横須賀うわまち病院心臓血管外科

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医学部入試の不正?二浪以上、女子受験者を区別するのは不正なのか?⇒男女平等の世界を目指す

2018-10-16 06:35:00 | 心臓病の治療
 某大学医学部の入学試験で、女子の受験者が合格しづらいように操作している、または最近になってあらたに二浪以上の受験生が同様に合格しづらいように操作している、という報道がされ、大学側も報道陣に謝罪しているようですが、これは不正と言っていいのか?正しくは不正として片づけてしまっていいのか?という問題があります。社会的な機能を考えると、女医をたくさん作ると、皮膚科や眼科などマイナー診療科に進む医師が増えて、外科やもちろん心臓血管外科医などの時間も拘束され体力も要求される診療科に進む医師が減ってしまう、という社会的事情を心配したり、二浪以上の受験者を合格させると現役の受験生に比べて成績が振るわず、ついてけない学生が多くなる、という不安があるため、こうした差別というか、区別が慣例的に起こってきたのは事実です。自分が受験した30年前は女性の医学部学生の比率は2割前後で、特に女性が少ない医学部でしたが、女性は結婚して途中で業務から離脱してしまう、結婚して他県にミッションを放棄していってしまう、などの懸念から入学試験の段階でハードルを設けていると聞かされていました。その当時は誰もが納得のいく説明と思っていました。また残念ながら自治医大では各県によって医師が派遣される部署が決まるため、臨床の現場を経験することが難しい都道府県もあり、そうした県の採用学生が圧倒的に女性が多い、という現実もありました。その都道府県出身の女性は卒業後はOLになった、と言っていました(医療行政に派遣されたので臨床で患者さんに接する仕事ではない、という意味です)。性別の区別関係なく、一人の医師を育成するのに何億も税金が投入されている、ときくと、定年まで医師として社会に貢献すべきで、他の男性が医師になりたいのを押しのけて合格して医師となった女性には決して、途中で専業主婦になったりすることなく人生を医師として全うする義務があります。今までそうした女性医師が、女性の社会的地位を低めてしまった面もあると思います。

 たしかに受験要綱に、募集人数の記載はあっても、もともと男女の区別で合格人数を最初から提示していないので、公正な受験と言えないのは事実でしょう。
 自衛隊の隊員も最近は可能な限り男女の区別なく採用され、男性しか行っていなかった業務にも女性が進出してきています。それには男性以上の努力と能力が必要なことは間違いなく、そうした先進した女性の活躍のおかげで女性の社会的地位が徐々に繋がっていくのだと思います。

 現在の医療事情を鑑みると、女性医師の活躍は目覚ましいもので、最も男性的と思われる心臓血管外科でも女性医師が徐々に増加していき、男性以上のスキルを持つ女性医師が実際に存在するのも事実です。今後、女性の心臓外科教授や部長など、女性医師の管理職も今後出現していくと思いますが、それにはまだ時間がかかると思います。やはりこのフィールドにおいても、男性以上に活躍する女性が牽引してその同等に、もしくは同等以上に扱われる権利を勝ち取っていく、という事実は今後も変わりません。それ以上に男性医師も競争を頑張っていますから、少なくともそれを凌駕する必要があります。残念ながら途中で投げ出してしまう、突然前触れなく仕事をやめてしまう、というような女性医師も時々みられ、女性はやっぱり・・・と思う事もありますが、同様のことは男性の医師も時々あるので、実は性別は関係ないと思います。


 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科においても5名のスタッフのうち、2名の女性医師がチームを構成していますが、男性と同等、もしくは同等以上に働いています。
 また内科や麻酔科、救命センター、集中治療部などにも女性医師が複数名いて、男性と全く同等に働いています。女性だから、どうこうと懸念する心配のいらない時代になってきたとも思います。
 こうした周辺状況を考えると、男性と女性、全く区別せずに業務が遂行されている為、最初の入り口である医学部受験で男女区別する必要はないと思います。その代り、自治医大のように若い時期の一定期間、へき地勤務を経験するミッションがあるのは、結婚・出産のライフステージと重なってしまうデメリットがあるのは事実です。それを懸念して採用を控えている、という現実があるのも事実ですし、あえて女性の受験生が少ないのかもしれません。男女平等に扱われるのには、それなりの犠牲が必要になってくる場合もあり、犠牲を払わずに業務を継続していける環境作りが次に目指すステージだと思います。
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