393794242194.pdf
・植物食性獣脚類についての論文
https://www.pnas.org/content/108/1/232.short
・消化方法の比較についての論文
https://www.zora.uzh.ch/id/eprint/49678/5/rev_fritz_10031.pdf
・植生についての論文
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs12549-010-0036-y
・ジュンガル盆地の環境についての論文
http://en.cnki.com.cn/Article_en/CJFDTotal-SYYT200802013.htm
・デルタドロメウスの記載論文
https://eurekamag.com/pdf/009/009226569.pdf
・エラフロサウルスについての論文
https://academic.oup.com/zoolinnean/article-abstract/178/3/546/2667468
・マシアカサウルスについての論文
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02724634.2013.743898
・ノアサウルス科の系統についての論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4943716
石樹溝層に共存した獣脚類についての論文
https://www.researchgate.net/profile/Jonah_Choiniere/publication/254314299_Theropod_Teeth_from_the_Middle-Upper_Jurassic_Shishugou_Formation_of_Northwest_Xinjiang_China/links/567004d908ae4d9a4259890e/Theropod-Teeth-from-the-Middle-Upper-Jurassic-Shishugou-Formation-of-Northwest-Xinjiang-China.pdf
・ストルティオミムスについての論文
http://digitallibrary.amnh.org/bitstream/handle/2246/1334/v2/dspace/ingest/pdfSource/bul/B035a43.pdf?sequence=1&isAllowed=y
・疑惑の恐竜についての記事
https://petitcarnetpaleo.blogspot.com/2017/08/un-squelette-complet-de-mimo.html?m=1
・ナショナルジオグラフィックHP(写真)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0808/feature02/gallery/10.shtml
・ナショナルジオグラフィックHP(解説)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2178/?ST=m_news
・ナショナルジオグラフィックHP(特集)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0907/feature01/gallery/03.shtml
・ナショジオHP(チレサウルス)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/043000081/?ST=m_news
・AFPニュースの記事(リムサウルス)
https://www.afpbb.com/articles/-/3112278?cx_amp=all&act=all
・CNNニュースの記事(リムサウルス)
https://www.cnn.co.jp/fringe/35094338.html
・中国の落とし穴のニュース記事
http://www.yidianzixun.com/article/0Hl0aUdO/amp
・ホルツ博士の最新恐竜事典
・肉食恐竜事典
・恐竜の教科書
・恐竜探偵足跡を追う
・恐竜博2016
・恐竜博2011
・現生哺乳類/鳥類の図鑑

《協力》

「古世界の住人」川崎悟司(著)
https://ameblo.jp/oldworld/entry-10304682310.html

今見直す、恐竜ドキュメンタリー 『発見!恐竜の墓場』(4上)〜冠を頂いた龍

2020-05-11 00:35:29 | 今見直す、恐竜ドキュメンタリー
 リムサウルス?はて知らない子ですね
今回は私がこの世で最も愛する恐竜、グアンロン・ウカイイ《Guanlong wucaii》を解説しようか(熱量3割増し)。


この恐竜は件の落とし穴の最上層と準最上層から見つかった成体(V14531→ホロタイプ)と亜成体(V14532→パラタイプ)の2体のみに基づいて記載された。

(↑落とし穴の論文より、上の2体がグアンロン)

「全然見つかってないじゃんw」

と言われてしまいそうだが、ところがどっこい。この2体は生体(最上層より産出)/亜成体(準最上層より産出)ともに素晴らしい完全度の持ち主なのだ。ではご覧いだだこうか、その全貌を!!

(↑落とし穴の論文より、グアンロンの産状化石の写真と図示。尻尾を除く大半が揃っている)


(↑成体(E)と亜成体(G)のグアンロンによる頭骨の比較。スケールバーは5cm)

通常ならば骨格の脆い小型恐竜は化石として残りにくく、仮に残っていたとしても骨が粉砕されているパターンも少なくない。ところがグアンロンは、その特異的な堆積経緯と堆積環境によって不可能を可能にしていた。これに匹敵する小型獣脚類は数えるほどしかいない。頭骨や四脚はもちろんのこと、外れてしまいがちな指骨や肋骨、亜成体に至っては(外傷こそあれど)頸椎でさえ関節したまま化石化していたのである。

(↑ナショナルジオグラフィックHPより、頭骨を取り外された亜成体の骨格。)

これだけの完全度を備えた化石は、そうそう見られるものではない。もちろんグアンロンでも尻尾の中腹より先端にかけては2体とも失われているため、どこかのハドロサウルス類のように全身100%が見つかっているわけではないが、それでも古脊椎動物の化石の美しさとしては中々上位に食い込む標本である(筆者の独断と偏見に基づく)。
また見つかったのが成体と亜成体ということもあって、成長に伴う身体的特徴の変化(鶏冠の拡張や四肢の比率)なども明確に記録されている。これも化石動物としてはこの上なく貴重と言えよう。


かくして骨学的に恵まれているグアンロンは、様々な観点から研究の目が向けられている。
その中でも手っ取り早く『グアンロンが何たるか』を理解するには、グアンロンの生態、とりわけ食性について探っていくのが手っ取り早い(かつ面白い)分類とか骨学とかは筆者の興味が薄いとか、面倒くさいとか、そういう訳では断じてない

忘れがちだが、「見直す」シリーズでは、元ネタのDVDとブログ内容を照らし合わせていくことを指針の一つにしている。ここでDVDにおけるグアンロンの活躍を軽くおさらいしておこう。

(↑DVD冒頭より、小型恐竜を襲う亜成体のグアンロン)

(↑DVD本編より、インロンの首を捻った成体のグアンロン)

(↑DVD本編より、亜成体のグアンロンを殺した成体のグアンロン)

仁義なき戦い 広島死闘篇も裸足で逃げ出すレベルの残虐さだろう。
これには初見の時の筆者も開いた口が塞がらなかった。リアルな動きをしているし、動きにキレもあって格好良いことには格好良いのだが、どこか必要以上にサイコパスな印象を受けざるをえない。
さて、ここで一つ問いを投げかけよう。

《問い》グアンロンは本当に凶暴な捕食者だったのだろうか?

この問いに答えを導き出すのは困難(古生物の生態は推測止まりにならざるをえない)である事を先に述べておくが、これは言い訳でもなんでもない(汗)。

「人っ子一人いない過去の真相など分かるはずもないのだ!みんな迷うしかないじゃない!!

…しかし(まぁまぁ)妥当に考える事はできるはずである。それは生物の身体的特徴から現生生物との共通点を見出したり、他の古生物と比較したりする事で確度を(多少なりとも)上げていくものだ。とりわけ最も重要かつ基本的な情報が、グアンロンの骨格から推測されるの形態や性能についてである。それではグアンロンの生態に関する詳しい解説/考察の前段階として、まずは彼らの身体能力(総合的な“戦闘力”)について解説する事にしよう。

武器①…頭部

(↑成体(E)と亜成体(G)の頭骨。全体が緩いアーチを描いている事と、鼻先に厚みがあることに注目。スケールバーは5cm)

グアンロンの頭部で万人が真っ先に目を引かれるのは、その名の由来にもなった一枚の鶏冠だろう(実際綺麗だ)。
しかし鶏冠の厚みは数mmのため、外見に似合わずブレードのような役目は果たさなかった。…ガイガンじゃあるまいし。

(↑DVD本編より、前を向くグアンロン。ここでは鶏冠に角質を上乗せしている)

実際に武器として機能するのは、緩いアーチを描いた全長35cmの顎と、そこに並んだ鋭い歯列だったと考えられる。

(↑ナショナルジオグラフィックHPより、グアンロンの口先。短い歯が揃った長さで続いているのが特徴)

歯列はドロマエオサウルス科と酷似しており、『サーベルのような歯で獲物を軽い力で噛み裂き、ジワジワと出血死を狙う。』という典型的な獣脚類の狩りではなく、『ダガーナイフのような歯で獲物を突き刺し、咥えて離さないでおく。』ような狩りを行っていた事を示している(長い顎も“当たり判定”の拡大に一役買っていたらしい)。
それを後押しする話が顎の形状による次の推測から立てられるのだ。
写真を見れば分かるように、グアンロンの顎は緩い上向きのアーチを描いている。これは珍しい特徴で、他の獣脚類に見られない。強いて挙げるならばノアサウルス類の顎に似ているが、それとは曲がり具合と歯の様子が異なる。

「この特徴的なアーチは何故あるのか?」

この問いは筆者を散々苦しめてくれた。いくら考えても答えが見当たらず悶々とした日々を送っていた頃、偶然手に取った2冊の書籍に答えはあった。

(↑手持ちのワタリガラスの写真。問題があれば差し替えます。)

その「カラスの教科書」(および「〃補習授業」)という本には、次のような推測が載せられていたのだ。

「カラスの特徴的な嘴には、効率的に力を加え、餌を噛み締めておく効果があるのではないだろうか?(要約)」

なるほど…。と思った瞬間だった。
要はペンチに似た働きをするのだ。ワタリガラスは肉を積極的に食べるとはいえ、その肉は生きたままの動物よりも、オオカミやワシが食べ残したものが多い。そのため表皮を「切り裂く」必要がなく、代わりに肉を「噛み締めて」を取り落とさない事や、ライバルとの奪い合いに負けない事が肝要なのだろう。
そしてグアンロンにも同じことが言える。後述するがグアンロンは、どちらかといえば噛み裂かずとも仕留められる獲物を狙う捕食者だと考えられている。この際に重要となるのが、『如何にして弱い咬合力で獲物を逃さないでおくか?」』である(小型という成約上、咬合力の強化には限界が見えやすい)。これに対する解は大きく分けて2つ。一つはコエロフィシス《Coelophysis》のように口先にフックを発達させ、そこに獲物を引っ掛けて留めておく方法である。

(↑コエロフィシスの頭骨模型。口先の括れに注目)

これは現代の魚類(例ハモ)が択った戦略で、滑りやすい獲物や小さな獲物を確実に捕える上で非常に便利だ。
しかし欠点が一つ存在してしまう。それは一目瞭然だろう。鼻先が貧弱になってしまうのだ。これはグアンロンにとって由々しき問題である。というのも鶏冠を持つグアンロンは、それを支えるために頭骨の華奢化には限界がある(事実後のシオングアンロンは鶏冠を退化させ、鼻骨の厚みを増している)と推測できる。鶏冠と括れを両立させた恐竜もいるが、それは顎自体が大きい。かくなる上は採れる選択肢は一つしかないだろう。
それが『小細工による咬合力の底上げ』だった。幸い鶏冠のおかげか、はたまた(小型にしては)頑丈な体格のおかげか、頭骨は細長くとも強度のある箱型をしていた。それは口先で特に顕著である。つまり藻掻く獲物を力任せに抑え込むポテンシャルはあったらしい(この辺りは流石ティラノサウルスの一族だなぁ、と感じさせてくれる)。

(↑プロケラトサウルスの頭骨。顎が緩いアーチを描いている事と、グアンロンよりも口先の歯が小さいことに注目)

こうした“箱型アーチ”は他のプロケラトサウルス科にも見られるため、おそらく科全体の共有派生形質だと考えられる。

多少話が逸れた(←悪い癖)が、グアンロンは獣脚類としては少々異端な存在なので仕方がない(←開き直り)。ともかくグアンロンは獲物を噛み裂くのではなく、噛み締める戦略を採っていた可能性が高い。この辺は読者の方々にも意見をいただきたいところだ(←コメ稼ぎ乙)。

ちなみにプロケラトサウルスとグアンロンとでは、前上顎骨歯(前歯)の大きさが明確に異なっている(グアンロンのほうが大きい)。現在知られているプロケラトサウルスは亜成体とされているため、本当のところは分からないのが正直なところだが、これは両者の生きた環境や狙う獲物の違いを感じさせてくれる。
どちらにせよグアンロンは横に長い長方形をした頭骨と短刀を思わせる歯、そしてカラスのような独特の顎を武器として振るっていた。

武器②…前肢


(↑リムサウルスの論文より、リムサウルス(上段)、ディロフォサウルス(左)、グアンロン(中)、デイノニクス(右)の前手)

こちらは長々と説明する必要もあるまい。見ての通りグアンロンの前手はデイノニクスの前手と酷似しており、3本の長い指の先にはタカ顔負けの鉤爪が備わっている(手全体の長さは頭部と同等)。ただマニラプトル形類のような手根骨(手首の骨)を持ち合わていなかった。そのため手首の可動域は限定される。それでも両手で拍手に近い動かし方をすることで、至近距離の獲物を掴み取ったり、しばき倒していたらしい。――もっとも前肢より先に頭部が獲物へ到達するため、前肢は補助的な役割が強かっただろう(もしくは武士にとっての脇差にあたる予備の武器だろうか?)。

武器③…後ろ脚
後ろ脚は筋肉質でいて非常に細長かった。子孫筋のティラノサウルスに見られるアークトメタターサル(衝撃吸収構造)こそ未発達だが、膝上と膝下(特に脛)を比較すると膝下が圧倒的に長い。こうした脚は歩幅を広く取れたため、必然的にグアンロンは電光石火の如き俊足の持ち主だったと考えられる。――かねてより小型獣脚類は多くが俊足(時速40km以上)だと考えられてきた。―― さらにグアンロンが身軽(体重100kg)な事も考慮すれば、彼らも疾風を思わせる動きで当時のジュンガル盆地を駆け巡り、あちこちで稲妻のような騒ぎを起こしていた事は確実だろう。
当然そんな後ろ脚から繰り出された蹴りを喰らえば、悶絶どころでは済むまい。現在のヒクイドリがキックだけで成人男性を始末した事例を考慮すれば、グアンロンもライバルの小型獣脚類やワニ類と会敵した際に自身の安全(頭部は最大の武器でもあり、同時に最大の弱点でもある)を考えて遠距離から狙撃よろしく蹴りで応戦した可能性もあるだろう ――邪魔する奴は蹴り1発でダウンさ

武器④…体格
グアンロンは体高が73cm(肉付けすると75cm?)と推定されている。これは殆どの鳥類よりも高く、一部の肉食性鳥類が頭上の理を得た攻撃 ――具体的には獲物を頭上に振り上げてから猛スピードで地面へ叩きつける。衝撃×質量=破壊力の法則に則って獲物の五臓六腑は破裂の憂き目に遭う―― を行う事から、グアンロンも同様の搦め手を繰り出しかもしれない。

武器⑤…感覚器
現在までにグアンロンの脳や感覚を調べた研究はない。それでもディロングティムールレンギアといった基盤的なティラノサウルス上科の研究から、おおよその検討を付けられる。それらによると彼らは(恐竜の中だと)大きめの大脳を持ち、三半規管や視葉といった感覚器を司る部位もそれなりに発達していたようだ――安易な知能の推測は個人的に躊躇われるが、おそらくオオトカゲ以上の優れた認識能力や思考能力はあっただろう――。ただ嗅覚のみは例外だったらしく、嗅球の比較から嗅覚は後のティラノサウルス科より未発達だった事が分かっている。


〜まとめ〜

(ウィキメディア・コモンズより、グアンロン(成体)の頭部と前肢。)

たしかにグアンロンは恐竜の中では小型で、体重も軽いと推測されているが、その実態は正真正銘の殺し屋だった。しかもそれが乱舞の如き華麗な身のこなしで獲物へ躍りかかれば。――もし現代でグアンロンと鉢合わせになってしまったら…。潔くハイクを詠んでカイシャクを待とう。彼らは到底ヒトがステゴロで戦って敵う相手ではない。


と・は・い・え…。
グアンロンが普段狙っていたのは十中八九人間よりもずっと小さな獲物 ――小型のトカゲやカメや子ワニ、単弓類(哺乳類とその親戚)といった小動物(ネズミ程度では腹が膨れないため、おそらくウサギ大?)―― だったと考えられている。DVD内でも軽く触れられたユアンノテリウムYuanotherium》などは格好の標的だったはずだ。

(↑DVD本編より、ユアンノテリウムと思しき獣弓類。本編では“哺乳類に似た小型の爬虫類”と呼称されていた。)


――トリティロドン類が獣脚類に捕食されていた証拠も見つかっている。洋書の『dinosaurs, the encyclopedia, supplement 1. 』によれば、南極から発掘されたクリオロフォサウルスからの報告で、腹部にトリティロドン類の残骸が残されていたらしい。―― さらにグアンロンの生息地に広大な湿地があった事や、前歯の断面がD字で丸みを帯びている事、そして頭部が細長い事から、ひょっとしたら水中の魚や両生類なども積極的に標的としていたかもしれない(小型獣脚類が魚を食べた痕跡も既に報告されて久しい)。
万が一気が違ったとしても、大型恐竜を相手取って真っ向から喧嘩を売るような真似はしなかったはずだ。

(↑NHKスペシャルより、無謀な突撃を敢行するグアンロン。このシーンの製作者を小一時間ほど問い詰めてやりたい)

それもそのはず、グアンロンにはティラノサウルスやドロマエオサウルス科のような馬鹿デカい顎やシックルクローは備わっていない。仮に身体が小さかろうと、武器さえ強力であれば往々にしてハンターは体重の5〜10倍の大物さえ狙う(好例はヴェロキラプトルや“サーベルタイガー”)が、グアンロンにそれは期待できそうもない。――いくら日本刀が優れていようと、戦車には勝てっこない。

だ が 侮 る な か れ。
他の獣脚類との比較を踏まえると、グアンロンにとっての“小動物”は、ウサギ大に収まらなかった可能性が高いと思われるのだ!!


というわけで2万文字の大台が見え始めたのを合図として、(4上)グアンロン解説回は一区切りつけるとして残りは(4下)に引き継ごうと思う。それでは即刻(4下)にて会おう!


(4下)に続くから早う読め!


《参考文献》

・落とし穴の論文(有料)
https://pubs.geoscienceworld.org/sepm/palaios/article-abstract/25/2/112/146116
・グアンロンの記載論文
https://www.nature.com/articles/nature04511
・ジュラ紀のティラノサウルス類についての論文
http://31.186.81.235:8080/api/files/view/66188.pdf
・シオングアンロンの記載論文
https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rspb.2009.0249
・獣脚類の手首についての論文
https://royalsocietypublishing.org/doi/abs/10.1098/rspb.2009.2281
・獣脚類の前肢の用途についての論文
https://link.springer.com/article/10.1007/BF03043773
・小型獣脚類の前肢についての論文
http://digitallibrary.amnh.org/bitstream/handle/2246/1334/v2/dspace/ingest/pdfSource/bul/B035a43.pdf?sequence=1&isAllowed=y
・リムサウルスの論文
http://doc.rero.ch/record/209594/files/PAL_E4066.pdf
・獣脚類の走行性能についての論文
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0223698
・恐竜全体の走行能力についての論文
https://www.researchgate.net/publication/6127793_Estimating_maximum_running_speeds_using_evolutionary_robotics
・ヒクイドリによる死亡事故
https://www.huffingtonpost.jp/entry/cassowary-florida_jp_5cb3dadce4b082aab0877fb2
・ティラノサウルス上科の脳の論文
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08912963.2018.1518442?journalCode=ghbi20
・ティムールレンギアこCNNニュース
https://www.cnn.co.jp/fringe/35079619.html
・魚食についての論文
https://www.academia.edu/29170615/Scipionyx_samniticus_Theropoda_Compsognathidae_from_the_Lower_Cretaceous_of_Italy._Osteology_ontogenetic_assessment_phylogeny_soft_tissue_anatomy_taphonomy_and_palaeobiology
・ナショナルジオグラフィックHP(解説)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2178/?ST=m_news
・ナショナルジオグラフィックHP(写真)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0808/feature02/gallery/10.shtml
・中国の落とし穴を報じたニュース記事
http://www.yidianzixun.com/article/0Hl0aUdO/amp
ホルツ博士の最新恐竜事典
・愛しのブロントサウルス
・恐竜探偵 足跡を追う
・肉食恐竜事典
・恐竜の世界史
・カラスの教科書
・カラスの補習授業

《元ネタ》
・発見!恐竜の墓場

・筆者の気力(!?)