ID物語

書きなぐりSF小説

第4話。魔女っ娘来襲。1. プロローグ

2009-02-14 | Weblog
 (日本ID社東京の1階にある情報収集部の訪問客用オフィス。私(奈良)と伊勢がカウンターの奥の机の前に座っている。私はメールチェック、伊勢は調べもの。訪問客はなく、いつものように暇。
 私に自動人形の2機が追加配備される計画が持ち上がったのは2週間前。どの機体が配備されるかの知らせが来た。伊勢と話する。)

奈良。自動人形が2機追加配備されることは話したかな。

伊勢。ええ、覚えている。まだどんな機体かは知らないけど。たしか、次のコントローラが見つかるまでのつなぎだった。

奈良。そのとおり。予定では最長、三ヶ月間の世話だ。その機体が決まったので知らせが来たのだ。知りたいか。

伊勢。もちろん。私だってコントローラを持っているのですもの。

奈良。じゃ、資料を転送するから見てくれ。

伊勢。(モニターを見る。)これね。設定年齢13才の女性と、ヘビ。ヘビって、にょろっと長いヘビのこと?。

奈良。インドニシキヘビだそうだ。メスだ。体長2m、重さ20kgらしい。小さい方だ。

伊勢。ちっとも小さくないっ。そんな自動人形もいたの…。知ってたのね。奈良さん、来る可能性があったのね。

奈良。どうした、伊勢。君らしくない慌てようだぞ。

伊勢。ヘビの自動人形、開発者はなに考えてるのよ。冗談…じゃなくって、これがその写真…。(絶句している)

奈良。私が獣医だから来たらしい。爬虫類は全然専門じゃないが。

伊勢。そういう問題ではなくて、絶対に断ってよ。

奈良。決定したから結果が送られて来たのだ。ヘビは嫌いなのか。

伊勢。気味悪いだけよ。あーもー、この動く災難。

奈良。動く災難とは私のことか。

伊勢。そうだよ。

奈良。すぐに慣れるって。それに、自動人形だから、ただのロボットだよ。

伊勢。でも、動きはそっくりなんでしょ。

奈良。それは知らないが、そっくりでなかったら、私が念入りに調整するから同じことだ。

伊勢。やっぱり。なんだか考えるのがいやになってきた。

奈良。いつもの私のセリフだな。

伊勢。奈良さんの気持ちが分かったような気がする。で、もう一人も奈良さんの趣味?。

奈良。ヘビも趣味ではないが…。13才か。一番扱い難い年齢だな。

伊勢。奈良さんにも、娘さんがいるでしょ。

奈良。まだ10才だ。3才の違いは大きい。

伊勢。練習にいいかも。それに、万一慕ってくれたら、かわいいわよ。ほら、ちょっと皮膚の色が深めだけど、かわいいじゃない。

奈良。万一なのか。

伊勢。いったい、他の自動人形はどんなのよ。あ、資料がある。なになに、設定年齢35才前後の男女。親子とペット。

奈良。ペットかどうかは知らないが、妥当な線だな。

伊勢。要は気のいいあなたに残りを押しつけた、って感じ。

奈良。さんざんな言われ様だな。まあ、A31も含め、そんなところだろうけど。

伊勢。あっさり認めた。で、いつ届くの。

奈良。いま日本の事情と日本語の特訓中だそうだ。一週間後が予定だそうだ。

伊勢。歓迎会をしましょう。思春期の娘とペット。

奈良。だから、ペットではないって。歓迎会は良いアイデアだな。この部屋でするか。

 (私は仕様等を調べる。伊勢も同様だ。W03が女性のコード名で、リリ(Lily)の愛称、W04がヘビのコード名で、S(エス: Es)という安易な愛称。両者とも、能力はもちろんA31と同等。動物の心を含む、ID社による改良付き。
 リリは設定年齢13才で、皮膚の色が少し濃いめの南アジア系の女性の感じ。たしかにかわいい。民族衣装が似合いそうだが、A31と同じで、救護服がいつもの装備。アン(A02)と同じで明るい灰色の地で、ただし、縁取りは赤に近い紫、つまり京紫で結構派手。特殊装備は、分子シンセサイザー。なに、伊勢と同じ?。使えるのか。)

奈良。見たか、分子シンセサイザー。

伊勢。見たわ。でも、両腕に装着するみたいで小さいし、私のほど複雑ではない。自動人形が装備している救急用の薬箱を少し高度化した感じ。何に使うのかしら。

奈良。腕輪を長くした感じ、腕貫(うでぬき)を短くした感じ。

伊勢。やだ、アームウォーマーよ。腕の方向にしか飛ばせないけど、効果は芝居がかって劇的。音速以下で飛ばせば音はしない。まるで魔法をかけるみたいな感じになる。

奈良。魔法少女?。

伊勢。魔女っ娘?。

 (顔を見合わせて笑う。それが冗談でないことは、後で思い知ることになった。)