「エイジさん、起きなさ~い。」
と台所から声が聞こえる。
トントントンと包丁で何か切りながら
朝ごはんを作る手を止めずに呼んでいる。
そんな母の声はもちろん聞こえてはいるけど
聞こえないふりをしてはまた眠る。
いや、
むしろ母が忙しくごはんを作る朝の音に気持ち良さがあり、
その音を聞きながらまた眠る。
しばらくするとまた
「エイジさん、起きなさ~い。」
と呼ばれる。
今度の音はバタバタとテーブルに朝ごはんを運びながら呼んでいる。
僕は「はーい」と投げやりな返事をして
少し大きくなった朝のボリュームを下げるように
布団を顔まで覆ってはまた眠る。
それからまたしばらくすると
今度の音はドカドカドカと勢いよく階段を上がってくる母の足音。
朝の忙しい母の手を焼かせる僕に
ボリュームは勢いを増し、
その音は次第に近づき、僕の枕元で止まる。
いよいよ夢見心地もこれまでかと覚悟を決めて、
覆った布団を体にしっかりと体に巻き付け絡め丸くなり、
最後の悪あがきをする。
「ちょっと、エイジさんっ!!」
と布団を剥がされてはまだ起きたくない寝ていたいと
少し機嫌悪く駄々を捏ね、
「あぁ。も~う。」と不貞腐れては、
毎朝起こしてくれている母を悪者にしていた。
この駄々を捏ねるように吹き荒れる風は、
そんな小学生時代の毎朝を思い出させてくれた。
最近はなんだかよく分からない気温の上昇で
もう吉野桜は咲いた。
なので少し早く起こし過ぎたのかな。
春よ、まだ寝ていたいのか?
丹澤
東京 中野 花屋 グリーンコースト