横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

第29回 日本大動脈外科研究会

2021-04-10 05:12:10 | 心臓病の治療
 第121回日本外科学会総会にあわせて第29回日本大動脈外科研究会が4月9日に開かれました。今回はオンライン開催となってしまったため会場で直接演者の先生たちと意見交換したりすることはできませんでしたが、その代わり、自宅で夕食を食べながら視聴でき、それも一つの学会の新しい参加の形だと思いました。
 今回は自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科の山口敦司教授が主幹のため、当医局関連施設から三演題の発表があり、テーマ「Shaggy Aortaに対する手術」にちなんで横須賀市立うわまち病院からは、Shaggy Aortaに対するBrain Isolation Techniqueを使用して弓部大動脈置換を実施した2症例の症例報告を行いました。Brain Isolation Techniqueは、Isolated Cerebral Perfusionとも言い、大動脈の粥腫を人工心肺からの送血で巻き上げて脳梗塞を起こすのを防ぐために人工心肺からの脳への送血を大動脈を介さないルートで送血する方法で、両側腋窩動脈送血を開始と同時に左総頚動脈を遮断して、左総頚動脈から直接カニューレを挿入して左大脳半球の血流を確保することで、大動脈を介した全身還流と脳の還流を完全に分離する方法です。頸動脈や脳内動脈にプラークや粥腫などがあってそれが脳梗塞を起こすという可能性は排除できませんが、Shaggy Aortaにより粥腫飛散は防止できます。当院の経験した症例もこの方法で脳梗塞を回避でき、経過良好で退院できました。またオープンステントで粥腫を裏打ち、圧着することで、吻合操作による粥腫飛散を防止し、さらに大腿動脈で血液をフラッシュすることで、下半身に粥腫が飛散し臓器血流障害を起こすこともある程度防止できました。
 横浜市立大学センター病院からの発表では同様にこのBrain Isolation Techniqueについての発表があり、この方法導入前の選択的脳還流をしていた時代と、Brain Isolation Techniqueに切り替えた後の症例を比較して優位に弓部大動脈置換術における脳梗塞が減少しているという内容でした。オリジナルは浜松医科大学の椎谷先生が考案した方法で、浜松、および横浜市立大学の笠間啓一郎先生が書いた論文を参考に当院でもBrain Isolation Techniqueを実施しています。
 大動脈の診療に限定した研究会は国内のエキスパート施設からの演者によって非常に熱い議論が毎回行われる会です。来年は熊本で行われるということで、次回も楽しみにしております。
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とうりゅう

2021-04-09 06:32:09 | 心臓病の治療


最新型のそうりゅう型潜水艦とうりゅうが横須賀基地に着任しました。ちょうど横須賀港内を航行しているところに遭遇し、クルーが甲板?に整列する様子、初めて見て、ちょっと感動してしまいました。横須賀基地では9隻目の潜水艦だそうです。横須賀には全体で22隻のうち、9隻、約四割がいるそうです。潜水艦は横須賀のひとつのシンボルではないでしょうか。
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モーサテ ワクチン接種体当たり取材

2021-04-06 08:37:47 | 日記



朝の時間のまともな唯一のニュース「モーサテ」ですが、昨日4/5のニュースも内容が凝縮、盛りだくさんでした。
その中で、アメリカ、ニューヨークでのワクチン接種について、キャスター自らがモデルナ製のワクチン接種している様子をVTRで映しておりました。
筋肉隆々のメディカルスタッフに左肩にShotされましたが、血液がたら~っと垂れてきて、そのメディカルスタッフが簡単に血液をぬぐい絆創膏を貼ってくれるまでを映していましたが、ぬぐったにもかかわらず、血液が肩にけっこう付着したままで、あの白いセーターが血液が汚れてしまわなかったかとても心配になりました。おそらく日本ならもう少し丁寧な感じで対応してくれると思いましたが、いかにもアメリカン、って感じで笑ってしまいました。
それを編集なしでそのまま日本全国?に報道するところもさすがテレビ東京!と思いました。
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横須賀は神奈川で最も子育てしやすい街にますます進化

2021-04-05 11:07:30 | その他
 横須賀市はいろいろと魅力のある土地ですが、特に子育てに関しても魅力ある施策を現市長になってから行われています。もちろん自然が多く、それに関連した公園など環境面も魅力の一つですが、現実としては医療費が無料、不妊治療も補助がある、ということが他の市町村よりも非常に優遇されています。

 子供の医療費が無料という施策は、現在中学生まで延長されていてなんと言っても、横須賀市は医療費無料の所得制限がない、というのが最大のメリットです。多くの市町村は横浜市も含めて所得制限があるため、ある程度所得のある人は子供の医療費が毎回大人と同じく支払う必要があります。今年になって横浜市は2歳までに医療費に関して無料とし、所得制限を撤廃しましたが、3歳になるとまだ自己負担が発生することになります。所得制限にかかって医療費を払わなければならない母親が、「なんでルイビトンをしょっている茶髪のネーチャンが無料で、自分が医療費をはらわなくちゃいけないの?」と苦情を言っているのを何度か効いたことがあります。年収が多いほど税をたくさん払っているはずで、その分優遇されてもいいと思いますが、逆に罰を与えられているようで、最近はこうした不幸変な施策のことを「子育て罰」とも呼ぶそうです。横須賀に転居してくれれば医療費に関しては全て無料です!

 更に横須賀市は今年から、不妊治療に関しての助成所得制限を撤廃した、と今月の広報で公表されました。所得の多い人ほど、多くの子供を育てる余裕もあるはずなので、たくさん子供を作ってもらうために助成するのは大賛成です。

 残念ながら、少子化対策と言葉では言うものの、日本国内の子育ての環境は悪くなる一方です。2022年10月には現在特別手当として一定の年収以上の課程の子供に支給されている子供手当が廃止されるそうで、月5000円とは言え、15歳まで90万円の差はまさに「子育て増税」で、まさに「子育て罰」と言われています。ますます少子化が進んでしまいます。母親も働けるように、といって保育施設の拡充に手当を支給しないで浮いた分を充てるというらしいですが、それで働いて年収が上がったら支給を止める、不平等に拍車をかける施策はいかがなものかと思います。年収が上がったら税金もあがる、それだけで充分なのではないでしょうか?無駄なコロナ対策などにお金を使うのを止めて、もっと国の将来のためにお金を使ってほしいです。

 子育て環境を改善することが住みやすい街作りにもつながるし、街の魅力にもなると思います。若い人口が増えないことには街の発展もありません。その意味で、現在の横須賀市は先進的です。是非子育てする人は横須賀に移住してきて欲しいです。高齢化の続く横須賀市ではありますが、これからも子育て環境をますます良くして国が繁栄していってもらいたいものです。
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第29回大動脈外科研究会

2021-04-04 08:54:22 | 心臓病の治療
 来週の日本外科学会総会に合わせて大動脈外科研究会が開催されます。毎年外科学会総会の日程終了後に心臓血管外科医が集まって懇親する機会にもなっておりましたが、残念ながら今年はオンライン開催になってしまいました。
 今年のテーマはShaggy Aortaに対する手術で、横須賀市立うわまち病院からもShaggy Aorta症例に対する戦略について発表予定です。
 Shaggy Aortaに対しては脳梗塞のリスクが非常に高いため、脳に塞栓を飛ばさないような工夫が最も重要です。このため、人工心肺からの血流が大動脈内膜に付着する粥腫を巻き上げて脳血流に入らないようにする工夫が行われます。直接性状の良好な頸動脈や腋窩動脈を介して脳血流を維持することでその粥腫からの塞栓を予防する方法をBrain Isolation Techniqueと呼んでいます。Brain Isolation Techniqueに関する発表は横浜市立大学など他の施設からも発表があるようで、施設ごとの工夫などについても勉強できる機会になると思われます。

第29回日本大動脈外科研究会のお知らせ
日時 2021年4月9日(金)17:30~20:30
場所 幕張メッセ303(第121回日本外科学会定期学術集会 会場)
会長要望演題 Shaggy aorta/Hostile aorta に対する手術(Open surgery/TEVAR)における工夫
一般演題 大動脈外科に関するもの
http://www.jsvs.org/ja/info/event/200917000724/
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