横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

LIQS手術:Less Invasive Quick openSteting

2021-09-15 15:01:04 | 大動脈疾患
 オープンステント挿入術は弓部大動脈瘤に対してより低侵襲な手術方法として定着した感があります。通常は鎖骨下動脈の遠位もしくはその近位側からオープンステントを挿入し、その近位側は弓部大動脈置換を行なうのが一般的です。しかし、弓部大動脈瘤の瘤よりも近位側の正常な部分は人工血管と置換せず、弓部大動脈の一部を切開したところからオープンステントのみを挿入留置し、近位側を弓部大動脈の中に縫着して終わる方法を日本大学の秦先生が提唱しLIQS手術と命名しています。LIQS手術は、Less Invasive Quick openStetingの略で、この方法ですと、弓部置換を行なわないためより短時間での手術が可能で、オリジナルの方法では平均手術時間2時間14分ほどだそうです。
 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも可能な症例はこれまで3例ほど実施しておりますが、症例事に切開部位、縫着方法などに個別の工夫が必要で、特に安全性を考慮して、循環停止中の脳分離送血併用を行なっていることもあるため、単純なLIQS手術では三時間半くらいで終わっておりますが弓部置換を追加するよりは一時間近く手術時間が短い印象があります。
 高齢者や合併症のある患者さんには低侵襲な方法として検討すべき術式です。商業メースのオープンステントが市場に出てから7年近くたち、その術式としてオープンステント挿入術の保険点数も弓部置換を伴うものと、オープンステント挿入のみの方法で手術手技量にも差がつけられており、このLIQS手術はオープンステント挿入術として計上されるものと思いますが、このオープンステント挿入術とLIQS法が全くの同一のものなのか、他の施設ではこうした術式を行なう場合にLIQS手術と呼んでいるのか、もしくは日本大学の秦先生以外はあまり実施されていない手術方法なのか、学会などでも発表しているのを聞いたことがないのでわかりません。我々自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科の医局でもおそらくLIQS手術の経験があるのは、横須賀市立うわまち病院だけかもしれません。しかし、非常に低侵襲でいい手術方法なので、症例によっては積極的に採用してよい術式と思います。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« オランダ海軍フリゲート艦 ... | トップ | ハネジューメロンってHoneydi... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

大動脈疾患」カテゴリの最新記事